2017-01-01(Sun)

憲法70年の年明けに 各紙社説等(1) 2017年1月1日

「立憲」の理念をより深く 不戦を誇る国であれ 日本の針路は世界とつながってこそ

<各紙社説>
朝日新聞)憲法70年の年明けに 「立憲」の理念をより深く(17/1/1)
読売新聞)反グローバリズムの拡大防げ(17/1/1)
毎日新聞)歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ(17/1/1)
日本経済新聞 )揺れる世界と日本(1)自由主義の旗守り、活力取り戻せ(17/1/1)
東京新聞)年のはじめに考える 不戦を誇る国であれ(17/1/1)




以下引用



朝日新聞 2017年1月1日(日)付
社説:憲法70年の年明けに 「立憲」の理念をより深く


 世界は、日本は、どこへ向かうのか。トランプ氏の米国をはじめ、幾多の波乱が予感され、大いなる心もとなさとともに年が明けた。
 保守主義者として知られる20世紀英国の政治哲学者、マイケル・オークショットは、政治という営みを人々の航海に見立てている。
 海原は底知れず、果てしない。停泊できる港もなければ、出航地も目的地もない。その企ては、ただ船を水平に保って浮かび続けることである――。
 今年の世界情勢の寄る辺なさを、予見したかのような言葉として読むこともできるだろう。
 と同時にそれは本来、政治にできることはその程度なのだという、きわめて控えめな思想の表現でもある。
 昨今、各国を席巻するポピュリズムは、人々をあおり、社会に分断や亀裂をもたらしている。民主主義における獅子身中の虫というべきか。
 オークショットのように抑制的で人気取りとは縁遠い政治観は、熱狂や激情に傾きがちな風潮に対する防波堤の役割を果たす。
 ■人々の暮らしの中で
 不穏な世界にあって、日本は今年5月、憲法施行70年を迎える。
 憲法もまた、政治の失調に対する防波堤として、大切な役割を担ってきた。その貢献の重みを改めて銘記したい。
 「立憲主義」という言葉の数年来の広がりぶりはめざましい。政治の世界で憲法が論じられる際の最大のキーワードだ。
 中学の公民の教科書でも近年、この言葉を取り上げるのが普通のことになった。
 公の権力を制限し、その乱用を防ぎ、国民の自由や基本的人権を守るという考え方――。教科書は、おおむねこのように立憲主義を説明する。
 それは人々の暮らしの中で具体的にどう働くのか。
 例えば、政党機関紙を配った国家公務員が政治的な中立を損なったとして起訴されたが、裁判で無罪になった例がある。判断の背景には、表現の自由を保障した憲法の存在があった。
 ■民主主義をも疑う
 立憲主義は、時に民主主義ともぶつかる。
 民主主義は人類の生んだ知恵だが、危うさもある。独裁者が民主的に選ばれた例は、歴史上数多い。立憲主義は、その疑い深さによって民主主義の暴走への歯止めとなる。
 根っこにあるのは個人の尊重だ。公権力は、人々の「私」の領域、思想や良心に踏み込んではならないとする。それにより、多様な価値観、世界観を持つ人々の共存をはかる。
 ただ、こうした理念が、日本の政界にあまねく浸透しているとは到底いえない。
 自民党は立憲主義を否定しないとしつつ、その改憲草案で「天賦人権」の全面的な見直しを試みている。
 例えば、人権が永久不可侵であることを宣言し、憲法が最高法規であることの実質的な根拠を示すとされる現行の97条を、草案は丸ごと削った。
 立憲主義に対する真意を疑われても仕方あるまい。
 衆参両院の憲法審査会は昨年、立憲主義などをテーマに討議を再開したが、議論の土台の共有には遠い。
 どんな立場を取るにせよ、憲法を論じるのなら、立憲主義についての真っ当な理解をより一層深めることが前提でなければならない。
 ■主要国共通の課題
 立憲主義にかかわる議論は、欧米諸国でも続く。
 一昨年のパリ同時多発テロを経験したフランスでは、非常事態宣言の規定を憲法に書き込むことが論じられたが、結果的に頓挫した。治安当局の権限拡大に対する懸念が強かった。
 同じくフランスの自治体が、イスラム教徒の女性向けの水着「ブルキニ」を禁止したことに対し、行政裁判の最高裁に当たる国務院は「信教と個人の自由を明確に侵害する」という判断を示した。
 個人、とりわけ少数者の権利を守るために、立憲主義を使いこなす。それは今、主要国共通の課題といっていい。
 環境は厳しい。反移民感情や排外主義が各地で吹き荒れ、本音むき出しの言説がまかり通る。建前が冷笑されがちな空気の中で、人権や自由といった普遍的な理念が揺らぐことはないか、懸念が募る。
 目をさらに広げると、世界は立憲主義を奉じる国家ばかりではない。むしろ少ないだろう。
 憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授は「立憲主義の社会に生きる経験は、僥倖(ぎょうこう)である」と書いている。
 であればこそ、立憲主義の理念を、揺らぎのままに沈めてしまうようなことがあってはならない。
 世界という巨大な船が今後も、水平を保って浮かび続けられるように。
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読売新聞 2017年01月01日 06時00分
社説:反グローバリズムの拡大防げ


 ◆トランプ外交への対応が必要だ◆
 「反グローバリズム」の波が世界でうねりを増し、排他的な主張で大衆を扇動するポピュリズムが広がっている。国際社会は、結束を強め、分断の危機を乗り越えなければならない。
 保護主義を唱え、「米国第一」を掲げるドナルド・トランプ氏が20日に米大統領に就任する。
 力による独善的な行動を強めるロシアや中国に、トランプ氏はどう対応するのか。既存の国際秩序の維持よりも、自国の利益を追求する「取引」に重きをおくのであれば、心配だ。
 米国が、自由や民主主義といった普遍的な価値観で世界をリードする役を降りれば、その空白を埋める存在は見当たらない。
 移民の増加を拒否し、欧州統合の理念に背を向けた英国の欧州連合(EU)離脱は、今春に具体化の段階に入る。春の仏大統領選、秋の独総選挙でも、排外主義を掲げる勢力の伸長が予想される。
 各国が内向き志向を強め、利害対立が激しさを増す。そんな潮流に歯止めをかける必要がある。
 激変する国際環境の中で、日本は、地域の安定と自国の安全を確保していかねばならない。
 日米同盟の重要性をトランプ氏と再確認し、さらに強化する道筋をつけるべきだ。
 ◆「米露中の関係どう変化
 トランプ氏の外交姿勢で目を引くのが、ロシアとの関係改善への意欲だ。大統領選中から、プーチン露大統領を評価する発言を繰り返した。国務長官には親露派の石油企業トップの起用を決めた。
 プーチン氏も対米修復に積極的だ。両氏は、シリア内戦の終結や過激派組織「イスラム国」対策で協力を深める構えでいる。
 だが、オバマ政権の下で、米国はロシアのクリミア併合をめぐり、欧州とともに対露経済制裁を主導してきた。シリアでも、欧米はアサド政権の早期退陣を目指し、現政権支持のロシアと対立してきた経緯がある。
 ロシアの協力を得る引き換えに、クリミア併合やアサド政権の存続を容認する。トランプ氏がそんな方針に転じることがあれば、米欧間に亀裂が走ろう。
 中国に対し、トランプ氏がどのように行動するかも不透明だ。トランプ氏は台湾の蔡英文総統と電話会談し、続いて「一つの中国」原則への疑問も口にした。中国の南シナ海での力による進出を問題視する構えも示す。
 大統領選中には、中国の対米輸出増に高関税で対抗するとも公言していた。貿易問題と安全保障を絡めて中国を牽制し、有利な状況を作り出そうとの戦略なのか。
 中国の習近平政権の対応次第では、米中間の緊張が高まろう。
 逆に、トランプ氏が中国の行動に甘い姿勢をとれば、アジアでの中国の覇権的な振る舞いに拍車がかかる懸念もある。中国は初めて空母に西太平洋を航行させるなど、海洋進出を加速している。
 トランプ氏にも国務長官予定者にも、政治経験がない。軍出身者が並ぶ閣僚の布陣も、危うさがある。米露、米中関係の変化が国際秩序にもたらす影響を、注視する必要がある。
 日本は、尖閣諸島周辺などで中国の膨張圧力に直面している。ロシアとの間では北方領土交渉を抱える。トランプ外交の行方にとりわけ目を凝らさざるを得ない。
 オバマ米大統領は、尖閣諸島が、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると明言していた。トランプ氏がその立場の継承を確認するかどうかは、日本の安全確保に大きな意味を持つ。
 トランプ氏は、在日米軍経費の負担増に言及したが、日本は同経費の75%を負担している。負担額は米同盟国の中で突出して多い。集団的自衛権の限定行使を可能にした安全保障関連法で、米軍への協力体制も強化された。
 ◆同盟の意義確認したい
 日米同盟による抑止力の強化が、東アジア地域の安定に不可欠で、米国の国益にも適うことを、粘り強く説明していくべきだ。
 安倍首相は昨年末、オバマ氏とともにハワイの真珠湾を訪問した。日米の歴史的な和解の集大成と位置づけられる。首相は、未来志向の「希望の同盟」を築いていく決意を強調した。
 今月下旬に予定されるトランプ氏との首脳会談でも、この目標へ共に歩むことを確認したい。首相には、国際政治が混迷しないよう、トランプ外交に注文をつけていく役回りも期待される。豊富な政治・外交経験を生かす時だ。
 北方領土交渉を巡る日本とロシアとの立場の隔たりは、なお大きい。安倍首相とプーチン氏は、昨年12月の首脳会談で、4島での「共同経済活動」に関する協議の開始で合意した。
 平和条約締結への重要な一歩となり得るが、具体的な制度設計はこれからだ。経済活動に携わる企業や労働者の納税、トラブルなどに適用する法律をどうするか。
 安倍首相は記者会見で「特別な制度」を作る考えを示した。ロシア法でもなく日本法でもない特別な制度との趣旨だが、プーチン氏からは、制度について直接の言及はなかった。
 両国の主権に関わる問題を乗り越えられるかは、まだ見通せない。米露関係の改善が進めば、ロシアにとっては、対日交渉の優先度が低下するとの観測もある。
 安倍首相は、今年早期に訪露し、プーチン氏と会談する考えだ。プーチン氏の真意を見極めつつ、両首脳間の信頼関係を生かして交渉を前進させるしかない。
 国際情勢を揺るがすのは、トランプ外交ばかりではない。米大統領選での「トランプ現象」に通底する反グローバリズムとポピュリズムは、欧州でも、その勢いを増している。
 ◆勢い増すポピュリズム
 英国のEU離脱を決定した国民投票では、生活に苦しむ低所得者や労働者が離脱に賛成票を投じた。「移民を拒否し、政策の決定権をEUから自国に取り戻せ」という離脱派の主張に賛同した。
 「反移民」「反EU」「反エリート」などのスローガンを掲げることで、国民の不満をすくい取る政治勢力は、他の欧州諸国でも存在感を増している。
 フランスでは極右政党・国民戦線のルペン党首が支持を広げ、ドイツでも難民受け入れ反対を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が地方選で躍進を続ける。
 イスラム過激思想に基づくテロの拡散が、こうした勢力に利用されている点も見逃せない。
 昨年末、ベルリンでクリスマスの市に大型トラックが突入したテロでは、「イスラム国」が犯行声明を出した。容疑者は難民申請を却下された人物だった。
 AfDは、すかさず、寛容な難民政策を進めてきたメルケル独首相への批判を展開した。
 市民のテロへの恐怖心をも利用して、難民や移民を拒否すれば安全や生活の安定が保てるかのように唱える。排外主義を煽るポピュリズムの拡大は、人や物の自由な移動を進めるグローバリズムの最大の障壁になりつつある。
 米欧で反グローバリズムやポピュリズムが伸長する背景には、リーマン・ショックを契機とした世界的な経済成長の停滞がある。
 自由貿易の拡大は、各国に産業構造の変化をもたらした。国際競争力の低い産業は衰え、生産や雇用が国外に流出する。
 高成長が確保されている間は、他の産業が雇用を吸収するなどしてしのげる。だが、成長が滞るとそれも難しくなる。
 自分たちはグローバル化の犠牲になったと感じる人々が増えた。移民や難民に職を奪われることへの危機感も相まって、排外主義や保護主義に同調している。
 ◆自由貿易で成長復活を
 トランプ氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を予告している。TPPは、今後の自由貿易の標準となり得る高度な枠組みだ。その否定は、自由貿易拡大の機運を萎ませる。
 保護主義を強めれば、雇用や生産が復活し、自国民の生活が楽になると考えるのは、短絡的だ。自国市場を高関税で守れば、消費者は割高な商品の購入を強いられる。他国が対抗策をとれば、輸出産業も打撃を受ける。
 経済資源を、国境を越えて効率的に活用するのが自由貿易だ。多国間での取り組みをさらに進め、新興国の活力や技術革新の成果を世界に広げることで、成長の復活を目指すしかない。それが国際政治の安定の基盤ともなろう。
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毎日新聞2017年1月1日 東京朝刊
社説:歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ


 私たちは歴史の曲がり角に立っている。明日の世界は、昨日までとは異なっているかもしれない。
 そんな思いにとらわれる新年だ。
 理念よりも損得というトランプ氏がいよいよ米大統領に就任する。
 時代の変化は周辺部で始まり、想像を超えて中心部に及ぶことがある。1989年11月にベルリンの壁が壊された時、どれだけの人が2年後のソ連崩壊を予測できたろう。
 今回は初めから国際秩序の中枢が舞台だ。冷戦の終結に匹敵する大波が生まれても不思議ではない。
資本と民主主義の衝突
 トランプ氏の勝利と、それに先立つ英国の欧州連合(EU)離脱決定は、ヒトやカネの自由な行き来に対する大衆の逆襲だ。グローバルな資本の論理と、民主主義の衝突と言い換えることもできるだろう。
 フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は「21世紀の歴史」(2006年)で、歴史を動かしてきたのはマネーの威力だと指摘した。
 その法則を21世紀に当てはめると、地球規模で広がる資本主義の力は、国境で区切られた国家主権を上回るようになり、やがては米国ですら世界の管理から手を引く。その先に出現するのは市場中心で民主主義が不在の「超帝国」だと説いた。
 先進国を潤すはずのグローバル経済が、ある時点から先進国を脅かし始める。各国から政策の選択肢を奪い、国内の雇用を傷める。
 ここまではアタリ氏の見立て通りだが、私たちが昨年目撃したのは国家の「偉大なる復権」をあおり立てるポピュリズム政治家の台頭だ。
 しかも彼らの主張は、国際協調の放棄や排外的ナショナリズムといった「毒素」を含んでいた。欧州の極右勢力も勢いづいている。
 軍事力、経済力ともに抜きんでた米国がこうした潮流をけん引する影響は計り知れない。国際秩序は流動化し、国際経済は収縮に向かう。
 日本はこの転換期にどう立ち向かえばいいのだろうか。
 戦後72年、米国の動向を最大の指標としてきた日本である。その土台が揺さぶられるのは間違いない。
 特に外交・安全保障政策は試練に直面する。トランプ政権が日米同盟をその都度の取引と考えた場合、中国の海洋進出や北朝鮮の脅威に対抗していくのは難しくなる。
 しかし、ここでうろたえずに自らの立ち位置を再認識することが肝要だ。それは、他国との平和的な結びつきこそが日本の生命線であるという大原則にほかならない。
 米国が揺らぐなら、開かれた国際秩序のもたらす利益の大きさを、日本自身の行動で説くべきだろう。
 自由貿易を軸とした通商政策やグローバル企業への課税のあり方、地球温暖化の防止対策なども、多国間の協調なしには進められない。
 グローバル化がもたらす負の課題は、グローバルな取り組みでしか解決し得なくなっているのだ。日本は率先してその認識を広めたい。
 ただし、戦略的に国際協調の路線を歩むには、足元の安定が欠かせない。日本の弱点がここにある。
持続可能な国内対策を
 まずは財政だ。国と地方が抱える借金は1000兆円を超えた。国内総生産比で約2・5倍という債務は終戦時のレベルに相当する。それでも国債価格が暴落しないのは、日銀が買い支えているためだ。
 増え続ける社会保障費を前に、国債依存から抜け出せない。根本的な原因は、支えられる側の高齢者の割合が増えるのに、支え手の数が減る人口構成のアンバランスにある。
 日本の少子化、その下での社会保障政策、借金頼みの財政、日銀の異次元緩和というサイクルが長続きしないのは明らかだ。破綻すれば国際協調どころではなくなる。
 さらに日本がグローバリズムと共存していくには、国民の中間的な所得層をこれ以上細らせないことが最低限の条件になる。民主主義の質に深くかかわるからだ。
 民主主義は社会の意思を決めるためにある。多様な意見を持つ個々人が多数決の結論を受け入れるには、社会の構成員として何らかの一体感を持っていなければならない。
 ところが、所得分布が貧富の両極に分かれていくと、この一体感が損なわれる。トランプ現象で見られたように、選挙が一時の鬱憤(うっぷん)晴らしになれば、民主主義そのものの持続可能性が怪しくなっていく。
 人類は豊かさへの渇望とテクノロジーの開発によってグローバル化を進めてきた。その最先端にいた米国と英国が逆回転を始めたのは歴史の大いなる皮肉だ。この先に何が待っているのか、まだ誰も知らない。
 日本にとっては手探りの船出になるだろう。ただ、ささくれだった欧米の政情と比べれば、日本社会はまだ穏健さを保っている。
 持続が可能な国内システムの再構築に努めながら、臆することなく、世界とのつながりを求めよう。何かが見えてくるのはそれからだ。
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日本経済新聞 2017/1/1付


社説:揺れる世界と日本(1)自由主義の旗守り、活力取り戻せ
 2017年が明けた。米国のトランプ大統領の就任、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の開始、仏独の選挙、韓国の大統領弾劾など、不確実性という言葉がこれほど似合う年はない。
 混迷する世界で日本はどんな役割を果たせばいいのだろうか。
 トランプ次期米大統領が掲げるのは大減税、公共投資、規制緩和の「3本の矢」だ。世界的なデフレに幕を引くリフレーション政策だとはやす人々もいる。
円安・株高に甘えない
 足元の円安・株高は日本企業に収益の改善をもたらしている。昨年前半の急激な円高環境と打って変わり、このままの相場水準が続けば、3月期決算の企業は増益基調を維持できるだろう。
 日本政府や企業はそれに甘えてはいけない。昨年末までの相場は米新政権の政策のいいとこ取りを反映したもので、日本自身の努力とはほぼ無関係だ。企業は好機を生かし、積極的に事業拡大の布石を打つべき時だろう。
 一方トランプ氏が掲げる政策には、自由主義経済を損ねる要素も数多く含まれている。
 「トランプ氏に自由市場のサポート役になるという発想は一切ない」(国際政治学者のイアン・ブレマー氏)。米国が中国やメキシコと対立し、関税引き上げなどの保護貿易に動けば、金融・資本市場にショックが走るだろう。
 開放経済と民主主義のとりでであったEUも、相次ぐテロや移民問題などで揺らいでいる。中国やロシアのような強権主義が幅をきかせ、世界中が内向きになる時代だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効も見通せない。
 だからこそ、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っている。戦後、資源のない小国が豊かになれた理由を忘れてはならないし、未来を貿易に託す新興国をサポートする役割もある。
 安倍晋三首相はトランプ氏にTPPへの参加を粘り強く説くべきだし、並行してEUや中韓との協議を急ぎ自由貿易協定(FTA)で合意を目指すべきだ。
 もうひとつ、日本が真剣に向き合わなければならないのは、加速するデジタル社会への対応だ。
 「フラット化する世界」でグローバル化のありようを描いたトーマス・フリードマン氏。近著「Thank you for being late」で、デジタル化の衝撃を「スーパーノバ」(超新星)と名付けた。
 「iPhone」や「Android」が生まれた07年がグーテンベルク以来の技術的な転換点の年だったと指摘している。この間、デジタル技術を使うコストは驚異的に下がった。人間一人分のヒトゲノムの解析費用は、01年に1億ドルだったのが、15年には1000ドルに下がった。
 20世紀の生産性向上がブルーカラーの肉体労働の代替だったのに対し、これから本格化するのは人工知能(AI)によるホワイトカラーの頭脳労働の代替である。
 20年の東京五輪・パラリンピックの際には自動運転車が走るだろう。通信速度が飛躍的に向上する5Gが普及し、あらゆるものにチップが埋め込まれ、センサーにつながる。
若手を前面に押し出す
 アマゾン・ドット・コムが実験を公表したように、スーパーもレジなしで支払いができるようになる。あらゆるところで、仕事のあり方も変わってくるだろう。
 そうした第4次産業革命を担うのは、デジタルネーティブと呼ばれる、物心ついたときからデジタルに親しんできた若手人材だ。
 日本の旧来型の年次主義、終身雇用の就業システムで、こうした人材の実力を引き出すことができるかというと、疑問がある。
 たこつぼ型の組織を変え、年次にかかわらず社内外から人を集めてチームを編成し、資金も投じるようでないといけない。
 「人工知能が変える仕事の未来」の著者、野村直之氏は「大企業が世界で主導権をとるべく目標を掲げたら、必ず若手人材も育つ」と指摘する。「彼らは英語もできるし、コミュニケーション能力もある」。若者を前面に押し出せば、日本に活力が戻るだろう。
 日本はこの150年、明治維新と敗戦という2つの断崖を乗り越えてきた。どちらも若い世代が活躍し、新しい日本をつくりあげた。それをいまこそ思い出そう。
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東京新聞 2017年1月1日
【社説】年のはじめに考える 不戦を誇る国であれ


 新年早々ですが、平和について一緒に考えてください。人類はなぜ暴力を好み、戦争がやめられないのか。どうしたらやめる方向へと向かうのか。
 日本の平和主義を二つの観点から見てみましょう。
 一つは、だれもが思う先の大戦に対する痛切な反省です。
 振り返れば、日本は開国をもって徳川の平和から明治の富国強兵へと突入します。
 平和論より戦争論の方が強かった。「和を以(もっ)て貴しと為(な)す」の聖徳太子以来の仏教の平和論をおさえて、ヨーロッパの戦争論がやってきます。
 例えば「戦争は政治の延長である」という有名な言葉を記すプロイセンの将軍クラウゼヴィッツの「戦争論」。その一、二編はドイツ帰りの陸軍軍医森鴎外によって急ぎ翻訳され、続きは陸軍士官学校が訳します。海洋進出を説く米国の軍人で戦史家マハンの「海上権力史論」も軍人必読でした。
 欧米の戦争を学ぶ。いい悪いはともかくも追いつかねば、の一意専心。帝国主義、植民地主義。日清、日露の戦争。
 そういう戦争精神史をへて突入したのが、満州事変に始まって太平洋戦争に至るいわゆる十五年戦争です。
 最大の反省は人間が人間扱いされなかったことです。人間が非人間化されたといってもいいでしょう。そういう異常の中で敵側は人間以下であろうし、味方にもむやみな死を求める。
 クラウゼヴィッツのいう政治目的の戦争ではもはやなく、ただ進むしかない、戦争を自己目的化した戦いになっていたといっていいでしょう。
◆ただの戦争嫌いでなく
 その絶望の果てに戦後日本は不戦を尊び固守してきたのです。
 守ってきたのは元兵士と戦争体験者たちです。
 文字通り、命がけの訴えといってもいいでしょう。ただの厭戦(えんせん)、戦争嫌いというのでなく、国は過ちを犯すことがあるという実際的な反省でもあります。国民には冷静な目と分析がつねに必要だという未来への戒めです。
 日本の平和主義についての二つめの観点とは、戦後憲法との関係です。
 戦争勝者の連合国は敗者の日本、イタリア、西ドイツに非軍事化条項を含む憲法を求めた。
 戦後冷戦の中で日本はアメリカの平和、いわゆるパックス・アメリカーナに組み込まれ、自衛隊をもちます。
 その一方で稀有(けう)な経済成長に恵まれ、その資力を主にアジアの発展途上国への援助に役立てます。
 ここで考えたいのは、平和主義とはただ戦争をしないだけでなく平和を築こうということです。前者を消極的平和、後者を積極的平和と呼んだりもします。
 例えば積極的平和を築こうと一九六〇年代、平和学という学問分野が生まれ、ノルウェーにはオスロ国際平和研究所ができた。政治や法律、経済、国際関係、歴史、哲学、教育など科学を総動員して平和を築こうというのです。
 実際にノルウェーは大国などではありませんが、イスラエルとパレスチナの間に和平をもたらそうというオスロ合意を成立させた。中東の国連平和維持活動に出ていて、両者の争いを終わらせるのは武力でなく対話しかないと考え至るのです。今は失敗かとまでいわれますがその熱意と意志を世界は忘れていません。
 日本国憲法の求める平和主義とは武力によらない平和の実現というものです。
 対象は戦争だけでなく、たとえば貧困や飢餓、自然災害の被害、インフラの未発達など多様なはずです。救援が暴力の原因を取り去るからです。
 NGО、非政府組織の活動が広がっている。ミリタリー、軍事から、シビリアン、民間への移行です。日常の支援が求められます。ミリタリーの非軍事支援も重要になっている。
 だが残念ながら世界は不安定へと向かっているようです。
◆武力によらない平和を
 格差とテロとナショナリズム。それらが絡み合って国や民族が相互不信の度を高めつつある。しかし不信がつくられたものなら、解消することもできるはずです。
 そういう時だからこそ、私たちは平和主義、世界に貢献する日本の平和主義をあらためて考えたいのです。
 ただの理想論を言っているのではありません。武力によらない平和を求めずして安定した平和秩序は築けない。武力でにらみあう平和は軍拡をもたらすのみです。
 理想を高く掲げずして人類の前進はありえないのです。
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