2016-10-31(Mon)

造船サバイバル 生き残りのための苦渋の選択

造船苦境 世界的な「船余り」 技術の伝統残す手立てを

---日本の造船業界が苦境に立たされている。
三菱重工業が巨額の損失を出した大型客船事業から事実上撤退することを決めた。
川崎重工業も撤退を含め抜本的な見直しを検討している。
 
これまで幾度も造船不況で経営難に直面してきたが、今回は祖業にメスを入れざるを得ないほど環境は厳しい。
世界の建造量は2011年をピークに低迷し、世界的な「船余り」は当分解消されそうにない。
 
日本は中国、韓国にはコスト面や設備投資で後れを取っている。
生き残りのための苦渋の選択を強いられているが、世界をリードしてきた「造船ニッポン」の伝統を途絶えさせてはならない。-----
(神戸新聞)

<社説>
神戸新聞)造船苦境/技術の伝統残す手立てを(10/24)

<日本経済新聞 迫真 造船サバイバル
(1)メンツ気にしてられぬ
(2)対岸の火事じゃない
(3)もう続けられない
(4)再編待ったなし




以下引用



日本経済新聞 2016/10/25付
迫真:造船サバイバル(1)メンツ気にしてられぬ


 8月30日午前、東京・港の三菱重工業本社で開かれた取締役会。国内建造量トップの今治造船など造船専業3社との提携協議開始が決議されたが、社長の宮永俊一(68)には実はもう一つの腹案があった。
 IHIやJFEホールディングスの造船子会社を統合したジャパンマリンユナイテッド(JMU)との提携――。8月以降、宮永は造船部門の事務方を通じて、JMUが提携に応じるか、探らせた。建造できる船種が重なるうえ、「打倒・三菱重工」で結束した経緯もあり「提携の実現性は薄い」と宮永は内心思っていた。しかし、「三菱重工の造船部門が生き残るにはメンツなど気にしていられない」として事務方をJMUに走らせた。
□   □
 予想通り、JMUの反応は芳しくなかった。三菱重工内でも「提携すれば主導権をJMUに奪われる」「イージス艦の受注をJMUに奪われた。ライバルとは組めない」などの反対意見が出た。
 30日の取締役会ではJMUとの提携も並行して検討したことが説明された。社内の大勢は今治などとの提携強化。「専業と手を組むほうがメリットがあるのでは」との社外取締役の意見が決め手となり、JMUとの提携は幻となった。
 宮永が造船事業の改革を急ぐのは、収益性の低い造船事業への市場の目が厳しくなっているからだ。就任以来、「機械のデパート」といわれるほど広がりすぎた事業の整理を進め、筋肉質の事業構造を目指してきた。造船事業も当然、改革の対象となるが、一筋縄ではいかなかった。
 造船事業の主要拠点である長崎造船所(長崎市)は、1884年に三菱グループの創業者、岩崎弥太郎が明治政府から造船所を借り受けたのが始まりで、三菱重工発祥の地だ。かつては長崎造船所の所長は本社社長より立場が上ともいわれた。
 中韓勢が台頭する中、「三菱重工しかできない船を造る」と、コンテナ船などに比べて利幅の大きい豪華客船の建造に着手したのは2013年。総トン数で10万トン規模の大型客船を手掛けるのは10年ぶりだった。
 しかし、発注元の顧客の嗜好にあう欧州風の内装や劇場、無線インターネットの整備などで何回も設計変更を迫られた。今月18日の客船事業の構造改革の記者会見では、社内に設けた「客船事業評価委員会」が「過去の受注実績に基づく楽観的で拙速な受注判断があった」と痛烈に批判した。2400億円にも積み上がった損失は、長崎造船所復活のシナリオとともに、エンジニアたちのプライドも失墜させた。
 宮永は「同じ所にずっといては同じ考え方に染まる。悪い意味で上意下達の組織。新しいことを始める時に必要な多様性がなかった」と分析した。「ここまで根が深かったのか」。長崎造船所にはびこった病巣の深刻さを宮永は記者団に囲まれるなか、思わず漏らした。
□   □
 造船不況が直撃したのは三菱重工だけではない。三菱重工の提携協議開始の発表から1カ月後の9月29日の夜。川崎重工業社長の金花芳則(62)は早い時間に帰宅し一人思案を巡らせていた。巨額の損失計上を迫られた造船事業の今後だ。
 金花の脳裏によぎるのが13年の三井造船との経営統合を巡っての「内紛」だ。川重は当時の社長、長谷川聡(69)らが独断専行して決めた三井造船との経営統合案に関し、社内が割れた。統合は白紙撤回され、統合反対派の村山滋(66、現会長)が社長に昇格、金花も村山を支持した。
 川重は国内の造船所を坂出工場(香川県坂出市)にほぼ一本化し、付加価値の高いLNG船などに特化。ばら積み船やコンテナ船といった価格競争の激しい船種は中国の合弁会社で建造する体制を構築していた。「他社と比べてもいい絵を描けていると思っていた」(常務の太田和男=61)
 金花も他社と統合しなくても単独で生き残れるとの思いはあった。だが、海底油田・ガス田で使う作業船の建造で60億円の損失を計上。坂出工場で得意としていたはずのLNG船でも20億円の損失が出た。金花は翌30日の取締役会で造船事業を白紙で見直す「構造改革会議」の設立を自ら提案、退路を断った。
 三菱重工の宮永は足元の受注激減を「再編や構造改革を進めるいいタイミング」ともとらえる。その危機感を現場までいかに浸透させるかが、改革の成否を握る。

 リーマン・ショックの直後以上といわれる造船・海運不況に、重工や海運各社がどう立ち向かうのかを追う。
(敬称略)
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日本経済新聞 2016年10月26日
迫真:造船サバイバル(2)対岸の火事じゃない


 神戸市の人工島、六甲アイランド。「HANJIN」と書かれたコンテナがうずたかく積み上がる。その高さは約13メートル。5階建てのビルに相当する。8月末に経営破綻した韓国の海運最大手、韓進海運のコンテナだ。
神戸港に置かれたままの韓進海運のコンテナ(神戸市東灘区)
 コンテナ船で世界7位だった韓進は海運市況の低迷で業績が悪化。日本の会社更生法の適用に当たる「法定管理」をソウル中央地裁に申請した。港に降ろされたコンテナは引き取り手がなくなり、神戸港では約800個が滞留している。
 「韓進に預けた貨物を至急リストアップしろ」。商船三井でコンテナ船の営業を担うMOLジャパン(東京・港)の加瀬崇(43)は韓進破綻の一報を受けてすぐに各国の担当者に指示を飛ばした。海運会社は船舶の積み荷スペースを相互に融通するのが一般的で、韓進のコンテナ船にも商船三井の貨物が積まれているからだ。
 豪ブリスベンから横浜に向けて航行中だった韓進のコンテナ船は目的地を母港の釜山に急きょ、変更した。船舶を差し押さえられてしまうリスクがあるためだ。その船には横浜で荷降ろしするはずの豪産牛肉が載っていた。加瀬は釜山発の日本行き貨物船を手配、横浜で待つ荷主への対応を急いだ。横浜に着いたのは当初予定より2週間遅い10月1日だった。
 2008年まで海上運賃は高騰しており、海運各社は競って新造船を発注していたが、リーマン・ショックが発生。船舶の供給過剰と世界経済の減速が重なり、運賃下落に歯止めがかからなくなった。足元の運賃はコンテナ船でピークの約半分、石炭や鉄鉱石を運ぶばら積み船に至っては10分の1の水準だ。
 「持ちこたえられなかったか」。日本郵船社長の内藤忠顕(61)は唇をかんだ。同社は7日、1950億円もの特別損失計上を決めた。保有船の収益悪化で減損処理を迫られた。前期まで国内大手で唯一、赤字を免れていたが、今期は赤字が避けられなくなった。
 内藤が「パーフェクトストーム(未曽有の大嵐)」と呼ぶ史上最悪の海運不況は世界規模での再編の呼び水になっている。独最大手のハパックロイドや業界3位の仏CMA CGMは、体力の弱った中東と東南アジアの最大手をそれぞれ買収した。「対岸の火事じゃない」。日本の海運大手の幹部たちは来たるべき日への備えについて考え始めた。
(敬称略)
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日本経済新聞 2016/10/27付
迫真:造船サバイバル(3)もう続けられない


 7世紀に鑑真和上を生んだ江蘇省揚州。かつて和上の一行が日本へ渡る際に舟をこいだ長江沿岸は今、見上げるような巨大クレーンが居並ぶ造船の一大拠点に変貌した。10月18日、このうち8社を訪れると5工場が生産を停止。細々と船を造っているのは3工場だけだった。
造船不況のあおりで2月に経営破綻した舜天船舶の造船所(18日、江蘇省揚州)
 「船はもうかるらしいぞ」。もとはアパレルの会社だった江蘇舜天が、不動産ビジネスで得た巨利を元手に造船に進出したのは2003年。経済が急成長するなかで船は飛ぶように売れた。02年に約300万総トンだった中国の新規受注量は07年に6000万総トンを超えた。
 誤算は、みながこぞって造船に参入したことだ。中国の15年の受注量はピークの3分の1に減ったが、3千社とされる造船会社の淘汰は進まず、総生産能力の半分が余剰とされる。
 舜天の造船子会社「舜天船舶」は2月に経営破綻。売却先を探す入札は3度流れた。結局、江蘇舜天は20日、電力会社として再建を目指す計画を発表した。事実上、「もう造船をやめる」との宣言だ。
 「ゾンビ企業を放置すれば業界全体に害を及ぼす」。中国船舶工業行業協会会長の郭大成(65)は10月、不採算企業の淘汰を訴えた。政府が「優良」と太鼓判を押した大手71社ですら、すでに3割近くが破産や生産停止など経営難に陥っている。
 「こんなに悪いとは」。韓国の造船大手幹部は天を仰いだ。英調査会社によると韓国が9月に受注した船はたった3隻。1年で16分の1に減った。現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業の「ビッグ3」。かつて世界で液化天然ガス(LNG)船などを大量受注したが、今や見る影もない。
 「構造調整はさらに素早く果敢に推進しなければならない」。経済政策の司令塔、経済副首相兼企画財政相の柳一鎬(ユ・イルホ、61)は17日、造船各社にリストラを促した。サムスンは18年までに1万4千人程度の従業員数を30~40%削減。大宇も20年までに20%減らす計画で、ビッグ3全体で1万人規模になる。韓国政府の要請を受けマッキンゼー・アンド・カンパニーがまとめた中間報告書は、3社から2社への集約が必要だと指摘し、こう付記した。「大宇は自力では生き残れない」
 造船市場で日本としのぎを削ってきた中韓。しかし蒸発するように世界の需要が減るなか、長いトンネルの出口は全く見えない。
(敬称略)
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日本経済新聞 2016/10/28付
迫真:造船サバイバル(4)再編待ったなし


 「先端を走っている」。9月13日、国土交通相の石井啓一(58)は今治造船の丸亀工場のクレーン上にいた。地上93メートル。眼下には同社が400億円を投じて建設中の大型ドックが広がる。国内のドック新造は16年ぶりだ。工場では人工知能(AI)を搭載した溶接ロボットがせわしなく動く。石井は「品質と生産性で中韓勢に対抗する」との思いを強くした。
今治造船の建造量は三菱重工業の約17倍(愛媛県今治市の本社工場)
 周辺の中小造船所を買収して国内最大手にのし上がった今治。丸亀では今冬、日本最大の2万個積みコンテナ船を建造する。東京タワーを上回る全長400メートル。社長の檜垣幸人(54)が構想するのは「船のデパート」。様々な船を建造できる造船会社として生き残りを目指す。
 造船専業は三菱重工業など総合重工業より1人あたりの年間給与が2割強低いとされる。協力会社や外国人を活用、同じタイプの船を連続建造してコスト削減してきた。ただ中韓勢が再編で巨大化すればより激しいコスト競争が待ち受ける。
 「研究開発に参加してくれないか」。専業が中心となって3年半前に設立した研究開発会社、マリタイムイノベーションジャパン(東京・品川)。社長の信原真人(65)は今年に入り、三菱重工や川崎重工業など総合重工業の幹部を相次いで訪ねた。省エネや環境規制対応の技術に取り組んできたが、「成果が上がっていない」との声も上がる。「オールジャパンで戦わなければ。2~3年が勝負。待ったなしだ」。信原の狙いは総合重工業を巻き込んで技術力を上げることだ。
 技術開発や人材育成を担ってきた総合重工業はより厳しい。「ようやくなんとかなりそうだ」。三井造船社長の田中孝雄(66)は胸をなで下ろした。子会社の新潟造船(新潟市)が手掛ける海洋支援船が工程の混乱などで約200億円の損失を計上。お盆休みも一部返上して指揮を執り混乱を収拾した。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)社長の三島慎次郎(67)も「さらなる統合は日本にとって必要。海外勢に対抗できる会社をつくるべきだ」と公言する。
 歴史的な受注減で再編のうねりが再び高まりだした。次の競争に向けてどのような手を打つか。造船ニッポンの針路はそこで決まる。(敬称略)
 篤田聡志、村松洋兵、高城裕太、大越優樹、長江優子、小高航、加藤宏一が担当しました。

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神戸新聞 2016/10/24
社説:造船苦境/技術の伝統残す手立てを


 日本の造船業界が苦境に立たされている。
 三菱重工業が巨額の損失を出した大型客船事業から事実上撤退することを決めた。川崎重工業も撤退を含め抜本的な見直しを検討している。
 これまで幾度も造船不況で経営難に直面してきたが、今回は祖業にメスを入れざるを得ないほど環境は厳しい。世界の建造量は2011年をピークに低迷し、世界的な「船余り」は当分解消されそうにない。
 日本は中国、韓国にはコスト面や設備投資で後れを取っている。生き残りのための苦渋の選択を強いられているが、世界をリードしてきた「造船ニッポン」の伝統を途絶えさせてはならない。
 三菱の大型客船事業は、「長船(ながせん)」と呼ばれる長崎造船所の看板事業である。総トン数が10万トン超の大型客船を建造できるのは、国内では三菱だけだ。戦時中は旧日本軍の戦艦武蔵を建造したことでも知られる。4年前には神戸造船所での商船建造を中止し長崎と下関に集約していた。
 伝統の火をあえて消して、今後は貨客船や中小型客船に限定して受注するという。設計などを手掛ける部門の分社化も検討し、提携協議中の今治造船(愛媛県)など3社と基本設計などで連携を強化する方針だ。
 造船業界では、13年にJFEホールディングスとIHIのそれぞれの傘下の造船会社が統合したが、今回の提携協議が新たな再編につながる可能性もある。造船業は関連の中小企業の裾野が広いのが特徴だ。事業の縮小・再編はやむを得ないこととはいえ、雇用や地域経済への影響は最小限にとどめてもらいたい。
 併せて経営陣に踏ん張ってもらいたいのが技術の維持だ。造船は鋼板の切断や溶接、艤装(ぎそう)などの多彩な技能の集合体である。何万ピースもの鉄の板をつなぎ合わせて巨大な船舶に造り上げていく様は「総合芸術」と言ってよい。年月をかけて受け継がれてきた匠(たくみ)の技は、事業を続ける中で蓄積され、伝承されるということを忘れてはならない。
 日本のものづくり産業は新技術で進化してきた。造船では近年、太陽光や燃料電池を活用して二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えたエコシップに力を入れてきた。品質や燃費、スピード、一貫性など総合力が日本の造船業の強みだ。活路を見いだす努力を重ねてほしい。
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