2016-07-11(Mon)

参院選 改憲勢力3分の2 「白紙委任」ではない

「政権信任」とおごるな 「後出し改憲」に信はない 改憲は信認されていない

<各紙社説>
朝日新聞)自公が国政選4連勝 「後出し改憲」に信はない(7/11)
読売新聞)参院選与党大勝 安定基盤で経済再生の貫徹を(7/11)
毎日新聞)参院選 改憲勢力3分の2 まず自民草案の破棄を(7/11)
日本経済新聞)改憲より先にやるべきことがある (7/11)

東京新聞)参院選 改憲勢力3分の2 「白紙委任」ではない(7/11)
北海道新聞)参院選与党大勝 改憲は信認されていない(7/11)
河北新報)参院選、自民圧勝/改憲「白紙委任」ではない(7/11)
信濃毎日新聞)参院選に問う 与党勝利 改憲は支持されていない(7/11)

京都新聞)参院選与党大勝  改憲への賛同とは言えない(7/11)
神戸新聞)改憲勢力3分の2/政権への白紙委任ではない(7/11)
中国新聞)改憲勢力3分の2 「政権信任」とおごるな(7/11)
西日本新聞)岐路に立つ国政 今こそ「立憲」を見据えて(7/11)





以下引用



朝日新聞 2016年7月11日(月)付
社説:自公が国政選4連勝 「後出し改憲」に信はない


 歴史的な選挙となった。
 1956年、結党間もない自民党が掲げた憲法改正を阻むため、社会党などが築いた「3分の1」の壁。これが、60年たって参院でも崩れ去った。
 自民、公明の与党が大勝し、おおさか維新なども含めた「改憲4党」、それに改憲に前向きな非改選の無所属議員もあわせれば、憲法改正案の国会発議ができる「3分の2」を超えた。衆院では、自公だけでこの議席を占めている。
 もちろん、これで一気に進むほど憲法改正は容易ではない。改憲4党といってもめざすところはバラバラで、とりわけ公明党は慎重論を強めている。
 それでも、安倍首相が「次の国会から憲法審査会をぜひ動かしていきたい」と予告したように、改憲の議論が現実味を帯びながら進められていくのは間違いない。
 いまの憲法のもとでは初めての政治状況だ。まさに戦後政治の分岐点である。
 ■判断材料欠けた論戦
 首相は憲法改正について、選挙前は「自分の在任中には成し遂げたい」とまで語っていたのに、選挙が始まったとたん、積極的な発言を封印した。
 それでいて選挙が終われば、再び改憲へのアクセルをふかす――。首相は自らの悲願を、こんな不誠実な「後出し」で実現しようというのだろうか。
 有権者がこの選挙で示した民意をどう読み解くべきか。
 首相が掲げたのは、消費税率引き上げ先送りの是非と、「アベノミクス」をさらに進めるかどうかだった。
 消費税率引き上げについては、民進党の岡田代表が先んじて先送りを表明した。一方、民進党はアベノミクスの限界を指摘したが、それに代わりうる説得力ある案は示せなかった。
 逆に自民党は、民進党が掲げた「分配と成長の両立」をなぞるように「成長と分配の好循環」と訴えた。
 野党側は安倍政権による改憲阻止を訴えたが、首相はこれにはこたえない。また、推進か脱却かの岐路にある原発政策は、多くは語られなかった。
 結局、有権者には判断材料が乏しいままだった。
 「アベノミクスは失敗していないが、道半ばだ」という首相の説明には首をかしげても、「しばらく様子を見よう」と有権者の多くは現状維持を選んだと見ることもできよう。
 ■反発恐れ「改憲隠し」
 安倍首相が今回、憲法改正への意欲を積極的に語らなかったのはなぜか。
 「2010年に憲法改正案の発議をめざす」。公約にこう掲げながら惨敗し、退陣につながった07年参院選の苦い教訓があったのは想像に難くない。憲法改正を具体的に語れば語るほど、世論の反発が大きくなるとの判断もあっただろう。
 首相はまた、改憲案を最終的に承認するのは国民投票であることなどを指摘して「選挙で争点とすることは必ずしも必要ない」と説明した。
 それは違う。改正の論点を選挙で問い、そのうえで選ばれた議員によって幅広い合意形成を図る熟議があり、最終的に国民投票で承認する。これがあるべきプロセスだ。国会が発議するまで国民の意見は聞かなくていいというのであれば、やはり憲法は誰のものであるのかという根本をはき違えている。
 「どの条項から改正すべきか議論が収斂(しゅうれん)していない」と首相がいうのも、改憲に差し迫った必要性がないことの証左だ。
 この選挙結果で、憲法改正に国民からゴーサインが出たとは決していえない。
 ■次への野党共闘は
 憲法改正に直ちに進むかどうかは別にしても、国政選挙で4連勝した安倍首相が、当面、極めて強固な権力基盤を手にしたのは間違いない。
 単に国会の勢力だけの話ではない。安倍氏は首相に返り咲いてから、日銀総裁、内閣法制局長官、NHK経営委員と、本来は政治権力から距離を置くべきポストを自分の色に染めてきた。内閣人事局を通じ、各省幹部人事にもこれまでにないにらみをきかせている。
 「安倍1強」に対抗できる、あるいは歯止めとなりうる力が統治機構の中に見あたらない。
 一方、民進、共産など野党4党は、安全保障関連法廃止や改憲阻止を旗印に、32の1人区すべてで候補を統一し、一定の結果を残した。ただ、全国的に政権批判の受け皿になるには力強さを欠いた。終盤になると、与党側から野合批判、とりわけ自衛隊を違憲とする共産党との共闘への激しい攻撃を浴びた。
 もっとも、共闘していなければ、1人区の当選者はさらに限られただろうことを考えれば、共闘の試みに意味はあった。
 小選挙区制の衆院、1人区が全体の結果を左右する参院のいまの選挙制度では、巨大与党に対抗するには野党共闘が最も有効であるのは間違いない。
 政権選択を問う次の衆院選に向けて、どのような共闘ができるか。野党側が戦える態勢をととのえられなければ、自民ひとり勝ちの選挙がさらに続きかねない。
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読売新聞 2016年07月11日 06時02分
社説:参院選与党大勝 安定基盤で経済再生の貫徹を


 ◆「安保関連法廃止」は支持されず◆
 道半ばにある経済政策アベノミクスを強化し、デフレ脱却を確実に実現してほしい。それが有権者の意思だろう。
 第24回参院選は、自民、公明の与党が改選過半数の議席を獲得し、大勝した。
 自民党は、政権交代を果たした2012年衆院選以降、国政選で4連勝となった。安倍首相は、政治基盤を一段と安定させ、さらなる長期政権を視野に入れる。
 ◆丁寧な合意形成怠るな◆
 足踏みを続ける日本経済の再生と財政健全化の両立、人口減社会でも持続可能な社会保障制度の構築、不安定化するアジア情勢に対応する外交・安全保障政策――。首相は、こうした重い課題をしっかりと前に進めねばなるまい。
 自民党は、選挙戦のカギを握る32の1人区で、21勝11敗と大きく勝ち越した。複数区でも、東京、千葉で各2人が当選した。
 公明党も、定数増の愛知、福岡などで新たに議席を得た。
 首相は参院選の大勢判明後、アベノミクスについて「力強く前に進めよという国民の声を受け止め、包括的で大胆な経済対策を策定したい」と語った。
 安倍政権は、経済最優先の方針を堅持することが大切である。秋に予定される経済対策の中身と財源の精査や、農業、医療などの成長戦略の拡充が急務だ。
 首相は、17年4月に予定された消費税率10%への引き上げを2年半延期したうえ、アベノミクスの加速か、後戻りかを、参院選の最大の争点に掲げた。
 アベノミクスは円安・株高、雇用改善、賃上げなどの成果を上げた。反面、地方や中小企業への恩恵の波及は限定的にとどまるが、多くの国民は現路線の継続という現実的な選択をした。
 18歳選挙権の導入が注目される中、投票率が低かったことが、固い組織票に支えられる与党に有利に働いた点も見逃せない。
 首相は、アベノミクスが全面的に支持されたと、驕ってはならない。むしろ、経済再生を成し遂げるまでの猶予期間が延長されたと謙虚に受け止め、丁寧な政権運営に努めることが肝要である。
 すべての1人区に統一候補を擁立した民進、共産、社民、生活の4野党は、環太平洋経済連携協定(TPP)への反対論が強い東北の岩手、山形などで議席を獲得した。福島の岩城法相と沖縄の島尻沖縄相も落選に追い込んだ。
 ただ、全国的には、共闘の効果は限定的だったとも言える。
 民進党は、13年の民主党の17議席は上回ったが、改選45議席から大幅に減らし、不振だった。
 ◆野合批判が響いた民進◆
 アベノミクスを「失敗」と決めつけ、「分配と成長の両立」を唱えたものの、浸透しなかった。
 安全保障関連法を「違憲」として廃止するという主張も、支持の広がりを欠いた。基本政策が大きく異なる共産党との連携に対する「野合」批判も響いた。
 民進党の「左傾化」には党内外から懸念が出ている。安保関連法の廃止を求める戦術には終止符を打ち、より建設的な論戦を与党に仕掛けるべきではないか。
 共産党は、改選3議席からは伸長した。しかし、一般国民とかけ離れた「自衛隊は違憲」との見解などが逆風となり、最後は伸び悩みが顕著になった。
 さらなる勢力の拡大を目指すのであれば、もっと現実的な安保政策への転換が欠かせない。
 おおさか維新の会は、地元の大阪で2人を当選させたほか、比例でも議席を伸ばして、一定の存在感を示した。
 自民、公明の与党と、憲法改正に前向きなおおさか維新、日本のこころを大切にする党や無所属の合計は、改正発議の要件である参院の3分の2を超えた。
 ◆憲法改正の項目絞ろう◆
 憲法改正にとって、改憲勢力の拡大は前進ではあるが、これで改正発議が現実味を帯びたとみるのは早計だろう。具体的な改正項目について、各党の足並みが必ずしもそろっていないからだ。
 自民党は、大災害時の緊急事態条項の創設などを優先する。おおさか維新は、教育の無償化や憲法裁判所の設置を主張している。
 憲法改正には、国会の発議後、国民投票で過半数の賛成を得ねばならない。このハードルを考えれば、野党第1党の民進党も含め、幅広い合意が可能な項目の改正を追求するのが現実的だ。
 まずは衆参の憲法審査会で、改正テーマの絞り込みの議論を冷静に深めることが重要である。
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毎日新聞2016年7月11日 東京朝刊
社説:参院選 改憲勢力3分の2 まず自民草案の破棄を


 参院選で自民、公明両党は堅調に議席を伸ばしたのに対し、民進党など野党は総じて振るわなかった。
 これで安倍晋三首相の率いる自民党は、政権に復帰した2012年衆院選、13年参院選、14年衆院選に続く、国政選挙4連勝となった。
 さらに、今回の参院選は戦後政治史の転換点になる可能性がある。与党やおおさか維新の会など憲法改正に賛同する勢力が、非改選の分も合わせて3分の2に達したためだ。
 すでに衆院では改憲勢力3分の2を占めている。これにより、今後の展開次第では初めて国会が改憲案を発議する事態もあり得る。
冷静な議論の阻害要因
 安倍首相は選挙期間中、改憲について沈黙を通した。しかし、現憲法について「占領軍の押し付け」と批判してきた首相である。改憲への執念が後退しているとは思えない。
 首相はすでに秋の臨時国会から衆参の憲法審査会を動かす意向を示している。審査会では、憲法の中でどの条項を改正の対象にするかの議論に移っていくとみられる。
 憲法は国民全体で共有する最重要の合意だ。したがってそのあり方を点検することに異論はない。
 ただし、審査会の再開にあたっては条件がある。自民党が野党時代の12年にまとめた憲法改正草案を、まず破棄することだ。
 自民党草案は、前文で日本の伝統を過度に賛美し、天皇の国家元首化や、自衛隊の「国防軍」化、非常時の国家緊急権などを盛り込んでいる。さらに国民の権利を「公益及び公の秩序」の名の下に制限しようとする意図に貫かれている。明らかに近代民主主義の流れに逆行する。
 野党が「安倍首相による改憲」を警戒する根本には、この草案がある。逆に自民党が草案を最終目標に掲げている限り、与野党による落ち着いた議論を阻害し続ける。政権党として冷静な憲法論議の環境を整えることが自民党の責務だろう。
 衆参両院の改憲勢力が発議可能な3分の2に達したといっても、各党が重視している改正の対象条文はばらばらだ。現段階では、とても絞り込めるような状況ではない。
 首相は「条文の改正を決めるのは国民投票だ」と語っている。確かに憲法の改正には国民投票で過半数の賛成が必要だ。ただし、それは最後の確認と考えるべきだろう。英国のように国民投票が国民を分断するようでは、憲法が国民に根付かない。最低でも、与党と野党第1党が合意している必要がある。
 今回、自民党は単独でも参院過半数をうかがう程度に勢力を回復させた。1989年参院選以降、自民は参院での過半数割れに苦しんできただけに、この意味は小さくない。公明党は従来以上に自民党に対するブレーキ役を果たす責任がある。
 日本は内外ともに厳しい条件が課せられている。参院選を経て安倍政権は、近来にない強力な政治基盤を獲得した。その恵まれた力を、中長期的な改革にこそ生かすべきだ。
 まず、消費増税の2年半先送りで崩壊寸前となった税と社会保障の一体改革の枠組みを、早急に立て直さなければならない。
中長期の政策に生かせ
 25年には「団塊の世代」の全員が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障に要する費用は急増する。国の財政はすでに深刻なレベルにある。安定した政権下でこそ、現実的なビジョンをまとめ、必要な負担への理解を国民に求める責任がある。
 もう一つの柱は、大きく変わりつつある国際情勢への冷静な対応だ。
 安倍政権は昨秋、中国の台頭に対抗するため、自衛隊の対米支援を大幅に拡大する安保関連法を強引に成立させた。しかし、前提である米国の東アジア政策そのものが大統領選の結果次第で変わる可能性がある。欧州に見られる通り、経済のグローバル化とともに各国の「自国第一主義」も強まっている。
 平和主義が基軸の日本としては、10年、20年先をにらんだ骨太の外交・安全保障政策が求められる。沖縄の基地負担軽減を含めて、安倍政権の構想力が試されている。
 一方、野党第1党の民進党は選挙結果を重く受け止める必要がある。
 民進、共産など4野党は今回すべての1人区で候補を統一する選挙協力を進めた。ある程度の効果を発揮したとはいえ、全体として与党を脅かすまでには至らなかった。
 野党は格差拡大などで争点化を図ったが、与党との差別化は成功しなかった。論戦は盛り上がりを欠き、投票率が物語るように有権者の関心が高まったとは言い難い。「熱なき選挙」で組織票に勝る与党が圧倒するパターンが繰り返された。
 民進党など野党が復調するには政権を担い得る政党として信頼回復の努力が欠かせない。共産党との共闘戦略も見直しが必要だろう。
 今回の参院選から「18歳選挙権」が実現し、全国の少なくない高校で模擬投票などの主権者教育が実施された。決して成果を急がず、若者たちの政治への関心を、じっくりと社会全体で育んでいきたい。
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日本経済新聞 2016/7/11付
社説:改憲より先にやるべきことがある


 第24回の参院通常選挙は10日、投開票の結果、与党の自民・公明両党に、おおさか維新の会・日本のこころを大切にする党の改憲2党と無所属議員も加えた「改憲勢力」が憲法改正を発議できる3分の2に達した。
 2014年12月の衆院選で与党はすでに3分の2を超える議席を確保しており、改憲問題が具体的な政治日程に上る可能性が出てきた。1946年11月の日本国憲法公布から70年。戦後政治は大きな転機にさしかかってきた。
「改憲の罠」「護憲の罠」
 今回から選挙権年齢が18歳に引き下げられ、約240万人の新たな有権者が誕生、選挙キャンペーンも展開されたものの、投票率は前回13年の52.61%(選挙区)をやや上回る程度にとどまった。過去4番目に低い水準で、投票率アップには与野党を問わず、さらなる努力が必要である。
 与党の勝因としては対立争点を設定しない戦術に出たことがあげられる。13年の参院選、14年の衆院選と同じように、アベノミクスの是非を問い、消費増税の再延期を打ち出して有権者に負担を強いるテーマをさけた。
 憲法改正についても、自民党は明確なかたちで選挙公約に盛り込まず、公明党も公約で言及することさえしなかった。
 しかしこのやり方は今後、ブーメランとなって改憲側に跳ね返ってくるおそれがある。野党は選挙中から「改憲隠し」と批判しており、国会の憲法審査会での論議などにすんなり入れない事態が予想されるためだ。
 国政選挙では触れないでいながら、国会の憲法審査会でいきなり具体的な発議項目を詰めていくような展開は、やはり民主的な手続きのうえからも問題と言わざるを得ない。
 改憲を前面にかかげなかったことで改憲ラインに達したが、それによってむしろ改憲に踏み切りにくい環境を自ら醸成してしまう「改憲の罠(わな)」に、はまるおそれがある。
 今回も伸び悩んだ民進党は、なお有権者の支持が戻っておらず、党再建の道のりが険しいことが明らかになった。とくに共産党と連携、他の野党も加えた野党統一候補を1人区で擁立するなど、民進党が左へ振れた印象を与えた点も影響したとみられる。
 リベラル票をまとめる効果はあったとしても、保守的な議員も抱えた民進党に親和的だった中道保守の票が民進党に行きにくくなったからだ。
 結果として自民党などに流れたり、棄権に回った票もかなりあったとみられる。その意味で、民共連携は与党を利する一面があったといえる。
 それが改憲勢力に3分の2を許し、改憲の環境整備をしてしまったとすれば、民進党もまた「護憲の罠」に、はまったとみることができる。
 選挙戦で、改憲勢力による3分の2確保の阻止をかかげて戦うなど、まるで一昔前の社会党のようだった。
 改憲がいよいよ政治テーマとして浮上してくるにあたり、留意すべき点がある。そもそも自民党は改憲が党是で、草案までまとめているが、2次草案は野党当時のものとはいえ、保守色が濃すぎてとても多くがのめる代物ではない。見直しの党内論議を求めたい。
最優先の政治課題は
 3分の2の議決で発議しても国民投票で過半数を確保しないと改憲までは行きつかないわけで、野党との議論を丁寧に尽くすべきだ。与野党合意を形成するための努力を重ねる必要がある。
 英国での国民投票をみても分かるとおり、改憲をめぐって国論を二分し、社会の分断を招くような事態は避けなければならない。
 大災害への備えとしての緊急事態条項や、今回の参院選で地元の反発が相次いでいる選挙区の合区を回避するための改正など、ただちに議論の対象となるテーマがあるのは間違いない。
 改憲の議論を進めていくのが必要なのはもちろんだが、改憲を最優先の政治課題として取り組むかどうかには疑問がある。
 安倍晋三首相自身が認めているようにアベノミクスは「道半ば」である。ここはまず経済再生に政権の力を集中し改憲は議論段階として取り組んでいくのが適当だ。
 小泉前政権での選挙勝利を背景にあれもやろう、これもやろうと「政権の罠」に、はまって失敗したのが第1次政権だった。政治のリアリズムが分かり、政治家として成長した首相のことだから、まさか同じ轍(てつ)は踏むまい。
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東京新聞 2016年7月11日
【社説】参院選 改憲勢力3分の2 「白紙委任」ではない


 参院選は自民、公明両党が改選過半数を確保し、改憲勢力も三分の二以上に達した。安倍政権は「信任」された形だが、有権者は「白紙委任」したわけではない。
 安倍晋三首相にとっては、政権運営にいっそう自信を深める選挙結果に違いない。自民、公明両党の与党議席は、首相が勝敗ラインに設定した改選過半数の六十一議席を上回った。二〇一二年に自民党総裁に返り咲いた首相は、国政選挙に四連勝したことになる。
◆景気回復は「道半ば」
 民進、共産、社民、生活の野党四党は改選一人区で候補者を一本化して臨んだが、「自民一強」を崩すには至らなかった。
 自公両党に「改憲勢力」とされるおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党、無所属の「改憲派」を加えた議席は非改選を合わせて三分の二を超え、憲法改正の発議が可能な政治状況になった。戦後日本政治の分水嶺(ぶんすいれい)である。
 参院選は首相が来年四月に予定されていた消費税率10%への引き上げを二年半先送りし、成長重視の経済政策「アベノミクス」の加速か後退かを最大争点に掲げた。
 安倍政権発足後三年半が経過しても、景気回復が道半ばであることは政権側も認めている。
 野党側は、アベノミクスが個人や企業、地域間の経済格差を拡大し、個人消費低迷の要因になったと指摘したが、有権者はアベノミクスの成否の判断は時期尚早だと考えたのだろう。
 野党側の批判はもっともだが、説得力があり、実現性を感じられる対案を求める有権者の胸に響かなかったことは、率直に認めざるを得ないのではないか。
 一八年十二月までには必ず衆院選がある。野党は次の国政選挙に備えて党内や政党間で議論を重ね、安倍政権に代わり得る政策を練り上げる必要がある。
◆意図的に争点化回避
 とはいえ、有権者は安倍政権に白紙委任状を与えたわけではないことも確認しておく必要がある。特に注視すべきは憲法改正だ。
 安倍首相は憲法改正を政治目標に掲げ、一八年九月までの自民党総裁の「在任中に成し遂げたい」と公言してきた。参院選公示直前には「与党の総裁として、次の国会から憲法審査会をぜひ動かしていきたい」とも語った。
 与党はすでに衆院で三分の二以上の議席を確保しており、参院選の結果を受けて首相は在任中の改正を実現するため、改憲発議に向けた議論の加速に意欲を示した。
 しかし、自民党は参院選公約で憲法改正に触れてはいるものの、首相は「選挙で争点とすることは必ずしも必要はない」と争点化を意図的に避け、街頭演説で改正に触れることはなかった。公明党は争点にならないとして、公約では憲法について掲げてさえいない。
 改正手続きが明記されている以上、現行憲法は改正が許されない「不磨の大典」ではないが、改正しなければ国民の平穏な暮らしが著しく脅かされる恐れがあり、改正を求める声が国民から澎湃(ほうはい)と湧き上がるような状況でもない。
 改正に向けた具体的な議論に直ちに入ることを、参院選で有権者が認めたと考えるのは早計だ。
 安倍政権内で、自民、公明両党間の憲法観の違いが鮮明になったのなら、なおさらである。
 安倍政権はこれまでの国政選挙で、経済政策を争点に掲げながら選挙後には公約に明記されていなかった特定秘密保護法や、憲法違反と指摘される安全保障関連法の成立を強引に進めた経緯がある。
 憲法は、国民が政治権力を律するためにある。どの部分をなぜ改正するのか、国民に事前に問い掛けることなく、参院選で「国民の信を得た」として改正に着手するような暴挙を許してはならない。
 日本国憲法は先の大戦への痛切な反省に基づく国際的な宣言だ。理念である国民主権や九条の平和主義、基本的人権の尊重は戦後日本の経済的繁栄と国際的信頼の礎となり、公布七十年を経て日本国民の血肉と化した。
◆改正より守る大切さ
 安倍政権下での憲法をめぐる議論を通じて再確認されたのは、改正の必要性よりも、むしろ理念を守る大切さではなかったか。
 参院選は終わった。しかし、有権者としての役割はこれで終わったわけではない。一人ひとりが政治の動きや政治家の言動に耳目を凝らし、間違った方向に進み出そうとしたら声を出し、次の国政選挙で審判を下す必要がある。一人ひとりの力は微力かもしれないが決して無力ではないはずだ。
 私たちの新聞は引き続き、有権者にとっての判断材料を提供する役目を真摯(しんし)に果たしたい。覚醒した民意こそが、政治をより良くする原動力になると信じて。
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北海道新聞 2016/07/11 10:30
社説:参院選与党大勝 改憲は信認されていない


 経済、社会が不透明さを増す中、国民は政治の安定を選択した。そう受け止めるべきだろう。
 参院選で自民、公明両党の獲得議席が、安倍晋三首相が目標としていた改選過半数に達した。
 いわゆる「改憲勢力」が参院に占める割合は、非改選を含めて3分の2を超えた。数の上では憲法改定の発議が可能となる。
 首相は選挙戦でアベノミクスの加速を掲げた。成長と分配の両立や、同一労働同一賃金の実現など野党の主張も取り込み、経済再生の理想像を描いてみせた。
 有権者は、その実現を期待して一票を投じたはずだ。誠実に履行するのが与党の責務である。
 首相はきのうのテレビ番組で改憲について「いよいよ憲法審査会に場が移され、条文をどう変えていくかに集約される」と述べ、発議への強い意欲を示した。
 首相は念願とする改憲について選挙結果への悪影響を避けるため選挙戦では口を閉ざした。
 選挙の争点とせず、自らも認める通り「是非が問われていない」以上、性急な発議は認められない。首相があくまでも改憲を目指すなら、具体像を明示した上で、あらためて信を問うのが筋だ。
■公約の実現で応えよ
 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて最初の国政選挙の投票率は、推計で53・66%前後にとどまった。2013年の前回を上回ったとはいえ、各党は低投票率の意味を考えるべきだ。
 その中で与党が勝利した背景には、金融緩和による企業業績の回復や雇用改善の流れを、後戻りさせたくない願いが読み取れる。
 ただその恩恵は中小企業や地方には及ばず、個人消費も回復していない。待遇の不安定な非正規雇用の割合も増え続けている。
 自民党が「1億総活躍社会」の看板を掲げ、子育てや介護の支援、働き方改革や最低賃金の引き上げを公約に加えたのはそのためだろう。
 しかし具体的な実現の道筋はあいまいだ。消費税率引き上げの再延期で財源面の課題も大きい。
 政権は選挙後、これらの疑問に答えを示さねばならない。
■国民的な論議が前提
 首相はかねて、改憲は自民党の党是だと強調し、自らの在任中の実現に意欲を示してきた。
 ところが選挙直前「条文をどう変えるかを決めるのは選挙ではなく、国民投票だ」と述べ、街頭演説では具体的な言及を避けた。
 選挙前の世論調査では早期の改憲への反対意見も目立った。改憲論を封印したのはこのためだ。
 しかし首相は既に2度、経済政策を掲げて選挙を戦い、勝利の後に数の力で国のかたちに関わる法案を成立させてきた前歴がある。
 13年の前回参院選ではアベノミクスの成果を強調して勝利した後、言論の自由を脅かす特定秘密保護法を通した。
 14年衆院選では消費増税を延期して大勝した後、違憲の疑いの強い安全保障関連法を成立させた。
 選挙でこそ是非を問うべき重い課題について、選挙戦では多くを語らず、国会で採決を強行した。
 先の通常国会では、野党が提出した安保関連法廃止法案を一顧だにしなかった。
 首相が三たび、数の力で改憲に踏み込もうとするなら、まっとうな政治手法とは言えない。
■「暴走」抑える役割を
 民進党、共産党など野党4党は今回、安保法制の廃止を軸にすべての1人区で候補を統一した。
 沖縄、福島両選挙区では統一候補が現職閣僚に勝利したが、支持が大きく広がることはなかった。
 首相の性急な改憲姿勢に加え、安保法制や、国内農業への影響の大きい環太平洋連携協定(TPP)などの追及材料がありながら、批判の受け皿をつくりきれなかった責任は重い。
 野党第1党の民進党は党内に改憲論を抱え、この問題で明確な姿勢を打ち出せなかった。「改憲3分の2阻止」という限定的な主張が有権者に響いたとは思えない。
 経済政策の主張はアベノミクス批判にとどまり、説得力ある対案を示せなかった。
 これでは民主党政権時代の失政を払拭(ふっしょく)することすら望めまい。
 政権選択を問う衆院選となればハードルはさらに上がる。改憲や原発政策で党内をまとめきれるのか。選挙協力を超える野党共闘を構築できるか。重い課題となる。
 参院の与党勢力が拡大し、衆院と同質化が進むことで、衆院の独走や政権の暴走を押しとどめる機能のさらなる低下も懸念される。
 二院制の本義は両院が互いに過ちをただし、多様な民意を反映させることにある。
 改憲という重い課題が現実味を増す中、参院が「良識の府」「再考の府」の役割を果たせるのか。今こそ問われる。
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河北新報 2016年07月11日月曜日
社説:参院選、自民圧勝/改憲「白紙委任」ではない


 安倍晋三首相にとっては、思い描いたシナリオ通りの圧勝だったのではないか。
 まずは野党から異論が出にくい消費税増税の再延期で機先を制す。選挙戦では改憲という争点を回避しつつ、経済政策「アベノミクス」一本やりで押し通す。ある意味で戦略の勝利といえよう。
 1強多弱の構図はさらに強まり、安倍首相は絶大なる権力を手にした。何より、悲願である憲法改正に向けて必要条件が整った。自民、公明の与党におおさか維新、日本のこころを合わせた改憲4党などで、発議に必要な3分の2を超えたからだ。
 しかし、安倍首相は選挙期間中、改憲について沈黙を貫いており、具体的な判断材料を示していない。有権者から「白紙委任」を受けたのではないことを肝に銘じるべきだ。
 特定秘密保護法や安全保障関連法の場合のように数の力を頼みに遮二無二に突き進むのではなく、段階を踏んだ丁寧な議論の積み重ねが必要だろう。安倍首相は具体的な条文などの論議は参院選後に先送りをする意向を示しており、まずは秋の臨時国会での討議を見極めていきたい。
 野党では民進が改選議席を割り込み、民主党時代からの信頼回復の道が遠いことが浮き彫りになった。逆に共産、おおさか維新が伸長した。
 野党の敗因は、アベノミクスに対抗するだけの具体的な経済ビジョンを打ち出せなかったのが大きい。安倍政権による改憲阻止や安保法廃止を前面に押し出したが、与党との論戦が最後までかみ合わなかったのも響いた。
 焦点は全国に32ある1人区の行方だった。全選挙区に民進、共産、社民、生活の野党4党で足並みをそろえて統一候補を立てたものの、自民が底力を発揮して勝ち越した。
 ただ、東北では全国的な傾向と異なり、共闘が奏功して接戦を物にした。野党系候補が制したのは青森、岩手、宮城、山形、福島で、自民は辛うじて秋田を押さえただけ。
 安保法廃止などを旗印に全国に先駆けて野党共闘を成し遂げたのが宮城だ。この「宮城方式」が東北の他県に波及効果をもたらし、連携を後押ししたことは間違いない。
 東北の有権者はなぜ、自民圧勝に「ノー」を突きつけたのか。地方に恩恵をもたらしていないアベノミクスの成長神話に懐疑的な目を持っていたのは確かだろう。
 多くの農協団体が自主投票に回ったことを見ると、基幹産業の農業に大きな影響を与える環太平洋連携協定(TPP)への強い反発がうかがえる。震災復興は手じまい感が漂い、再建まっただ中の被災地では、やり場のない不満の矛先が向いたのではないか。
 東北は激戦を反映して投票率の低迷に一定の歯止めが掛かったが、それでも有権者の4割から5割が投票所に足を運んでいない。新有権者の18、19歳はどうだったろうか。
 「無党派層」の多くが棄権に回って投票率が下がれば、組織力を誇る政党が有利になるのは当然のこと。このまま放置していては、いびつな政治になりかねない。政党はもちろん、有権者にも突きつけられた大きな課題である。
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信濃毎日新聞 2016年7月11日
社説:参院選に問う 与党勝利 改憲は支持されていない


 参院選は与党が勝利した。自民、公明両党合わせて改選議席の過半数―とした目標を上回っている。安倍晋三首相の政権基盤は一段と強まった。
 第2次政権の発足から3年半余りになる。この間、経済最優先と言いながら、特定秘密保護法や安全保障関連法を強引に成立させてきた。「1強政治」が加速すれば立憲主義がますます危うくなる。
 在任中に改憲を成し遂げたいと意欲を示している首相の下、自民党は秋の臨時国会に向けて具体的に動きだす。厳しい目を向けていかなくてはならない。
   <非難合戦の不毛>
 投票率は今回も低調だった。選挙権年齢が引き下げられて最初の国政選挙だったものの、盛り上がりに欠けたことが見て取れる。
 関心が高まらなかったのは、なぜか。一つには、与野党の力関係が大きく変わる状況になかったことが考えられる。
 前回参院選の圧勝で与党は優位にあった。参院は3年ごとに半数が改選される。自公両党は非改選の121議席のうち、76議席を占めている。参院全体の過半数を維持するには今回、46議席を獲得すれば良かった。
 野党第1党の民進党が強く訴えたのは「改憲勢力」に3分の2以上を取らせないことだった。
 選挙戦は与野党とも非難合戦に終始した感が強い。争点や焦点ははっきりしなかった。
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」を巡っては、与党が都合のいい経済データで成果を強調する一方、野党は経済失政と断じるなど、かみ合わなかった。首相の政治手法を批判する野党に対し、与党は野党4党の共闘を「野合」と攻め立てた。
   <争点を隠したまま>
 財政健全化、社会保障の財源確保など難しい課題が山積しているのに、議論は深まらなかった。何を基準に投票先を決めればいいのか、多くの有権者にとって分かりにくい選挙だっただろう。
 改憲についても同様だ。
 首相は、ことし初めの記者会見で「参院選でしっかりと訴えていく。国民的な議論を深めていきたい」と述べていた。にもかかわらず、選挙戦で積極的に触れようとはしなかった。
 自民党の公約もあっさりしている。衆参両院の憲法審査会で議論を進め、国民の合意形成に努めるといった短い記述が見られるだけだ。党の改憲草案に盛った「国防軍」の創設など、詳しいことは書かれていない。
 衆院憲法審査会での実質議論は昨年7月以来、中断していた。審査会の会長はことしの通常国会で開催を模索したものの、自民党幹部から暗に自制を求められた経緯がある。参院選前の改憲論議は得策でないとの判断があった。
 正面から争点に据えなかった以上、選挙に勝っても改憲の主張が支持されたことにはならない。
 改憲は首相の悲願だ。政権復帰後、まずは国会発議の要件を緩めようとした。批判を受けて引っ込めると、その後は9条の解釈変更で集団的自衛権の行使に道を開いている。解釈改憲を経て、いよいよ明文改憲を視野に入れる。戦後日本の重大な岐路だ。
 衆院では既に発議に必要な3分の2以上の議席を与党が持つ。数任せで進めることは許されない。
 争点隠しは改憲に限らない。集団的自衛権の行使を可能にした安保法についても言える。
 2014年の衆院選で自民の公約に「集団的自衛権」の文字はなかった。「平時から切れ目のない対応を可能とする」安全保障法制を整えるとの簡単な記述にとどめながら、選挙後、首相は国民の信任を得たとの考えを示した。
   <緊張感ある政治へ>
 今度の参院選でも争点化を避けてきた。国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の「駆け付け警護」など、安保法に基づく新たな任務の適用は選挙後に先送りしている。不誠実なやり方だ。
 12年衆院選以降、国政選挙は自公の4連勝となった。野党は立て直しを急がなくてはならない。
 安保法廃止などを掲げて共闘した民進、共産、社民、生活の4党は、勝敗の鍵を握る改選1人区全てで候補を一本化した。それでも流れを変えることができなかったのはなぜか、徹底的に検証する必要がある。
 首相1強、自民1強の状況が今後も続く。これまでと同じように重大な政策決定が与党の合意だけで進められたり、国会で通り一遍の政府答弁が繰り返されたりする可能性がある。
 どのように政治に緊張感をもたらすか。国会の役割、とりわけ参院の存在意義を問い直したい。政府や衆院をチェックし、暴走を食い止める―。それでこそ「良識の府」「再考の府」だ。
 非改選議員を含め、国会軽視の政権運営を許さない覚悟と自覚を強く求めたい。
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[京都新聞 2016年07月11日掲載]
社説:参院選与党大勝  改憲への賛同とは言えない


参院選で、与党の自民、公明両党が大勝した。
 さらに、自公におおさか維新の会、日本のこころを大切にする党を合わせた計4党と、憲法改正に賛同する無所属・諸派議員を合わせた「改憲勢力」が、憲法改正発議に必要な全議席の3分の2を超えた。
 安倍晋三首相が目指す憲法改正が、現実問題として浮上してきたといえよう。ただし、選挙運動での論戦や出口調査をみれば、改憲に国民の理解が得られたとはとても言えまい。与党は国民の声に丁寧に耳を傾けるよう、心してほしい。
 安倍首相は今回の選挙で、来年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを先送りすることについて「国民の信を問う」と位置づけ、与党で改選過半数の獲得を勝敗ラインに設定した。
 しかし、与野党とも消費税増税延期では一致しており、この点で与党だけが支持を得たとはみなせない。増税分を充てるはずだった社会保障の充実をいかに実現するかについては、与野党とも曖昧なままで、選挙戦でも論争がなかったのは残念だ。早急に具体的な財源を含めた社会保障の将来像を示す必要がある。
 経済が中心的な争点となった今回、安倍政権のアベノミクスについて、国民は一定評価したといえよう。アベノミクスは円安株高を導くことで輸出企業中心に企業業績を改善させたが、消費税引き上げ後、消費は低迷し、景気の停滞感は強い。安倍首相も「道半ば」と認めている。民進党などはアベノミクスを「失敗」と批判したが、それに代わる経済政策を示せなかった。
◇アベノミクスの点検が要る
 新興国の景気減速や英国の欧州連合(EU)離脱決定などで世界経済が不安定化している。安倍首相は「エンジンを最大限ふかす」というが、この方向が適切なのか、点検が必要だろう。
 民進、共産、社民、生活の4党は32ある改選1人区で統一候補を立てたが、共闘の効果は限られていた。改憲や安保関連法などの重要テーマで国民の支持を取り戻そうと図ったが、与党との対立軸を明確に示せなかった。戦略の立て直しが求められる。
 おおさか維新の会は大阪副首都構想を訴え、関西を中心に議席を伸ばした。ただ、アベノミクスにほぼ賛同し、改憲にも前向きとあっては、野党というより、与党の補完勢力と考えるべきだろう。
 地元の京都と滋賀でも自民が勝利した。滋賀では自民新人が、野党統一候補の民進現職を破った。改選2人区の京都では、自民と民進が議席を分け合った。
◇巨大与党の監視が不可欠
 今後、注目されるのは憲法改正だ。
 あと2年あまりは国政選挙がない可能性があるが、衆参で圧倒的多数を得た安倍自民に国民は全権を委ねた訳ではない。
 安倍首相は年頭会見で、憲法改正を参院選の争点にすると明言したが、実際の選挙戦では話題にするのを避けてきた。出口調査では「安倍晋三首相の下での憲法改正について」の問いに対し、反対が50・0%に達し、賛成は34・6%にとどまった。
 安倍首相はこれまで、選挙戦では経済政策で一点突破を狙い、大勝すると、論点にあがっていなかった特定秘密保護法や安全保障関連法の成立に突き進む手法を繰り返してきた。三度目は許されない。
 自民の谷垣禎一幹事長が「改憲が支持されたと受け止めるか」と聞かれ、「すぐにそのような受け止めはしていない」と話したのは当然のことだ。改憲を目指すというのなら、具体的な条項を示し、改めて民意を問わなければならない。
 環太平洋連携協定(TPP)や原発政策についても議論が低調だったのは残念だ。国会でしっかり議論してほしい。
 与党大勝の流れの中、沖縄で自民の現職閣僚が落選したのは注目に値する。政府は、米軍基地問題で高まる沖縄県民の怒りに誠実に向き合う必要がある。原発事故で揺れる福島でも現職閣僚が落選した。
 今回の選挙は、18歳選挙権で行われた初の国政選挙だった。少子高齢化が進み、投票率が高い年配層に手厚い「シルバー民主主義」が問題になる中、未来を担う若者たちの政治参加を広げることは不可欠だ。
 選挙が終わっても、政治への関心を持ち続け、巨大与党が「数の力」で押し切る暴挙に出ないか、注視したい。
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神戸新聞 2016/07/11
社説:改憲勢力3分の2/政権への白紙委任ではない


 遠くない将来、この選挙が戦後日本の転換点だったと振り返る日がくるのではないか。
 参院選が投開票され、与党は改選過半数を上回った。一部野党を加えた改憲勢力は全議席の3分の2を超えた。兵庫選挙区(改選3)は自民、公明、おおさか維新の改憲勢力が独占した。戦後初めて改憲案の国会発議要件が整う可能性がある。
 多くの人は「そんなことは求めていない」と言うかもしれない。首相や与党が訴えたのは、アベノミクスの実績や社会保障の充実だったではないか、と。野党は批判ばかりで具体的な選択肢を示していない、と。
 与野党の非難合戦ばかりが目立った選挙戦で与党が勝利したのは、消去法の選択ともいえる。
 しかし、改憲は安倍晋三首相の悲願である。これまで以上に議論が加速し、現実味を帯びることになる。私たちは選挙が終わっても、真剣に考え、問い続けねばならない。
       ◇
 何が選挙の争点だったのか。
 安倍首相が公示前に「国民に信を問う」と表明したのは、2017年4月に予定していた消費税増税の2年半延期と、過去3年半のアベノミクスの評価についてだった。
 首相は、14年12月の衆院選では「再延期はしない」と断言し、増税できる経済環境をつくり出す、として与党で3分の2の議席を獲得した。少子高齢化の中で社会保障を維持するため、増税はやむを得ないと覚悟した国民も多かったのではないか。
 先送りは公約違反との指摘に対し、首相は「新しい判断」の了解を得たい、という論法にすり替えた。
 野党はアベノミクス批判を展開したが、増税を見送る主張は同じで、有効な選択肢を示せなかった。その責任も重い。
■罪深い先送り政治
 その結果、暮らしの安心は一層不透明になった。医療、介護、年金、子育ての財源をどう賄うのかは曖昧なままだ。20年度の財政健全化目標達成は厳しさを増す。
 何より問題なのは、自民、民主、公明による3党合意の核心だった「消費税は政局の材料としない」という約束が葬り去られた点だ。
 新たな増税時期とされた19年10月までに、また国政選挙がある。今回の理屈が通るのであれば、時の首相が選挙に不利な消費税増税を約束通り実施する保証はない。負担を先送りする政治が続く状況を生んだだけでも安倍首相の責任は重大だ。
 ツケは将来世代に回される。
 選挙権年齢の引き下げで18、19歳が初めて参加した歴史的な選挙だったが、将来に備えて負担の分かち合いを訴えた政党は野党を含めて見当たらなかった。若者の問題意識や不安は行き場をなくした。財源の裏付けもなく、バラ色の公約を並べる選挙の在り方に、大人たちも見切りをつけねばならない。
 公約違反と批判され、将来世代の不安を高めてでも、安倍首相が手にしたかったものは何か。やはり、政権を意のままに動かす「数の力」だと考えざるを得ない。
■数の力に歯止めを
 集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更や安全保障関連法成立を巡って首相は、どんなに違憲の批判がやまなくても正面から国民の審判を仰ごうとしなかった。改憲については、年明けから「参院選で訴える」「任期中に成し遂げたい」と意欲的な発言を繰り返していたが、選挙が近づくと具体的な言及を避けた。
 選挙で本音は語らず、多数を得た後は「信任された」とばかりに十分な議論もなく押し通す。安倍首相が憲法改正を巡ってもこの手法を繰り返さないか、注視する必要がある。
 安倍首相は選挙結果について「アベノミクス加速への期待が表れた」とし、「憲法改正は国会の憲法審査会で議論される」と述べた。衆参両院の審査会も国会の勢力が反映される。数がそろったからといって、少数意見に耳を傾け、丁寧に進める姿勢を忘れてはならない。
 社会保障の財源確保や雇用の安定など国民が切実に求める課題の解決にこそ政治の力を注ぐべきだ。
 野党は安倍政権での憲法改正に反対し、安保法の廃止を訴えて共闘した。十分に功を奏したとはいえないが、政権批判の1票を託した有権者の期待に応える責任がある。
 国会審議でも共闘を実現し、憲法だけでなく日本が直面する課題に選択肢を示して「一強政治」の歯止めにならねばならない。
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中国新聞 2016/7/11
社説:改憲勢力3分の2 「政権信任」とおごるな


 きのう投開票された参院選の結果、自民党と公明党、おおさか維新の会など憲法改正に賛同する勢力が衆院に続き、国会発議に必要な3分の2以上に達した。日本政治にとって、大きな分岐点となるかもしれない。
 安倍晋三首相は自らの任期中での憲法改正に意欲を見せ、この秋の臨時国会から衆参両院の憲法審査会で、与野党で憲法改正の具体的な議論が始まることを期待する発言をしていた。
 ことし公布70年。初の憲法改正の是非を問う国民投票が現実味を帯びるのは間違いない。それだけ重要な選挙が、低投票率にとどまったのは残念だ。
 選挙戦では与党として憲法改正を争点化せず、真正面から有権者に問うことをしなかった。首相自身も、ほとんど口にしなかった。代わりに訴えたのは自らの経済政策アベノミクスを継続するかどうかである。
 自民党の谷垣禎一幹事長は与党勝利を受け、「改憲が支持されたと受け止めるのは困難」との認識を示した。その通りだ。有権者も改憲に「白紙委任」したわけでない。これで信任を得たとばかりに、安倍政権が改憲勢力だけの理屈で強引に前に進めることは許されない。
 思えば過去2回の国政選挙もアベノミクスを前面に出した。ところが選挙後に待っていたのは、特定秘密保護法や安全保障関連法制の成立だ。選挙に勝ったとたん、国民の多くが不安を感じる政策を強行する。同じ手法を繰り返していいのか。
 与党からは参院の「合区」解消や大災害時に国会議員の任期延長を認める項目の新設など改憲の具体論が出ている。まずは政権与党として憲法のどこをどう変えるのか、具体的かつ明確に国民に示す責任があろう。
 仮に憲法審査会で議論を進めるとしても幅広く賛同を得ることが重要になる。改憲に反対する党の意見も十分に反映すべきであり、平和主義の根幹となる憲法9条はなおさらのことだ。
 首相に求められるのは数の力におごらない謙虚な政権運営である。憲法に限らない。アベノミクスにしても有権者が全面的な信頼を寄せたというより、政治の安定を求める消極的支持という側面もあるのではないか。
 焦点の消費増税延期の財源を具体的にどうするかも結局、論戦が深まらなかった。不安に感じた国民も多いに違いない。
 政権は選挙後にデフレ脱却を後押しする経済対策をとりまとめる方針だが、英国の欧州連合(EU)離脱問題や円高などで経済の先行きは不透明感を増す。このままでは税収の下振れを招いて大型の補正予算を組むには財源不足となろう。経済財政が難局を迎える中で、選挙で寄せられた国民の声にしっかり向き合っていく必要がある。
 むろん野党の責任も大きい。与党圧勝の背景には野党側の力不足がある。32の1人区で進めた民進党や共産党など4党の共闘も限界があり、政権批判を繰り返すだけでは有権者の共感は思ったほど広がらなかった。
 とりわけ野党第1党の民進党は、改選議席から大きく後退した。選挙結果を厳しく検証し、抜本的な立て直しが急務だ。
 野党が存在感のないままでは議会制民主主義は正しく機能しない。「自民1強」の色合いがさらに鮮明になる国会で果たす役割はこれまで以上に重い。
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=2016/07/11付 西日本新聞朝刊=
社説:岐路に立つ国政 今こそ「立憲」を見据えて


2016年07月11日 10時36分
 国政の針路を方向付ける上で、参院選の結果がこれほど重みを帯びたことがあっただろうか。
 第24回参院選は与党の自民、公明両党が制した。安倍晋三首相率いる自民は27年ぶりの衆参両院での単独過半数確保に迫り、政権基盤を固めた。加えて、両党を軸とした「改憲勢力」が衆院に続いて参院で3分の2の議席を得た。
 この先に何が待ち受けているのか。日本の戦後政治が大きな分岐点に差し掛かった中、私たちはこれまで以上に国政の行方を注視しなければなるまい。
 ●「異次元」の領域へ
 国民の多くが「自民1強」の政治や首相の経済政策「アベノミクス」を支持したのか。おそらく、懐疑や不安も入り交じった民意の表れであろう。
 野党側の非力も手伝って、選択に迷った人も多かったはずだ。投票率が伸び悩んだことも、有権者の逡巡(しゅんじゅん)を物語る。その意味では、民意と選挙結果の間に「乖離(かいり)」が生じていることも否めまい。
 それでも長期政権を視野に憲法改正を目指す首相からみれば、今回の結果は大きな前進であろう。
 改憲には、衆参両院で3分の2以上の議員による発議が必要だ。衆院では既に自公がそれを上回る議席数を確保した中、参院でもその条件を満たす環境が生まれたことで改憲論議は加速しそうだ。
 かつては憲法の在り方を問う国民投票の手続きを定めた法律がなく、改憲の現実味は薄かった。今ではそれが制定され、法的な不備も解消されている。「国政の分岐点」という意味はそこにある。
 参院では1989年に自民が過半数を割って以来、単独で過半数を制する政党がなく、連立で多数を確保して政権の維持を図る各党の熾烈(しれつ)な攻防が続いてきた。
 連立によって水俣病やハンセン病の政治解決が図られるなど、柔軟な施策が生まれた一方、衆参で第1党が異なる「ねじれ」などが政治の混乱、停滞を招いてきた。
 参院では今後、そうした構図よりも自民主導で改憲の道を探る綱引きが活発化するとみられ、国政は今までにない「異次元」の領域に入ったとみるべきであろう。
 無論、憲法の在り方を最終的に判断するのは有権者である。国民の多くが憲法に関心を持ち、熟考を重ねる。そのこと自体を否定するつもりはない。むしろ不透明な国内外情勢を見極めつつ、私たちが目指す国の姿をどう描くか。大いに議論すべき局面である。
 国政選挙では与党こそが憲法を論じ、改憲を目指すのであれば具体的な方向性を明示すべきだろう。問題は、それを封印する首相の政治手法である。選挙では公約していない「解釈改憲」に走り、集団的自衛権行使を容認する安全保障法制を成立させた。
 今回の参院選でも、首相は国民の大多数が反対はしない「消費税増税の再延期」を争点に掲げ、憲法については口を閉ざした。憲法を争点に掲げれば、安保法への批判が再燃し、選挙戦には不利-という読みが働いたのではないか。
 ●「お墨付き」与えず
 各種世論調査では、安倍内閣を支持しつつも、現政権下での改憲には反対する声が目立つ。これも「乖離」である。そして、今回の選挙結果が改憲の「お墨付き」を意味しないことは自明であろう。
 首相は秋の臨時国会で大型補正予算を組むとともに、衆参両院の憲法審査会を始動させ、改憲論議を本格化させたい意向のようだ。
 しかし「社会保障と税の一体改革」の理念が崩れた中、政権が掲げる諸改革の恒久財源をいかに確保するのか。地方創生も含めて懸案解決の国家的戦略を再構築する責務を果たすことが先決である。
 国民の多くは政治に安定感を求めつつ、今の政権には不安も覚えている。「18歳選挙権」がスタートしながら若者の政治離れが止まらない現実も含め、首相は民意の実相を謙虚に見つめてほしい。
 戦後70年の昨年は、国民の反対や懸念を残したまま安保法が制定された。今年は憲法公布70年の節目に当たる。いみじくも、そこで生まれた新たな政治状況である。
 国政は「立憲」の名にふさわしく機能しているか。格差や貧困が叫ばれる日本で、憲法の精神はないがしろにされていないか。私たち国民は目を凝らし、政治を監視することを怠ってはならない。そのことを改めて心に刻みたい。
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