2016-08-05(Fri)

28兆円経済対策 「未来への投資」見えず

膨らむ対策、見えぬ道筋 旧来型の公共事業ずらり、借金頼み 


◇アベノミクス再起動 28兆円経済対策、実効性は未知数
----政府が2日に閣議決定した事業規模28兆円超の経済対策は働き方改革や産業構造改革などの新たな視点を盛り込んだ。
ただ対策の目玉となるこれらの項目でも経済界がかねて求めてきた脱時間給制度や解雇の金銭解決といった課題には踏み込んでいない。
従来型の公共事業も目立つ。再起動したアベノミクスの今後の課題を検証した。

■リニア前倒し、即効性欠く
----経済対策にはリニア中央新幹線の開業前倒しなど「21世紀型のインフラ整備」を盛り込んだが、景気押し上げの即効性には疑問符が付く。
リニアは財政投融資を使って、建設費を負担する東海旅客鉄道(JR東海)を支援する。
前倒しするのは2045年とされた名古屋―大阪間の開業。環境影響評価も終わっておらず、ただちに工事が増えるわけではない。
(日本経済新聞)

◇膨らむ対策、見えぬ道筋 旧来型の公共事業ずらり、借金頼み 首相「未来への投資」
 安倍政権がまとめた28兆円超の経済対策は、事業規模を膨らませることで、アベノミクスを加速させる姿勢をアピールした。
だが、中身をよく見れば、これまでも実施されてきた公共事業がずらりと並ぶ。
アベノミクスの「限界」が指摘されるなか、経済成長の道筋はまだ見えてこない。
(朝日新聞)

未来への投資を実現する経済対策(平成28年8月2日 閣議決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/keizaitaisaku_honbun_160802.pdf
内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 経済財政政策 > 経済対策
未来への投資を実現する経済対策(平成28年8月2日閣議決定)(PDF形式:597KB)
http://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/20160802_taisaku.pdf






以下引用

日本経済新聞 2016/8/3 0:40
アベノミクス再起動 28兆円経済対策、実効性は未知数
リニア前倒し、即効性欠く
 政府が2日に閣議決定した事業規模28兆円超の経済対策は働き方改革や産業構造改革などの新たな視点を盛り込んだ。ただ対策の目玉となるこれらの項目でも経済界がかねて求めてきた脱時間給制度や解雇の金銭解決といった課題には踏み込んでいない。従来型の公共事業も目立つ。再起動したアベノミクスの今後の課題を検証した。
■働き方改革

 政府の経済対策では働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づけ、構造改革の1番手にあげた。特に、同じ仕事に同じ給料を払う「同一労働同一賃金」の実現や最低賃金の底上げなど、非正規労働者の処遇改善に力点を置いた。長時間労働の是正やテレワーク(在宅勤務)の推進といった女性の労働参加につながる項目も盛り込んだ。
 ただ欧米に比べて6割程度にとどまる労働生産性を引き上げる策は乏しい。時間ではなく成果に給料を払う「脱時間給」制度は、関連法案が2年続けて国会で審議されずに棚ざらしのまま。裁判で不当解雇と判断された際の金銭解決制度の導入も、厚生労働省内の議論が停滞している。個人がスキルを伸ばし、成長産業へ労働力が動くような労働市場が生まれる機運は高まっていない。
 6月の有効求人倍率は全都道府県で1倍を超え、労働者に有利な環境が続く。痛みを伴う改革を実行する好機ともいえるなか、経済同友会も1日の提言で「個人が時代の変化に応じて、円滑に労働移動できる市場が必要」と主張している。
■インフラ


時速603キロメートルでの走行試験に成功したリニア車両(15年4月、山梨県都留市)
 経済対策にはリニア中央新幹線の開業前倒しなど「21世紀型のインフラ整備」を盛り込んだが、景気押し上げの即効性には疑問符が付く。リニアは財政投融資を使って、建設費を負担する東海旅客鉄道(JR東海)を支援する。前倒しするのは2045年とされた名古屋―大阪間の開業。環境影響評価も終わっておらず、ただちに工事が増えるわけではない。
 訪日客を4000万人に増やす目標達成に向けて、大型クルーズ船向けの港湾整備や羽田空港の強化を盛り込んだが、調整が難航する民泊の解禁には触れなかった。一方で「条件不利地域の振興」など従来型の公共事業も潜り込ませた。
 農業は環太平洋経済連携協定(TPP)対策の一環で農産物輸出の拡大に力点を置いた。輸出基地の整備を柱に据えたが、放射性物質規制の緩和など現場の要望が強い対策には言及がない。企業の農業参入を後押しする政策も盛り込まれなかった。このままではハコモノ優先の対策になりかねない。
■中小企業
 中小企業は資金繰りに行き詰まる企業が相次ぐような差し迫った状況にはないが、経済対策は英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けて予防的に支援することにした。
 政府系金融機関の日本政策金融公庫が通常より低い金利で貸し出したり、中小企業が民間金融から買い入れるときに信用保証協会が保証を付けたりする。
 林幹雄経済産業相は2日の記者会見で「リスクに備えておくことが必要だ。資金繰りを万全にする」と強調した。
 資金繰り対策以外では、賃上げに努める小規模事業者が販路開拓をする際に補助金を給付する。生産性が高まる設備やIT(情報技術)の導入も補助金で支援する。
■第4次産業革命
 対策は「第4次産業革命」と銘打ち、人工知能(AI)やロボット、モノとインターネットがつながるIoTを活用した新ビジネスの創出支援や社会制度改革などの政策も掲げた。
 経済産業省は2017年度末にも千葉県柏市にAIの官民共同研究の場をつくる。米国が先行するAI技術を、日本が得意なものづくり分野に応用することを目指す。
 ただ課題も多い。民泊など今後の市場拡大が見込まれるシェアリングエコノミーの分野は欧米が先行し、日本は普及が遅れている。政府は規制緩和の方向性を打ち出しているが、既存の業界との調整が難航している。需要に合ったサービスや技術革新を生み出せず、新たな産業の芽を摘んでしまう恐れがある。
 AIなど最新技術に対応できる人材の育成も課題だ。政府は成長戦略で小学校におけるプログラミング教育の導入を打ち出している。時代の変化に対応するには、大学でのコンピューター科学の教育強化などの充実策が欠かせない。


日本経済新聞 2016/8/3 1:07
28兆円経済対策「未来への投資」見えず
強い構造改革が不可欠
 経済対策は成果がなお不十分なアベノミクスの再出発を象徴する。「未来への投資」を掲げ、28兆円の事業規模で民需の喚起を狙うが、日本が抱える中期の課題を克服する道筋は見えない。短期策の寄せ集めでは消費や投資は点火しない。財政と金融政策の連携も労働市場や社会保障の改革を伴って効果が出る。経済再生の工程表を大きな図柄で描き直すときだ。
 派手な打ち出しだが、メッセージは不明確だ。28兆円という数字で大型感を出すが、国と地方の財政支出は4分の1の7兆円。未来への投資といいながら、低所得者1人ずつに消費増税対策として1万5千円を渡す。どこを見た対策なのか中途半端な印象だ。
 2日午後の麻生太郎財務相と黒田東彦日銀総裁の会談も演出の一つだ。財政政策と金融政策の「合わせ技」を訴えたつもりだが、市場は意図を読み切れない。日銀は一段の金融緩和に動くのか。それとも大胆な緩和策を修正するのか。債券市場での長期金利の急上昇はその迷いを映す。
■正念場の3年


 大盤振る舞いの対策で市場や企業、消費者の心理のテコ入れを狙う。こんな歴代政権が取ってきた手法は、債務の膨張とマイナス圏への金利低下で岐路を迎えた。財政でも金融政策でも手段が限られるなかで、経済低迷の真の原因に向き合う必要がある。
 家計の消費を鈍らせるのは将来の生活に対する不安の要素が大きい。一時的なばらまき策より、社会保障や税制のゆがみを正して将来を見渡せる環境を整えるのが筋だ。
 首相は6月、消費税率10%への引き上げを2019年10月に再延期した。今後の3年間で消費税を上げる環境を整えられなければ、アベノミクスは失敗という批判を甘受しなければならない。
 参院選での与党大勝で増税延期とアベノミクスの継続は一応、有権者のお墨付きを得た。だがデフレ脱却は遅れ、賃金も伸び悩む。15年夏以降、株高と円安の流れは反転し、市場混乱が不透明感に拍車をかける。
 難局を切り抜けるには経済対策と日銀の金融政策の連携に、強力な構造改革を組み合わせることが不可欠だ。潜在成長力を高めるカギは人材の柔軟な活用にある。経済対策が働き方改革や子育て、介護の担い手確保を重点に置いたのは正しい。ハードルの高い改革を着実に進める本気度が問われる。
■企業も動く時
 政府は経済の底力を高め、将来不安の芽を取り除く。現金を抱え込んだ民間企業も守りの姿勢を改め、潜んだチャンスを見定めて積極的な投資や株主還元を進める。そうした真の好循環が必要になる。
 「安倍政権は短期しかみていない」との評価が経済官庁やエコノミストに定着している。盤石な政治基盤を築いた今、どっしりと腰を据えて、将来のための改革に取り組むべきだ。(編集委員 菅野幹雄)



日本経済新聞 2016/8/2 21:12
成長力底上げへ一体改革 経済対策28兆円決定
 政府は2日午後の臨時閣議で、事業規模28兆1000億円の「未来への投資を実現する経済対策」を決めた。働き方や産業構造の一体改革に取り組み、成長力を底上げする。経済対策の決定後、麻生太郎財務相は黒田東彦日銀総裁と会い、財政と金融の政策協調を確認した。政府・日銀はアベノミクスを再起動させ、デフレからの完全な脱却を目指す。


 安倍晋三首相は臨時閣議で「未来を切り開くための投資に向けて力強いスタートを切る」と強調した。対策の事業規模は過去3番目で、安倍政権下では最大となる。
 国と地方の直接の歳出(真水)は7.5兆円。4兆円を2016年度の第2次補正予算案、残りを17年度の当初予算案などで手当てする。16~17年度の実質国内総生産(GDP)を1.3%押し上げる効果を見込む。
 新規の赤字国債を発行しないという制約があるため、政府は「第2の予算」と呼ばれる財政投融資を約6兆円計上する。財投で対策の財政措置のほぼ半分に充てる。
 財投は融資先からの資金返済が前提なので、財政赤字には計上されない。政府が財政健全化の指標とする基礎的財政収支(プライマリーバランス)への影響を避ける効果がある。ただ政府の債務であることに変わりはなく、安易な増発は財政規律を損ねかねない。
 今の経済状況は、個人消費や民間投資が力強さを欠いている。英国の欧州連合(EU)離脱決定など、世界経済の下振れリスクも高まっている。
 このため、経済対策の柱は働き方改革と産業構造の改革に据えた。子育てや介護の受け皿整備、保育士や介護職員の賃上げを進める。子育てや介護を抱える人たちが働きやすい環境を整える。
 経済対策は補正予算だけで対応することが多い。子育てと介護については一過性の対応になった過去の反省を踏まえ「16年度の補正予算に加えて、17年度当初予算に計上し、かつ継続して実施する」と明記した。
 失業率や有効求人倍率はアベノミクスが始まって以来、大きく改善したが、非正規社員の割合は37%と高止まりしている。「非正規という言葉をなくす決意」と明記し、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正など労働制度改革に取り組む方針も盛り込んだ。
 産業構造改革は、生産性の向上に重点を置く。あらゆるものがインターネットにつながるIoTや人工知能(AI)など第4次産業革命を実現する。環太平洋経済連携協定(TPP)など自由で公正な経済圏を広げ、日本企業が海外の需要も取り込めるようにする。
 事業規模でみると、インフラ整備の10.7兆円と資金繰り支援など中小企業や地方対策の10.9兆円が大半を占める。インフラ整備では、リニア中央新幹線の全線開業前倒しや整備新幹線の整備を盛り込んだ。訪日客を増やすため、大型クルーズ船が立ち寄れるような港湾の整備も進める。


日本経済新聞 2016/8/2 22:57
「アベノミクスの失敗」 野党、経済対策を批判
 野党は2日、政府が閣議決定した事業規模28兆円超の経済対策を「これほど大規模な対策を打つのは、アベノミクスの失敗を証明するものだ」(山尾志桜里民進党政調会長)と批判した。
 民進党の枝野幸男幹事長は記者会見で「見掛けはでかいが中身は空吹かしだ。借金してカンフル剤を打つなど到底『未来への投資』とは言えない」と切り捨てた。
 山尾氏は「公共事業頼みで論外。財政悪化を招くだけだ。目先のばらまきでない『人への投資』へ政策転換を求めていく」との談話を発表した。
 社民党の又市征治幹事長も談話で「見掛けだけ無理やりかさ上げした大風呂敷にすぎない。肝心の中身や効果が置き去りだ」と指摘した。〔共同〕

日本経済新聞 朝刊2016/8/2 3:30
新経済対策、GDP1.3%押し上げ きょう閣議決定 政府試算
 政府は2日午後の臨時閣議で、事業規模28.1兆円の経済対策を決定する。内閣府は今回の対策が、物価の変動を考慮した実質国内総生産(GDP)を数年間で1.3%押し上げると試算している。低所得者向けの給付金で消費を下支えするほか、公共事業などが民間投資も巻き込んで景気を押し上げると見込む。
 政府は「未来への投資を実現する経済対策」として2日に公表する。対策による財政支出の規模は国と地方の直接の財政支出(真水)が7.5兆円、低利でインフラ整備などを支援する財政投融資が6兆円に達する。これらの歳出は秋の臨時国会に提出する2016年度補正予算案のほか、17年度当初予算案などにも盛り込む。
 対策の事業規模は分野別に、インフラ整備で10.7兆円、中小企業や小規模事業者、地方の支援で10.9兆円、保育士や介護士の処遇改善などを含めた一億総活躍社会の実現に向け3.5兆円程度を想定している。
 内閣府は17年度以降の歳出もひとまとめにして算出したので、16年度だけで経済成長率をどの程度押し上げるかは試算していない。
 SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは公共投資の支出が16年度と17年度にまたがるとして、16年度の押し上げ効果は0.4%程度と見込む。
 対策にはリニア中央新幹線の整備など財政投融資の活用分も入る。民間投資や生産性の向上なども想定しており、滞りなく実行に移せるかが課題となる。


朝日新聞 2016年8月3日
(時時刻刻)膨らむ対策、見えぬ道筋 旧来型の公共事業ずらり、借金頼み 首相「未来への投資」
 安倍政権がまとめた28兆円超の経済対策は、事業規模を膨らませることで、アベノミクスを加速させる姿勢をアピールした。だが、中身をよく見れば、これまでも実施されてきた公共事業がずらりと並ぶ。アベノミクスの「限界」が指摘されるなか、経済成長の道筋はまだ見えてこない。▼1面参照
 「未来への投資を大胆に行う力強い経済対策の案をまとめることができた」
 安倍晋三首相は2日、閣議決定する前に開いた政府与党政策懇談会で、こう胸を張った。7月の参院選で「アベノミクスを最大限ふかす」と繰り返してきた首相にとって、投資家らが「大胆」とみなす規模はどうしても必要だった。
 財務省などは当初、10兆円規模の経済対策を想定していたが、官邸は「小さすぎる」(関係者)と取り合わない。来年度予算で手当てする事業も含めた「政策総動員」で金額を積み上げた結果、最終的な事業規模は28・1兆円に膨らんだ。
 第2次安倍政権が発足直後にまとめた2013年1月の経済対策の事業規模は20・2兆円。足もとの景気は当時より改善されているが、それを上回る規模だ。
 その結果、中身は全国にばらまく公共事業がずらりと集まった。地方自治体の負担や、政府系金融機関などを通じて低金利で事業資金を融資する「財政投融資」なども足して、規模を大きくできるからだ。
 一方で「国の借金」も膨らむ。財源には、建設国債約3兆円をあて、財投も6兆円使う。政権はこれを「未来への大胆な投資」と位置づけるが、実際には旧来型の公共事業が多い。
 対策の目玉に据えたのは、JR東海が進めるリニア中央新幹線への財投の活用だ。3兆円を低金利で貸し付けることで、建設費の負担を軽くし、大阪までの全線開業を最大8年前倒しするという。それでも全線開業は2037年。効果が出るのはまだまだ先だ。
 「爆買い」が話題の訪日外国人をさらに誘致するため、大型客船が使える港湾の施設整備や、離着陸回数を増やすための空港の駐機場の拡充も進める。農林水産業では、「輸出基地」をうたった食料加工施設の整備や農地の大規模化などを盛り込んだ。
 復興を含めた公共事業関連に、世界経済の先行きに備えた中小企業などへの資金繰り支援などを加えると、事業規模の8割以上が主に企業向けとなる。
 だが、東日本大震災後の復興事業や、都心部のビル建設などで建設業界は人手に余裕がなく、かえって民間工事を圧迫する可能性もある。金融緩和で民間銀行が企業に資金を貸し出す金利は歴史的な低水準だ。政府系金融機関を使って低金利の融資枠を用意したとしても、資金需要が大きく増えるとは考えにくい。
 (津阪直樹、大津智義)
 ■アベノミクス、「限界」指摘も IMF「相当な改善必要」 経済財政白書「好循環不十分」
 2日夕、麻生太郎財務相と日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が都内のホテルで会談した。麻生氏は会談後、「アベノミクスの加速化に一体となって取り組む」。黒田氏も「デフレ脱却、持続的な経済成長の実現に向けて、ともに努力していく」と応じた。経済対策を決めた直後に財務相と日銀総裁が会談するのは異例のことで、政府と日銀の「一体感」を演出した。
 大胆な金融緩和と財政出動は、アベノミクスの柱だ。第2次安倍政権が発足した直後、「異次元の金融緩和」と、5兆円を超える建設国債(借金)を出すなどして行った13年1月の経済対策により、円安・株高が進行。企業の業績が改善するきっかけになった。
 そのアベノミクスが勢いを失っている。
 政府の働きかけで賃上げを実現しても、消費は思うように伸びない。製造業の業績が回復しても、一度海外に移った工場が国内に戻ることはほとんど無く、設備投資は伸び悩む。日銀は7月29日、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を増やす「追加緩和」策を打ち出したが、市場の反応は期待外れだった。
 国際通貨基金(IMF)が2日公表した日本経済についての年次審査の報告書は、アベノミクスについて「相当な改善が必要だ」として、労働市場改革などの構造改革を進めるよう求めた。経済対策は、短期的には成長を押し上げるものの、巨額の債務や前例のない金融緩和による「下向きリスクが支配的」とも指摘した。
 富士通総研の早川英男氏は「日本経済は緩やかな回復基調で、経済対策が必要な状況ではない。やるべきは日本経済の実力を高める構造改革で今回の政府、日銀の連携の方向は間違っている」と語る。
 この日、内閣府が公表した16年度の経済財政白書も、政権が描くアベノミクスによる経済の好循環は十分に起きていないとした上で、若い世代に増えている、非正規社員の待遇改善や規制緩和などに取り組む必要性を強調した。
 経済対策では、17年度から当初予算で保育士や介護職員の所得を上げることや、返済が不要な給付型奨学金の実現、「働き方改革」について明記した。こうした政策を実現させる安定的な財源確保などの課題を克服し、時間をかけてでも地道な改革に取り組めるかどうかが、経済対策の規模以上に問われている。
 (中村靖三郎、ワシントン=五十嵐大介)


朝日新聞 2016年8月3日
28兆円対策、効果は 貯蓄にまわる可能性 財源確保、見通せず
 第2次安倍政権で最大規模となる28兆円超の経済対策が決まった。しかし、身の回りでは将来不安が解消されず、1億総活躍プランの財源は明示されぬまま。その効果に疑問符がつく。▼1面参照
 ■簡素な給付措置
 低迷する個人消費の喚起策の目玉として、低所得者を対象に1人あたり1万5千円を配る「簡素な給付措置」の一括支給が盛り込まれた。消費税率10%への引き上げが2019年10月に再延期されたため、来年4月から「2年半分」を前倒しして配る。
 簡素な給付措置はもともと消費税率を5%から8%に引き上げた14年度、低所得者の生活への影響を和らげるために始まった。1人年6千円という現在の水準を維持したまま、来年夏ごろに2年半分をまとめて給付する。
 まとめて給付することで、まとまった買い物をしてもらおうというねらいがある。しかし、そもそも消費が低迷しているのは、不安定な社会保障など、将来の不安が大きいためだとの指摘も根強い。大半が貯蓄にまわることになれば、消費を上向かせることはできない。
 ■1億総活躍社会
 政権が最重要課題に掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けた施策も並ぶ。
 「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」という目標に向け、17年度から保育士は賃金を月平均約6千円引き上げ、さらに経験や技能に応じて最大月約4万円を上乗せする。介護職員の賃金も月平均約1万円引き上げる。費用は計2千億円規模とみられる。
 無年金者対策としては、17年度中に、年金受給に必要な加入期間を25年から10年に縮める。新たに約64万人が受給できる見通しで、費用は年約650億円だ。
 だが、これらの財源をどう確保するかはいまだ不透明だ。失業者が減って雇用保険の失業給付が減っていることを受け、給付金のうち政府が負担していた年約1500億円の一部などを財源にする考えだが、足りるかどうかは見通せない。年末の来年度予算編成まで財源探しが続きそうだ。
 ■横ばい局面なら需要の先食いに 宮前耕也・SMBC日興証券シニアエコノミスト
 事業規模ではなく補正予算の規模が重要だ。
 4兆円ということは、今年度の実質GDP成長率押し上げ効果はプラス0・4ポイント程度になる。財政投融資や民間企業の事業費は、経済対策としての効果はほとんどない。リニア中央新幹線の全線開通前倒しは、効果が表れるのが2020年代後半以降とだいぶ先だ。
 景気の横ばいが続いている局面での対策は需要を先食いするだけだ。いずれ景気の「谷」を生み出し、財政出動がやめられなくなってしまう。
 ■経済対策の主なメニュー
<事業規模28.1兆円(うち財政措置13.5兆円)>
【1億総活躍社会の実現の加速3.5兆円(3.4兆円)】
 ◆保育の環境整備
 ◆保育士・介護職員の処遇改善
 ◆雇用保険料の引き下げ
 ◆働き方改革の実現
 ◆給付金が受け取れる育休期間の半年延長(最長で)
 ◆簡素な給付措置の拡充
 ◆奨学金の拡充
 ◆年金受給資格の期間短縮
【21世紀型インフラ整備10.7兆円(6.2兆円)】
 ◆リニア中央新幹線の開業前倒し
 ◆整備新幹線の建設促進
 ◆大型客船が寄港できる港の整備
 ◆農林水産物輸出のための施設整備
【英国のEU離脱に備えた対策10.9兆円(1.3兆円)】
 ◆中小企業への資金繰り支援
 ◆中小企業の生産性向上に向けた支援
【熊本地震などからの復興や防災対策強化3.0兆円(2.7兆円)】
 ◆熊本地震の被災地でのインフラ整備
 ◆東日本大震災の復興の加速
 〈財政措置は国や地方自治体が新たに予算を組む事業7.5兆円に「財政投融資」6兆円を足したもの。今年度補正予算案では一般会計で4兆円を見込む〉

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