2016-07-15(Fri)

政府の経済対策 土建国家に戻るのか 

公共事業をふかすのか 財政の悪化が懸念される 大盤振る舞い懸念拭えず

<各紙社説>
毎日新聞)政府の経済対策 公共事業をふかすのか(7/15)
信濃毎日新聞)経済対策策定 土建国家に戻るのか
琉球新報)経済対策 格差是正、少子化に注力を(7/14)
朝日新聞)経済対策 また「金額ありき」か (7/13)

東京新聞)経済対策指示 エジソンの言にならえ(7/13)
東奥日報)ツケ残さない経済運営を/アベノミクス加速(7/13)
神戸新聞)総合経済対策/財政の悪化が懸念される(7/13)
読売新聞)安倍政権再始動 「未来への投資」的確に進めよ(7/12)
山陽新聞 政府の経済対策 大盤振る舞い懸念拭えず(7/12)




以下引用



毎日新聞2016年7月15日 東京朝刊
社説:政府経済対策 公共事業をふかすのか


 参院選勝利を受け、安倍晋三首相は経済対策の策定を指示した。補正予算案を秋の臨時国会に提出する。
 事業規模は10兆円超と大型対策にする方針だ。首相は「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」と強調してきたが、規模優先で旧来型の公共事業が目立つ。
 まず疑問なのは対策の必要性だ。
 首相は「世界経済の不透明感が増しており、内需を下支えする必要がある」と説明する。英国の欧州連合(EU)離脱問題が大幅な株安・円高を招いたことが背景にある。
 だが、市場は徐々に落ち着きを取り戻している。リーマン・ショックのような危機にも発展していない。
 参院選で首相は「有効求人倍率が初めて全都道府県で1倍を超えた」とアベノミクスの成果を訴えた。景気認識が矛盾するのではないか。
 政府が過去3年間に行った経済対策(補正予算)の規模は3兆〜5兆円程度だ。景気が大きく悪化したわけでもないのに、一気に膨らませるのはなぜか。説得力に乏しい。
 首相は対策の狙いを「未来の成長の種に大胆に投資する」と語り、子育て支援など1億総活躍社会実現への施策も盛り込むよう指示した。
 少子化対策が進めば、国内市場の縮小を食い止める効果も期待できる。ただ、対策の多くは公共事業だ。
 訪日客拡大へ大型船用の港湾を整備する。農産物の輸出基地を全国に設置する。国が借りた資金を民間事業などに投じる財政投融資(財投)も活用し、リニア中央新幹線の大阪延伸を前倒しする。整備新幹線建設も加速する。どこまで成長に結びつくかは、はっきりしない。
 安倍政権のこれまでの経済対策は、国土強靱(きょうじん)化をうたった公共事業や、商品券が発行できる自治体向け交付金が柱だった。だが、景気の一時的押し上げにとどまった。今回も成長戦略に名を借りたばらまきに終わる恐れがある。
 財源も乏しく、政府は国債を追加発行する方針だ。一時的な景気刺激にとどまれば、借金が積み上がるだけだ。消費増税も先送りし、新たな借金を抱える余裕はないはずだ。
 財投の活用も財源不足のためだ。だが、財投は、民間金融機関が手を出さない無駄な事業に国の資金をつぎ込んでしまう恐れがある。規模を縮小する改革が行われてきたが、拡大すれば、改革に逆行する。
 参院選で政権基盤は強化された。目先の景気てこ入れではなく、日本経済を息の長い成長に導くような政策に腰を据えて取り組む好機だ。
 少子化対策もその一つだが、公共事業に大盤振る舞いすれば中途半端になりかねない。「未来への投資」が必要なのはこの分野のはずだ。
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信濃毎日新聞 2016年7月14日
社説:経済対策策定 土建国家に戻るのか


 安倍晋三政権の経済政策アベノミクスの限界を、改めて浮き彫りにした経済対策だ。
 首相が関係閣僚に月内に策定するよう指示した。公共事業を柱に据えた内需の下支え策を柱に、中小企業の資金繰り対策や防災対応強化などを打ち出している。事業規模は10兆円を超えるという。
 大型船が入れる港湾や農産物輸出拠点の整備、地震や豪雨に備えた公共事業が並ぶ。いずれも土木、建設事業に税金を投入する対策となっている。
 経済対策を公共事業に頼る旧来の政策に回帰したといえる。公共事業に大量に資金を供給しても一時的な刺激策にしかならない。建設、土木業界では人手不足が続く。政策の即効性に疑問も残る。
 過去の政権が経済対策として繰り返してきた公共投資は景気浮揚に十分つながらず、財政悪化を招いた。今回も建設国債を追加発行し財源を補う考えを示している。同じ轍(てつ)を踏むつもりなのか。
 2020年度に基礎的財政収支を黒字にする財政健全化目標は堅持するという。消費税増税の延期に続いて国債を追加発行し、どう達成するのか。説得力はない。
 国の信用力で借りた資金を民間に貸し出す財政投融資を積極的に活用する方針にも懸念がある。
 返済される前提のため、基礎的財政収支に影響しない。日銀のマイナス金利政策で資金も調達しやすい。財政悪化の懸念がある中では活用しやすい手法だろう。
 融資先として、リニア中央新幹線の大阪延伸前倒しのほか、円高の影響を受ける中小企業が挙がっている。
 中小向け融資は、貸出金が伸び悩む民間金融機関の融資機会を奪う心配がある。公共的な資金で民業を圧迫しては本末転倒だ。かといって民間が融資しない信用力の低い企業を対象にすると、競争力の乏しい企業の延命につながる。貸し倒れリスクも高まる。財投の資金は国債の一種の財投債で賄うことも忘れてはならない。
 政府が安易に国債の追加発行に踏み切るのは、日銀が償還時の損失を容認しつつ、大量に国債の購入を続けているからだ。日銀が保有する国債は発行残高の3分の1を占めているのに、大規模金融緩和の出口は見えない。現状はすでに国の財政を日銀が支える財政ファイナンスに近い。
 日銀はいつまでも現在のペースで国債を購入できない。政府が財政規律を軽んじると、日本経済の国際的な信認が低下し、国債価格暴落と金利急騰を招きかねない。
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琉球新報 2016年7月14日 06:01
<社説>経済対策 格差是正、少子化に注力を


 安倍晋三首相は、石原伸晃経済再生担当相と麻生太郎財務相に経済対策の月内策定を指示した。
 事業規模は10兆円を超える見通しだが、財源と見込む税収の伸びは心もとない。財源不足を補うため、4年ぶりに建設国債を追加発行する。財政規律が緩み一層の財政悪化につながることを懸念する。
 むしろ労働者全体の約4割を占める非正規労働者と正規社員の経済格差の是正、少子化対策など中長期的な課題に本腰を入れて取り組むべきだ。
 首相はアベノミクスが参院選で信任を得たと自負している。しかし、2012年12月の第2次安倍政権発足後、13~15年の国内総生産(GDP)の実質成長率は0・6%にとどまる。実質値は真の実力を示すとされる。日本経済の潜在成長率は0%台だ。日本のデフレ脱却は遠く、政府は16年度の実質経済成長率見通しを0・9%と従来予想のほぼ半分に引き下げる方針だ。
 今回「アベノミクスを再加速」するために首相が示した経済対策の主要項目は、港湾や輸出拠点の整備、復興、防災関連の公共事業が中心だ。アベノミクスというより自民党の旧来型に戻った印象だ。建設現場は人手不足に陥っており、公共事業が期待するほどの経済効果を上げられるか疑問である。
 今やアベノミクスが目指した円高の是正は崩れかけている。英国の欧州連合(EU)離脱問題やテロの頻発などで急速に円高が進む。
 製造業の大企業が16年度に想定した為替レートは1ドル=111円40銭だ。13日は1ドル=103円台で推移し、企業予想を上回る円高水準となっている。ドル円相場が1円、円高に振れると、製造業の大企業は2156億円減益になるとの試算もある。15年度の法人税収は6年ぶりに減収し、16年度も厳しい。経済対策を賄うほどの税収増は期待できない。
 街角の景気実感を示す6月の現状判断指数は、景気後退期だった12年11月以来、3年7カ月ぶりの低水準となった。円高株安の進行で家計や企業に不安が広がっている。政府は中小企業の資金繰り支援を打ち出しているが、財源はどうするのか。
 今回の経済対策で、政府は公共事業に充てる建設国債を追加発行する方針だ。しかし、財源が不明確なまま借金を重ねて将来につけを回すのは無責任だ。
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朝日新聞 2016年7月13日(水)付
社説:経済対策 また「金額ありき」か


 参院選の勝利を受け、安倍首相が経済対策とその柱となる補正予算案の検討を指示した。
 キーワードは「未来への投資」だという。保育や介護の受け皿整備、保育士や介護福祉士への支援、無利子、さらには給付型奨学金の検討……。首相があげた項目は、いずれも待ったなしの課題だろう。
 しかし、今回の対策の主眼は別のところにある。「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」「内需を下支えすることができる、総合的かつ大胆な対策」。首相が繰り返す言葉からも、景気対策のための財政出動であることは明らかだ。
 政府・与党では「総額10兆円超」が相場になっている。金額ありきの旧来型である。
 新興国経済が陰り、英国の欧州連合(EU)からの離脱ショックも重なった。だが主要国の中央銀行の目配りもあり、リーマン・ショック時のような経済の落ち込みは生じていない。
 日本経済にとっての懸案は円高基調だろう。上場企業全体では減益が予想され、それが給与の抑制を通じて個人消費の足を引っ張りかねない。
 必要なのは、為替相場に左右されにくい企業体質へ改革を促しつつ、利益をため込みがちな企業から家計へとおカネが回る仕組みを作っていくことだ。
 経済の構造を変えずに企業向けの補助金や融資を膨らませ、消費を喚起しようと家庭に商品券を配っても、一時的な下支えやカンフル剤にしかならず、財政悪化を招きかねない。
 今回の経済対策でとりわけ疑問を禁じ得ないのは、官民あげての土木・建設事業でおカネを流し込もうとしている点だ。
 海外からのクルーズ船受け入れのための港湾整備や農林水産物の輸出基地建設、防災対策などが挙がるが、事業規模が大きいのは財政投融資(財投)を使ったリニア新幹線や整備新幹線の建設前倒しだ。
 財投による貸し付けはいずれ返済される。税金を使う一般の公共事業とは違い、政府の財政再建計画の枠外だ。空前の低金利環境を生かさない手はない――。そんな考えのようだが、財投資金も国債を発行して調達することを忘れてはなるまい。
 かつて「第2の予算」と言われるほどに肥大化し、01年度の財投改革で「民業補完」を掲げて縮小に努めてきた歩みを逆行させようというのだろうか。
 アベノミクスの危うさは財政規律への意識の乏しさにある。
 消費増税の再延期に続き、今度は歳出で大盤振る舞いなのか。再考を求める。
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東京新聞 2016年7月13日
【社説】経済対策指示 エジソンの言にならえ


 参院選を受け、安倍晋三首相が大型の経済対策を担当相に指示した。経済の現状は政権担当前よりも悪化しており、効果がみえないアベノミクスをこれまで以上にふかそうという考え方は危うい。
 発明王エジソンはあまたの「失敗」を繰り返したが、そのたびにこう言ったという。
 「私は失敗したのではない。うまくいかない方法を見つけたという意味で、成功したのだ」と。
 アベノミクスは参院選で失敗か成功かが論争となり、首相は「成功しているが道半ばだ」と言った。しかし、異次元の金融緩和でも「二年で2%」の物価上昇は達成できず、三年過ぎてもデフレから脱却できないままではアベノミクスの失敗は明白である。
 ただ、金融政策で物価を上げることはできないと実証した意味では「成功」といえる。リフレ派の主張は間違っていたことがわかったのである。
 首相は選挙戦を通じ、有効求人倍率が全都道府県で一倍を超え、賃金は二年連続で上昇したことをアベノミクスの成果と誇った。
 だが、求人の改善は人手不足を反映した可能性が高く、賃金も物価を加味した実質賃金でみればマイナスが続いている。大企業や富裕層など一部を除けば、この所得が増えないことが消費を冷やし、経済低迷の最大の要因である。
 異次元の金融緩和は限界論がささやかれ、三年間続いた円安・株高の流れは今年に入って逆回転し、アベノミクス開始時の水準近くに戻った。そこで今度は財政政策を最大限にふかす構えである。
 早くも事業規模で十兆円超の大型対策が取りざたされている。中身より規模が先にありきという旧来の自民党的発想が問題だ。円高で企業収益は悪化し税収が期待できないのに財源はどうするのか。
 伊勢志摩サミット前の欧州歴訪で独・英から「財政は短期的な景気浮揚効果しか望めず、成長戦略こそ進めるべきだ」と釘(くぎ)を刺されたのではなかったか。目先の景気よりも経済の実力を高めることが大事なのだ。それには再分配で格差を縮め、消費を担う中間層を厚くする。社会保障の再構築も待ったなしだ。
 「失敗は成功の母」ととらえたエジソンだから成功を収めた。首相もアベノミクスの「失敗」から学ぶべきだ。選挙戦で約束した子育て支援など分配政策への積極投資を必ず実行する。アベノミクスを加速し、傷口をさらに広げることなど許される状況にはない。
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東奥日報 2016年7月13日(水)
社説:ツケ残さない経済運営を/アベノミクス加速


 参院選の与党勝利により、安倍晋三首相はこれまでの経済運営に支持を得たとして、アベノミクスを一段と加速する構えだ。しかし国民が気を付けなければならないのは、選挙中にほとんど語られることのなかったアベノミクスの「負の面」であろう。例えば、1千兆円余りに膨らんだ日本の債務残高の問題だ。
 アベノミクスの加速が行き過ぎれば財政問題などが深刻化して、後世に取り返しのつかないツケを残す恐れがある。若い世代や将来世代に対する責任として、安倍政権による今後の経済運営に目を光らせなければならない。
 安倍首相は当面、秋をめどと表明した経済対策の策定に力を注ぐ見通しで、関係閣僚に指示した。与党などからは早くも事業規模で10兆円以上の対策を求める声が出ており、補正予算を組んで手当てしようとしている。
 だが、その前にまず問題とすべきなのが対策の必要性であろう。政府、日銀ともに足元の景気について「緩やかな回復を続けている」との判断を示しているためで、そこからはとても追加の景気対策が不可欠との切迫感は読み取れないのである。
 英国の国民投票による欧州連合(EU)からの離脱決定や、円高傾向など経済の先行きと企業業績への懸念材料があるのは確かだ。しかし景気が腰折れしたり、後退局面入りしたりする状況ではなく、それをもって経済対策を打つには説得力に欠ける。
 そもそも安倍首相が対策を最初に口にしたのは英国のEU離脱が決まる前であり、消費税増税を再延期する理由として景気の弱さを持ち出したからではなかったか。最近の不安定な金融・株式市場を経済対策の理由とするのは後付けであろう。増税先送りと合わせた参院選目当てだったのではないか。
 経済対策には財源の問題もある。安倍首相が「アベノミクスの果実」と自慢していた税収が2015年度は見積もりに届かず、対策へ回せるお金が今のところ2500億円ほどしかないからだ。
 対策の規模を大きくしようと、安倍政権は財源の不足分を賄う追加の借金に手を出しかねない。公共事業のための建設国債や民間企業などへ資金を貸す財政投融資のための財投債の発行が想定される。しかし、それがツケやリスクの将来への先送りにつながることを忘れてはならない。
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神戸新聞 2016/07/13
社説:総合経済対策/財政の悪化が懸念される


 安倍晋三首相は「アベノミクスの加速」を掲げ、総合的な経済対策を月内にとりまとめるよう関係閣僚に指示した。10兆円を超える規模で、農業や港湾施設など地方のインフラ整備が柱となる。2016年度第2次補正予算案を、秋の臨時国会で成立させる方針だ。
 アベノミクスの大規模金融緩和による円安・株高で企業収益は改善したが、デフレ脱却への期待感は薄れ、国内景気は足踏み状態にある。中国経済の減速や英国の欧州連合(EU)離脱決定などで、世界経済も不安定化している。
 安倍政権は、こうしたリスクに対応するため、手詰まり感のある金融政策から財政政策に軸足を移した格好だ。財政出動により短期的には景気の下支え効果が期待できる。だがデフレ克服の鍵を握る個人消費の回復につながるかは疑問だろう。
 経済対策は「未来の成長に投資」がキーワードとなる。具体策として、環太平洋連携協定(TPP)をにらんだ農林水産物の輸出拠点の全国展開や、大型クルーズ船に対応する港湾など訪日観光客の受け入れ施設の増強、防災関連の公共事業などを挙げる。民間企業に融資する財政投融資を使い、リニア中央新幹線の大阪延伸の最大8年前倒しや整備新幹線の建設加速も掲げる。
 しかし、人口減少や地方からの人口流出が加速する中、全国に港湾や輸出拠点を整備し新幹線網を張り巡らせて、どれだけの需要があるだろう。過去の経済対策でも利用されないハコモノが増え、地元自治体や住民の負担になっている例は少なくない。実施にあたっては、経済効果を慎重に見極める必要がある。
 一方で、首相は年金受給に必要な加入期間の短縮や無利子奨学金の拡充など社会保障の充実策にも言及した。分配政策の見直しは重要な課題だが、財源対策が不透明なことが気掛かりだ。
 決算剰余金や国債の利払いの軽減分を充てるというが、建設国債や新たな国債の発行が必要になるとみられる。財政悪化によってかえって国民の将来不安が増し、消費の減退につながる懸念がある。
 中長期的に日本経済が成長するには、規制緩和などの構造改革が欠かせない。安倍政権は今度こそ、アベノミクスの第3の矢である成長戦略に本腰を入れるべきだ。
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読売新聞 2016年07月12日 06時00分
社説:安倍政権再始動 「未来への投資」的確に進めよ


 ◆憲法改正は幅広い合意を前提に◆
 参院選で得た国民の信任には、デフレ脱却の実現という結果で応えることが求められよう。
 安倍首相が、参院選での与党大勝を踏まえて記者会見した。経済政策アベノミクスを強化するため、12日に経済対策の策定を石原経済再生相に指示する考えを表明した。
 「未来への投資」をキーワードに、「地方が誇る魅力ある農産物や観光資源を世界にどんどん売り込む」とも語った。社会資本や交通網の整備、防災、子育て・介護支援なども重視するという。
 ◆経済対策の中身を問う
 英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴い、世界経済の先行きには不透明感が漂う。円高の進行や個人消費の低迷などもあり、アベノミクスの前途は楽観できない。
 景気を下支えする補正予算を編成し、秋の臨時国会で成立させることは理解できる。
 与党内では、10兆円超の経済対策を求める声が出ている。だが、肝心なのは、対策の規模ではなく、中身である。
 「未来への投資」を名目にした旧来型公共事業などのバラマキは、許されない。費用対効果をきちんと吟味し、民間投資の呼び水となるような財政出動を優先すべきだ。
 安易な国債発行に頼らずに、経済対策の財源をいかに確保するかも課題となろう。
 来年4月に予定された消費税率10%への引き上げの2年半延期に伴い、社会保障・税一体改革の行方が危ぶまれている。
 財源不足が避けられない社会保障関連の支出は、優先順位をつけて切り詰める必要がある。
 中長期的な財政健全化の工程表についても、目標達成が困難になった以上、いつまでも見直しを避け続けるべきではあるまい。
 首相は、「参院選での約束を実行するための強力な新たな布陣を作りたい」と述べた。来月上旬にも内閣改造・自民党役員人事に踏み切る意向とされる。
 ◆TPP承認を急ぎたい
 最優先すべきデフレ脱却をはじめ、内外の様々な政策課題に、的確かつ迅速に対応できる体制を構築することが大切である。
 秋の臨時国会では、通常国会で継続審議となった環太平洋経済連携協定(TPP)を確実に承認せねばならない。
 TPPは、アジアの活力を取り込む成長戦略の柱だ。参院選で自民党が東北地方で苦戦するなど、農業関係者には慎重論が強いが、並行して農業の国際競争力を強化することで、理解を広げたい。
 米国では、日本以上に反対が根強い。年内に批准できなければ、TPPが漂流しかねない。オバマ政権を後押しするためにも、日本は批准を急がねばなるまい。
 3月施行の安全保障関連法をどう運用するかも、安倍政権の重要課題だ。南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に従事する陸上自衛隊部隊への「駆けつけ警護」任務の付与などが想定される。
 ◆辺野古移設は堅持せよ
 民進、共産両党などは参院選で安保関連法の廃止を主張したが、支持は広がらなかった。北朝鮮の危険な軍事挑発や中国の海洋進出が続く中、米国などとの連携を強化する重要性は一段と高まっている。
 沖縄で島尻沖縄相が落選したことで、沖縄県の翁長雄志知事らは、米軍普天間飛行場の辺野古移設への反対を強める構えを見せる。
 だが、現実的な代替案がない中、移設作業を遅らせることは普天間飛行場の長期固定化や、移設問題の迷走につながる。政府は、辺野古移設の方針を堅持すべきだ。
 安倍首相は、自民党憲法改正草案について「そのまま通るとは考えていない。我が党の案をベースに、3分の2を構築するのが、まさに政治の技術だ」と語った。
 与党、おおさか維新の会、無所属などの合計で、改正発議に必要な参院の3分の2を超えたが、依然として、課題は少なくない。
 「加憲」の立場の公明党は、改正論議を拙速に進めることに慎重姿勢を強めている。
 具体的な改正項目に関する集約も進んでいない。どの項目を優先するのか、秋の臨時国会から、衆参の憲法審査会で各党が冷静に議論する必要がある。
 民進党も含め、より多くの政党の合意を形成するには、自民党の柔軟な対応が欠かせない。
 参院選の「合区」には地方の反発が強い。各都道府県から最低1人を選出する制度の導入は検討に値しよう。国政選が実施できないほどの大規模災害時に国会議員の任期を暫定的に延長する案も、積極的に論議してはどうか。
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山陽新聞(2016年07月12日 07時26分 更新)
社説:政府の経済対策 大盤振る舞い懸念拭えず


 消費増税を延期して財源が限られる中、財政規律を保てるのか。懸念が拭えない。
 参院選の結果を受けたきのうの記者会見で、安倍晋三首相が観光振興も防災対策も社会保障の充実もと政策を列挙した。
 首相は、参院選での与党勝利で政権の経済政策「アベノミクス」が「一層加速せよとの力強い信任をいただいた」と強調し、デフレ脱却に向けた総合的な経済対策の策定に着手する考えを改めて示した。国が民間に資金を貸し出す「財政投融資」を増やし、事業規模は10兆円超とする方向だ。2016年度第2次補正予算案を編成し、財源不足を補うため4年ぶりに国債の追加発行も検討する。
 「未来への投資」をキーワードに「21世紀型のインフラ」を整備するという触れ込みだ。輸出1兆円目標の早期実現に向けて農林水産物や食料の輸出基地、輸出対応施設を全国につくる。外国人観光客4千万人時代を目指し、クルーズ船を受け入れる港湾施設の整備など地方の観光施設を抜本的に増強する。旅館やホテルの改修、建設など民間投資も喚起する。
 リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年間前倒しすることや整備新幹線の建設加速、熊本地震を受けた防災対策、非正規労働者と正社員の賃金格差を縮小させる「同一労働同一賃金」などの実現を図る意欲も示した。
 観光など地元の期待は高まろう。とはいえ、かつての公共事業による景気刺激のような大盤振る舞いにも思える。一時的な効果はあっても、つけが子ども世代に回る恐れはないのか。それぞれの効果を精査することが不可欠だ。
 特に気掛かりなのは社会保障の行方である。首相は待機児童の解消や介護離職ゼロの実現に向け保育、介護の受け皿整備、職員確保に優先的に取り組む姿勢を改めて示した。しかし、財源については触れておらず、調整の難航は避けられまい。
 消費増税を延期した6月の記者会見では、「社会保障と税の一体改革」で実現するはずだった医療や介護、年金、子育ての新たな充実策について「全て行うことはできない」と実施に影響が出ることを認めている。施策の優先順位を付け、財源確保に努めるとしたが、何ができて何を先送りするのかは、なお不透明といわざるを得ない。
 このうち、無年金の人を減らすため、年金受給に必要な加入期間を現行の25年から10年に短縮する対策についてはきのう、来年度からのスタートに向けて準備すると明言した。ただ、年300億円の財源が必要になる。
 一方で首相は基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する財政健全化の目標も堅持するとしている。増税延期でただでさえ達成は難しいとされる。放漫な財政運営になるなら、さらに実現は困難となろう。
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