2016-10-10(Mon)

財投復活の足音 「第2の予算」リニアで再び拡大

改革から逆行 対象着々と拡大 「財政措置」登場 天下りの温床

(日本経済新聞より)
◇ハコモノまで射程に マイナス金利の錬金術
-----かつて「第2の予算」と呼ばれた財政投融資が再び膨らみ始めた。
リニア中央新幹線の全線開業前倒しなどに使うため、2017年度予算は概算要求で16年度当初比3兆円増の16.5兆円に伸びる。
狙いは低金利を生かしたインフラの整備だ。
小泉政権が始めた財投改革から15年。「官から民へ」の流れは変わった。

----国は独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じてJR東海に財投を貸し付ける。
JR東海は財務負担が軽くなり、名古屋―大阪間の開業が最大8年前倒しになる見通しだ。
「大阪もゼネコン(総合建設会社)も喜ぶ。税金も投入しない。手品のような話がマイナス金利で可能になった」(JR東海幹部)
 
----財投の本来の役割は「民間では対応が困難な長期・固定・低利の資金供給」(財務省)。
だが西日本旅客鉄道(JR西日本)や東日本旅客鉄道(JR東日本)などは期間40年の社債を出して自力で資金を調達できる。
関西学院大の上村敏之教授は「昔は産業振興や大規模投資の役割があったが、民間でできない事業は減っている」と指摘する。

----JR東海は財投を借りる代わりに、鉄道機構によるチェックを受ける。
機構は3代続けて国土交通省OBがトップに座る典型的な天下り機関だ。
01年の特殊法人改革で都市鉄道事業などを縮小すると決めたが、リニアで再び拡大に転じる。

----政府は金沢―敦賀間など整備新幹線の建設にも財投を使う方針だ。
民間から借りる予定だった8279億円を財投に切り替え、金利負担を減らす。
財投を新幹線に使うのは1998年の長野五輪に間に合わせるため建設を急いだ時以来だ。
 
----乗り物からハコモノまで財投が広がる環境は着々と整いつつある。

◇痛みなき「財政出動」 使途拡大 届かぬ「不安」
----「財政措置の規模で13兆円になる」。
事業規模で28.1兆円に膨らんだ経済対策で、安倍晋三首相が持ち出したのが「財政措置」という新しい概念だった。

----首相が言及した「財政措置」は国・地方の直接支出に財政投融資を加えた数字だった。「霞が関に長年いても聞いたことがない」(経済官庁幹部)という。

----財投には「確実な償還が見込める」との建前がある。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字にも反映しなくていいルールなので、財政再建を掲げる財務省も自分の庭先をきれいなまま保てる。
だが財政制度等審議会では「フローはよくともストックで影響がないのか」と残高の膨張を懸念する声も出た。

◇改革道半ば、膨張の兆し 「教訓」は消えたのか
----01年に始まった財投改革は財投機関債による資金調達を基本に据え、国の信用に基づいて国債と同じ商品性を持つ財投債を補完手段に位置づけた。
財投機関債を発行すれば市場の評価を受け、経営の自立を促せる。
やむを得ず財投債を使う場合にも政策の必要性や償還の可能性を精査して、無駄な運用をなくす。そんな狙いを込めた。

----民間では投資しにくい事業にお金を回すのが財投の役目だ。
とはいえ、財投債に頼れば「財投機関が大きな損失を受けた場合、最終的に政府が補填する状況も想定される」(第一生命経済研究所の星野卓也・副主任エコノミスト)。
 
----かつて批判を浴びた規模の肥大化はどうか。財政投融資の15年度末の残高は154兆円。財務省は「スリム化は進んでいる」と胸を張るが、民間最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの貸出金は6月末に108兆円で「民業の補完」とは言いがたい規模だ。

----「天下り先を確保するため不要な組織を温存している」との批判があった財投機関の数は特殊法人の合理化で00年度の48から16年度には34に減った。ただ天下り先である状況は続く。

----財政の悪化で一般会計の歳出を絞る必要性が高まるほど「第2の予算」である財投の存在感は増す。




以下引用

日本経済新聞 朝刊 2016/9/29 3:30
財投復活の足音(上)ハコモノまで射程に マイナス金利の錬金術
 かつて「第2の予算」と呼ばれた財政投融資が再び膨らみ始めた。リニア中央新幹線の全線開業前倒しなどに使うため、2017年度予算は概算要求で16年度当初比3兆円増の16.5兆円に伸びる。狙いは低金利を生かしたインフラの整備だ。小泉政権が始めた財投改革から15年。「官から民へ」の流れは変わった。
改革から逆行
 「大変ありがたい話」。東海旅客鉄道(JR東海)の柘植康英社長は、リニア事業への財投活用を喜ぶ。建設にかかる9兆円は民間借り入れなどで手当てする方針だったが、40年固定金利という破格の条件を示され、財投活用を決めた。
 国は独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じてJR東海に財投を貸し付ける。JR東海は財務負担が軽くなり、名古屋―大阪間の開業が最大8年前倒しになる見通しだ。「大阪もゼネコン(総合建設会社)も喜ぶ。税金も投入しない。手品のような話がマイナス金利で可能になった」(JR東海幹部)
 財投の本来の役割は「民間では対応が困難な長期・固定・低利の資金供給」(財務省)。だが西日本旅客鉄道(JR西日本)や東日本旅客鉄道(JR東日本)などは期間40年の社債を出して自力で資金を調達できる。関西学院大の上村敏之教授は「昔は産業振興や大規模投資の役割があったが、民間でできない事業は減っている」と指摘する。
 JR東海も当初は自己資金にこだわった。旧国鉄時代に政治の介入を許し鉄道建設の計画がゆがめられた教訓からだ。07年にはリニア事業について「経営の自由や投資の自主性」の確認を国に求めたほどだ。
 JR東海は財投を借りる代わりに、鉄道機構によるチェックを受ける。機構は3代続けて国土交通省OBがトップに座る典型的な天下り機関だ。01年の特殊法人改革で都市鉄道事業などを縮小すると決めたが、リニアで再び拡大に転じる。
対象着々と拡大
 政府は金沢―敦賀間など整備新幹線の建設にも財投を使う方針だ。民間から借りる予定だった8279億円を財投に切り替え、金利負担を減らす。財投を新幹線に使うのは1998年の長野五輪に間に合わせるため建設を急いだ時以来だ。
 5日に中国で閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(杭州サミット)。会場になった杭州国際博覧センターは総床面積が東京ビッグサイト(東京・江東)の約10倍という巨大な建物だ。安倍晋三首相は会議中「今後、国際会議や国際展示会を招致するには一定の面積の施設が国内にも必要だ」と感想を漏らした。
 国交省は1日付で国際会議場の建設に財投を使えるように省令改正したばかり。上村氏は「採算を吟味して、財投は限定的に」と話すが、乗り物からハコモノまで財投が広がる環境は着々と整いつつある。

日本経済新聞 朝刊 2016/9/30 3:30
財投復活の足音(中)痛みなき「財政出動」 使途拡大 届かぬ「不安」
 「財政措置の規模で13兆円になる」。事業規模で28.1兆円に膨らんだ経済対策で、安倍晋三首相が持ち出したのが「財政措置」という新しい概念だった。
「財政措置」登場
 政府はこれまで経済対策を打ち出す際に、国の直接支出である「国費」と融資なども含めた「事業規模」で対策の規模感を説明してきた。
 首相が言及した「財政措置」は国・地方の直接支出に財政投融資を加えた数字だった。「霞が関に長年いても聞いたことがない」(経済官庁幹部)という。
 財投には「確実な償還が見込める」との建前がある。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字にも反映しなくていいルールなので、財政再建を掲げる財務省も自分の庭先をきれいなまま保てる。だが財政制度等審議会では「フローはよくともストックで影響がないのか」と残高の膨張を懸念する声も出た。
 「港湾事業と水道事業の返済期限は最大40年に」。財務省は2015年度、地方自治体が実施するインフラ関連の事業に向けた財投の返済期限を従来の30年間から相次いで延長した。日銀の金融緩和で金利が低いうちに財投の貸出金利を先々まで固定して自治体の利払い費負担を減らそうという狙いからだ。
 超長期融資の条件としてインフラ整備の長期計画「公共施設等総合管理計画」の作成を求めて償還の確実性を高める工夫を凝らしたが、高齢化で急速な人口減が予想される中、40年後の自治体の姿は見通せない。自治体のインフラ向け融資は年3兆円程度。将来の予測を読み誤り、貸し倒れが起きれば国民負担による穴埋めを強いられかねない。
自治体の赤字補填
 より大きな懸念は自治体の財源不足を埋める地方債、臨時財政対策債(臨財債)の引き受け急増だ。
 総務省は01年に臨財債の発行を認めた。国からの地方交付税交付金だけでは埋めきれない自治体の赤字を臨財債で肩代わりしている。発行残高は16年3月末で50.6兆円。このうち財投で13.7兆円を引き受けている。引き受けの規模はリーマン・ショック前の08年3月末に比べ2.6倍に膨らんでいる。
 地方債では防災対策事業債のように使途を限定するケースが多いが、臨財債は足りない財源を補う目的のため使い道がはっきりしない。慶大の土居丈朗教授が「引き受けるなら自治体の信用力のチェックを強化すべきだ」と指摘するなど、財投の使途拡大には「確実な償還」という建前を疑問視する声がつきまとう。
 「有利子奨学金の下限金利を見直す」。経済対策では財投を財源とする奨学金の利子を事実上のゼロ金利とする政策も盛り込まれ、大学生の負担は来年度から一層軽減されることになった。広がる財投の使い道とは対照的に、痛みなき「財政措置」に潜むリスクを語る声はかき消されている。


日本経済新聞 2016/10/1付
財投復活の足音(下)改革道半ば、膨張の兆し 「教訓」は消えたのか
 郵便貯金や年金積立金の潤沢な原資に支えられたかつての財政投融資は、民業圧迫に加えて国から受け取った資金を企業などに投融資する特殊法人(財投機関)の肥大化、官僚の天下りが批判を浴びていた。
 「特殊法人等については、まず、資金を財投機関債の発行によって自己調達する。そのために最大限の努力、検討を行う」。2000年、当時の宮沢喜一蔵相(現・財務相)は財投を資金調達の面から改革する方針を示した。非効率な財投機関はお金を調達できず、市場の力によって淘汰する――という発想だった。
 01年に始まった財投改革は財投機関債による資金調達を基本に据え、国の信用に基づいて国債と同じ商品性を持つ財投債を補完手段に位置づけた。財投機関債を発行すれば市場の評価を受け、経営の自立を促せる。やむを得ず財投債を使う場合にも政策の必要性や償還の可能性を精査して、無駄な運用をなくす。そんな狙いを込めた。
発行額は3割弱
 改革が始まって15年。財投機関債の15年度の発行額は3.9兆円で財投債(13.3兆円)の3割弱にとどまる。財投機関の約半数が財投機関債を発行しているが、資金調達は補完であるはずの財投債が主要な手段にとってかわっている。
 国の保証がある財投債に比べて財投機関債は金利が高く、調達コストも高くなりがちだ。「財投機関に対して無理に発行してとは言えない」(財務省)
 民間では投資しにくい事業にお金を回すのが財投の役目だ。とはいえ、財投債に頼れば「財投機関が大きな損失を受けた場合、最終的に政府が補填する状況も想定される」(第一生命経済研究所の星野卓也・副主任エコノミスト)。
 かつて批判を浴びた規模の肥大化はどうか。財政投融資の15年度末の残高は154兆円。財務省は「スリム化は進んでいる」と胸を張るが、民間最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの貸出金は6月末に108兆円で「民業の補完」とは言いがたい規模だ。
天下りの温床
 「天下り先を確保するため不要な組織を温存している」との批判があった財投機関の数は特殊法人の合理化で00年度の48から16年度には34に減った。ただ天下り先である状況は続く。
 財投機関のうち約7割には経営幹部に官僚出身者が座る。日本政策投資銀行副社長や日本政策金融公庫総裁には財務次官OBが就き、財務省にも財投を縮小する動機は働きにくい。
 星野氏は「今回の財投積極活用の方針が過去の改革の目的に反していないか注視が必要だ」と指摘している。財政の悪化で一般会計の歳出を絞る必要性が高まるほど「第2の予算」である財投の存在感は増す。
 木原雄士、重田俊介、杉本耕太郎、市原朋大が担当しました。

///////////////////////////////////////////////
関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 財投 [第2の予算」 リニア マイナス金利 財政投融資 財政出動

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン