2016-12-06(Tue)

カジノ法案 危うい賭博への暴走 各紙社説等

人の不幸を踏み台にするのか 賭博が経済対策なのか 有害不要な施設 廃案を

<各紙社説・主張>
朝日新聞)カジノ法案 危うい賭博への暴走(12/2)
読売新聞)カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか(12/2)
毎日新聞)カジノ法案 唐突な採決に反対する(12/2)
日本経済新聞)拙速なカジノ解禁は問題多い (12/3)
産経新聞)カジノ解禁法案 懸念解消を先送りするな(12/2)

しんぶん赤旗)カジノ法案の強行 この暴走はあまりにも危ない(12/3)
北海道新聞)カジノ法案採決 やはり合点がいかない(12/3)
河北新報)カジノ法案/「負」の部分から目そらすな(12/3)
信濃毎日新聞)カジノ推進法 有害不要な施設 廃案を(12/2)
京都新聞)カジノ法案  賭博が経済対策なのか(12/3)

神戸新聞)カジノ法案/あまりに乱暴な採決強行(12/3)
中国新聞)カジノ法案、危うい発想 容認できぬ(12/4)
西日本新聞)カジノ法案可決 懸念や疑問は置き去りか(12/3)




以下引用



朝日新聞 2016年12月2日05時00分
(社説)カジノ法案 危うい賭博への暴走


 カジノを解禁する統合型リゾート(IR)推進法案の審議が衆院内閣委員会で進んでいる。
 朝日新聞は社説でカジノ解禁に反対し、ギャンブル依存症をはじめ、負の側面を慎重に議論すべきだと主張してきた。
 与党と日本維新の会は今回、民進や共産の反対を押し切って法案を審議入りさせた。おとといの委員会では民進欠席のまま質疑を進めた。わずか2週間の延長国会で成立をめざすという。異常な状況である。
 刑法が禁じる賭博に、民間業者が営むカジノという新たな例外を認めようとする法案だ。国内外の反社会的勢力に利用されないか。治安が悪化しないか。国民の懸念は根強い。
 国会で議論することまで否定しないが、幅広い合意を得る努力が不可欠だ。与党の公明党内にすら慎重論がある。ましてや年金制度改革法案をめぐって与野党の対立が激化している現状では、じっくり議論できる環境は整っていない。一方的な審議で成立に走るのは強引すぎる。
 今回の法案は特区でのIR整備を促すもので、いずれ詳細な制度設計は政府に委ねられる。最大の懸念のギャンブル依存症に関しては、日本人のカジノ入場について「必要な措置」を講ずるよう求めてもいる。
 賭博が禁じられている日本だが、競馬や競輪などの公営競技や、「遊技」とされるパチンコがあり、依存症患者は海外と比べても多いと指摘される。
 14年には厚生労働省研究班が「依存症が疑われる成人は全体の5%弱の536万人いる」との推計を示して注目された。
 推進派は国会審議で、カジノ解禁と合わせて依存症対策を総合的に進め、悪影響は最小限に抑えると強調した。
 しかし、目の前の課題である依存症対策と、新たなリスクであるカジノの解禁がどうしてセットなのか。説得力は乏しい。
 推進派がカジノ解禁を急ぐ背景には、20年東京五輪と合わせ、海外から観光客を呼び込みたいとの思惑がある。25年大阪万博誘致構想を掲げる維新は、万博候補地の人工島にIRも、と夢を描く。
 近年は大型資本が手がけるカジノの開設がアジアで相次ぐ。先行事例を見れば、一定の経済効果は期待できよう。だが、五輪、万博、カジノと、いずれも欧州発祥の発想に頼るばかりで、日本は世界の人を引き寄せ続ける観光大国になれるのか。
 カジノ解禁は、国の様々な施策にかかわる問題といえる。数の力で無理やり決めるようなことはあってはならない。
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読売新聞 2016年12月02日 06時05分
社説:カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか


 カジノの合法化は、多くの重大な副作用が指摘されている。十分な審議もせずに採決するのは、国会の責任放棄だ。
 統合型リゾート(IR)の整備を推進する法案(カジノ解禁法案)が、衆院内閣委員会で審議入りした。
 法案は議員提案で、カジノ、ホテル、商業施設などが一体となったIRを促進するものだ。政府に推進本部を設置し、1年をめどに実施法を制定するという。
 自民党や日本維新の会が今国会で法案を成立させるため、2日の委員会採決を求めていることには驚かされる。審議入りからわずか2日であり、公明、民進両党は慎重な審議を主張している。
 法案は2013年12月に提出され、14年11月の衆院解散で廃案になった。15年4月に再提出された後、審議されない状況が続いてきた。自民党などは、今国会を逃すと成立が大幅に遅れかねない、というが、あまりに乱暴である。
 自民党は、観光や地域経済の振興といったカジノ解禁の効用を強調している。しかし、海外でも、カジノが一時的なブームに終わったり、周辺の商業が衰退したりするなど、地域振興策としては失敗した例が少なくない。
 そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。
 さらに問題なのは、自民党などがカジノの様々な「負の側面」に目をつぶり、その具体的な対策を政府に丸投げしていることだ。
 公明党は国会審議で、様々な問題点を列挙した。ギャンブル依存症の増加や、マネーロンダリング(資金洗浄)の恐れ、暴力団の関与、地域の風俗環境・治安の悪化、青少年への悪影響などだ。
 いずれも深刻な課題であり、多角的な検討が求められよう。
 だが、法案は、日本人の入場制限などについて「必要な措置を講ずる」と記述しているだけだ。提案者の自民党議員も、依存症問題について「総合的に対策を講じるべきだ」と答弁するにとどめた。あまりに安易な対応である。
 カジノは、競馬など公営ギャンブルより賭け金が高額になりがちとされる。客が借金を負って犯罪に走り、家族が崩壊するといった悲惨な例も生もう。こうした社会的コストは軽視できない。
 与野党がカジノの弊害について正面から議論すれば、法案を慎重に審議せざるを得ないだろう。
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毎日新聞2016年12月2日 東京朝刊
社説:カジノ法案 唐突な採決に反対する


 あまりに唐突である。
 カジノを合法化し、事実上解禁する「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)の今国会成立を目指す動きが強まっている。
 自民党は、衆院内閣委員会での採決を与野党に提案するなど、決着を急いでいる。
 国会が14日まで延長されたことを受け、法案はおととい審議入りしたばかりだ。ギャンブル依存症の増加などいくつもの懸念が示されている法案を、まともな議論もせず採決することなど論外だ。
 法案は、カジノや会議場、ホテルなどが一体となった施設の整備をうたう。成立してもすぐにカジノができるわけではないが、政府は1年以内をめどに別の法律を定め、カジノ運営のルールなどを決める。
 この法案は議員立法で、昨年再提出されたものだ。自民党以外に日本維新の会などが賛成している。
 特に日本維新の会は、2025年の大阪万博の誘致を目指す立場から、IRを推進している。代表の松井一郎・大阪府知事は今国会での法案成立に期待する発言をしている。
 今国会では、カジノ解禁を目指す超党派の国会議員連盟を中心に審議入りを模索していた。
 自民党は早ければ、きょう委員会で採決し、6日の衆院本会議での採決に持ち込むようだ。与野党の対決法案について、審議入り直後の採決は極めて異例だ。
 法案が成立し、カジノができれば、建設需要や雇用が創出され、海外からの観光客増加による経済効果も高いと推進派は主張する。だが、収益のほとんどは海外資本に吸い上げられるとの指摘がある。
 ギャンブル依存症問題も避けて通れない。パチンコなどが広く普及する日本で依存症は深刻だ。カジノでは、日本人に対しては入場資格を設けたり、入場料を徴収したりすることが検討材料になっている。しかし、法案に具体策は書き込まれておらず、対応は先送りされた格好だ。
 マネーロンダリング(資金洗浄)や、青少年の健全育成への影響など他にもマイナス面の指摘は多い。そもそも賭博は刑法で禁じられている。カジノを例外とする根拠はどこにあるのか。
 論点は山積している。シンガポールや韓国などカジノを誘致した国で、依存症対策の限界やヤミ金融の増加などの事例も報告されている。海外のカジノをめぐる状況の調査や検証も欠かせない。
 党内に賛成論もあった民進党は法案に反対する方向だ。これまで慎重な姿勢を続けてきた公明党はどう対応するのか。対決法案をほとんど審議しないまま成立させるような国会運営は許されない。
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日本経済新聞 2016/12/3付
社説:拙速なカジノ解禁は問題多い


 刑法の賭博罪にあたるため国内で認められていないカジノの解禁に道を開く法案がきのう、衆院の内閣委員会で可決された。自民党や日本維新の会、公明党の一部議員による賛成多数で、自民党は今国会での成立を目指している。
 法案の審議が始まったのは今国会が終盤を迎えた、つい3日前のことだ。カジノには国民の間に根強い反対論や拒否感があり、これまで審議できずにいた。それを突然持ち出し、まともな議論もないままなし崩し的に解禁しようとする議員たちの見識を疑う。
 カジノには、ギャンブル依存症の増加や暴力団など反社会的勢力の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念といった様々な負の側面が指摘されている。
 海外の事例を含め、こうしたマイナス面の検証や具体的な防止策の検討が不可欠なのに、付帯決議で先送りにされた。是非を判断する材料を欠いたままの拙速な審議は、許されない。
 合法化を推進する立場の自民党などは、外国人観光客が増え地方の経済が活性化するといった効果を主張する。だがこの点も冷静に議論してみる必要がある。たとえばマカオのカジノは中国当局による腐敗取り締まりなどの影響で、主な顧客だった中国人富裕層が大きく減っているという。
 法案が描く構想では、国内のいくつかの地区にカジノやホテル、商業施設、国際会議場などが一体となって立ち並ぶ統合型リゾート(IR)が誕生することになる。
 日本各地で大規模なリゾート開発を進めた末に多くが破綻した、かつての総合保養地域整備法(リゾート法)の二の舞いになる心配はないだろうか。地方では、競馬や競輪などの公営ギャンブルも低迷しているのが現状だ。
 高齢化や人口減が進むなか、疲弊した経済を立て直すきっかけにしたいという自治体などの思いは分かる。そうであればなおさら、カジノ事業を黒字にできるのかどうか、慎重に検討する必要があるだろう。
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産経新聞 2016.12.2 05:01
【主張】カジノ解禁法案 懸念解消を先送りするな


 日本が目指す観光立国や地域振興にとって真にふさわしいものなら、大いに論じたらよい。
 それにしては、多くの疑問を残したまま、駆け込みで事を進めている印象がぬぐえない。
 超党派の議員連盟が国会に提出した、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の設置に向けた法案をめぐる動きである。
 会期延長をはさんで与党は今国会成立への動きを強め、民進、共産などの反対を押し切って審議入りした。きょうにも衆院内閣委員会で可決を図ろうとしている。
 およそ超党派の議員立法には似つかわしくない姿ではないか。推進派議員には、疑問点に答えを出し、より多くの賛同を得ることに尽くすべきだと言いたい。
 提出されている法案は、日本でカジノを認めたうえで、観光客向けにホテルや商業施設などと一体的に総合的なリゾート整備を促そうというものだ。
 具体的な仕組み作りは政府が行い、1年以内にカジノ運営などのルールを定めた実施法案を新たに提出するよう求めている。
 推進派は観光客誘致や雇用創出などの効果を強調するが、与党内にも慎重論がある。
 各地の公営ギャンブルの売り上げは、バブル期の半分以下に落ち込み、地方競馬、競輪の廃止も相次ぐ。カジノ分野では、すでにアジアでの競争が激化している。
 肝心の経済効果をどれくらい見込めるかに答えていない。
 さらに、ギャンブル依存症を招くおそれや治安悪化への対策は、これから先の話として政府に丸投げする格好だ。何年も指摘されながら、改善がみられていない課題ともいえる。
 カジノ解禁にまつわる懸念に向き合わないまま、スタートラインに立つ法案を押し通すなら、国民の不信は拡大するだろう。
 ギャンブル依存症への対策として、シンガポールでは、本人や家族の申し出でカジノへの立ち入りを制限する仕組みを導入した。日本はこれをどう考えるのか。
 反社会勢力による資金洗浄(マネーロンダリング)などの違法行為への心配もつきまとう。
 ラスベガスで多数のカジノを持つ米ネバダ州には、役員や株主らの犯罪歴まで調査できる専門機関がある。内閣府に監督機関を創設するというだけでは、いかにも心もとない。
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しんぶん赤旗 2016年12月3日(土)
主張:カジノ法案の強行 この暴走はあまりにも危ない


 刑法が禁じる賭博を合法化するカジノ解禁推進法案が衆院内閣委員会で自民、日本維新の会などの賛成多数で可決・強行されました。国民の間に広がる疑問や異論を置き去りにして、乱暴な議会運営や、わずか2日の審議による強引な採決によって、なにがなんでも延長した国会で押し通す―。暴走ここに極まれりです。
ギャンブル依存は深刻化
 カジノ法案は、自民、維新などの議員提案です。法案提出者として委員会で趣旨説明した細田博之自民党総務会長は、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)を国内に設置することは「国際観光振興、地域振興、税収に資する」とのべました。カジノを解禁すれば、海外から日本を訪れる観光客が増え、にぎわうことで地方の経済が活性化し、税収も増えると「バラ色の未来」に描きます。
 カジノ法案は、安倍晋三首相の「肝いり」でもあります。首相は2014年5月にシンガポールのカジノ施設を視察した後、「日本の成長戦略の目玉になる」と発言し、閣議決定した「成長戦略」にもカジノを盛り込み、関係各省庁から選抜した「特命チーム」にカジノ解禁に向けた検討作業までさせるほどの熱の入れようです。あまりに無分別ではないか。
 カジノは、最も刺激的で、人をのめり込ませる「毒」をもつ賭博場です。反社会的勢力の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)の横行、多重債務問題の再発、青少年への悪影響など、大きな弊害は枚挙にいとまがありません。
 とりわけ深刻なのはギャンブル依存症です。日本は賭博を禁じている国なのに特例法で競馬、競輪など6種の公営賭博が行われ、社会問題を引き起こしてきました。
 さらに、賭博でなく「遊技」という欺(ぎ)瞞(まん)的な扱いで行われているパチンコの存在によって、成人人口の4・8%、536万人の患者がいる(厚生労働省研究班の推計)と、すでに世界最悪のギャンブル依存症大国になっています。この上、新たにカジノを日本に上陸させようというのか。
 国会審議で法案提出者は「カジノには厳格な規制を加える」、「カジノの収益を依存症対策にあてる」などと答えました。しかし、カジノをどう規制するのか、どのような依存症対策を行うのかなど具体的問題は、同法施行後1年以内に政府の責任で策定させる「実施法」の段階に丸投げです。
 カジノ法案をめぐる暴走は、審議に時間をかけて国民の関心が集まり反対世論がさらに高まる前に、「カジノ解禁」の結論だけを「先食い」しようという、あまりにも国民を愚(ぐ)弄(ろう)したものです。
国民脅かす政治的退廃
 カジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)の岩屋毅幹事長(自民)は「これ以上遅れれば内外の機運がしぼんでしまう」とのべました。日本につくられるカジノ市場への参入を狙う米国などのカジノ資本、その“おこぼれ”を求める財界、一部のカジノ誘致地方自治体などの突き上げをうけた推進派による、どさくさまぎれのカジノ合法化の暴走は、矛盾もはらんでいます。
 「もうかるなら何をしてもいい」とばかりに国民の暮らしを脅かす政治の退廃を許さず、カジノ法案を廃案に追い込む世論と運動を強めることが求められます。
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北海道新聞 2016/12/03 08:55
社説:カジノ法案採決 やはり合点がいかない


 刑法が禁じる賭博を地域振興に利用する―。この重大な問題について、わずか3日間で「審議を尽くした」と言うつもりなのか。
 衆院内閣委員会がきのう、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備推進法案を可決した。野党に採決への強い反対があったのに、与党などが押し切った。
 ギャンブル依存症の増加、反社会勢力の介入による治安悪化、青少年の健全育成への影響など、カジノ解禁には根強い懸念がある。
 安倍晋三政権は成長戦略の一つに掲げるが、与党内にも慎重論があり、公明党は態度を決めきれず自主投票となった。こんな状態で採決を急ぐ必要などないはずだ。
 与党は6日にも衆院を通過させ、今国会で成立を図る構えだが、ろくに審議もせず、数の力にものを言わせることは許されない。
 法案は自民、旧維新の党などの議員が昨年4月に提出した。
 カジノを有する滞在型リゾート施設を建設して国内外から集客し、観光振興、国や自治体の財政改善を狙う。政府が法施行後、1年以内をめどにカジノ運営のルールなどを法制化する。
 ただ、カジノ合法化に対する根本的な疑問は解消されていない。
 国内でギャンブル依存症が疑われる人は536万人に上るとの、厚生労働省研究班の推計がある。成人の4・8%で、おおむね2%未満の他国に比べ突出している。
 「遊技」とされるパチンコなど、賭け事が身近なことが影響しているとの指摘も少なくない。
 依存症につながる恐れのある施設を「IR」の名で作ることに、多くの人が懸念を抱くのは当然だ。にもかかわらず、内閣委は参考人質疑や地方公聴会も行わなかった。まさに国民不在である。
 道内では苫小牧市、釧路市、後志管内留寿都村がIR誘致を表明。道も前向きな姿勢を示す。
 しかし、考えねばならないのは北海道を訪れる多くが、豊かな自然に魅力を感じているという現実だ。自然を生かした体験型観光の充実を求める声も多い。ギャンブルとは相いれないのではないか。
 道には誘致自治体のみでなく、道民全体から意見を聞くことが求められる。
 誘致から撤退した小樽市で、反対運動をした市民は「カジノは運河保存運動から続いてきたまちづくりの努力を根底から崩す」と語っていた。もっともな心配だ。
 ギャンブルで泣く人と引き換えに地域活性化を図るのは、どう考えても合点がいかない。
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河北新報 2016年12月03日土曜日
社説:カジノ法案/「負」の部分から目そらすな


 物事にはプラスとマイナスの両面がある。どちらかだけに光を当てて判断すると、時に道を踏み外す。
 「利」にとらわれすぎて、「負」の部分から目をそらしていると言わざるを得ない。きのう衆院内閣委員会で採決された、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案である。
 しかも、審議入りからわずか2日の採決という異常ぶり。最近の安倍政権を見ると、環太平洋連携協定(TPP)承認案、年金制度改革法案をはじめ、数の力による強引な国会運営が目立つ。ここに「1強」のおごり極まれり、という感を強くする。
 法案はカジノやホテル、大型会議場が一体となったIRの整備推進を政府に促す内容だ。施行後は1年以内をめどに、カジノ合法化に必要な法整備を求めている。
 超党派の「国際観光産業振興議員連盟」がまとめた。2013年に議員立法で提案されたが、翌年の衆院解散でいったん廃案となり、15年4月に再提案された後、これまでたなざらしになっていた。
 カジノは賭博行為で刑法で禁止されている。解禁することで観光客の誘致や雇用創出などの経済効果を見込む。成長戦略として「観光立国」をうたう安倍内閣にはうってつけの目玉だろう。20年東京五輪や大阪万博誘致との相乗効果を期待する向きもある。
 主体は民間の事業者だ。国の管理の下、特定の区域内で運営し、その納付金を国や地方自治体が徴収する構想を思い描いているようだ。
 ただ、賭博による地域振興に違和感はないのだろうか。北海道、東京、横浜、大阪、長崎、沖縄など各地で誘致活動が繰り広げられている。
 一方で、忘れてならないのは「副作用」だ。反社会的勢力の介入や資金洗浄のほか、青少年への悪影響も懸念される。風紀の乱れや治安の悪化も危惧される。
 何よりも気掛かりなのは社会問題化している「ギャンブル依存症」の増加だ。
 厚生労働省研究班の推計(13年)では、依存症の疑いがある人は成人の4.8%に当たる536万人に上るという。競馬、競輪やパチンコに加えて、今度はカジノが認められれば、さらに深刻になる恐れがある。
 依存症の人は多重債務に陥りやすい、との指摘もある。追い込まれて自殺したり、巻き込まれた配偶者や家族などがうつ病になったりするケースが少なくない。
 事は犯罪に関わる問題で例外は極力避けるべきだ。それでも例外を認めるなら、社会的な損失やコストを十分に考慮して判断すべきである。その対策を付帯決議で政府任せにしているのは無責任だ。
 会期延長までした窮屈な国会の審議日程の中で、なぜ結論を急ぎ立てるのか。議論を尽くさないまま、今国会での成立など言語道断だ。
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信濃毎日新聞(2016年12月2日)
社説:カジノ推進法 有害不要な施設 廃案を


 国内にカジノをつくるための統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が衆院内閣委員会で審議入りした。
 カジノ設置はギャンブル依存症の増加、治安悪化、マネーロンダリング(資金洗浄)への悪用など心配なことが多すぎる。廃案にすべきだ。
 IRはホテルや会議場、劇場、遊園地などを併設する複合施設を指す。カジノはその目玉になる。自民、旧維新などの議員立法で昨年、提出されていた。
 政府が制度設計を進め、法施行から1年以内をめどに必要な法整備を行うよう定めている。実際には民間の事業になる。
 疑問だらけの法案だ。第一に刑法の賭博罪との整合性が取れない。社会的に有害だからこそ、法は賭博を禁じているはずだ。カジノに限ってなぜ解禁するのか、筋道の通った説明はない。
 第二にギャンブル依存症が増える心配がある。日本には競輪、競馬などの公営ギャンブルに加えて「遊技」のパチンコがある。
 厚生労働省研究班の2年前の調査によると、依存症の疑いがある人は推計536万人、成人の4・8%にのぼる。世界の主要国に比べて数倍多い。
 本来なら目の前に広がる依存症問題への対応を急ぐべきなのだ。新しくギャンブルを公認するのは方向が逆を向いている。
 自民党内には、利用できるのは訪日外国人だけとして日本人には禁ずる考えがある。危ない遊びだから外国人だけ、というのは道徳的にも問題がある。
 信濃毎日新聞などが加盟する日本世論調査会の昨年の調査では、設置への反対は65%にのぼり賛成の30%を上回った。反対する理由では「ギャンブル依存症の人が増える」「設置した地域の治安が悪化する」「子どもの成長に悪影響を及ぼす」が多かった。
 自民党は14日が会期末になる今国会での成立を目指して審議入りを急いだ。民進党は反対して委員会を欠席している。
 議員立法は与野党合意の上で進めるのが慣例だったはずだ。自民のごり押しの背景には、今のうちに成立させて来夏の都議選に響くのを避ける思惑がありそうだ。政局絡みの党利党略だ。
 日本を訪ねる外国人観光客が増えている。外国の人にとって日本の魅力は何だろう。豊かな自然や磨き上げられた文化が日本の吸引力になっている。カジノが「成長戦略の目玉になる」という安倍晋三首相の皮算用は、目算外れになる可能性が高いのではないか。
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[京都新聞 2016年12月03日掲載]
社説:カジノ法案  賭博が経済対策なのか


 「貧すれば鈍す」と言うが、刑法が社会悪として禁ずる賭博を国会が奨励してどうするのか。カジノを解禁する統合型リゾート施設(IR)推進法案が自民党と日本維新の会などの賛成多数で衆院内閣委を通過した。今国会で成立する可能性がある。
 超党派議員連盟によるカジノ解禁を目指す動きは、安倍晋三首相が成長戦略の目玉としたことで勢いづいた。課題だらけの法案を会期延長の隙を突いて審議入りさせ、わずか3日で採択とは、あまりに強引で拙速だ。
 法案は、利益の一部を社会還元させる条件でカジノと会議場、ホテルが一体となった施設の設置・運営を民間に認め、政府は施行後1年以内に必要な法整備を行う。要は、早くカジノを合法化せよ、と政府をせき立てる法案である。
 議連の細田博之会長(自民総務会長)は「観光と地域経済の振興に寄与し、財政改善にも資する」と強調する。2020年東京五輪と25年に誘致する大阪万博に間に合わせ、外国人客にカネを落としてもらおうという狙いである。
 しかし弊害も目に付く。暴力団の関与、マネーロンダリング(資金洗浄)への悪用、治安や環境の悪化、青少年への影響、日本人の利用制限など懸念と課題が多い。ギャンブル依存症の増加に拍車をかける恐れもある。厚生労働省の2年前の推計では、パチンコや競馬などに依存する人の割合は4・8%で、英米と比べて3~5倍も高かった。カジノ解禁が依存症対策に逆行するのは明らかだ。
 推進派が言う経済効果も疑わしい。関西経済同友会は今春、大阪港の人工島・夢洲にカジノを誘致した場合、施設や交通網の整備などの投資効果を1兆4700億円と試算したが、過大ではないか。
 内閣委では「韓国やマカオでは利用客が落ち込み、斜陽産業だ。日本誘致は無謀」(共産・島津幸広氏)と指摘された。訪日客数は世界経済や為替、国同士の関係で大きく変わる。それを当て込むカジノが地域経済の安定した活力源としてふさわしいとは思えない。
 自民が採決を急いだ背景には、万博とカジノを実現したい維新に恩を売り、安倍首相が執念を燃やす憲法改正に賛同を得る思惑が透ける。慎重派だった公明は自主投票に回り、主体性を欠いた。
 環太平洋連携協定(TPP)関連法、年金制度改革法案と、十分な議論もなく与党が数の力で押し切る国会運営が目立つ。国政の失策のツケを払うのは国民である。いま一度、熟議を求めておく。
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神戸新聞 2016/12/03
社説:カジノ法案/あまりに乱暴な採決強行


 抗議の声が飛び交う中、委員長が採決を強行する。今国会で繰り返される光景が、きのうの衆院内閣委員会でも見られた。
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案、通称「カジノ法案」が自民党などの賛成多数で可決された。
 民進党は「審議が不十分」と猛反発して採決に加わらず、共産党は反対した。慎重審議を求め、対応が注目された公明党は自主投票で臨み、賛成と反対に割れた。
 先月30日に審議入りしたばかりである。法案は議員立法の形で、与野党合意で成立させるのがこれまでの慣例だったはずだ。あまりに乱暴なやり方である。
 法案には数々の懸念がある。最も危惧されるのは、これまで刑法で禁じられてきたカジノを合法化することで、ギャンブル依存症の患者が増えるのではないかということだ。
 ギャンブル依存症は、世界保健機関(WHO)が精神疾患の一つに認定している。賭け事にのめり込み、衝動を抑えられなくなる。2年前、厚生労働省の研究班が、成人の4・8%にあたる536万人に疑いがあると発表し、注目を集めた。
 研究班によるとアルコール依存症は109万人で、それをはるかに上回る。国際的にも日本は高水準で、治療や対策も確立していない。
 先日の審議では、法案提出者の自民党議員が「医学的、心理学的アプローチで社会全体で正すことが大事だ」などと答弁しているが、具体策には触れなかった。対策は今後、政府がつくる「実施法案」に丸投げする形で、無責任というしかない。
 ほかにも青少年への悪影響や犯罪組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)など議論すべき点は多い。何より観光立国の起爆剤とすると言いながら、経済効果がどれぐらいか、さっぱり分からない。それでも延長国会で成立させるという。
 委員会では「(カジノによる)経済振興というが、ゆがんだ発想だ。他人の不幸の上に富を築くものだ」との意見も出た。かつて同じようなことを述べた自治体トップがいた。同じ思いの国民も多いだろう。
 審議が全く足りない。自民党は国会軽視の姿勢を改め、国民に届く丁寧な議論を尽くすべきだ。強行採決など考えたことがないと言っていたのは首相ではなかったか。
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中国新聞 2016/12/4
社説:カジノ法案、危うい発想 容認できぬ


 あまりにも乱暴すぎるやり方だ。刑法が「賭博」として禁じるカジノに解禁の道を開く法案が、衆院の内閣委員会で自民党などの賛成多数で可決された。
 国民の懸念は根強く、一度は廃案になった経緯もある。にもかかわらず、衆院での審議入りからわずか3日、審議は6時間にも満たなかった。
 議員立法で提出された統合型リゾート施設(IR)整備推進法案で、カジノを中心に大型会議場やホテル、商業施設などが一体的になったIRの整備を政府に促すものだ。法施行から1年以内をめどに、カジノ運営のルールなど実施法案を国会に提出するよう義務付けている。それが成立すればカジノはIR限定で合法化されるようになる。
 自民党は滞在型の観光を実現し、雇用の創出や地域経済の振興を図れるなどの効用を強調する。安倍晋三首相も「成長戦略の目玉」と位置づけ、万博と絡めてカジノを大阪再生の起爆剤としたい日本維新の会も賛成した。確かに一定の経済効果は期待できるかもしれないが、カジノ解禁に伴う「副作用」から目をそらしてはならない。
 国内外の反社会的勢力の介在やマネーロンダリング(資金洗浄)の恐れ、治安の悪化、青少年への悪影響など、いずれも深刻な課題である。とりわけ気掛かりなのは社会問題化しているギャンブル依存症の人が増えるのではないかということだ。
 日本国内では競馬や競輪などの公営ギャンブルに加え、「遊技」とされるパチンコ・パチスロ店も多く、賭け事が身近な存在になっている。厚生労働省の推計では、ギャンブルにのめり込んで衝動を抑えられなくなる依存症の疑いのある人は536万人に上る。
 成人の4・8%に当たり、国際的にも高い水準にある。その上、カジノまで解禁されれば、増加は避けられないのではないか。不安を抱く人が多いのは当然だろう。
 経済効果についても疑問視する指摘がある。マカオやシンガポールのカジノでは、頼みだった中国人の富裕層が減り、売り上げが落ち込んでいるという。後発の日本で期待通りの集客と売り上げが見込めるかどうかといった視点も必要だろう。
 こうした「負の側面」への具体的な対策は衆院の委員会審議で置き去りにされたままだ。
 提出者である自民党などの議員は依存症問題について問われると「実施法で議論する」という答弁に終始した。入場制限の在り方についても法案には「必要な措置を講じる」とあるだけだ。政府へ丸投げではあまりにも無責任な姿勢といえよう。
 カジノでは賭け金が高額になりやすい。ギャンブルにはまった末、多額の借金や失職、家庭の崩壊、果ては犯罪に走るケースも生じる場合がある。社会的な損失やコストも十分に考慮しなければならない。
 そもそもカジノの収益の柱は客が賭けで負けたお金である。ギャンブルで泣く人を頼みに、地域振興を図ろうとする発想自体が不純ではないか。
 当然、参院では法案をより慎重に取り扱うべきであり、衆院のようにカジノ解禁の問題点と正面から向き合わないままの審議には何の意味もない。残り短い会期中に成立させるようなことは許されない。
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西日本新聞 2016年12月03日 10時35分
社説:カジノ法案可決 懸念や疑問は置き去りか


 どさくさ紛れとはこのことだ。年金制度改革法案や環太平洋連携協定(TPP)関連法案の成立を目指して国会の会期を延長したはずなのに、一気呵成(かせい)に採決へ突き進んだのはカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)だった。
 この法案はきのう、衆院内閣委員会で自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。自民は今国会で成立させる構えだ。
 カジノやホテル、大型会議場などが一体となったIRの整備を政府に促し、施行1年以内にカジノ運営などの実施法案を国会に提出するよう義務付ける。刑法が禁ずる賭博行為をIR限定で合法化する法案である。
 この法案には懸念や疑問が多い。厚生労働省が536万人と推計するギャンブル依存症の増加、犯罪資金の流入や資金洗浄(マネーロンダリング)など暴力団の介在、周辺の治安悪化、青少年への悪影響…。どれも深刻な問題だ。
 本社加盟の日本世論調査会が昨年実施した世論調査でも、国内のカジノ設置に反対は65%に上り、賛成の30%を大きく上回った。
 だからこそ法案は2013年に議員提案されても議論は進んでいなかった。ところが先月30日に衆院で審議入りしたと思ったら、実質6時間で打ち切り採決に及んだ。あまりにも乱暴である。
 その短い審議でも、法案提出者の自民、維新両党議員の拙さが浮き彫りになった。世論の反発を問われると「IRの概念が十分膾炙(かいしゃ)(広く知れ渡ること)していない」と認めざるを得なかった。懸念や疑問は「実施法案で判断する」という。事実上政府に丸投げする無責任ぶりである。
 慎重論が強かった公明党が党議拘束を外して自主投票とし、採決を容認したのも理解に苦しむ。
 問題の多い法案である。少なくとも審議を尽くして国民的な合意を形成する必要がある法案だ。私たちは繰り返し、国会と誘致自治体に慎重な検討を求めてきた。懸念や疑問を置き去りにして性急に突っ走るのは許されない。
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