2016-08-12(Fri)

公強事業ふたたび 「維持や更新を」---大規模開発型よりも

中身より規模ありき 優先順位 議論乏しく 「国土交通省生産性革命プロジェクト」

----政府が2日決めた経済対策で公共事業の積み増しが決まった。
国の借金にあたる建設国債を追加発行して港湾や道路を造る。
公共事業で国土を強靱(きょうじん)化できるのか、それとも政官が過去のように強い利権を握るだけなのか。

----公共事業予算はこれまで大きな転機が2度あった。
構造改革を唱えた小泉純一郎首相が最初に手掛けた02年度当初予算で1割削減。
09年に政権を取った民主党(現民進党)は10年度当初予算で2割近く削った。

----こうした流れを止めたのが安倍政権だ。
政権に返り咲いた直後の12年度補正予算で公共事業を2.4兆円増やした。
当初予算を抑制しつつ、査定が甘い補正予算で大盤振る舞い――。
公共事業が肥大化していった90年代と酷似する。
 
----公共事業は・・・「基幹インフラが未整備だった60~70年代に比べると効果は低下している」(上智大学の中里透准教授)との指摘もある。

----政府・与党内でどのような優先順位で公共事業を実施するかの議論は乏しい。
三菱総合研究所の武田洋子チーフエコノミストは「日本経済が力強さを欠く原因は海外経済の不透明感と消費の弱さにあり、公共事業では解決できない。規模ありきではなく中身の議論をすべきだ」と強調する。

----「21世紀型のインフラを整備していく」。・・・国土交通省内では「どんな事業が当てはまるのか」と戸惑う声が漏れた。

----「維持更新を」
そもそも整備新幹線の計画ができたのは40年以上前の1973年。
当時は田中角栄首相が日本列島改造論を進めていたころで、公共事業は人口増加が前提だった。
経済構造が変わったいま、発想の転換は必要ないのだろうか。
 
東洋大学の根本祐二教授は「新しいものにどんどん投資するより、いまのインフラの維持更新に充てるべきだ」と話す。
日本には60~70年代につくった庁舎、学校、道路や橋が多く、いずれは建て替えが必要になる。
根本氏の試算ではいまと同規模のインフラを維持するためには年8.9兆円もの投資が必要になる。

----今後公共工事を積み増すにあたって、生産性の視点が欠かせない。
大石久和・元国交省技監は「経済成長に資するインフラ投資が不可欠だ」と強調する。
たとえば日本の高速道路の3割は暫定2車線(片側1車線)だが、ドイツはほとんど4車線以上で、6車線以上が3割を占める。
日本は企業の競争力に直結する物流の効率性で見劣りする。
 
国交省は今年を「生産性革命元年」と位置づけ、渋滞解消に効果がある道路整備などを積極的に進めている。

----政府は経済対策の財源として、建設国債を3兆円弱発行する。
年度の途中に追加発行するのは4年ぶりだ。
財政法が赤字国債とは別に建設国債の発行を認めるのは、日本経済を強くするインフラは将来世代にも恩恵があるためだ。
一時的な需要喚起として公共事業を使うのならば、未来に禍根を残す。




以下引用


日本経済新聞 朝刊2016/8/10 3:30
公強事業ふたたび(上)中身より規模ありき 優先順位 議論乏しく
 政府が2日決めた経済対策で公共事業の積み増しが決まった。国の借金にあたる建設国債を追加発行して港湾や道路を造る。公共事業で国土を強靱(きょうじん)化できるのか、それとも政官が過去のように強い利権を握るだけなのか。
「真水」確保を要求
 「戦略的な社会資本整備にしっかり取り組みたい」。3日、再任が決まった石井啓一国土交通相は力説した。経済対策ではインフラ整備が柱の一つになった。
 この流れをつくったのは自民党議員だ。7月20日、同党本部で開かれた国土交通部会は公共事業予算の積み増しを求める決起集会になった。「何といっても真水が重要だ」「しっかり真水を確保して、地方がやりたいことをできるように」
 出席した議員が口にした「真水」とは国の直接の財政支出を指す。事業規模の割に直接の財政支出が小さい中小企業向けの融資枠などに比べ、景気押し上げ効果が高いとされる。理論的な支柱は内閣官房参与を務める藤井聡・京都大学教授だ。藤井氏は「デフレ脱却には短期的な内需拡大が不可欠で、10兆~15兆円の真水が必要だ」と話す。
 真水を求めるのは別の事情もある。公共事業の予算が減り続けているのだ。2016年度当初予算で公共事業関係予算は約6兆円と、補正予算を含めてピークだった1998年度の半分以下。群馬県建設業協会の青柳剛会長は「多くの地域で公共事業が減り、建設会社は疲弊している。このままではいざというときの除雪作業や災害復興を建設業が担えない」と漏らす。
自治体の不満
 地方自治体の不満もたまっている。国交省が自治体に配る道路整備などの交付金は2兆円ほどで、16年度は自治体の要望の55%しか予算を確保できなかった。この割合は年々下がっており、鳥取県の平井伸治知事は「住宅や下水道の整備など身近な事業ができなくなってきている」と話す。
 公共事業予算はこれまで大きな転機が2度あった。構造改革を唱えた小泉純一郎首相が最初に手掛けた02年度当初予算で1割削減。09年に政権を取った民主党(現民進党)は10年度当初予算で2割近く削った。農地や排水路、農業用ダムなどを整備する農業土木の分野は削減額が大きく、かつて年6千億円ほどあった予算が3分の1まで減った。
 こうした流れを止めたのが安倍政権だ。政権に返り咲いた直後の12年度補正予算で公共事業を2.4兆円増やした。当初予算を抑制しつつ、査定が甘い補正予算で大盤振る舞い――。公共事業が肥大化していった90年代と酷似する。
 公共事業は一部が個人の貯蓄に回ってしまう減税に比べ、消費や民間投資を刺激する効果が高いとされる。経済学で乗数効果といわれるが、「基幹インフラが未整備だった60~70年代に比べると効果は低下している」(上智大学の中里透准教授)との指摘もある。
 政府・与党内でどのような優先順位で公共事業を実施するかの議論は乏しい。三菱総合研究所の武田洋子チーフエコノミストは「日本経済が力強さを欠く原因は海外経済の不透明感と消費の弱さにあり、公共事業では解決できない。規模ありきではなく中身の議論をすべきだ」と強調する。



日本経済新聞 朝刊2016/8/11 3:30
公強事業ふたたび(下)「21世紀型」を提唱 生産性の向上が課題
 「21世紀型のインフラを整備していく」。安倍晋三首相が経済対策の検討を表明した7月11日、国土交通省内では「どんな事業が当てはまるのか」と戸惑う声が漏れた。
官邸の関心なぞる
 国交省の原案をもとに対策に盛られた事業は整備新幹線、開かずの踏切対策、熊本地震の復興まで総花的な内容だった。批判をかわすために「防災減災」などを前面に出す時期もあったが、最近はもっぱら観光推進や一億総活躍など首相官邸の関心事項にそのまま乗っかる傾向が目立つ。
 実は麻生太郎首相(当時)が編成を指示した2009年度補正予算にも「21世紀型インフラ整備」として約2兆5千億円を計上した。このときも道路や港湾、整備新幹線などメリハリを欠いた。
維持更新を」
 そもそも整備新幹線の計画ができたのは40年以上前の1973年。当時は田中角栄首相が日本列島改造論を進めていたころで、公共事業は人口増加が前提だった。経済構造が変わったいま、発想の転換は必要ないのだろうか。
 東洋大学の根本祐二教授は「新しいものにどんどん投資するより、いまのインフラの維持更新に充てるべきだ」と話す。日本には60~70年代につくった庁舎、学校、道路や橋が多く、いずれは建て替えが必要になる。根本氏の試算ではいまと同規模のインフラを維持するためには年8.9兆円もの投資が必要になる。
 豊島区は旧庁舎跡地を東京建物などに貸し出し、移転費用を捻出した。複数の公共施設を1カ所にまとめる「省インフラ」の発想も地方に広がる。国交省はPPP(官民パートナーシップ)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)などに取り組むが、規模優先の経済対策の前ではかすむ。
 今後公共工事を積み増すにあたって、生産性の視点が欠かせない。大石久和・元国交省技監は「経済成長に資するインフラ投資が不可欠だ」と強調する。たとえば日本の高速道路の3割は暫定2車線(片側1車線)だが、ドイツはほとんど4車線以上で、6車線以上が3割を占める。日本は企業の競争力に直結する物流の効率性で見劣りする。
 国交省は今年を「生産性革命元年」と位置づけ、渋滞解消に効果がある道路整備などを積極的に進めている。5月には経団連と意見交換し、経済界の企業側のニーズも聞き取った。
 農林水産省は15年度補正予算からKPI(重要業績評価指標)と呼ばれる考え方を導入した。予算執行を生産性の向上につながるプロジェクトに絞る試みだ。かつて農業土木予算が温泉施設の建設などに使われ、農業の競争力強化につながらなかったという強い反省がある。
 政府は経済対策の財源として、建設国債を3兆円弱発行する。年度の途中に追加発行するのは4年ぶりだ。財政法が赤字国債とは別に建設国債の発行を認めるのは、日本経済を強くするインフラは将来世代にも恩恵があるためだ。一時的な需要喚起として公共事業を使うのならば、未来に禍根を残す。
 木原雄士、中戸川誠が担当しました。

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<参考>

国土交通省生産性革命プロジェクト
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_tk_000021.html
 我が国は人口減少時代を迎えていますが、これまで成長を支えてきた労働者が減少しても、トラックの積載率が41%に低下する状況や道路移動時間の約4割が渋滞損失である状況の改善など、労働者の減少を上回る生産性を向上させることで、経済成長の実現が可能です。
 そのため、省内に「国土交通省生産性革命本部」を設置し、省を挙げて「社会のベース」、「産業別」、「未来型」の3つの分野の生産性向上に取り組み、我が国経済の持続的で力強い成長に貢献します。
国土交通省生産性革命本部
開催日
国土交通省生産性革命本部(第2回会合) 平成28年4月11日  
会議資料
 議事次第
 資料  : 国土交通省 生産性革命プロジェクト第2弾
 参考1 : 「国土交通省生産性革命本部」の設置について
 参考2 : 国土交通省生産性革命プロジェクトの推進
議事要旨

国土交通省生産性革命本部(第1回会合) 平成28年3月7日  
 議事次第  
 資料1 : 「国土交通省生産性革命本部」の設置について
 資料2 : 平成28年3月4日(金)石井大臣会見冒頭発言要旨
 資料3 : 国土交通省生産性革命プロジェクトの推進 
 資料4 : 国土交通省 生産性革命プロジェクト第1弾

 石井国土交通大臣によるプレゼンテーション(平成28年4月25日経済財政諮問会議)
 石井大臣は、平成28年4月25日に開催された経済財政諮問会議において、プレゼンテーション「人口減少下における社会資本整備のあり方 ~生産性革命による経済成長と国民生活の安全・安心の確保へ~」を行いました。
 プレゼンテーション資料はこちら。

生産性革命の取組に関する日本経済団体連合会との懇談会(平成28年5月23日)
 石井大臣は、5月23日(月)に、「生産性革命の取組に関する日本経済団体連合会との懇談会」に出席しました。
 石井大臣は冒頭の挨拶で「皆様と有意義な意見交換を行って、生産性革命プロジェクトに一層磨きをかけたい」と述べました。
 国土交通省からは、これまでに生産性革命プロジェクトとして選定された「生産性革命に向けたピンポイント渋滞対策」など、13のプロジェクトを紹介し、榊原定征会長をはじめ日本経済団体連合会役員との闊達な意見交換を行いました。
 日本経済団体連合会からは全面的な支持が示され、国土交通省と日本経済団体連合会は、官民一体となって生産性革命に取り組むことにより、我が国経済の持続的で力強い成長に貢献していくことで一致しました。
 〇会議資料はこちら。
 〇懇談会の様子

国土交通省総合政策局政策課
電話 :03-5253-8111(内線24-232、24-235)
直通 :03-5253-8257
ファックス :03-5253-1548

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平成28年3月4日(金)石井大臣会見 冒頭発言要旨 資料2
http://www.mlit.go.jp/common/001122231.pdf
国土交通省生産性革命プロジェクトの推進について申し上げます。パネルを御覧いただきたいと思います。我が国は、2010年の1億2806万人をピークに人口減少が始まり、しかも極めて速いスピードで高齢化も進みつつあります。2030年までの20年間、貴重な労働力である生産年齢人口は毎年1%近く減少していくと見込まれております。
このように、これまで経済を支えてきた勤勉で豊富な労働力は減少し続けるといたしましても、例えば、トラックの積載率が5割を切る状況や、道路移動時間の約4割が渋滞に費やされている状況など様々な社会の「ムダ」を減らし、生産性を向上させていけば、経済成長を続けていくことは十分できると考えております。
かつての高度経済成長期の実質GDP成長率は1956年~1970年までの間の年平均で9.6%もありましたけれども、一方で、その間の労働力人口の伸び率は年平均1.4%程度でありまして、高度成長の大部分は生産性の向上がもたらしたものであると言うことができます。
近年、その生産性が低下しており、生産性向上こそが、これからの成長のキーワードということになります。労働者数が減っても生産性が上がれば経済成長を確保することが十分できる。これから、ますます生産性の向上が必要だということでございます。
生産性向上といえば、まず何といっても、急速に発達しつつあるICT、IoT、ロボット技術の活用など「未来型」の投資や新技術を活用するものが欠かせません。
しかし、それだけでなく、かつて東名高速道路や東海道新幹線の全通が高度成長をもたらしたように、都市の渋滞解消による時間短縮、事故や災害リスクの低減など、いわば「社会のベース」の生産性向上に取り組むことで、新たな需要を取り込んで消費を喚起するなど、より広範囲で大きな効果が期待できます。
加えて、サービス産業など生産性の低い「産業別」の生産性向上も急務です。
国土交通省は、国民経済や国民生活の基盤である社会資本や観光、物流など幅広い分野を担っております。省を挙げて「社会のベース」、「産業別」、そして「未来型」の3つの分野の生産性向上に取り組むことで、我が国経済の持続的で力強い成長に貢献できると思っております。
そこで、私は、本年を「生産性革命元年」と位置づけ、省内に「国土交通省生産性革命本部」を設置し、総力を挙げて生産性革命に取り組むことといたしました。来週7日月曜日に第1回会合を開催いたします。
今後、月1回程度開催し、熟度の高まったものから順次プロジェクトとして発表してまいります。また、経済団体からも広く御意見を伺いたいと考えております。
次に、各カテゴリーの3つのプロジェクトの候補例をいくつか紹介いたします。パネルの2枚目を御覧いただきたいと思います。
まず、「社会のベース」の生産性を高めるプロジェクトの候補例でございますが、「ピンポイント渋滞対策」というのがございます。これは、構造的な渋滞要因をデータで特定し、ピンポイントで効率的な渋滞対策を実施するものであります。また、「渋滞をなくす賢い料金」もあります。環状道路の整備で渋滞緩和が進んだところ、利用重視の賢い料金体系を導入することで、環状道路の効果を生かし更なる渋滞緩和を図ります。まずは、本年4月より首都圏で導入いたします。
次に、「産業別」の生産性を高めるプロジェクトの候補例ですが、「本格的なi-Construction への転換」は、調査・測量、設計、施工・調査及び維持管理・更新のあらゆるプロセスにICTを取り入れることで生産性を大幅に向上するものです。今月末までに、測量や検査等の15の基準とICTの建設機械のリース料を含む新積算基準を整備し、来年度より導入いたします。国が行う大規模な土工については、原則としてICTを全面適用したいと思います。
最後に「未来型」投資・新技術で生産性を高めるプロジェクトの候補例ですが、「急所を特定する科学的な道路交通安全対策」は、これまでの事故の対策は、実際に事故が発生した箇所に対症療法的に行うことが中心でしたが、これからは、ビッグデータを活用し、潜在的な急所を事前に特定することで事故を科学的に防ぐ対策を全国各地で展開をいたします。
こうしたプロジェクトにつきまして、本部会合で取り上げてまいります。本日示しました個別プロジェクト例の詳細につきましては、担当局にお尋ねいただきたいと思います。私からは以上でございます。

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