2016-08-05(Fri)

28兆円経済対策 巨額だが未来は見えぬ 8/3付社説等(その2)

規模に何の意味がある 「規模ありき」で効果に疑問残る  将来不安を高めるだけ  持続可能か危ぶまれる  

<各紙社説・論説>
北海道新聞)政府の経済対策 巨額だが未来は見えぬ(8/3)
岩手日報)経済対策28兆円 規模に何の意味がある(8/3)
河北新報)経済対策決定/規模に見合う効果あるのか(8/3)
信濃毎日新聞)経済対策 将来不安を高めるだけ(8/3)
神戸新聞)経済対策/規模優先で効果はあるか(8/3)

中国新聞)経済対策の閣議決定 持続可能か危ぶまれる(8/3)
愛媛新聞)政府経済対策 「規模ありき」で効果に疑問残る(8/3)
徳島新聞)経済対策 効果は期待できるのか(8/3)
西日本新聞)経済対策 「未来への投資」になるか(8/3)
南日本新聞)[政府の経済対策] 水増し手法が目に余る(8/3)




以下引用



北海道新聞 2016/08/03 08:55
社説:政府の経済対策 巨額だが未来は見えぬ


 政府はきのう事業規模が28兆1千億円となる経済対策を決めた。
 安倍晋三首相は参院選で「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と公約した。その具体策がこれだ。
 しかし、威勢が良いのは数字の大きさだけだ。実際には秋の補正予算ではなく、来年度以降の予算で手当てする事業も入っており、見かけの数字が膨らんでいる。
 将来世代のためになるのか、なぜいま必要なのか、疑問を抱かざるを得ない事業も含まれた。
 1千兆円を超える借金を抱え、税収も伸び悩む中、本当に「未来への投資」に値する事業を並べたのだろうか。
 28兆円のうち、国と地方の財政支出は7兆5千億円。国債の一種である財投債を発行してお金を調達する財政投融資(財投)を加えても13兆5千億円にすぎない。
 政府の対策と言っても、残りの15兆円弱は政府系金融機関による中小企業などへの融資枠や、国の補助金を受けた民間企業が出すお金だ。
 さらに「1億総活躍社会」実現に向けた重要施策は、秋の補正予算ではなく、来年度以降の予算で手当てするものも多い。
 これらをかき集めてまとめたら28兆円の巨額に膨らんだ、というのが実態だ。
 当初、経済対策は10兆円規模とも言われていたが、市場で円高、株安が進む場面もあり、安倍首相はより「大胆な経済対策」を見せることが必要と判断したのかもしれない。
 ただ、小手先で数字を膨らませても、一時的な株価対策にしかならない。
 対策は大型のインフラ整備が中心となる。リニア中央新幹線の前倒しや、大型クルーズ船が寄港できる港湾の整備、農水産物・食料の輸出促進に向けた基地造りなどだ。
 財投を利用したり、公共事業などに使途を限定した建設国債を発行したりして資金を捻出するが、いずれも国の借金に変わりない。
 費用に見合った効果があるのか、見極める必要がある。
 一方で、対策に盛り込まれた保育士、介護職員の待遇改善や、無利子奨学金の拡充、給付型奨学金の創設など、子育て、介護、若者支援に関する事業は待ったなしだ。
 少子高齢化など社会構造の変化に対応した事業こそ、未来への投資と呼ぶにふさわしい。これらを加速させることが、経済成長の芽を生むことになる。
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岩手日報(2016.8.3)
論説:経済対策28兆円 規模に何の意味がある


 ここまで規模を追い求めることに何の意味があるのか。政府が2日決めた28兆円を超す経済対策に、そんな思いを抱かざるを得ない。
 参院選前に見込まれた対策の額は5兆~10兆円だった。ところが、きょう自民党の幹事長に就く二階俊博総務会長が「20兆円」を唱えると、規模が焦点に浮上する。
 市場で円高・株安が進み、20兆円でも「景気浮揚には力不足」との見方が伝わるや、安倍晋三首相は一気に28兆円超に引き上げた。
 参院選で首相は「アベノミクスをふかす」と連呼した。アベノミクスは円安・株高に支えられている。それを延命させるために膨らませた28兆円は、市場を意識した打ち上げ花火にすぎまい。
 そう言えるのは、規模の割に中身が乏しいからだ。企業業績の減速で税収が伸びず、国や自治体が予算などでお金を出す歳出は全体の4分の1程度にとどまる。
 代わりに浮かんだのは、リニア新幹線整備などに国が資金を貸し出す「財政投融資」のフル活用だった。民間企業や地方の支出も加え、事業費を水増しした。
 対策の中には保育士や介護人材の賃上げなど、緊急に必要なものもある。しかし、日本経済の停滞を象徴する個人消費を上向かせるための処方箋は示されていない。
 消費活性化の目玉は、所得の低い人に1万5千円を配ることだ。低所得者対策は必要だが、この手のばらまき給付は過去にも期待される効果が出ていない。これまでの事例を検証したのだろうか。
 財源が乏しいため、建設国債の増発による公共事業に頼らざるを得ない。従来の対策と同様に、不急の公共事業を積み増す恐れがある。
 赤字国債の発行は避けるものの、建設国債も将来の返済が必要になる。観光、農業の「21世紀型のインフラ」整備を進めるというが、事業選びは吟味が欠かせまい。
 なぜ今、これだけの規模の財政政策を行うのか。今回の経済対策に対する疑問は、そこに行き着く。
 6月に安倍首相が消費税増税の再延期と経済対策を表明した時、理由は「世界経済のリスク」だった。その後、英国の欧州連合(EU)離脱による市場の混乱はあったが、今は落ち着いている。
 「景気は緩やかな回復基調」とする政府判断との整合性も取れない。首相は最近、経済対策を「未来への投資」と述べたが、目的がすり替わったのではないか。
 金融政策に限界が見え、財政政策にアベノミクスの活路を見いだしたいのが本音だろう。だが、ばらまきと従来型の公共事業が軸では、経済を成長に導くことはできない。
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河北新報 2016年08月03日水曜
社説:経済対策決定/規模に見合う効果あるのか


 「アベノミクスを最大限にふかす」と参院選で約束した手前、規模を「水増し」せざるを得なかったのだろう。
 政府がきのう閣議決定した経済対策だ。事業規模は、当初予想の10兆円をはるかに超える28.1兆円に膨らんだ。
 だが、その中には子育て・介護支援を中心に来年度予算で見込む事業、リニア中央新幹線の計画前倒しにつなげる財政投融資による長期の事業も含まれ、即効性に乏しい。自治体の支出や民間企業の負担分までも加えており、水増しの手法を総動員した形だ。
 来年度の事業を見ても財源がはっきりしないというように、この事業規模に見合う効果が果たして上がるのかどうか、疑問というしかない。
 しかも、当面の景気を刺激する肝心の本年度第2次補正予算における国の支出は約4兆円で、その財源のうち3兆円を公共事業に充てる建設国債(借金)で賄うという。
 さながらかつての土建型予算に逆戻りしたようで、一時的に景気押し上げ効果があったとしても、財政悪化の芽を膨らませはしないか、そうした懸念を抱かざるを得ない。
 国内の景気は、世界経済の先行き不安などから下押しリスクが高まる。経済対策は必要で、円高などから資金繰りに苦しむ中小企業対策、震災復興・防災事業が含まれたことは、一定の評価をしたい。
 だが、安倍晋三首相が強調したように、この経済対策で民需主導の持続的な経済成長が実現するのだろうか。
 対策の柱の一つは、消費税8%増税に伴う負担軽減策「簡素な給付措置」を引き継ぐ形で、住民税非課税の低所得層に1人1万5千円を給付する消費喚起策である。
 だが、1度の給付では消費に回ったとしても需要を先食いするにすぎず、持続は望めない。貯蓄に回る可能性もある。この層は可処分所得が増えず、常に将来不安を抱いているからだ。
 その給付対象数が子どもや高齢者を含め2200万人、国民の5人に1人に上ることを政府は改めて重く受け止める必要がある。特に働く人たちは、今や2千万人に上る非正規労働者とかなりの部分でダブるのは間違いあるまい。
 消費を回復させ持続的な経済成長を実現したいのであれば、この層の底上げにこそ取り組むべきだ。
 経済対策では来年度、子育て・介護支援で保育士の月額6千円、介護職員も平均月1万円の賃上げ実施の待遇改善策を盛り込み、年金を受け取るための加入期間を短縮する無年金対策の実施も掲げた。
 低所得層の底上げを図る施策ではある。だが、いずれも裏付けとなる財源ははっきりしない。「再配分」を掲げ政府が当て込むアベノミクスの成果にしても、円高による企業収益の悪化で税収が伸び続ける保証はない。
 財源となる税収の不確実性を背景に抱え、建設国債の増発による財政リスクが伴う。幾つもの問題をはらんだ経済対策と言わざるを得ない。
 いかに持続可能な成長を実現するか。9月招集の臨時国会で、第2次補正予算案と共に経済対策の効果について審議を尽くさねばならない。
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信濃毎日新聞(2016年8月3日)
社説:経済対策 将来不安を高めるだけ


 規模を大きく見せることにこだわった「張り子の虎」である。
 政府がきのう閣議決定した経済対策だ。総額は参院選前に想定されていた5兆〜10兆円から28兆円超に膨らんだ。
 国や地方自治体の追加歳出7兆円に、補助金を受けた民間企業などの支出分や、国が企業に低利で資金を貸し出す財政投融資などを寄せ集めた。「大型対策」を演出したにすぎない。
 安倍晋三首相は、市場の想定を上回る規模にすることを目指したという。サプライズで効果が上がると思っているのだろうか。
 問題点は多い。まず経済の波及効果だ。低所得者2200万人を対象に1万5千円を給付しても効果は一時的とみられる。公共事業は観光、農業を中心に10兆円超を充てる。現時点で建設、土木業界は人手が不足しており、即効性は低いだろう。
 財源問題はさらに深刻だ。
 円高で企業業績にブレーキがかかって法人税収が伸びず、2015年度の決算剰余金は2500億円余にとどまった。金利低下で過去に発行した国債の利払いが減った分を用いても財源が不足し、借金(建設国債)を積み増す。
 年度途中の国債増発は4年ぶりとなる。20年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標の形骸化がさらに進む。
 リニア中央新幹線の大阪延伸前倒しや、中小企業向けの低利融資などに利用する財政投融資の財源も、国債の一種の財投債だ。返済されることが前提だとしてもリスクは存在する。民間金融機関の融資機会を奪う可能性もある。公共的な資金で民業を圧迫しては本末転倒だ。
 政府は経済対策を決める前に、これまでのアベノミクスの効果を検証したのか。
 経済低迷は、国内の消費が増えないことが要因だ。日銀が大規模金融緩和を続けて金利水準が低下しても、消費者の財布のひもは緩まず、企業は設備投資や賃金引き上げに慎重なままだ。
 その根本的な原因は、少子高齢化や人口減少などに伴う将来不安だ。社会保障制度は将来も維持されるのか、負担は増えないのか。日本の財政は破綻しないのか―。政府がそうした重い課題の解決に正面から向き合う姿勢を見せなければ、消費は増えないだろう。
 一時的な経済効果にこだわって、将来につけを残す今回の経済対策は不安をかえって高める。国会で掘り下げて議論することが求められる。
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神戸新聞 2016/08/03
社説:経済対策/規模優先で効果はあるか


 政府は事業費28兆円超の経済対策を閣議決定した。低所得層を対象にした1人当たり1万5千円の給付や保育士、介護人材の処遇改善など1億総活躍社会の推進、リニア中央新幹線の延伸の前倒しといったインフラ整備が主要な柱だ。
 政府は日銀の追加金融緩和との相乗効果で景気回復の底上げを狙う。実質国内総生産の押し上げ効果は1・3%程度と試算している。
 だが、一時のばらまき的な政策や旧来型公共事業の拡大で、計算どおりに景気が浮揚するかは疑問だ。
 事業費には、国が企業に低利で貸し付ける財政投融資や政府系金融機関の融資枠拡大、補助金を受けた民間企業の支出分なども含む。国や自治体の追加歳出は7兆円超にとどまり、2016年度補正予算に計上されるのは4兆円程度だ。
 安倍晋三首相の「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」との号令で地方自治体の支出や財政投融資も寄せ集めた。
 肝心のアベノミクスは政策の手詰まり感が否めない。それでも市場にインパクトを与えるために規模を優先させたのであれば、「水膨れ」といわれても仕方がない。
 公明党が参院選で公約した「プレミアム商品券」は見送った。一方で家計支援にこだわる同党に配慮して、低所得層への給付を決めた。
 「ばらまき」という点は変わらず、消費喚起につながるか、その実効性は見通せない。
 リニア中央新幹線延伸の前倒しや新幹線の建設加速も盛り込んだ。しかし、人手不足に加えて建設資材も上昇しており、投資に見合う効果が上がるかも未知数だ。
 中小企業の支援も打ち出し、政府系金融機関の融資枠拡大などを掲げるが、世界経済の先行き不安の中、資金需要は不透明だ。
 1億総活躍推進の一環である保育士や介護人材の処遇改善や無年金者の救済策は急務だ。ところが、財源が示されておらず、本当に実行できるのか不安が残る。
 経済対策について安倍首相は「未来への投資」とうたい、規模の拡大を求めた。だが、建設国債を追加発行して財源を確保するようでは将来に新たなツケを回す。
 消費を回復させ景気を底上げするには、持続可能な成長の道筋を示すことが大切だ。
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中国新聞 2016/8/3
社説:経済対策の閣議決定 持続可能か危ぶまれる


 事業規模28兆1千億円に上る経済対策をきのう、政府が閣議決定した。リーマン・ショックの対応に追われた2008年12月の37兆円、09年4月の56兆8千億円に次ぐ規模である。
 だが今のところ、市場の反応は鈍いように見える。財政支出額の「真水」で判断したのだろう。国費でみれば15兆円を上回る額をつぎ込んだ09年に比べ、今回は6兆2千億円という。
 市場の「想定外」を狙うあまり、寄せ集めの政策で金額を膨らませた演出を見透かされたとしても不思議ではない。税収の上振れ分では対処しきれないのに、規模ありきの発想から抜け出せていないからだ。
 政権の触れ込みである「未来への投資」どころか、将来世代へのつけ回しとなる心配はないのだろうか。
 過去の経済対策については、財政規律への影響を含め、効果の検証が十分になされてきたとはいえない。経済同友会が「財政健全化が課題の中、効果の薄いバラマキは避けるべきだ」との懸念を示したのも、それが原因である。
 安倍晋三首相はきのう、「当面の需要喚起だけでなく、民需主導の持続的な経済成長と1億総活躍社会の着実な実現を進めていきたい」とした。だが持続可能性を危ぶまれているのは、財政も同じはずだ。
 むしろ国民が求めているのは少子高齢化の時代でも安心できる経済運営であり、持続し得る社会の見取り図だろう。
 不透明さを増す老後や次世代が背負う負担、地方を悩ませている人口減や一極集中といった課題に対する不安こそが、家計の消費を思いとどまらせ、景気回復の妨げとなってきた。
 具体策の中で、2200万人の低所得者に1人1万5千円を配る現金給付はいかがなものだろう。事務費を含め約3500億円も要する。当初案にはなかったが、不公平感も指摘されてきたプレミアム商品券に替わる消費喚起策として、公明党の求めで盛り込まれたという。
 同様の施策は今まで経済効果が極めて限定的だった。「これまでの消費喚起策の効果を検証し、今後のあり方を検討」との文言を対策に追加したのは言い訳の付け足しにすぎず、語るに落ちた感が拭えない。またもばらまきだと言わざるを得まい。
 今回の経済対策では中小企業支援を柱としたが、最低賃金を引き上げる政権の姿勢とも関わってくる。3%程度とした引き上げ目標に相当する24円増の目安を実現させた。「政治主導が過ぎる」との批判もあるが、正社員でない労働者が4割を超す時代である。低所得層の賃金底上げにつながるに違いない。折しも正社員と非正社員との格差を是正する政策を求める経済財政白書が公表された。
 問題はまさに持続性だろう。中小企業の経営体力をそぎ、雇用減らしにつながれば元も子もない。賃金引き上げの環境づくりとしての支援措置が今回、うたわれた。より具体的で、経営者側が息切れしないような制度設計が欠かせない。
 とりわけ地方にとって、「3%」引き上げについていくのは簡単ではない。最低賃金が最も高い東京と最低ランクの県との差は200円以上あり、しかも開く傾向にある。地方経済への一層のてこ入れが望まれる。
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愛媛新聞 2016年08月03日(水)
社説:政府経済対策 「規模ありき」で効果に疑問残る


 政府は、デフレ脱却に向けた事業規模28兆1千億円に上る新たな経済対策を閣議決定した。
 第2次安倍政権発足以降では2012年度の20兆2千億円を上回る最大規模。参院選で、安倍晋三首相は自身の経済政策を「最大限ふかす」と連呼し、規模にこだわった。農林水産物の輸出拠点や大型クルーズ船に対応する港湾整備などインフラ関連の整備事業が並ぶ。来年度以降の予算で行う事業まで総花的に詰め込んでおり、緊急対策としての効果には疑問が残る。
 膨大な事業費に映るが、経済成長を直接押し上げるとされる「真水」と呼ぶ国や地方自治体の追加歳出は、数兆円にすぎない。残りは国が資金を貸し出す財政投融資(財投)や、実際に使われるか分からない政府系金融機関による融資枠の拡大などをかき集めて、「大型対策」を演出したといえよう。
 消費税増税の再延期で財源のやりくりは厳しく、不足を補うために4年ぶりに建設国債の追加発行に踏み切る。赤字国債と違って使途を公共事業などに限定するが、国の借金であることに変わりはない。財政規律が緩み、一層の財政悪化につながることを強く懸念する。
 安倍政権のこれまでの経済対策は、国土強靱(きょうじん)化をうたった災害対策事業や、「プレミアム商品券」が発行できる自治体向け交付金が柱だった。しかし効果は乏しく、経済の実力を示す潜在成長率は0%台前半と低迷したままだ。先行対策の検証もせずに、新しい対策が示されたことに違和感が拭えない。
 今回は公共事業を成長基盤にする戦略だという。規模ありきの公共事業で国や地方の借金を膨らませた、かつての自民党政権の手法を思い起こさせる。
 リニア中央新幹線の大阪延伸は最大8年前倒しする。財投で3兆円貸し出すが、事業は長期間にわたる上、ただでさえ建設業は人手不足に陥っており、緊急対策に期待される短期的な景気刺激にはなるまい。そもそも財投は「官の肥大化」と批判され、縮小してきたはず。勝手に拡大することは容認できない。
 消費税増税対策としての現金給付は継続する。低所得者へ1万5千円を給付するが、野党や経済団体は「ばらまき」と批判する。個人消費を刺激する狙いだが、将来への不安で新たな消費増になるとは思えない。
 「1億総活躍社会」で掲げる保育や介護の受け皿対策は、財源の裏付けがないままだ。経済対策の成果を財源に充てるというが、円高の長期化によって企業業績は低調で、税収が増える見込みは薄い。実現が見通せない成果を当て込むようでは、本気度を疑いたくなる。
 首相は「未来への投資」と説明するが、大盤振る舞いで目先の景気を持ち上げても、ツケを子どもたちに回すだけだ。財政悪化を避けつつ、所得の再分配を図り広がった格差を是正するなど、暮らしの底上げにつなげる対策こそ急がねばならない。
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徳島新聞 2016年8月3日付
社説:経済対策 効果は期待できるのか


 政府は臨時閣議を開き、事業費28兆1千億円の経済対策を決定した。
 英国の欧州連合(EU)離脱問題などで世界経済が不安定な中、消費喚起や公共事業で内需を下支えして経済を活性化させるのが狙いだ。
 安倍晋三首相は参院選で、「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と連呼した。それだけに、与党や経済界への配慮もあって、市場の想定を上回る規模となった。
 政府は、追加金融緩和を決めた日銀と足並みをそろえ、アベノミクスを再始動させる構えである。
 もとより、経済対策を遂行することで、政策の実効性を上げていくことは重要だが、狙い通りの効果が得られるかどうかは不透明だ。
 市場では「規模ありきで総花的」といった冷ややかな見方が強い。国や地方の支出に加え、融資や民間企業の支出をかき集めて規模を膨らませる形になったからである。
 今回の対策では、円高で企業業績が悪化し、税収が伸びなかったため、公共事業に使う建設国債を発行する。
 金利低下により、過去に発行した国債の利払いが減った分なども使うが、これでは財政再建に逆行している。財政規律が緩めば、深刻なリスクを抱え込む不安があることを忘れてはならない。
 具体策では、1億総活躍社会の実現に向け、低所得者2200万人に1万5千円を給付する。しかし、将来不安を抱える中では、現金給付をしても貯蓄に回り、消費の底上げにはつながりそうにない。
 無年金者救済策としては、年金受給資格を得られる加入期間を現行の25年から10年へと短縮する。保育士や介護人材の処遇改善に加え、返済不要の給付型奨学金を創設することも盛り込んだ。
 社会保障に関する課題は、先送りすればするほど将来へのつけが膨らみ、対処が難しくなる。痛みをどう分かち合うことができるか、踏み込んだ議論が欠かせない。
 疑問なのは、国が資金を貸し出す財政投融資が膨らむ中、リニア中央新幹線の延伸といった長期にわたる事業も見られることだ。
 大型対策を演出したようだが、融資で後押しするリニア建設はJR東海が実施する事業量が大きく増えるわけではなく、経済効果は限られよう。足元の景気をすぐに押し上げる力にはなるまい。
 さらに、既に市中の金利は低く、政府系金融機関が融資を増やしても、民間銀行の事業を圧迫するだけである。
 安倍政権は、税収が今後も伸び続けるという楽観的な前提に立っているように見える。しかし、円高傾向が続く状況で企業業績が停滞し、思惑が外れる恐れもある。
 これまでのアベノミクスの功罪をしっかりと検証するとともに、経済対策の効果を見極めていくことが大事だ。
 財政健全化の道筋をどうつけていくか。これも示してもらいたい。
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=2016/08/03付 西日本新聞朝刊=
社説:経済対策 「未来への投資」になるか


 政府が事業費28兆1千億円に及ぶ経済対策を閣議決定した。参院選の勝利を受け、安倍晋三首相が「アベノミクスのエンジンをフル回転させ、デフレから完全に脱却する」ために指示したものだ。
 英国の欧州連合(EU)離脱問題など国際経済の不透明さが増す中で消費を喚起し内需を下支えして経済の活性化を目指すという。
 事業費は当初の10兆円から3倍近くに膨らんだ。一見すると、大規模な経済対策にも思える。
 実態はどうか。この中には、国が政策目的推進のため民間では対応できないプロジェクトなどに低利で融資する財政投融資や民間支出なども含まれる。日銀のマイナス金利政策で市場金利が下がる中で、財政投融資にどれだけの需要があるか疑問視する声もある。
 「真水」と呼ばれる国と地方自治体を合わせた実質的な歳出は7兆5千億円で全体の4分の1程度にとどまる。厳しい財政事情を抱え、事業規模を膨らませた「苦肉の策」となった感は否めない。
 「未来への投資」とうたった中身も、リニア中央新幹線大阪延伸の最大8年前倒しや整備新幹線の建設などが柱となった。大型の公共事業で景気を刺激する旧来型の手法は変わっていない。
 個人消費のてこ入れ策として、低所得者に対する現金給付も盛り込まれた。最低賃金引き上げなどと合わせて家計を支え、消費を底上げするというが、どれほどの効果があるか甚だ疑問である。
 不足する財源に充てるため建設国債を積み増すのも気掛かりだ。年度途中での国債増発は4年ぶりである。借金の穴埋めに使われる赤字国債とは異なり、公共事業などの投資的経費のために発行される建設国債とはいえ、将来の世代につけを回すことに変わりない。
 その場しのぎの対策では同じことを繰り返すだけだ。財政、金融政策とも限界論が指摘される中、政府が今なすべきことは何か。
 社会保障制度の抜本的改革で国民に安心感を与え、規制緩和による持続可能な経済成長を実現することにこそ全力を傾けるべきだ。
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南日本新聞 ( 2016/8/3 付 )
社説:[政府の経済対策] 水増し手法が目に余る


 政府は、事業費28兆円を超える経済対策を閣議決定した。
 低所得者への1万5000円の給付金、保育や介護人材の処遇改善、リニア中央新幹線の大阪延伸前倒し、英国の欧州連合(EU)離脱問題への対応など多岐にわたる。
 安倍晋三首相は「未来への投資」と位置付け、「総合的かつ大胆な対策」と胸を張る。
 しかし、その内実は、補助金を受けた民間の支出分などまで合算して規模を膨らませたり、財源を借金で補ったりと、多くの問題をはらんでいる。
 ばらまき的な消費喚起策や借金は、将来の財政再建や国民生活に禍根を残すことにつながりかねない。強く懸念する。
 事業費28兆1000億円のうち、国と地方自治体を合わせた歳出の総額は7兆5000億円だ。
 これに、国の信用で調達した低金利の資金を企業に貸し出す財政投融資が約6兆円、経済対策に合わせた民間企業の支出など約15兆円が加わる。
 このうち、2016年度第2次補正予算案に盛り込むのは、4兆円程度にとどまる。17年度予算分や、リニア延伸のように長期にわたる事業までも先取りした。
 さまざまな名目で事業費をかき集めており、「水増し手法」「張り子の虎のよう」と批判の声が上がるのも当然だろう。
 その上、中身にも疑問点が指摘されている。
 低所得者への現金給付は、消費の底上げが狙いだ。消費税率8%引き上げ以降、消費が低迷しているのは事実だが、単発的な給付金では、需要の先食いだけに終わってしまう可能性が否めない。
 リニア建設を後押しする財政投融資は、事業主体のJR東海に約3兆円を貸し付ける。だが、事業量そのものが拡大するわけではなく、経済効果は限定的とみられている。
 財投も国の借金であることに変わりはない。ましてや、「官の肥大化」への反省から縮小してきた経緯もある。財投を拡大に転じるのであれば、国民へ納得のいく説明が必要だ。
 16年度補正予算案で支出する4兆円のうち3兆円程度も、建設国債の追加発行で賄う。赤字国債ではないものの、財政再建への道は一層不透明になりそうだ。
 首相は参院選で、「アベノミクスを最大限にふかす」と連呼していた。しかし、国民が求めているのは、規模ありきの発想や未来にツケを回す政策ではあるまい。
 人口減少と少子高齢化が進む中、着実で安心できる経済運営が望まれる。
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