2016-12-26(Mon)

17年度予算案(2)これでは「総活躍」できぬ

アベノミクスの限界如実に 砂上の楼閣ではないか 歳出肥大に危機感薄い

<各紙社説>
北海道新聞)2017年度予算案 これでは「総活躍」できぬ(12/23)
河北新報)来年度政府予算案/アベノミクスの限界如実に(12/23)
信濃毎日新聞)政府予算案 砂上の楼閣ではないか(12/23)
京都新聞)新年度予算案  借金頼みどう抜け出す(12/23)
神戸新聞)政府予算案/歳出改革に踏みだすべき(12/23)
中国新聞)政府予算案 歳出肥大に危機感薄い(12/23)
西日本新聞)政府予算案 成長も財政再建も危うい(12/23)




以下引用



北海道新聞 2016/12/23 08:50
社説:2017年度予算案 これでは「総活躍」できぬ


 政府は2017年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は97兆4547億円となり、当初予算としては5年連続で過去最大を更新した。
 歳出の3分の1を占める社会保障費の伸びを抑え、財務省は「経済再生と財政健全化を両立した」と胸を張る。
 だが国民の暮らしに直結する予算が削られる一方で、防衛費などは聖域のように増え続ける。
 歳入に目を向けると、税収が伸び悩み、新しく発行する国債(国の借金)の減額幅はわずかにとどまった。
 アベノミクスは財政出動で企業収益を高めて税収を増やし、財政再建につなげることも狙っていた。ところがいつまでたっても「道半ば」である。
 アベノミクスの誤算を認め、将来世代にツケを残さないよう財政規律を締め直す必要がある。
■国民の不安置き去り
 予算編成の焦点の一つは社会保障費の抑制だった。厚生労働省によると、高齢化により6400億円の自然増が見込まれた。
 政府は毎月の医療費の自己負担に上限を設ける制度などを見直し、増額を5千億円に抑えた。
 見直しは、住民税非課税の低所得世帯を除き、段階的に医療費の自己負担を増やす。介護保険も同様に毎月の負担上限額が上がる。
 高齢者といえども、裕福な人に応分の負担をしてもらうことについては検討の余地もあろう。しかし高所得といえない世帯でも負担が増える。これで安心した老後を過ごせるだろうか。
 団塊世代がすべて75歳以上になる2025年にはどうなっているのか。国民の間には不安が広がる。それが手元のお金を貯蓄して消費に回せない、だから景気も上向かない、という悪循環を生む。
 必要なのは、削りやすいところから削ることではなく、将来を見据えたビジョンを示すことだ。どんなサービスが必要で、どう負担するか。それなくして将来の安心は得られない。
■待遇改善は前進だが
 安倍晋三首相の掲げる「1億総活躍社会」をどう反映するのかも、予算編成の鍵となった。
 介護職員と保育士の待遇改善に取り組み、介護職員の給与を月額1万円、経験のある保育士は4万円増額する。
 だれもが安心して働ける環境をつくるためには介護や保育サービスの充実が欠かせない。待遇改善を図ったのは前進といえる。
 しかし、介護職員、保育士の月給は、なお全産業の平均とは大きな開きがある。
 「学びたい」という若者の切実な願いに応え、ようやく返還不要の給付奨学金も導入したが、まだまだ少ない。
 貧困や格差拡大が深刻さを増す中、子育てや教育に関する予算の拡充は今後ますます求められる。安定的な財源の確保が不可欠だ。
 一方で防衛費は5年連続の増額で、別格扱いである。公共事業費もわずかながら5年連続で増えた。ばらまきや無駄がないか、徹底した点検が必要だ。
 福島第1原発事故の除染費用に国費を初めて充てることも、精査が必要だろう。「汚染者負担の原則」の大転換である。事故を起こした東京電力の責任をあいまいにすることになりかねない。
■円安頼みの税収増加
 首相は税収増を「アベノミクスの果実」とアピールしてきた。
 だが17年度予算案の税収は0・2%増にとどまった。これに伴い、新たな国債発行額は34兆3700億円で、600億円余りしか減らせなかった。
 わずかな税収の伸びも最近の円安を前提にしている。円高になれば輸出企業の業績が悪化し、税収が減る。穴埋めのために赤字国債を増発しなければならなくなる。
 実際、16年度は税収が当初予算を1兆7千億円下回る見通しとなり、赤字国債を発行する。年度途中に赤字国債を増発するのは7年ぶりだ。税収増は円安頼みというのが実態である。
 財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額も5年ぶりに拡大し、20年度に黒字化するとの目標は一段と遠のいた。
 財政投融資(財投)が4年ぶりに増加したことも気がかりだ。国債の一種である財投債を発行し、リニア中央新幹線の延伸工事などに貸し付ける。
 財投はかつて「第2の予算」と呼ばれ、郵便貯金などを原資に非効率な事業に貸し出された。その反省から01年度の財投改革で縮小に努めてきた。
 財投が膨らみ始めたのは、超低金利で財投債を発行しやすいからだ。だが財投債も借金に変わりはない。ここにアベノミクスの危うさがある。
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河北新報 2016年12月23日金曜日
社説:来年度政府予算案/アベノミクスの限界如実に


 安倍政権の経済財政運営は「経済再生なくして財政健全化なし」が基本。経済を成長させ、その税収増で財政赤字を減らす。裏を返せば、経済を上向かせられなければ、財政再建は遠のくことになる。
 この成長頼みの危うさ、アベノミクス路線の限界が、如実に示されたのではないか。
 きのう閣議決定された2017年度政府予算案である。
 歳出規模が97兆円台半ばと過去最大に膨れた、その台所は「火の車」といえる。
 17年4月予定の消費税再増税を延期したことに加え、企業業績の失速に伴いアベノミクスの「果実」とアピールしてきた税収は、頭打ち。税外収入をかき集めるなどしても、国債(借金)の新規発行額は大幅には減らず、赤字の削減はおぼつかない。
 健全化の指標である基礎的財政収支の赤字額は約11兆円と、5年ぶりに拡大。20年度の黒字化目標達成は非常に困難になったと言うほかない。
 この目標は国際公約であり、わが国財政に対する国際的信認が揺らぎかねない。
 同時に、この苦しい台所事情のしわ寄せが暮らしにのしかかることは看過できない。
 際立つのは、「新三本の矢」の柱である子育て・介護を含む社会保障の分野だ。
 確かに、人材確保へ保育士や介護職員らの待遇改善策を掲げ、幼児教育無償化の対象を広げる。返済不要の給付型奨学金を創設して貧困の連鎖を防ぐ一歩も踏み出す。
 だが、高齢化に伴う社会保障費の伸びを抑制する方針の下、高中所得の高齢者や大企業社員らの医療・介護分野での負担は増やされる。一方で消費税増税延期に伴い、低年金者対策は先送りだ。
 社会保障の歳出改革は必要だとしても、負担増は家計に響く。低所得層の底上げは急務だ。これで低迷が続く個人消費が回復し、経済再生が進むのかどうか、疑問だ。
 税収増が続いたのは、金融緩和による「円安」で企業業績が改善したためで、それがアベノミクスの核心と言っても過言ではあるまい。年明けからの円高で本年度の税収は当初見込みを下回り、穴埋めのため国債の追加発行を強いられたのが、その証しだ。
 来年度の税収も、トランプ次期米大統領の積極財政策への期待を映した現下の円安相場をベースに見積もった甘い数字だ。米国の動向や円相場次第では下振れし、税収不足に陥る懸念は消えない。そうなれば財政はまた悪化する。
 財政再建へ歳出・歳入改革は待ったなしだ。国会で議論を尽くさねばならない。
 大震災の復興に関する特別会計は、高台移転を含む大規模事業がピークを越えたことなどから、17%減った。
 ただ、地域には復興格差がある。その実情に即した支援に加え、除染の加速や農水産物の風評被害対策、沿岸企業の人手確保策などは十分か、しっかりと点検したい。
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信濃毎日新聞(2016年12月23日)
社説:政府予算案 砂上の楼閣ではないか


 経済再生と財政健全化を両立することができた―。安倍晋三首相は、ことしも誇らしげに語っている。
 2017年度予算案がきのう閣議決定された。一般会計の総額は97兆4547億円と、5年連続で過去最大を更新している。先ごろ首相は、閣僚や与党幹部らとの政策懇談会で科学技術など成長分野への重点配分を強調した。
 借金である国債の新規発行額は16年度当初より減らしている。それでも、歳入に占める国債の比率は35%余りと高止まりだ。借金頼みは変わらない。
 財政を立て直すことができるのか、疑念が膨らむ。
   <危うさ伴う皮算用>
 希望的な見通しに立った予算案だ。税収は16年度当初と比較すると1080億円増、57兆7120億円を見込んでいる。
 きのうの閣議では16年度第3次補正予算案も決定した。秋までの円高で輸出企業の業績が悪化したことを踏まえ、税収を当初の見積もりから1兆7千億円余り下方修正している。
 17年度の税収についても一時は伸び悩むと想定していた。ところが、米大統領選後の「トランプ相場」で円安に振れたことから、回復するとの判断に転じた。
 結果、はじき出されたのは16年度の補正後より2兆円近くも伸びるという見立てである。
 税収見積もりの根拠になる名目成長率の予測は2・5%程度と民間平均の1・37%を上回る。
 借金の返済では日銀のマイナス金利政策を背景に、国債の利払い費を見積もるための想定金利を過去最低に引き下げている。
 税収、金利とも政府が思い描く展開になる保証はない。トランプ氏の出方次第で再び円高が進む可能性がある。金利上昇も考えられる。当てが外れかねず、財政運営は危うさをはらむ。
   <遠のく財政健全化>
 財政の健全度を示す基礎的財政収支は5年ぶりに悪化した。国債発行以外の歳入で政策経費をどれだけ賄えるかを示す指標だ。経費の増加に対し、税収などの伸びが伴わず、赤字幅が広がった。
 政府は、地方と合わせた収支を20年度に黒字化するという目標を掲げている。達成はますます望みにくくなった。
 国債の新規発行額は622億円減ったものの、17年度末の国と地方の借金残高は過去最悪の1094兆円に膨らむ見通しだ。
 財布のひもを締めなくてはならないのに、歳出は首相が力を入れる分野を中心に相変わらず大盤振る舞いが目立つ。
 防衛費は5年連続で増加、2年続けて5兆円を超えた。北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、新たな海上配備型迎撃ミサイルの取得費を初めて計上したほか、沖縄県名護市沖で大破する事故があったばかりの輸送機オスプレイも4機購入する方針だ。
 必要不可欠なのか、専守防衛の枠を超えないか。吟味を尽くすべきなのに、政府から丁寧な説明が聞けないまま、装備増強が進んでいく。安全保障環境が厳しいにせよ、聖域扱いはできない。
 新たな看板政策である「働き方改革」は、特別会計を含め、厚生労働省の関連予算に手厚く配分した。非正規労働者の正社員への転換促進や「同一労働同一賃金」の実現などに取り組む。
 第2次政権発足以降、首相は看板を掛け替えるように次々と目玉政策を打ち出してきた。「女性活躍」「1億総活躍」など、耳目を集めそうなスローガンを掲げるものの、成果は見えない。柱であるはずの「地方創生」は、すっかり尻すぼみの印象だ。
 実効性を伴うのか。一時の人気取りや予算のばらまきに終わらないか。政策を一つ一つ厳しく見ていかなくてはならない。
   <国会論議を尽くせ>
 社会保障費は高齢化による伸びを4997億円にとどめ、年平均5千億円を「目安」とする目標を達成している。医療や介護の保険料や自己負担を引き上げ、厚労省の要求から圧縮した。
 今後も社会保障費は確実に増える。麻生太郎財務相は「引き続き抑える方向にいかないと制度が維持できなくなる」ときのう述べている。菅義偉官房長官も医療・介護分野の改革に「不断に取り組むことが大事だ」とした。
 消費税増税の再延期で「社会保障と税の一体改革」が事実上破綻し、これに代わる改革の青写真は示されないままだ。
 いつまでも当座を取り繕ってはいられない。負担増ばかりが続けば、制度そのものへの信頼が損なわれていく。
 政府は予算案を年明けの通常国会に提出し、年度内に成立させたい考えだ。
 国内外の経済の先行きに対する楽観的な見通し、財政健全化の具体策、社会保障の将来像…。掘り下げなければならない論点が山積している。各党は事業の必要性や費用対効果とともに、政府の考えをただす責任が重い。
(12月23日)
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[京都新聞 2016年12月23日掲載]
社説:新年度予算案  借金頼みどう抜け出す


 政府は2017年度予算案を閣議決定した。一般会計総額97兆4500億円は過去最大となる。
 頼みの税収が伸び悩む中、社会保障費増に加えて経済対策に伴う出費や歳出削減の遅れにより予算規模は身の丈を超えたと言える。安倍政権はアベノミクスによる経済成長で税収を伸ばし、財政再建につなげる道筋を描いてきたが、その限界が露呈した形だ。
 総額は5年連続で増え、税収を57兆7100億円と見込む。だが税収見積もりの根拠となる名目成長率を2・5%程度と予測するのは楽観的過ぎないか。さらに外貨運用に伴う剰余金を6年ぶりに全額繰り入れて税外収入を増やすなど歳入のかさ上げも気掛かりだ。
 「借金」である国債の新規発行は、過去に発行した国債の利払いを低めに見積もり、税外収入もかき集めて抑制に努めた。前年度以下に収めたが、国債依存度は35・3%と高止まり感が否めない。
 歳出では政策経費が73兆9200億円。このうち社会保障費は32兆4700億円にまで膨らんだ。高齢化に伴う伸びを約5千億円にとどめるため、医療や介護の保険料、窓口負担の引き上げなど制度見直しが相次ぐ。家計に響く項目が並ぶのは国民にとって厳しい。
 脱デフレを掲げる安倍政権は、税収の伸びを当て込み年々歳出を増やしてきたが、ここへ来て重点分野への思い切った予算投入が難しくなった。子育て支援や働き方改革を後押しする施策に重点を置くとはいえ、予算配分にめりはりを欠き、恩恵を実感しにくい。
 一方、防衛費と公共事業費は増え政権の姿勢を鮮明にした。とりわけ5年連続で増額の防衛費は中国の海洋進出や北朝鮮によるミサイル発射を見据え、5兆1200億円を確保した。他の予算を切り詰める中で異例の優遇ぶりと言わざるを得ない。今後いかに膨張を抑えるかが問われる。
 17年度末には国と地方自治体の長期債務残高が過去最悪の1094兆円に膨らむ見込みだ。先進国では飛び抜けて厳しい水準の借金であり、早急な財政健全化が求められている状況に変わりはない。ところが経済再生と財政再建の二兎(にと)を追う安倍政権のシナリオに行き詰まりがうかがえ、消費税再増税の先送りもあって借金頼みから抜け出せそうにない。
 政府は年明けの通常国会に予算案を提出する。無駄遣いや非効率的な事業の経費が紛れ込んでいないかを精査し、併せて財政再建へ国会論議を深めてもらいたい。
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神戸新聞 2016/12/23
社説:政府予算案/歳出改革に踏みだすべき


 政府は一般会計の歳出総額が97兆4547億円に上る2017年度予算案を閣議決定した。5年連続で過去最大を更新した。
 安倍政権はアベノミクスによる景気回復で税収を増やし、財政健全化を図るシナリオを描いてきた。だが景気は足踏み状態で、税収は伸び悩む。歳出は膨らむ一方で、基礎的財政収支の赤字額は10兆8413億円と5年ぶりに拡大した。
 政府が掲げる2020年度の基礎的財政収支の黒字化の実現は、一段と遠のいた。財政健全化に向け、大胆な歳出改革に取り組むべきだ。
 予算案は子育てや働き方の見直しなど現役世代に手厚く配分した。ただ、医療や介護など社会保障費の増加を抑制するため、保険料や自己負担などで高齢者に負担増を求めた。
 歳出で増加が目立つのは防衛費だ。5年連続で増え、過去最大の5兆1251億円となった。日ロ首脳会談の合意を受けて、ロシア経済協力関連にも経費を割いた。
 公共事業関係費も大幅に増えた。整備新幹線は、建設中の3区間の事業費ベースで16年度当初比28%増の2630億円を計上した。北陸新幹線は敦賀以西の「小浜京都ルート」の詳細な経路や駅の位置確定のための調査も行う。羽田空港の整備費609億円も盛り込んだ。
 環太平洋連携協定(TPP)は、トランプ次期米大統領の脱退方針で発効は見通せないが、農業関連予算もほぼ16年度並みを確保した。特に、農地を大区画化する土地改良関連事業費は大幅に増え、補正予算と合わせると5千億円を超える。旧民主党政権時に減ったが、自民党政権時代の09年度と同水準に戻った。
 人口減少や高齢化で衰退する地方への支援策は必要だろう。訪日観光客対策などの観光予算も増額された。ただ、旧来型の公共事業でどれだけ効果が上がるのか。費用対効果を見極めねばならない。
 歳入は、税収を57兆7120億円と見込み、1千億円の増加にとどまる。それもトランプ次期米政権への期待感や米国の利上げによる円安効果で景気が上向くとの想定だが、見通しが甘いというほかない。
 国債は、新規の発行額を前年度以下に辛うじて抑えたが、借金頼みの実態は変わらない。歳出を拡大し続けながら、次世代にツケを回す財政運営はやめるべきだ。
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中国新聞 2016/12/23
社説:政府予算案 歳出肥大に危機感薄い


 一般会計総額が97兆4547億円に及ぶ2017年度予算案を政府が閣議決定した。国と地方の借金残高が1千兆円を超す中、またしても「過去最大の」という形容詞が付いた。
 なのに政府、与党側には「経済再生と財政再建の両立に資する」との自賛が目立つ。
 借金である新規国債の発行はなるほど、当初ベースで7年続けて前年度を下回っている。高齢化で増加の圧力が増す社会保障費の伸びは、「目安」通りの5千億円以下に抑え込み、厚生労働省の要求から1400億円ほど圧縮した。
 しかし、手前みそが過ぎないか。足元の円安が今後も続くとの前提で税収増を見込んだ予算ともいえるからだ。税収見積もりの根拠となる名目成長率の設定が高く、民間の予測値とかけ離れているとの見方もある。
 積極財政を吹聴するトランプ次期米大統領への期待から、日本の輸出企業には向かい風だった円高はひとまず去った。とはいえ世界経済の行方次第で山あり谷ありが待ち受けていよう。
 アベノミクスの「果実」の税収増で財政を立て直す―。とうに疑問符が付いたシナリオに、このまま固執していいものか。
 実際、17年度予算案と同じ日に決めた16年度第3次補正予算案では、1兆7千億円余りの赤字国債を追加発行する。この秋までの円高が企業の足を引っ張って法人税収が落ち込んだため、見積額に届かなかった税収の埋め合わせである。年度途中での税収減額も赤字国債の増発も、リーマン・ショックの影響が出た09年度以来となる。
 もともと補正予算は編成期間が短く、当初予算に比べて国会のチェックが行き届かない。成長頼みのシナリオに傷が付かぬよう、当初予算をきれいな姿に整えるため、補正予算という「抜け道」を使ったと受け取られても仕方あるまい。
 16年度は、3次にわたる補正編成によって公共事業費などの歳出が拡大し、新規国債発行は総額約39兆円に達する。
 借金への抵抗感が薄らいだ大きな要因は、日銀の金融緩和だろう。大規模緩和にマイナス金利政策が相まって、国債の金利が大幅に下がった。努力なしで国債費が抑えられ、財源の穴を埋める新規国債の発行を減らすことが可能になった。
 17年度予算案では、社会保障費を除けば支出抑制の努力は乏しい。防衛費、公共事業費は5年連続の増加となった。
 とりわけ防衛費の優遇は気になる。沖縄周辺の離島防衛の強化などを理由に5兆円以上を盛り込んだ。同時編成の3次補正に1700億円余りの防衛費を別に組んだのは、あるいは当初予算の伸びが1・4%どまりと見せかけるためなのか。
 こうした歳出肥大の結果として、財政の健全度を示す基礎的財政収支の赤字額は5年ぶりに拡大した。赤字幅の縮小を続けてきた安倍政権の財政運営で大きな曲がり角ともいえる。
 20年度までの基礎的財政収支の黒字化は、世界との約束のはずだ。その実現が剣が峰に立たされている。なのに危機感が国民の側に伝わってこない。
 財政再建を強調し、国民に負担増を強いる一方で、野放図な財政運営が許されていいはずはない。年明けの通常国会で、緊張感のある論戦を求めたい。
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西日本新聞2016年12月23日 10時32分
社説:政府予算案 成長も財政再建も危うい


 経済再生を確かなものにする一方、極度に悪化した財政も健全化する-。二兎(にと)を追うような課題にどう挑むか注目されたが、どちらも中途半端になってしまった。
 政府はきのう、2017年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は97兆4547億円と過去最高である。歳入は税収を57兆7120億円と高めに見積って、新規国債発行額は34兆3698億円と前年度よりわずかながら減額した。
 財政再建路線はかろうじて維持し体面を保ったが、税収増頼みの危うさも漂う。政策分野では子育て支援や働き方改革など生活支援色を強め、成長の基盤づくりに重点を置いた。その半面、ダイナミックな経済成長に直結するような政策は見当たらず、こちらも精彩を欠くと言わざるを得ない。
 そもそも国の財政には、公共サービスなどを提供する資源配分▽所得格差を是正する所得再配分▽景気変動を調整する経済安定化‐という三つの機能がある。
 ●「1億総活躍」前面に
 安倍晋三政権は当初、経済安定化機能を重視し、企業の経営環境をよくする政策を優先してきた。
 しかし、政策の効果が大企業や富裕層にとどまり、幅広い生活者が効果を実感できない不満も広がったからだろう。16年度の予算編成からは資源配分や所得再配分を重視し、生活支援型の政策を優先してきた。
 今回の予算案もその延長上にあり、「1億総活躍社会」の実現に向けた予算が目を引く。まず、同一労働・同一賃金など非正規雇用者の待遇改善策や長時間労働の改善策が盛り込まれた。さらに、保育士や介護職員の待遇改善による人材確保や、保育施設整備など保育の受け皿づくり拡大も打ち出した。うまく機能すれば、少子高齢化などによる生産力低下を食い止め、経済成長につながるだろう。
 大学などに進学する低所得世帯の学生を支援する返済不要の「給付型奨学金」の創設も決めた。規模も金額も不十分だが、無利子奨学金制度の拡充と併せ、一層の制度拡大を求めたい。
 その一方で、戦略的に成長率を高める政策は影が薄い。「観光先進国」実現に向け観光庁予算の増額のほか、人工知能やロボットの技術開発といった第4次産業革命予算などが盛り込まれたが、新味に乏しい。もっと知恵を絞った成長戦略が必要ではなかったか。
 ここ数年、予算編成の大きな焦点で一般会計の3分の1を占める社会保障費は前年度比4997億円増の32兆4735億円となった。高齢化による医療、介護、年金など社会保障費の自然増をいかに抑えるかが核心で、政府も自ら自然増を年5千億円に抑える「目安」を掲げている。
 今回は一定の収入のある高齢者の医療・介護分野の負担を増やすことに手を着けた。「痛み」を伴う改革だが、一歩踏み出したことは評価したい。しかし、超高齢社会の時代に、こうしたやりくり型の編成は限界に来ている。制度全体を俎上(そじょう)に載せ、財源を明示しつつ、持続可能な制度に設計し直す努力が必要ではないか。
 公共事業費は5兆9763億円で、微増となった。費用対効果を厳格に見据え、「量」から「質」への転換を真剣に考えたい。
 防衛費はミサイル防衛などを強化するため過去最高の5兆1251億円に達した。安全保障重視の「安倍カラー」を堅持した格好だが、効率的な予算の編成と執行は防衛費も例外としてはならない。
 ●「好循環」を生むには
 安倍政権の財政運営で気になるのは、当初予算の伸びは抑制して健全化の体裁を整えつつも、数次にわたる補正予算の編成が常態化していることだ。これにより財政規律は大幅に緩んでいる。16年度も第3次補正予算案が閣議決定されたが、当初予算と合わせた歳出規模は既に2次補正の段階で100兆円を超えている。
 このペースでいけば、17年度末の国と地方の長期債務残高は1094兆円に膨らむ見通しだ。財政健全化に向けての歳出入改革は待ったなしである。
 真に必要な分野に歳出を計上して経済成長を支える一方、財政や社会保障を持続可能にする財源措置が欠かせない。それが個人消費や設備投資の拡大につながる。アベノミクスがうたう「経済の好循環」もその先にしかない。
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