2016-07-05(Tue)

年金運用損 4~6月も5兆円 英EU離脱 株価急落

安倍政権が“消した年金” 積立金使い株価つり上げ

----国民が支払う国民年金などの積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、二〇一六年四~六月期に約五兆円の運用損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で分かった。

英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で株価が急落したのが主な要因。
一五年度も五兆数千億円の損失を出す見込みが既に明らかになっており、一四年度末と比較した場合の損失は約十兆円に膨らむ見通しとなった。

GPIFは一四年十月に安倍政権の方針を受け、どの資産にどの程度の積立金を投資するかの基準を変更。
株式(国内、海外合計)を24%から50%に上げ、国債などの国内債券を60%から35%に下げた。
 
試算をしたのは野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリスト。
GPIFの一五年度の運用実績について事前に五兆円超の損失を出すと予測した実績がある。
 
試算によると、運用資産ごとの損益はマイナスだったのが国内株二兆二千億円、外国株二兆五千億円、外国債券一兆六千億円。
国内債券はマイナス金利の導入に伴う金利低下(国債価格の上昇)で含み益が出たため、一兆三千億円のプラスだった。
西川氏は「株価が大きく戻すのは当面難しい」と話す。
(東京新聞)






以下引用

東京新聞 2016年7月5日 06時59分
4~6月も年金運用損5兆円 英離脱で株価急落
 国民が支払う国民年金などの積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、二〇一六年四~六月期に約五兆円の運用損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で分かった。英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で株価が急落したのが主な要因。一五年度も五兆数千億円の損失を出す見込みが既に明らかになっており、一四年度末と比較した場合の損失は約十兆円に膨らむ見通しとなった。
 GPIFは一四年十月に安倍政権の方針を受け、どの資産にどの程度の積立金を投資するかの基準を変更。株式(国内、海外合計)を24%から50%に上げ、国債などの国内債券を60%から35%に下げた。
 試算をしたのは野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリスト。GPIFの一五年度の運用実績について事前に五兆円超の損失を出すと予測した実績がある。
 試算によると、運用資産ごとの損益はマイナスだったのが国内株二兆二千億円、外国株二兆五千億円、外国債券一兆六千億円。国内債券はマイナス金利の導入に伴う金利低下(国債価格の上昇)で含み益が出たため、一兆三千億円のプラスだった。西川氏は「株価が大きく戻すのは当面難しい」と話す。
 日本総研の西沢和彦上席主任研究員は「政府は株の比率を上げる基準変更の際、株価下落で損失が発生する当然のデメリットの説明をほとんどしなかった。あらためて情報公開を徹底し、損失はすぐ処理する仕組みが必要」と指摘する。
(東京新聞)


東京新聞 2016年7月5日 朝刊
年金損失 運用リスクの説明を
<解説> 独立行政法人「GPIF」が運用する公的年金の積立金が二〇一六年四~六月期も損失を出す見通しとなった。短期の損失以上に問題があるのは、情報公開の姿勢。例年、七月上旬までに発表する前年度の運用実績を今年は参院選後の二十九日に先送りした。うそはついていなくても、政府は国民に伝えるべきことを伝えていない。
 本紙は二日、GPIFホームページの「よくあるご質問」への回答から一部の文言が株式比率の拡大後に削除されたと報じた。気になったのが「積極的な運用はより大きなリスクを取ることが必要で市場変動の影響をより大きく受ける。リスクは最終的に加入者が負担する」の部分だ。誠実な文章で、これを削除したことに問題の本質がある。株で収益を得るメリットの裏には市場が荒れたときのデメリットがあるからだ。
 運用については専門家の意見が分かれ、政府の「長期的な視点でみてほしい」との言い分には一理ある。だが株価上昇を国民に誇っても、積立金を市場の荒波にさらす「覚悟も必要」と説明してきただろうか。
 厚生労働省の一四年の見通しでは、今後百年の厚生年金の給付に必要な財源の割合は保険料が約七割、税金からの国庫負担金が約二割で、積立金の取り崩しや運用益は約一割。ただ株価が好転せず運用損の穴埋めができないと、年金の減額や保険料の引き上げ、税金からの支出増につながる不安が生じかねない。
 GPIFは五月、今の資産構成を見直す必要はないとの見解を公表した。問題がないならマイナス面が噴き出した今こそリスクを含めた誠実な説明で理解を求めるべきだ。国民全員に影響する切実な問題を選挙のときに議論せず、いつするのか。 (渥美龍太)


(共同)2016年7月4日 20時20分
年金損失で閉会中審査要求 民進が自民に
 公的年金の積立金運用で昨年度、5兆数千億円の損失が出たことが明らかになった問題で、民進党の西村智奈美厚生労働委員会筆頭理事は4日、自民党に閉会中審査を実施するよう要求した。
 自民党側は10日の参院選投開票前の実施は難しいとの見方を示し、両党間で協議を続けることを提案した。


日本経済新聞 2016/7/5 1:30
公的年金、評価損拡大か 「4~6月5兆円」民間試算
 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する公的年金の評価損益が2016年4~6月期に5兆円程度のマイナスとなったもようだ。英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴う株安などが響いた。14年10月から始まった運用改革は正念場といえそうだ。
 野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリストがGPIFの保有資産について、今年3月末から6月末までにどのくらい時価が増減したかを推定した。国内債券はマイナス金利政策で債券価格が上昇(金利は低下)したため1兆3千億円の評価益を計上したとみられる。
 国内株は2兆2千億円、外国株は2兆5千億円、外国債券は1兆6千億円の評価損をそれぞれ出したという。英国のEU離脱と大幅な円高が背景にある。
 日経平均株価の6月末終値は英離脱問題の余波で1万5575円と3カ月で1100円超下がった。円相場も対ドルで10円弱上昇し、海外資産の円建て評価額が目減りした。
 GPIFが29日発表する15年度の運用実績は精査中だが、株安が主因で5兆数千億円の評価損となったようだ。通期で損失を出すのは10年度以来5年ぶりとなる。
 GPIFは運用利回り向上に向け、14年10月末に資産構成を見直した。国内、外国の株式の運用比率をいずれも12%から25%へ引き上げ、合計50%までにした。
 市場運用を始めた01年度からの評価損益を足し合わせると40兆円程度のプラスになる。そのおよそ6割にあたる23兆円ほどは、安倍政権発足後に上げた評価益だ。
 もっとも各期末時点での資産価値の変化をとらえたもので、GPIFの運用損益が確定したわけではない。株高など相場次第では評価損益も今後、大きく変動しうる。
 民進党など野党側は15年度の運用成績の公表が参院選後になることに加え、資産構成割合の変更が「損失」を膨らませたと批判を強めている。
 政権側は「年金運用は長期的な視点で見るべきだ」として、比較的短期間の評価損益で判断するのは適切ではないとの立場だ。「円高・株安はしばらく続く見込みで運用環境は当面厳しい」(西川氏)との見方もあり、与野党の年金論争にも影響を及ぼしそうだ。


しんぶん赤旗 2016年7月5日(火)
首相が“消した年金”5兆円 積立金使い株価つり上げ
“ギャンブルで すった”安倍政権
 「アベノミクス」のために株価をつり上げようと公的年金の株式運用を拡大してきた安倍内閣。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度決算で、5兆数千億円にのぼる巨額損失が明らかになり、参院選でも重大問題として安倍政権の責任が問われています。第1次安倍政権の「消えた年金」に続いて、今度は安倍首相が「消した年金」(日本共産党の小池晃書記局長)であり、国民の厳しい審判が重要になっています。(深山直人)
株式運用比率 50%に倍増
 「年金を削減しておいて、積立金をギャンブルですってしまうようなものだ。安倍首相は責任を取れ」
 「景気がよくなるどころか、国民には年金の損失だ。これがアベノミクスの実態か」
 GPIFの巨額損失にネット上などで怒りが噴出しています。
 年金積立金は現在、約140兆円。国民が払った保険料です。老後の年金保障が目的であり、安定運用が大原則です。
 ところが、安倍政権は14年10月末、それまで12%(+-6%)だった国内株式の運用比率を25%(+-9%)に、外国株式を12%(+-5%)から25%(+-8%)にそれぞれ引き上げ、50%に倍増させました。一気に20兆円も株式運用枠が増やされたのです。
 その結果、15年7~9月期に四半期ベースで過去最大となる7兆8899億円の損失を計上。16年1~3月期も大幅損失を出し、年間で5兆円を超える巨額損失となることが判明したのです。
 16年4月からも株価下落で2兆円程度の損失を出しているとみられており、損失がさらに膨らんでいます。
 安倍首相は“安倍政権になって利益が出た”と釈明しますが、株式比率を上げてからは、それもほとんど消えてしまったのが実態です。株式比率を上げていなければ巨額損失を出すことはなかったことは明らかで、ごまかしは通用しません。
 安倍首相は、巨額損失で「年金額が減るなどということはありえません」とも言い訳しています。しかし、今年2月の衆院予算委員会では「想定の利益が出ないなら、当然、支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と年金減額に言及しています。
公表は参院選後
 しかも、GPIFは巨額損失について、参院選後の29日に発表する予定です。例年7月上旬までに前年度の運用結果を公表しているのに、今年は約3週間も遅い公表です。野党は「損失隠し」だと批判しています。
アベノミクスを「買い支え」
 安倍首相は14年1月、スイスで開かれたダボス会議の演説で、「GPIFは成長への投資に貢献する」と述べ、株価つり上げのために株式運用の拡大を宣言。アベノミクスの「第三の矢」として閣議決定した成長戦略でも、年金の運用変更を柱の一つにすえました。
 安倍政権は、積立金を使って、日銀とともに大量の資金を株式市場に流し込み、海外からの投機マネーも呼び込むことで、実体経済とかけ離れた株高・円安をつくり、みせかけだけの「景気回復」を演出してきたのです。
 小池晃書記局長の追及(3月3日)で、株価の下落局面で年金積立金が「買い支え」をしていることが判明しました。
 海外投資家が日本株を売り越す局面で、GPIFから委託を受けた信託銀行が大量に日本株を買い越すなど海外投資家と真逆の動きを続けていました。年金積立金が「株価つり上げの道具」とされている実態です。
 高リスク運用で損失が出れば、年金削減や保険料引き上げとなって国民にツケが押し付けられます。
 しかも公的資金による株価つり上げは、市場をゆがめ、投機筋や銀行・証券が巨額の利益を手にする一方、一般投資家や企業の労働者は苦しめられることになります。
米国でもしない
 そのため、金融大国の米国ですら公的年金の積立金で株を買うことはしていません。基礎的な公的年金(OASDI)は、政府が元本と利子を保証する「非市場性国債」のみで運用されています。
 日本共産党は、株式運用の拡大に反対し、高リスクの投機的運用をやめさせると主張。過大な積立金は計画的に取り崩し、給付に充てるために活用していくことを掲げています。
国民は給付減 保険料上げ
 基礎年金は満額でも月6・5万円、国民年金のみの平均受給額は月5万円です。
 「下流老人」など高齢者の貧困が社会問題となるなか、年金削減にストップをかけ、年金の増額・充実をはかることが急務です。
 ところが安倍内閣になって年金はマイナス3・4%の大幅な目減りです。物価下落時に見送った年金削減分の実施(2・5%)と「マクロ経済スライド」(物価上昇以下に抑える)の発動(0・9%)によるものです。
 政府は、「マクロ経済スライド」が実施できない場合、その分を翌年度以降に繰り越し、まとめて減らす年金削減法案を提出しており、秋の臨時国会で審議される予定です。
 社会保障改革「工程表」では、年金の支給開始年齢(65歳)の先送りなども計画。「選挙さえ乗り切れば年金削減を強行」―これが、安倍内閣の本音です。
 日本共産党の志位和夫委員長は、5兆円超の損失に4月以降の2兆円の損失推計をあわせると7兆円にのぼると指摘し、訴えています。
 「7兆円もみなさんの年金を消してしまった。みなさんには年金保険料の引き上げを押し付ける。給付も削減でしょ。こんなことを押し付けておいて、7兆円ものお金をアベノミクスのためになくしてしまう。こんな政治は根本から変えなければなりません」


日刊ゲンダイ 2016年7月3日 10時26分
給付減額は必至か… 自民党とGPIFが隠す「年金運用」の巨額損失
ざっくり言うと
• 年金積立金管理運用独立行政法人は6月30日、厚労省に財務諸表を提出
• 15年度決算で5兆円超の損失があったが、参院選が終わるまで公表しないそう
• 安倍首相は2月の衆院予算委で、給付減額に言及していたという
給付減額は必至…GPIFがヒタ隠す「年金運用」巨額損失
 いつまで安倍自民とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は猿芝居を続けるつもりなのか。参院選が終わるまで巨額の運用損をヒタ隠しにしようとしているのだ。
  GPIFは6月30日、厚労省に財務諸表を提出し、2015年度決算で5兆円超も大損したことを報告。サッサと国民に発表すればいいものを、公表予定日の7月29日までダンマリを決め込むハラだ。
  民進党がきのう(1日)、GPIFの幹部を会合に呼び、速やかな公表を迫ると、「精査にまだ時間がかかる」と逃げ、安倍首相は数字を把握していないとスッとぼけた。公表日を例年より20日近くも遅らせ、参院選をまたぐスケジュールを組むほど安倍首相はGPIFの動きに過敏なのに、首相に報告していないなんてあり得ない話だ。
  安倍政権は14年10月に国内外株による運用比率を50%に倍増させた。これが損失を膨らませたのではないかと民進党議員に追及されると、「一般論だが、(ポートフォリオを変更しなければ運用実績は)トントンだった」とシレッと答えた。要するに、欲をかいた株偏重が大失敗だったのだ。
  安倍首相は株価の値動きにビクビクしている。英国のEU離脱ショックで6月24日の東京市場が暴落すると大慌て。週明け27日にフェイスブックで〈「株価下落により、年金積立金に5兆円の損失が発生しており、年金額が減る」といった、選挙目当てのデマが流されています。しかし、年金額が減るなどということは、ありえません〉と慌てて火消しに走ったが、とんでもない二枚舌だ。実際、5兆円超の大損をこいていた。しかも、今年2月の衆院予算委で「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と減額に言及している。
  金融評論家の近藤駿介氏(アナザーステージCEO)は言う。
 「09年以降の保険料収入は、給付額を下回っています。そのため、積立金を取り崩し、年金特別会計に毎年約5兆円を納付している。これに運用損が乗っかるので、15年度は実質10兆円のマイナス。その上、足元の相場も厳しい。私の試算では、英国に端を発した世界同時株安の影響で今年の4~6月期だけで5兆円超の損失が出ています」
 安倍自民の隠蔽体質を見過ごしたら、国民の老後資金は藻くずになる。いまからでも参院選の争点にするべきだ。


東洋経済オンライン 2016年07月05日
巨大機関投資家GPIFは「危機的状況」にある
もはや株式市場の「救世主」にはなれない
近藤 駿介 :金融・経済評論家/コラムニスト
http://toyokeizai.net/articles/-/125741
 公的年金を運用するGPIF。実は今回の英国のEU離脱ショックで「リーマン・ショック」以上の衝撃に見舞われているという。どうしてそう言えるのか(撮影:今井康一)
 「英国EU離脱ショック」は、世界の金融市場に予想以上の大きな衝撃を与えた。株式市場と為替市場の一日の下落幅が2008年9月のリーマン・ショックの時よりも大きかったこともあり、日本のマスコミからは「リーマン・ショック以上」という声も上がった。だが、こうした見方をよそに、翌週から金融市場は安定的に推移した。
 震源地となった英国の代表的株価指数であるFT100は6月24日に3.1%下落したが、6月27日からの1週間は主要国の中で最大の7.2%上昇を記録し、年初来高値を更新してきた。
GPIFは「リーマン以上の衝撃」に見舞われた
 また、ニューヨーク(NY)株式市場も同様だ。NYダウが「英国EU離脱ショック」前日の水準をほぼ回復したのをはじめ、新興国の株式市場(MSCI Emerging Markets)もショック前の水準を上回るところまで反発してきている。「英国EU離脱ショック」に伴う市場の混乱は、「リーマン・ショック以上」になることなく、思いのほか早く鎮まったといえる。
 こうしたなか、間違いなく「リーマン・ショック以上の衝撃」を受けたといえる分野がある。
 それは日本の公的年金の運用である。
→次ページなぜ「リーマン以上」と言えるのか?
 多くのメディアが「英国EU離脱ショック」に伴う円高・株安によって、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が大きな運用損失を抱えた可能性を報じている。そんな中、7月1日にはGPIFが2015年度の決算で5兆数千億円の運用損失を計上することが明らかになった、と報じられている(公式発表は7月29日の予定)。
問題の本質は「巨額の運用損失」ではない
 ここから何が推測できるだろうか。GPIFの5兆数千億円の運用損失は、国内株式が約12%下落し、約6.5%の円高が進んだ2015年度でのものだった。「英国EU離脱ショック」などで、4月以降国内株式が10%超下落し、円高が8%強進んでいることからすると、GPIFがこの4-6月期に2015年度と同規模の損失を出していても不思議ではない。
こうした状況を受け、2014年10月から実施された「基本ポートフォリオの変更」(国内株式を25%(±9%)にまで引き上げるなどの運用見直し)に対する批判や、「アベノミクスそのものの失敗」を指摘する声も強まっている。
 確かに、「基本ポートフォリオの変更」は結果からみて失敗だったことは明らかである。しかし、運用損が膨らんだから「基本ポートフォリオの変更」は間違いだったという批判も、「安倍政権発足以来の3年間では約38兆円の運用益が出ている」という反証も、必ずしも建設的なものだといえないし、本質的問題を見誤らせるものでもある。
 簡単に言えばGPIFは、国民が納めた年金保険料と、給付する年金額の差額を運用している。それゆえ、GPIFの運用資産は、現役世代が多く年金保険料収入が年金支給額を上回る局面では増加し、逆に高齢化が進み年金支給に伴う支出が年金保険料収入を上回る局面では減少していくことになる。
 GPIFの資金流出入状況をみると、リーマン・ショックが起きた2008年度にはネットで7兆円を上回る資金がGPIFに流入している。 しかし、リーマン・ショックの翌年2009年度から流出に転じ、2014年度の資金流出額は約4.3兆円となっている。
 つまり、リーマン・ショックの際は、リスク資産の下落に見舞われたが、GPIFに新規資金が流入していたため、リスク資産を安値で買い増すことが可能だった。
 これに対して資金流出主体に転じている現在のGPIFは、相場状況に関係なく保有資産を売却し年金給付のための資金を確保しなければならない状況にある。
→次ページ株価下落の中で資産売却に迫られる悪循環
 保有資産を売却して年金給付のための資金を確保する必要に迫られているGPIFは、たとえリスク資産が下落し安い価格になっても、保有資産を売却しなければならない。株価が下落するなかで必要な資金を確保するために保有資産を売却するということは、自らの行動がさらなる株価下落を招き、売却する資産の数を増やさなければならないという悪循環に陥ることになる。
こうした状況の違いを考えると、今回の「英国EU離脱ショック」は、日本の公的年金の運用に「リーマン・ショックをはるかに上回る衝撃」を与えたといえる。
 しかも問題なのは、GPIFが「リーマン・ショック以上の衝撃」を受けたのは、自ら招いた「人災」というところにある。
「年金運用の定石」に反する運用を行うGPIF
 基本ポートフォリオが、国内債券35%(±10%)、外国債券15%(±4%)、国内株式25%(±9%)、外国株式25%(±4%)に変更されたのは2014年10月であり、GPIFが資金流出主体に転じたのは2009年度からである。
 つまり、基本ポートフォリオの変更を検討する時点でGPIFは資金流出主体だったのだ。資金流出主体に転じたGPIFのポートフォリオを、株式への投資比率を増やすことでリスクを高めていくという方針は、「成熟度が低い年金はリスクを多めに、成熟度の高い年金はリスクを抑えめに」という年金運用の定石に反するものである。
 資金流出主体がリスク資産への配分を増やせば、今回のようにリスク資産が急落する局面で、価格の下落を追いかける形で資産売却に追い込まれることは、「政治的不確実性」とは異なり、「運用上確実なこと」なのである。
GPIFが資金流出主体に転じていたことを考えれば、リスク資産を増やすという投資方針の変更を行うのであれば、もっと慎重な検討と議論が必要だったはずだ。
 資金流出主体となっているGPIFは、株価が下落すればするほど必要な年金給付金を確保するために、売却資産の量を増やさなければならないし、それは若い世代の残す資産の量を減らしていくことだからである。
 また、次世代に残す資産の量が減るということは、今後市場が落ち着きを見せて元の水準に戻っても、資産の金額は元に戻らないということである。量が減ってしまっているのだから。
 日本の財政に関しては「次世代にツケを残すな」と叫ばれているが、公的年金の分野では「次世代にツケを残す運用」が平然と行われている。
→次ページ基本ポートフォリオの変更終了が意味するもの
 2009年度以降、GPIFは毎年4~6兆円を年金特別会計に納付等をしている。仮にこの先もGPIFが年間4兆円の納付金を納め続けるとしたら、その資金を確保するために、ポートフォリオ上、毎年1兆円(=4兆円の25%)もの日本株を売却することになる。
年金資金が「売りの主体」として登場する可能性
 これまで多くの人が「年金資金は株式市場における買いの主体」だと考えていたはずである。しかし、基本ポートフォリオの変更を終えた今後は、「株式市場での売りの主体」として登場してくる可能性があるという発想の転換が必要な時期に来ている。
 日本では、6月23日の国民投票で、英国民の多くが「EU離脱後」を真剣に考えずに安易に「離脱」に投票したことを疑問視する意見が多くなっている。閣僚の間からも、国民投票はポピュリズム(大衆迎合主義)に陥る危険性があり、議会制民主主義にそぐわない手法であるという声も上がっている。
 しかし、日本の公的年金の分野で、英国と同じような「安易な選択」が行われたことを問題視する声はなぜか上がってこない。
円安・株高という安易な期待から、国民の多くはGPIFの基本ポートフォリオの変更を好意的に受け入れてきた。「基本ポートフォリオの変更後」を全く考えずに。
 しかも、実際に「基本ポートフォリオの変更」を主導したのは大学教授や専門家たちを中心とした有識者会議であり、英国のように大衆ではない。
 ポピュリズムのリスクに陥ることを防ぐ立場であるはずの有識者会議が、一般大衆と同じように「基本ポートフォリオの変更後」を考えずに安易に「基本ポートフォリオの変更」を行ったという点では、日本社会が抱える問題の根は英国よりも深いといえる。
「EU離脱後」まで真剣に考えたとはいえない国民投票の結果は、英国のみならず世界中を混乱に陥れることになった。そして、それに端を発した金融市場の混乱による影響が、「基本ポートフォリオの変更後」を真剣に考えたとはいえない世界最大の機関投資家GPIFが生息する日本市場に最も大きく表れた。これは、当然の報いだったのかもしれない。

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