2016-10-07(Fri)

耐震基準を維持 熊本地震受け方針、旧ストックは建替・改修

熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書・国交省の取り組み方針

----国土交通省は5日、熊本地震で建築物に発生した被害を踏まえ、全国で推進する対策の実施方針を発表した。

1981年6月に導入された建築基準法の現行耐震基準が倒壊防止に有効だったと評価。
引き続き現行基準に基づいて耐震性能の確保を目指す。

木造住宅を念頭に、81年6月以前に建てられた旧基準のストックは建て替えや耐震改修を促進。
柱や梁などの接合部の規定が強化された2000年6月以前に建てられたストックは接合部の対策を進める。
(日刊建設工業新聞)

資料1-1  熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書 概要(PDF形式:2.1MB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147916.pdf
資料1-2  熊本地震における建築物被害の原因分析を踏まえた主な取組方針(PDF形式:359KB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147917.pdf




以下引用


社会資本整備審議会>建築分科会>
建築物等事故・災害対策部会
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s203_taisaku01.html
第23回(2016年10月5日)
開催案内 http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000634.html
配布資料 http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house05_sg_000205.html
第23回建築物等事故・災害対策部会 配布資料
議事次第及び配布資料一覧(PDF形式:142KB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147918.pdf
建築物等事故・災害対策部会 委員名簿(PDF形式:70KB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147919.pdf
資料1-1  熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書 概要(PDF形式:2.1MB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147916.pdf
資料1-2  熊本地震における建築物被害の原因分析を踏まえた主な取組方針(PDF形式:359KB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147917.pdf
参考資料1  熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書(PDF形式:3.10MB)
http://www.mlit.go.jp/common/001147923.pdf
(建築物等事故関係は略)
*************************************

熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書について
平成28年9月30日
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000633.html
 今般、国土交通省国土技術政策総合研究所及び国立研究開発法人建築研究所において合同開催された「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告書がとりまとめられましたので、お知らせいたします。
 本委員会は、建築構造の専門家、建築設計や建築審査の実務者を委員とし、国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所及び一般社団法人日本建築学会等が実施している建築物被害調査内容について、幅広く収集・整理するとともに、調査結果や関連データ等により、専門的、実務的知見を活かして、建築物被害の原因分析を行うことを目的として設置されました。
 今般、同委員会の報告書がとりまとめられましたので、お知らせいたします。

【委員会経緯】
・第1回 平成28年5月26日
・第2回 平成28年6月30日
・第3回 平成28年9月12日
添付資料
(報道発表)熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書について(PDF形式)
http://www.mlit.go.jp/common/001147050.pdf
熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書<概要版>(PDF形式)
http://www.mlit.go.jp/common/001147568.pdf
熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書(PDF形式)
http://www.mlit.go.jp/common/001147336.pdf

国土交通省住宅局建築指導課 
TEL:(03)5253-8111 (内線39-528、39-537)
国土技術政策総合研究所基準認証システム研究室 
TEL:029-864-2211
国立研究開発法人建築研究所構造研究グループ 
TEL:029-864-2151
************************************

日本経済新聞 朝刊 2016/10/6 3:30
耐震基準を維持 国交省が方針
 国土交通省は5日、熊本地震の建築物被害の分析結果を受け、現行の耐震基準を維持する方針を明らかにした。1981年に導入された現行の耐震基準は同地震でも有効性が確認されたと評価。今後は中古住宅を含めて現行基準が求める耐震性能の確保を目指す。
 同日開かれた社会資本整備審議会の建築分科会で同省が説明した。地震後に同省などが設置した建築物の被害状況を分析する有識者委員会が9月に現行基準の有効性を認める報告書をまとめたことを受け、同省として方針を決めた。
 中古住宅については、リフォーム時に現行基準の耐震性能が確保されているかどうかを確認する効率的な方法を今年度中をめどに取りまとめる考えを示した。


日刊建設工業新聞  [2016年10月6日1面]
国交省/現行耐震基準を継続/熊本地震受け方針、旧ストック建替改修
 国土交通省は5日、熊本地震で建築物に発生した被害を踏まえ、全国で推進する対策の実施方針を発表した。1981年6月に導入された建築基準法の現行耐震基準が倒壊防止に有効だったと評価。引き続き現行基準に基づいて耐震性能の確保を目指す。木造住宅を念頭に、81年6月以前に建てられた旧基準のストックは建て替えや耐震改修を促進。柱や梁などの接合部の規定が強化された2000年6月以前に建てられたストックは接合部の対策を進める。
 対策実施方針は、同日開かれた社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会の建築物等事故・災害対策部会で報告された。
 主に木造住宅を対象とした旧耐震基準ストックの建て替えや耐震改修は、現行の建設費補助事業や、16年度第2次補正予算案で拡充を目指す耐震診断費補助事業の活用などを通じ促進する。
 00年6月以前に建てられたストックの接合部の対策は、耐震診断のルールで建築物全体としている確認対象箇所を16年度末までに接合部に絞って加速させる。
 主に体育館やホールに設置されているつり天井の耐震改修も促進。改修費への補助単価を現在の1平方メートル当たり3万円から倍程度に引き上げる。17年度の予算概算要求でこれに必要な経費を計上している。
 災害時に避難住民の受け入れ拠点となる庁舎や公民館などの施設管理者に対し、受け入れ拠点としての機能を継続できるようにするための対策を整理したガイドラインを17年度末までに作る。引き続き住宅性能表示制度の普及に向けた広報活動も推進し、消費者に高い耐震性能の住宅の購入を促す。
 当初、今回の対策実施方針の検討で焦点となっていた告示で地域別に定める設計震度の補正(割引)係数「地震地域係数」の見直しは、熊本地震で係数の大小が要因となって倒壊するような被害は確認されなかったとして、中長期的な検討課題に位置付けた。
 対策実施方針の内容は、熊本地震の建築物被害の原因究明を行ってきた国交省の有識者委員会が9月30日にまとめた最終報告の内容をほぼすべて反映させた。


日刊建設工業新聞  [2016年10月3日2面]
熊本地震/国交省有識者委、建築物被害原因分析で最終報告/現行耐震基準は有効
 熊本地震で多発した建築物の被害原因を分析してきた国土交通省の有識者委員会は9月30日、2000年6月に強化された現行の建築基準法の耐震基準が倒壊・崩落防止に有効だったと評価する最終報告をまとめた。焦点の一つだった国交相告示で地域別に定める設計震度の補正(割引)係数「地震地域係数」の見直しは、特に大きな被害が広がった木造建築物で係数の大小が要因となって倒壊するような被害は確認されなかったとして、中長期的な検討課題に位置付けた。
 最終報告では震度7の揺れが2度起きた熊本県益城町にある建築物の被害状況をまとめた。1981年6月以前までの旧耐震基準で建設された建築物の91・2%(785棟)に大小何らかの被害が出たが、00年6月に強化された現行耐震基準を満たしたS造の建築物にはほとんど被害は見られず、RC造の建築物の被害はゼロだった。
 最終報告ではこれらの被害結果を踏まえ、旧耐震基準の木造建築物を中心に耐震化を促す必要性を指摘したが、地震地域係数の見直しは当面見送るとした。
 国交省は、5日に開く社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会の建築物等事故・災害対策部会で最終報告を受けた今後の対応方針を報告する。

熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書
【概要】委員会報告書
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/0930/summary.pdf
【本文】委員会報告書
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/0930/text.pdf

国土交通省国土技術政策総合研究所
熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会
(建築構造基準委員会・建築研究所熊本地震建築物被害調査検討委員会)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/kumamotozisinniinnkaikaisaizyoukyou_handouts.htm
第3回 (2016/09/12)
議事概要(速報)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912gizigaiyousokuhou.pdf
第3回 配布資料
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912shiryou.htm
議事次第 http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912gizishidai.pdf
委員名簿 http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912meibo.pdf
資料1      委員会報告書概要(案)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912shiryou1.pdf
資料2      委員会報告書(案)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912shiryou2.pdf
参考資料1   平成28年(2016年)熊本地震による建築物等被害第十三次調査報告(速報)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912sokuhou13.pdf            
参考資料2   「熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について」緊急提言
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912sankou2.pdf
            
参考資料3   熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(第2回) 議事要旨
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0630giziyoushi.pdf            
上記を一度にダウンロード  (配布資料一式)
http://www.nilim.go.jp/lab/hbg/kumamotozisinniinnkai/20160912pdf/0912isshiki.pdf

*************************************

日経アーキテクチュア 2016/09/14
2016年熊本地震
「2000年基準は熊本地震の倒壊防止に有効」との結論
 国土交通省が設置した、有識者による「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」(委員長は東京大学の久保哲夫名誉教授と同大大学院工学系研究科建築学専攻の塩原等教授)が9月12日に開催され、報告書案が大筋で了承された。
 報告書案のポイントは、「接合部の仕様などが現行規定どおりのものは、今回の地震に対する倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められる」と記されたことだ。熊本地震では2000年基準で建てられた木造住宅が7棟倒壊したことから、建築基準法を改正するかどうかに関心が集まっていた。今回の報告書案によって、建基法の大きな改正はないとの見方が強まっている。
 委員会がこう記載したのは、2000年基準の倒壊率が低いと判断したからだ。熊本県益城町で実施した悉皆調査の直近(9月12日時点)の集計では、2000年基準で建てられた323棟中2.2%(7棟)が倒壊、3.7%(12棟)が大破(全壊と同意)となった。
●悉皆調査による木造の建築時期別の被害状況
(資料:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書案)
 さらに、倒壊した7棟中の3棟が、接合金物の仕様において現行規定に適合していない違反建築だった。また、別の1棟は、敷地の崩壊と基礎の傾斜が確認されたことから、地盤変状が被害原因とされた。このように、2000年基準そのものが倒壊の直接的な原因でなかったことが、「2000年基準は有効」との結論につながったとみられる。
 ただし、残る3棟は現時点で建物に関する明確な被害要因が確認できていない。1棟は地盤の特性、2棟は震源の特性に起因して局所的に大きな地震動が作用した可能性を上げることに留まった。地盤の特性に起因する1棟は益城町辻の城地区に建つ住宅性能表示制度で耐震等級2を取得していた住宅、震源に起因する2棟は同町宮園地区の南側に建つ住宅だとみられる。この3棟については、原因分析のための情報収集を続ける必要があるとされた。
 3棟の倒壊原因が不明なまま2000年基準を有効としたことについて委員会は会見で、「壁量計算、限界耐力計算、時刻暦応答解析など色々な解析をしているがまだ分からない。宿題が残っている状態だが、現段階では全体的にみて有効だったと結論付けた」と話す。

等級3はほぼ無被害
 報告書案は、住宅性能表示制度の耐震等級3を取得していた住宅の被害状況を新たに紹介した。悉皆調査範囲内に該当する住宅が16棟あり、14棟が無被害、2棟が軽微または小破の被害だった。耐震等級3の有効性を裏付けるものだ。
 悉皆調査における旧耐震基準の住宅と2000年5月までの新耐震基準(新耐震基準)の住宅の、直近の倒壊率も報告された(9月12日時点)。旧耐震基準は770棟中27.9%(215棟)、新耐震基準は862棟中8.7%(75棟)だ。第2回の委員会で出された倒壊率より若干下がったが、阪神・淡路大震災の神戸市中央区での悉皆調査の倒壊率を上回った。
 新耐震基準もしく2000年基準で益城町に建てられ、倒壊した木造住宅で、柱頭柱脚金物を確認した95棟(悉皆調査対象エリア外に建つ住宅も含む)の調査結果も報告された。柱頭柱脚金物が現行規定を満たしていると推定されるものは4棟のみで、残りの91棟は現行規定を満たしていない可能性がある。同様の条件で筋かい端部金物を確認した68棟の調査結果は、現行規定を満たしていると推定されるものが18棟、現行規定を満たしていない可能性があるのは50棟だった。
 これを受けて、木造住宅で今後具体的な措置を検討してほしい項目として次の三つを挙げた。一つは、旧耐震基準住宅の耐震化の一層の促進。二つ目は、新耐震基準で2000年基準の規定に適合しない住宅の被害抑制。三つ目は、住宅性能表示制度の活用。
 国土交通省は既に2016年度第2次補正予算案で、耐震改修の補助限度額を加算することを掲げている。旧耐震基準への補助金アップや新耐震基準への対象拡充が期待される。

阪神や中越地震を上回る地震動
 地震動については、周期0.5~1秒の範囲と周期1~2秒の範囲で、阪神・淡路大震災で観測されたJR鷹取や中越地震で観測された川口町川口の地震動を上回るものが観測されたことが改めて報告された。また、益城町では数100mしか離れていないにもかかわらず地震動の違いが見られ、周期0.5~1秒の範囲で最も大きい地震動が宮園地区の北側に発生したことが、この地区の被害集中に影響している可能性があると報告された。
●熊本地震と過去の地震の擬似加速度応答スペクトルの比較
TMP1~3が大阪大学の秦吉哉さんが観測した本震の地震動。TMP2とTMP3は周期0.5から1秒の範囲で過去の大地震の地震動を上回った。TMP3が益城町宮園地区の北側で観測されたもの。NSは南北、EWは東西を示す(資料:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書案)

鉄骨造は新耐震が6棟倒壊
 木造以外については、新耐震基準の鉄骨造建築物219棟中、6棟が倒壊した。1棟は柱梁の不十分な溶接、1棟は不適切な柱梁耐力比による柱の降伏が原因だと考えられる。それらの対策が「1997年版建築物の構造規定」や「1996年版冷間成型角材鋼管設計・施工マニュアル」で示される以前の建築物だった。残る4棟は隣接建築物などの衝突や地盤崩壊が原因だ。
 免震建築物については、過去の地震被害になかったものが幾つか発生していた。ダンパーの取り付け基部の鉄筋コンクリート部材が、断面寸法や配筋不足などにより損傷を受けて、免震部材の変形に追従できなくなった事例などだ。
 鉄筋コンクリート造と非構造部材については、過去の地震でも繰り返されている被害がほとんどだったことから、被害事例と対策方法の周知の必要性が示された。
●構造別・建築時期別の建築物被害状況
(資料:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書案)

地震地域係数は論点にならない
 庁舎や防災・避難・救助の拠点施設については、構造上の大きな被害は免れたが、構造部材や非構造部材が一部損傷したなどで建物を使用できなくなったものが複数発生した。建基法は最低基準なので、構造部材や非構造部材が全く損傷しないことや、被災後に継続して使用できることまで求めていない。だが、今回の報告書案では、庁舎や防災・避難・救助の拠点施設は機能を継続するために、何らかの検討が必要であることが示された。
 このほか、地震地域係数が委員会で論点とならなかったことも報告された。地震地域係数を考慮しない壁量計算で設計している木造住宅が倒壊している事例や、溶接が不適切な鉄骨造建築物が倒壊しているケースなど、地震地域係数の大小が原因で倒壊した建物が確認されなかったからだ。
 熊本地震は震度7が2回発生したことが特徴だが、報告書案では前震と本震を別々に扱うのではなく一連の地震として被害分析に当たった。そのため、建基法が2回の大地震を想定していないことについても議論から外れた。
  報告書案は12日の委員会で出た意見を盛り込み、9月末までに最終的な報告書としてまとめられる予定だ。国土交通省は最終の報告書を踏まえ、建基法など関連法規の見直しの有無を判断するという。委員会で配布された報告書案などは、国立研究開発法人建築研究所のホームページからダウンロードできる。
荒川尚美 [日経ホームビルダー]

日経アーキテクチュア 2016/09/14
記者の目
2000年木造基準3棟の倒壊原因の究明が待たれる
 「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」は9月12日に公開した報告書案で、2000年基準で倒壊した木造住宅3棟の倒壊原因を特定しないまま、2000年基準が熊本地震の倒壊防止に有効との結論を下した。そのため課題として、3棟の倒壊原因の調査は続ける必要があり、新たな報告があった場合は、適切な措置を講じることを期待する、と記した。
 木造住宅の耐震性確保は、現状の仕組みのままでよいのだろうか。調査に協力してくれた被災者のためにも、できるだけ早く倒壊原因を突き止め、対策方法を示してほしい。
 報告書案には、3棟についてこれまで実施してきた解析の過程と今後必要な調査などが記載されている。日経ホームビルダーでも2016年7月号と9月号の特集で、この3棟とみられる住宅の倒壊原因を分析した。それらを基に、3棟について分かっていることや課題などを挙げる。
 報告書案では3棟を、A-1、A-2、A-3と記載している。A-1は益城町辻の城地区に立つ住宅性能表示制度の耐震等級2を取得していた住宅(日経ホームビルダー9月号では住宅Aと記載)、A-2とA-3は同町宮園地区の南側に建つ住宅(同9月号では住宅B、住宅Cと記載)だとみられる。
 委員会はまず、この3棟と益城町中心部に立つ無被害もしくは軽微な被害の木造住宅(無被害住宅)について、建基法の必要壁量に対する存在壁量の充足率(余裕率)などを比較した。その結果、3棟が無被害住宅と同程度の壁量を備えていたことが確認された。つまり、建基法上の壁量充足率と倒壊の有無は因果関係が認められなかった。
・益城町中心部に立つ、図面を入手した木造住宅の壁量充足率(余裕率)の比較。「令46条」は建基法の必要壁量を分母として存在壁量を充足率を算出したもの。「評価方法基準」は住宅性能表示制度で耐震等級1に相当する必要壁量を分母として算出したもの。A-4は2000年基準で層崩壊した別の1棟を示す(資料:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書案)

A-1は解析では倒壊しない結果に
 次に、3棟の図面に基づく立体モデルを使い、それぞれの住宅の近くで観測された地震動(A-1はKiK-net益城、A-2とA-3は大阪大学助教の秦吉弥氏が宮園地区の南側で観測したTMP3)を地震応答解析ソフトのウォールスタットに入力して、時刻歴応答解析を行った。
 A-1はぎりぎりで倒壊しない結果となった。実際には倒壊したが解析では倒壊しなかったことから、入力した地震動よりも何らかの原因で揺れが増幅したことが、倒壊の一因である可能性を示唆した。
 A-2とA-3はどちらも倒壊した。入力した地震動のTMP3は、熊本地震で観測された地震動の中では周期0.5~1秒が最も大きいものだったことが、倒壊の一因である可能性を示唆した。

建物荷重の検証が求められる
 日経ホームビルダーでは、A-3とみられる住宅に、ALC板(軽量気泡コンクリート)の外壁、土葺き下地の瓦屋根、約3mの階高、袖壁で支えられたバルコニーなど、建基法では考慮していない荷重の要素が見つかったことに注目。建基法の必要壁量は実際の建物より少なくなる傾向があるため、荷重を詳細に拾い、工学院大学の宮澤健二名誉教授の協力で壁量充足率を再計算した。
 壁量充足率は0.6程度になり、実際の荷重に対して壁量が不足していることが、倒壊を招いていると可能性が示された。壁量計算の根拠となる建物荷重の検証が求められる。
・外装材にALC板を採用し、瓦屋根の下に土を敷いていた。南側にはオーバーハングバルコニーを設けていた。建基法の壁量計算の方法で算出した1階と2階の荷重の合計は約250kN、仕様に基づき詳細に算出した同荷重は約580~590kNとなった(写真:日経ホームビルダー)
 A-2とみられる住宅は、セットバックした2階の外壁の直下の1階に壁がなく、倒壊していた東西方向の耐力壁直下率は14.5%と低いことが日経ホームビルダーの取材で分かった。下屋の水平構面に使っていた小幅板がばらばらになっていたので、上階から下階の耐力壁に力を伝達できなくなり倒壊したと推定した。耐力壁の上下階のつながりの善しあしと、倒壊の関係の解析も期待したい。
 A-1とみられる住宅は、隣地より約5m盛り土した軟弱な地盤に立ち、長さ5.5mの鋼管杭を施工していた。軟弱地盤を鋼管杭で補強していたことが、地震動の増幅にどの程度影響したかの解析が待たれる。
 なぜ被害が地域的に集中したのかの解明も待たれる。報告書案では、一般的に地盤が弱く揺れやすいと言われる「氾濫平野と旧河道」での建物の倒壊棟数と比べると、地盤がそれほど弱くないと言われる「河岸段丘の段丘面」のほうが倒壊棟数が多いことも示された。そのため今後、深層までのボーリング調査や地質調査を追加で実施するという。
 地形や地質が地盤の耐震性能や建物の倒壊にどう関係するかは、最も必要とされる知見だ。将来は、新築時に実施する地盤調査の報告書にこうした情報が盛り込まれ、建物の耐震性能の検討に役立つようになるとよい。
荒川 尚美 [日経ホームビルダー]


日経アーキテクチュア 2016/09/09
ケンセツ的視点
81年~2000年住宅の8割超が大地震で倒壊の恐れ
 1981年以降に建てられた住宅、いわゆる新耐震住宅のうち、1981年から2000年の間に危険な建物があることが改めて明らかになった。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が8月31日に発表した調査結果によると、同期間に建てられた住宅のうち8割超が大地震(数百年に一度の極めてまれな地震)の際に倒壊する恐れがあるという。
 「倒壊する可能性がある」と診断された住宅の比率(22.90%)と「倒壊する可能性が高い」と診断された住宅の比率(61.59%)を合わせた結果だ。
 この調査は、木耐協が毎年データを追加・分析し発表しているものだ。調査の対象は、1950年から2000年5月までに着工された2階建て以下の木造で、在来軸組工法の住宅。同協会が実施した耐震診断の結果を集計した。
 調査のベースとなった住宅は、住まい手が耐震診断を希望していることから、そもそも耐震性に不安があるような建物だったことは否めない。調査結果は多少上振れしていることも考えられる。
 そのことを前提としても、新耐震住宅と称されていながら、倒壊の恐れがある比率がこれほど高いのは驚きだ。
熊本地震で9.1%が倒壊・崩壊
 戸建て住宅の場合、耐震基準と呼び方の関係が少し複雑だ。1981年に建築基準法が改正されたことから、1981年より前を旧耐震、以降を新耐震として分類するのが一般的だ。だが、木造住宅は2000年に耐震基準に関連する告示が示された。このため、現行の基準を満たしているものは、2000年以降に建てられた住宅となる。つまり、1981年~2000年の間に建てられた住宅は、新耐震と呼ばれながらも、中には現行の基準である2000年基準を満たしていない、いわば、既存“耐震”不適格の住宅があるという状態だ。
 なぜ国はこのような危険な状況を積極的に解消しようとしないのだろうか。国が「国土強靱化アクションプラン2016」で掲げる目標を見ると、1981年以前のいわゆる旧耐震住宅の耐震化に軸足を置いているのが現状だ。国はまず危険性が高い旧耐震からの対応を進めたいという思惑があるのかもしれないが、この4月に発生した熊本地震では1981年から2000年の住宅でも耐震性に課題を抱えていることが浮き彫りになった。
 日本建築学会が実施した熊本地震の悉皆調査では、1981年~2000年の住宅800棟のうち9.1%(73棟)が「倒壊・崩壊」という結果が報告されている(関連記事:熊本地震の木造倒壊率は阪神を上回る)。もちろん、耐震性だけが倒壊の原因とは言い切れない。だが、2000年以降に建てられた住宅(現行基準の住宅)のうち倒壊・崩壊したものが2.9%(7棟)にとどまったことと比較すると、1981年~2000年の住宅の耐震性は現行の耐震基準を下回っている可能性が高いと言わざるを得ないだろう。
 9月12日には、国土交通省で「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(第3回)」が開催される予定だ。同会では「熊本地震における建築物被害原因分析報告書(案)」が提示されるという。この1981年~2000年の間に建てられた住宅に対する耐震性能の問題について、報告書ではどこまで言及されるのか。その結果次第で、既存住宅に対する耐震化の進め方が変わってくるかもしれない。
安井 功 [日経ホームビルダー]


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