2016-08-05(Fri)

経済対策 危うい財投活用 「抜け道」頼み

そもそも財投は、民間でできる事業には資金提供しないもの JR東海に融資は筋が通らない

----補正予算の編成期間は当初予算と比べて短く、政府内のチェックがおろそかになりがちだ。これまでもたびたび「抜け道」に使われ、財政を悪化させる要因となってきた。

----「抜け道」はほかにもある。財政投融資の大盤振る舞いだ。やはり「21世紀型のインフラ整備」の柱として、JR東海のリニア中央新幹線への支援とともに、北海道などで国と自治体が進める整備新幹線の建設前倒しがあげられている。
 
整備新幹線は、毎年度の予算に費用を計上しつつ、国や自治体の財政状況に目配りしながら事業を進めてきた。補正を通じた財投資金で事業を加速させることに危うさを禁じ得ない。
 
一連の事業の費用をまかなうために、政府は建設国債や国債の一種である財投債を発行する。金額は合わせて数兆円になりそうだ。借金をつけ回しするだけの赤字国債の発行は避ける方針とはいえ、インフラはいったん造ると維持更新費が必要になることを忘れてはなるまい。
 
経済対策のテーマは「未来への投資」だという。
しかし、「未来への負債」を残すことにならないか。政府にその危機感はあるのだろうか。
(朝日新聞)

----目玉の一つとして3兆円を投入するリニア中央新幹線の東京―大阪間の開通を2045年から最大8年間前倒しする施策に、どんな経済効果があるのか。
 
財投を民間投資の呼び水にする意図自体は理解できる。しかし、新たな投資の起爆剤となり得るのは、目標の27年にも東京―名古屋間が完成した後、大阪への延伸工事が始まってからだろう。
 
公共投資に使途を限る建設国債の増発が、無駄な公共事業につながらないか。この点も心配だ。
(読売新聞)

----国債の一種である財投債を発行して資金を集め、投融資する仕組みだが、一般会計の枠外なので基礎的財政収支には影響せず都合のいい「財布」だ。しかし、かつて郵貯や簡保の資金を原資に膨張し、無駄な公共事業が問題となって〇一年から改革を進めてきた経緯がある。忘れたのだろうか。

----そもそも財投は、民間だけでは手を出しにくい事業に資金提供するものだ。今回、JR東海の中央リニア新幹線大阪延伸工事を前倒しするために三兆円を融資するのはおかしいのではないか。同社は国に頼らず自前で進めると言い続けてきたはずだ。
(東京新聞)


<各紙社説・主張>
朝日新聞)経済対策 「抜け道」頼みの危うさ(8/3)
読売新聞)大型経済対策 問われるのは規模より中身だ(8/3)
毎日新聞):国の財政 ゆるんだままでは困る(8/3)
産経新聞)経済対策 「空ぶかし」にならないか(8/3)
東京新聞)経済対策 見掛け倒しの水膨れ型(8/3)




以下引用



朝日新聞 2016年8月3日(水)付
社説:経済対策 「抜け道」頼みの危うさ


 「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」。安倍首相がこう語ってきた経済対策を、政府が閣議決定した。
 総事業規模は28兆円余り。政府系金融機関の融資枠などを除くと、予算と財政投融資で手当てするのが13・5兆円。その柱として、政府が秋の臨時国会に提出する補正予算は4兆円程度。そんな内容である。
 保育や介護施設の整備促進、学校の耐震化、熊本地震の復旧復興を含む防災対策……。補正予算に計上する予定の事業としてそんな項目が並ぶ。
 一方で、疑問符がつくものも少なくない。代表例が「21世紀型のインフラ整備」としてあげられている事業だ。大型クルーズ船を受け入れるための港湾整備、農林水産物の輸出を増やすことをねらった加工施設の建設などが、予算を投じて進める事業として並ぶ。
 訪日外国人を多く受け入れ、第1次産業が海外に打って出るのを支援するのは、検討に値するテーマだろう。しかしなぜ当初予算ではなく、緊急時の対応が役割である補正予算なのか。
 補正予算の編成期間は当初予算と比べて短く、政府内のチェックがおろそかになりがちだ。これまでもたびたび「抜け道」に使われ、財政を悪化させる要因となってきた。
 今回の経済対策にも同じ構図が見える。政府は当初予算に計上した公共事業を景気対策として前倒しで執行しており、年度末に向けて事業量を確保する必要に迫られていることが背景にある。
 「抜け道」はほかにもある。財政投融資の大盤振る舞いだ。やはり「21世紀型のインフラ整備」の柱として、JR東海のリニア中央新幹線への支援とともに、北海道などで国と自治体が進める整備新幹線の建設前倒しがあげられている。
 整備新幹線は、毎年度の予算に費用を計上しつつ、国や自治体の財政状況に目配りしながら事業を進めてきた。補正を通じた財投資金で事業を加速させることに危うさを禁じ得ない。
 一連の事業の費用をまかなうために、政府は建設国債や国債の一種である財投債を発行する。金額は合わせて数兆円になりそうだ。借金をつけ回しするだけの赤字国債の発行は避ける方針とはいえ、インフラはいったん造ると維持更新費が必要になることを忘れてはなるまい。
 経済対策のテーマは「未来への投資」だという。
 しかし、「未来への負債」を残すことにならないか。政府にその危機感はあるのだろうか。
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読売新聞 2016年08月03日 06時08分
社説:大型経済対策 問われるのは規模より中身だ


 肝心なのは、民間活力の向上である。その視点で、個別の事業を厳しく精査せねばならない。
 政府が、事業規模28・1兆円に上る経済対策を決めた。2008年のリーマン・ショック後で3番目の大型だ。
 21世紀型のインフラ(社会基盤)整備に10・7兆円を充てることなどが柱で、安倍首相は「未来への投資」だと強調する。国内総生産(GDP)を短期的に1・3%押し上げる効果があるという。
 日本経済は、雇用や賃金の改善が消費の拡大につながらない状況が続く。円高の進行や社会保障の将来不安から、企業も個人も守りの姿勢にあることが大きい。
 首相は6月に消費増税延期を決めた際、「今度こそデフレ脱却を実現するため、アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と宣言し、参院選に臨んだ。経済対策には、その公約を果たす狙いがある。
 厳しい財政事情の制約から、赤字国債の発行は回避した。国・地方の財政支出は7・5兆円に抑える一方、国が民間に低利融資する財政投融資などを活用した。
 民間支出を事業規模にカウントするなど、苦労して総額の拡大を演出した感が否定できない。
 内容にも疑問が残る。
 目玉の一つとして3兆円を投入するリニア中央新幹線の東京―大阪間の開通を2045年から最大8年間前倒しする施策に、どんな経済効果があるのか。
 財投を民間投資の呼び水にする意図自体は理解できる。しかし、新たな投資の起爆剤となり得るのは、目標の27年にも東京―名古屋間が完成した後、大阪への延伸工事が始まってからだろう。
 公共投資に使途を限る建設国債の増発が、無駄な公共事業につながらないか。この点も心配だ。
 消費喚起策として、低所得者に1人あたり1万5000円を現金給付する事業は問題が多い。
 消費増税対策の「簡素な給付措置」をやめ、今後2年半分を一括で渡すという。これで打ち切りとなれば、受給者は買い物より貯蓄に回すのが自然だろう。
 個人消費の底上げには、子育てや介護を巡る将来不安の解消や、働き方改革で労働人口の減少を補う生産性の向上が求められる。
 「1億総活躍社会」の実現には、3・5兆円が計上された。雇用保険料引き下げや、年金受給資格の25年から10年への短縮などだ。
 今回の対策と一体化する17年度予算の編成では、さらなる内容の充実に向け、最大限の重点化を図らねばなるまい。
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毎日新聞2016年8月3日 東京朝刊
社説:国の財政 ゆるんだままでは困る


 政府は経済対策を閣議決定した。事業規模は28・1兆円とリーマン・ショック以降で3番目に大きい。閣議了解した2017年度予算案の概算要求基準も歳出上限を示さなかった。大盤振る舞いになりかねない。
 国の借金は1000兆円を超す。消費増税も延期した。財政をゆるんだままにする余裕はないはずだ。
 経済対策の財政支出は国・地方で7・5兆円に上る。4兆円規模の16年度第2次補正予算案を編成し、残りは17年度予算案などに盛り込む。財源不足のため、補正予算案は3兆円弱の国債を追加発行する。
 英国の欧州連合(EU)離脱問題に伴う市場の混乱が落ち着いた今、借金を増やしてまで大型対策を打つ必要があるのか。主要な使途は大型船用の港湾建設などインフラ整備だ。過去の経済対策でも公共事業は景気を一時的に押し上げただけだ。
 消費喚起策として、住民税非課税の約2200万人を対象に1人1万5000円の現金を給付する。低所得者対策は必要だが、貯蓄に回ってばらまきに終わる恐れがある。
 概算要求基準で上限を示さないのは、第2次安倍晋三内閣が発足してから4年連続だ。歳出膨張に歯止めをかける基準が空洞化したとみられても仕方がない。要求総額は3年連続で100兆円を超す見通しだ。
 財政規律が軽んじられる背景には、与党の歳出拡大圧力がある。参院選勝利の余勢を駆って自民党から公共事業などの増額要望が噴出した。「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」と強調してきた首相も経済対策で規模を優先させた。
 日銀のマイナス金利政策も財政をゆるめる要因だ。借金する国がもうかるという異常事態が続けば、財政への危機感は薄れるばかりだ。
 政府の財政健全化目標は基礎的財政収支の20年度黒字化だ。最新の政府試算では20年度は5・5兆円の赤字だが、名目3%、実質2%という楽観的な経済成長率が前提だ。
 安倍政権は痛みを伴う歳出抑制よりも成長を通じた税収増に依存してきた。だが、最近の円高で企業業績が悪化しており、税収増は頭打ちの傾向だ。歳出抑制の重要性は増している。
 政府は1億総活躍社会関連の施策3・5兆円を経済対策に盛り込んだ。17年度予算案などで重点配分する意向だ。子育て支援の充実は人口減対策になり、日本経済の足腰を強める効果がある。
 ただ、本来は消費増税で安定財源を確保して取り組むべき課題だ。「アベノミクスの成果」とする税収増の活用が浮上しているが、一時しのぎに過ぎない。増税を延期した以上、社会保障費の配分見直しで工面するなどの歳出改革が欠かせない。
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産経新聞 2016.8.3 05:03
【主張】経済対策 「空ぶかし」にならないか


 アベノミクスのエンジンを最大にふかすという安倍晋三首相の約束を具体化する経済対策がまとまった。事業費は28・1兆円まで膨らんだ。
 日本経済は、消費税増税の再延期を判断せざるを得ない状況にあった。そこから抜け出す対策に力が入るのは道理としても、ここまで来ると大盤振る舞いの印象は否めない。
 脱デフレの遅れは明確なのに、政府は「道半ば」という言葉に置き換えてきた。民需主導の持続的成長へ、今度こそ確実につなげられるかの真価が問われる。厳しい財政を勘案すれば、官需に頼り続けることはできない。
 対策の中身をみると、「空ぶかし」にならないかという懸念を抱かざるを得ない。首相の意向で規模の拡大を図るあまり、成長に資する効果の吟味がなおざりになっていないか。
 1億総活躍社会の関連施策やインフラ整備、英国の欧州連合(EU)離脱問題への対策などが盛り込まれた。試算では、国内総生産(GDP)を1・3%押し上げる効果があるという。
 だが、それぞれの対策の性格はあいまいだ。足元の消費喚起策や、潜在成長力を底上げする働き方改革などが混然一体になった結果、何でもありのばらまきの様相が強まっている。
 例えば、低所得者への1万5千円の現金給付である。消費税増税の負担軽減措置を引き継ぐ家計支援策だ。増税は延期なのに継続すること自体、首をかしげる。貯蓄に回ってしまえば、消費喚起という効果も減じる。
 港湾や鉄道などの公共事業も相変わらずだ。建設業の人手が不足する中、やみくもに増やしても消化しきれまい。
 海外経済のリスクに備え、中小企業の資金繰りを支援するというのも、どれだけ実際に需要があるのか見極める必要がある。
 財政健全化の視点を見失ってはならない。基礎的財政収支(PB)に影響しない財政投融資を活用したが、国債も増発する。規模拡大に走った一連の対応には、規律の緩みを感じざるを得ない。
 政府試算では平成32年度のPB黒字化目標は達成できず、5・5兆円の赤字が残る。財政の持続可能性が脆弱(ぜいじゃく)なままでは、社会保障などの制度の根幹も揺らぐ。将来不安の増大は経済再生を妨げるものでしかない。
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東京新聞 2016年8月3日
【社説】経済対策 見掛け倒しの水膨れ型


 政府がまとめた経済対策は事業規模二八・一兆円と見掛けが大きいだけの水膨れ型だ。市場の目先の評価ばかり気にするアベノミクスの典型である。必要なのは少額でも効果のある対策のはずだ。
 安倍晋三首相が参院選で掲げた「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」という訴えが信任を得たといいたいのだろう。国と地方の財政資金に加え、無駄な公共事業の温床だとして縮小してきた財政投融資を六兆円も投じ、規模を目いっぱい膨らませた印象である。
 さすがに台所事情が厳しく野放図に借金に頼れなくなった事情があろう、国の財政支出は二〇一六年度補正と一七年度当初予算にまたがり計六・二兆円。代わりに目を付けたのが「第二の予算」といわれる財政投融資である。
 国債の一種である財投債を発行して資金を集め、投融資する仕組みだが、一般会計の枠外なので基礎的財政収支には影響せず都合のいい「財布」だ。しかし、かつて郵貯や簡保の資金を原資に膨張し、無駄な公共事業が問題となって〇一年から改革を進めてきた経緯がある。忘れたのだろうか。
 自民党は参院選公約で財投を積極活用し今後五年間で三十兆円規模を確保するとした。業界団体をフル活用して票を集める戦い方をみれば、経済対策はぶら下げたニンジン、そして選挙御礼の意味かとみられても仕方あるまい。古い自民への完全回帰である。
 そもそも財投は、民間だけでは手を出しにくい事業に資金提供するものだ。今回、JR東海の中央リニア新幹線大阪延伸工事を前倒しするために三兆円を融資するのはおかしいのではないか。同社は国に頼らず自前で進めると言い続けてきたはずだ。
 「失われた二十年」の間に幾多の経済対策が打ち出されたが、目先の景気浮揚に拘泥するばかりで日本経済を中長期的に成長させることはできなかった。政治家も、省益を目指す官僚も一体となって規模ばかりを追求し、中身は官僚の作文任せになってきたからだ。加えてアベノミクスは人為的に金利を抑え込み、市場機能も財政規律もマヒさせた。
 低所得者に一万五千円の現金を配るなど安易なバラマキや旧来型の公共事業を続ける余裕はない。再生エネルギーの導入を加速する規制緩和や、政府頼みで思考停止状態の企業に投資を促す改革など少額でも有効な対策はある。見掛けだけの対策に期待はできない。
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