2016-07-25(Mon)

リニア中央新幹線 公費の投入は話が違う

国家プロジェクト」化 採算や経済効果危ぶむ声も なし崩しの計画加速は危険だ

----国が財投債と呼ばれる国債を発行して約3兆円調達し、それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。
同社の負担が軽くなる結果、借金の残高が一定以下に減るまで待つ予定だった名古屋−大阪の着工を早められ、完成を現在の2045年から最大8年前倒しできるという。

----だが、ちょっと待てと言いたい。

そもそもリニア計画は、JR東海の「全額自己負担」を前提に国が認可したものだ。
民間企業の事業だったからこそ、JR東海は政治の介入を極力回避し、開業時期やルートなどを自分で決めることができた。
 
また、東京と大阪を結ぶリニアのルートはJR東日本や西日本の営業区域も通る。
整備新幹線のような公的資金による国家プロジェクトの位置づけであったら、JR東海単独の事業として認められただろうか。
 
建設が始まった今になって、やはり国が資金支援、というのは明らかな約束違反だ。
どうしても、というのなら、事業の採算性や国全体として見た費用対効果など、今からでも国民的議論を尽くすべきである。

----なぜここへきて公的資金投入なのだろう。

安倍政権は「世界危機を回避する」との名目で、総額20兆円超ともいう経済対策を打ち出そうとしている。
ただ、財政難で歳出の大幅拡大は困難だ。

そこで将来の返済が前提の財政投融資制度を使い、規模も膨らませようとした。
兆円単位の事業で、「未来への投資」とアピールできるリニアは好都合だったようだ。
 
----経済効果はといえば、資金の出し手が部分的に民間から国へ移るだけで、工事が創出されるものではない。
前倒しにより長期的な波及効果はあるだろうが、経済対策が狙う短期の景気刺激になるかは疑問だ。
 
----JR東海は、不安材料である将来の金利上昇リスクに備えることができ、リニアからの収入も前倒しで得られる。
 
だが、国民にとってリニアの意義は何か。
超高齢化、人口減少の日本に必要なのだろうか。
 
南アルプスを貫く総延長約25キロのトンネル工事など、経験のない難航が予想される。
過去の公共事業でみられたように工期が長引き費用が膨張する恐れもある。

追加支援を求められ国の負担が増加したり、予定通りに返済されずに国民負担が発生したりする可能性はないのか。
「もう後戻りできない」となる前に、徹底論議が求められる。
(毎日新聞)

----住民が認可取り消し訴訟を起こすなど批判や異論が相次いでいるリニア計画を加速させるため、ここまで肩入れする安倍政権のやり方は、危険すぎます。

リニア計画には環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」と警告する意見を出していますが、問題はなんら解消していません。
そのうえ、人口減少社会に入っている日本で、利用者数の将来見通しも不安視され、リニア事業の採算性そのものに疑問が投げかけられています。

南アルプスを巨大トンネルで貫く難工事については、費用の肥大化が懸念されています。
巨額な公的資金を貸し付けたリニア事業が行き詰まり、そのツケが国民の負担として押し付けられる―。
そんな危険が現実になりかねません。
(しんぶん赤旗)


<社説・主張>
毎日新聞)リニア新幹線 公費の投入は話が違う(7/25)
しんぶん赤旗)リニア延伸前倒し なし崩しの計画加速は危険だ(7/22)
-------------------------------
<報道記事>
ロイター)リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も(7/22)




以下引用



毎日新聞2016年7月25日 東京朝刊
社説:リニア新幹線 公費の投入は話が違う


 JR東海が建設中のリニア中央新幹線に、国の資金が投入される方向だ。政府は近くまとめる大規模経済対策の柱にリニア支援を据える。
 国が財投債と呼ばれる国債を発行して約3兆円調達し、それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。同社の負担が軽くなる結果、借金の残高が一定以下に減るまで待つ予定だった名古屋−大阪の着工を早められ、完成を現在の2045年から最大8年前倒しできるという。
 そう聞けば、結構な話だと思う人が多いかもしれない。早期開業は関西経済界も切望していた。
 だが、ちょっと待てと言いたい。
 そもそもリニア計画は、JR東海の「全額自己負担」を前提に国が認可したものだ。民間企業の事業だったからこそ、JR東海は政治の介入を極力回避し、開業時期やルートなどを自分で決めることができた。
 また、東京と大阪を結ぶリニアのルートはJR東日本や西日本の営業区域も通る。整備新幹線のような公的資金による国家プロジェクトの位置づけであったら、JR東海単独の事業として認められただろうか。
 建設が始まった今になって、やはり国が資金支援、というのは明らかな約束違反だ。どうしても、というのなら、事業の採算性や国全体として見た費用対効果など、今からでも国民的議論を尽くすべきである。
 それにしてもなぜここへきて公的資金投入なのだろう。
 安倍政権は「世界危機を回避する」との名目で、総額20兆円超ともいう経済対策を打ち出そうとしている。ただ、財政難で歳出の大幅拡大は困難だ。そこで将来の返済が前提の財政投融資制度を使い、規模も膨らませようとした。兆円単位の事業で、「未来への投資」とアピールできるリニアは好都合だったようだ。
 では経済効果はといえば、資金の出し手が部分的に民間から国へ移るだけで、工事が創出されるものではない。前倒しにより長期的な波及効果はあるだろうが、経済対策が狙う短期の景気刺激になるかは疑問だ。
 一方、JR東海は、不安材料である将来の金利上昇リスクに備えることができ、リニアからの収入も前倒しで得られる。
 だが、国民にとってリニアの意義は何か。超高齢化、人口減少の日本に必要なのだろうか。
 南アルプスを貫く総延長約25キロのトンネル工事など、経験のない難航が予想される。過去の公共事業でみられたように工期が長引き費用が膨張する恐れもある。追加支援を求められ国の負担が増加したり、予定通りに返済されずに国民負担が発生したりする可能性はないのか。
 「もう後戻りできない」となる前に、徹底論議が求められる。
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しんぶん赤旗 2016年7月22日(金)
主張:リニア延伸前倒し なし崩しの計画加速は危険だ


 安倍晋三政権が、JR東海がすすめるリニア中央新幹線の建設加速と、そのために同社に公的資金を低金利で貸し付けることを決め、具体案を検討しています。リニア計画は2027年に東京―名古屋で開業し、45年に大阪まで延伸する予定ですが、政府が資金面でテコ入れすることで大阪開業年を前倒しさせようというものです。リニア計画では自然・生活環境の破壊、採算や安全性など問題が山積し、住民からは国に工事認可取り消しを求める訴訟も起こされています。疑問や異論にこたえず、リニア加速に熱を上げる安倍政権の姿勢は、あまりに危険です。
公的資金を低利貸し付け
 リニア中央新幹線計画は、東京(品川)―名古屋―大阪間のほとんどをトンネルでつなぎ、超電導磁石の力で浮上させた車両を時速500キロで走行させる構想です。安全性や、工事で排出される大量の残土、地下水の枯渇問題をはじめ自然環境への影響などを危惧する声が相次いでいるにもかかわらず、安倍政権は14年、東京―名古屋の事業を認可しました。JR東海は品川や名古屋の駅整備、用地取得などに着手しています。
 安倍政権は、これまでもリニア計画を「成長戦略」で位置づけてきましたが、総額9兆円とされる膨大な建設費用はJR東海が自前で賄うことが前提でした。しかし、この計画では東京―名古屋開業後、それまでかかった工費約5兆5千億円の債務を8年かけて減らしたあと大阪までの延伸工事を始めるという予定のため、リニアを推進する財界などから大阪延伸前倒しを求める声が上がっていました。
 安倍政権の前倒し決定は、これらの要求に沿ったものです。JR東海の負担を減らすため、国が資金を調達し低利で貸し出す「財政投融資」の仕組みを使い、約3兆円を貸し付ける案が検討されています。金利は民間銀行よりも、はるかに低い0・3~0・4%程度に優遇する方向です。「マイナス金利」の“効果”を宣伝したい安倍政権の思惑もみえます。
 住民が認可取り消し訴訟を起こすなど批判や異論が相次いでいるリニア計画を加速させるため、ここまで肩入れする安倍政権のやり方は、危険すぎます。リニア計画には環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」と警告する意見を出していますが、問題はなんら解消していません。そのうえ、人口減少社会に入っている日本で、利用者数の将来見通しも不安視され、リニア事業の採算性そのものに疑問が投げかけられています。南アルプスを巨大トンネルで貫く難工事については、費用の肥大化が懸念されています。巨額な公的資金を貸し付けたリニア事業が行き詰まり、そのツケが国民の負担として押し付けられる―。そんな危険が現実になりかねません。
中止・見直しこそ必要
 破綻した「アベノミクス」の加速のため、問題だらけのリニアを使うことは国民の願いに反します。
 住民訴訟に続き、南アルプスの自然をリニアで壊すなと幅広い登山家らの署名活動も新たに始まっています。国とJR東海は計画を加速するのでなく、凍結・中止に向けた検討こそすべきです。公費を使うというなら、国会での徹底審議は不可欠です。なし崩し的に公的資金を投じるようなやり方は許されるものではありません。
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ロイター Business | 2016年 07月 22日 13:45
リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も


[東京 22日 ロイター] - 安倍晋三首相が打ち出した経済対策では、リニア新幹線に財政投融資資金を投入し、東京─大阪間の開業を8年前倒しする構想が盛り込まれた。未来投資の看板として「国家プロジェクト」化が鮮明になったが、採算性や経済効果などで先行きを危ぶむ声もある。大阪圏の政財界による活発なロビー活動が政府を動かしたとの指摘もあるリニア計画浮上の過程に迫った。

<自主性と資金コストメリットで揺れるJR東海>
「政府の支援なんかいらない。金を出せば政治は必ず口も出してくる。もうこりごりだ。自己資金での計画ができているのだから、(JR東海の柘植康英社長は)財投活用にノーと言ってほしい」――。リニア中央新幹線のプロジェクトに関わったことのある東海旅客鉄道(9022.T)(JR東海)幹部の1人は、吐き捨てるように言った。
安倍首相が参院選投開票日の翌12日に検討を指示した経済対策の柱は、財政投融資資金を投入し、リニア中央新幹線の全線開業を最大8年前倒しすることだった。「未来投資」にふさわしい先端技術と経済効果への期待を兼ね備えた象徴的な事業であり、事業規模も9兆円と目玉政策として申し分ないように見える。
国土交通省高官も「財投資金でより有利に資金調達ができ、工事を早めることができるならと、今回JR東海と話が折り合った」と話す。
だが、JR東海側は「政府から具体的な提案を受けていない」(広報部)、「(財投資金の)受け入れを決めたわけではない。自己負担でリニア建設を行う方針は転換していない」(同)と主張し、両者の話はかみ合っていない。
同社の柘植康英社長はロイターに対し、財投活用について「大変ありがたいことだと受けとめている。政府から具体的な提案があれば、民間企業として、経営の自由、投資の自主性を確保できること、さらには将来にわたって健全経営と安定配当を堅持できることを前提に、十分検討させていただく。民間会社として受け入れ可能な案を提示いただければ大変ありがたい」とするコメントを寄せた。
JR東海では、旧国鉄時代の轍(てつ)を踏まぬよう、「政府の介入」に対する警戒感が根強い。また大阪延伸の工事を8年も前倒し着工することは、人手や工期などに相当の負担が発生するリスクがあるという。
一方で、 財投資金投入により自社調達より低い利率の資金借り入れができれば、同社にとって調達コストが低下。メリットを享受できる。
同社の資金計画では、工事進ちょくに合わせ16年以降およそ3兆円程度の長期債務の増加が予定されている。直近発行の同社20年債の利率は0.4%台だが、仮にその金利で3兆円を調達した場合には、20年で2400億円の利息がかかる。仮にゼロ金利で財投融資が受けられれば、その分が削減できる。
現在、自民党内ではリニア事業に対する3兆円規模の財投融資の金利を0.3%前後を軸に検討している。その場合、20年間で1800億円の利息となり、自己調達と比べ利息支払額は600億円の削減となる。
政府とJR東海の間で、経営の自主性確保とコスト削減メリットをめぐり、交渉が始まるのはこれからだ。

<大阪勢のロビー活動、マイナス金利導入で一気に具体化>
また、リニア新幹線の工事前倒しが安倍政権の目玉政策に浮上する過程で、大阪圏の政治・経済団体のロビー活動が、大きな影響を与えたと関係者は口をそろえる。
「JR東海が自力で行うとしていることも勘案しつつ、要望を受けて対応を考えていきたい」ー─。世耕弘成官房副長官は2014年当時、関西経済連合会のリニア新幹線「国家プロジェクト化」と大阪・名古屋同時開業要望に対してこう語った。
JR東海が自己負担を原則に進めてきた計画に、長年距離を置いてきた政府が関与を強め始めたのは、このころからだ。
ロビー活動の主役は「おおさか維新の会」(現政党名)の松井一郎幹事長と橋下徹代表(ともに当時)だった。
両氏は大阪府知事、大阪市長として、関西経済団体とともに大阪・名古屋同時開業に向けた協議会を設立。自民党の大阪府選出議員らも財投資金での支援、税制優遇など要望策をまとめた。さらに和歌山県選出の二階俊博総務会長の働き掛けも大きかったと関係者は語る。
その後、今年6月の「骨太方針」に財投活用による大阪までのリニア前倒し開業が盛り込まれることとなったのは「日銀によるマイナス金利の導入がきっかけだった」(政府高官)という。
首相ブレーンとして強い影響力を持つ藤井聡内閣官房参与(京都大大学院教授)は、ロイターに対し「マイナス金利政策の中、公共投資の活性化のための財投を活用すべきだと安倍首相に提案した」と断言した。

<不透明な経済効果、輸出市場も見当たらず>
ただ、今回の「国家プロジェクト」案には、経済効果について一部で疑問の声も上がっている。
国土交通省・交通政策審議会答申(2011年5月)では、経済成長率1%を前提に大阪までの開業時(2045年)の経済効果を年間8700億円と試算した。国内総生産(GDP)500兆円のわずか0.17%だ。
さらに大阪府は、2027年に大阪と名古屋を同時に開業する場合の上乗せ効果について6700億円と試算。
これに対し、藤井教授は累計136兆円、年間7.5兆円、GDPの1.1%になるとはじき出し、両者には相当な開きがある。
輸出への期待も、現状では先行き不透明感が色濃い。安倍首相は昨秋、オバマ米大統領にワシントンDC―ニューヨーク間でのリニア採用計画を提案した。
米国側は調査費として連邦政府補助金を承認し、日本側も今年度予算で同様に調査費を計上した。ただ、採用されるかどうかの見通しは立っていない。
さらに世界中を見ても、米国での案件以外に超高速新幹線に見合う候補地が見つかっていない。その点はJR東海自身も認めている。輸出案件の進展がはかばかしくない場合、東京─大阪間がリニア新幹線の唯一の路線になりかねない。
「リニア新幹線―巨大プロジェクトの『真実』」の著者であるアラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎氏は「海外輸出の可能性はゼロ」と言い切る。「世界で鉄道に求められているものは超高速性ではなく、安全性、利便性、ネットワーク性、環境保全性。(リニア開発は)はっきり言って独りぼっち」と語る。
もともとリニア新幹線の導入目的は、東京─大阪という大動脈の二重系化と、東海地震など災害リスクへの備え、そして東海道新幹線の大規模改修工事への対応だった。
ただ、リニア技術の採用で新幹線整備事業としては「これまで例を見ない巨額投資」(国土交通省鉄道局)となることが確実になった。財投資金の投入に関しては、このビジネスの将来性や経済効果など一段と詳細なシミュレーションと国民の理解が必要だとの指摘もある。
BNPパリバ証券・シニアエコノミスト、白石洋氏は「財投資金を使ってやるべきことなのかどうかの判断は、経済全体にとってリターンがあるか、外部効果があるのかという点が基本的な判断基準になる。だが、その必然性が不明だ」と指摘している。
(宮崎亜巳 中川泉 取材協力:リンダ・シーグ 竹中清 編集:田巻一彦)
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