2017-01-13(Fri)

物流・宅配 運送業の人手不足 トラックが足りない

ヤマトHD、ネコの手借りても…迫る限界 若者の就業が少なく、高齢化進む

----若者の就業が少なく、高齢化も進んでいる。7割が40代以上で、15%は60代以上だ。新規就業の減少と高齢者の退職で人手不足の深刻化が懸念される。鉄道貨物協会は20年度には約10万人のトラック運転手が不足すると予測する。

----トラック運転手の減少は長時間労働の割に賃金が低く、職業としての魅力が薄れていることが背景にある。厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は「運輸・郵便業」で約2割となり、全業種で最も高かった。一方、トラック運転手が含まれる「道路貨物運送業」の平均賃金は14年に月額約29万4千円で、全産業平均を2万円下回る。
恒常的な人手不足物流の停滞を招きかねない。

(日本経済新聞 社説・記事)
社説:「運べないリスク」の解消へ総合策が必要だ(1/11)
運送業の人手不足 高齢化、40歳以上が7割 (10/25)
トラックが足りない 日本の物流は大丈夫か  編集委員 志田富雄(1/8)
佐川駐車違反逃れ、背景に運転手不足 免停や内勤処分回避か(12/27)
ヤマトHD、ネコの手借りても…迫る限界 (1/12)




以下引用



日本経済新聞 2017/1/11 2:30
社説:「運べないリスク」の解消へ総合策が必要だ


 国内の貨物輸送はトラックと海運が全体の9割強を占める。その2つの業界で従業員の高齢化が進み、人手不足が深刻になってきた。輸送現場の労働環境を改善して新たな就労者を呼び込むとともに、IT(情報技術)の導入や鉄道などの活用で輸送効率を高める対策が急務だ。
 農林水産省と経済産業省、国土交通省は昨年末、第1回の農産物の物流対策会議を開いた。物流コストを削減し農家の所得拡大につなげることが主眼だが、九州などでトラックを確保できない産地が増えた問題への対応でもある。
 背景には長距離トラックの運転手が慢性的に不足し、過重な労働を放置する違反企業の摘発が増えたことがある。運輸業には労使協定で一般の労働基準を緩和できる特例がある。それでも厚生労働省は過度な労働を防ぐため「運転時間は2日平均で1日9時間以内」などの基準を定めている。
 運転手の過酷な勤務は大きな交通事故にもつながる。運輸各社が労働基準を厳格に守るのは当然で、業界が人材を確保していくうえでも不可欠だ。
 消費者はインターネット上に開設した店舗で商品を買う機会が増え、それを即日届けてくれるサービスも広がってきた。ただ、こうした利便性は安定した物流があってこそ成り立つ。
 年37億個もの荷物を扱う宅配便では、佐川急便の社員が駐車違反の身代わり出頭を知人らに依頼して逮捕される事件が起きた。運転手が配送業務を続けられなくなる事態を避けることを目的に、同社内で横行していたとみられる。
 違法な行為は許されない。と同時に、過度の競争が現場の能力を超す負担をかけていないか、点検することも必要だろう。
 内航海運では、外航船のように外国人に頼ることができないため60歳以上の船員が4分の1を占める。2~3カ月に及ぶ乗船期間を短くしたり船内の居住環境を改善したりして、1%に満たない女性の船員を増やす必要がある。
 トラック輸送や内航海運は中小企業が多い。集荷や配送効率を高めるIT投資の推進へ向けて、企業の再編や連携も求められる。
 人手不足は構造的な問題だ。鉄道やフェリーなどさまざまな輸送手段とうまく組み合わせて荷物を効率的に輸送し、現場の労働条件も良くする。そんな工夫を運輸業全体で考えなくてはならない。
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日本経済新聞 2016/10/25 2:01
運送業人手不足 高齢化、40歳以上が7割


 ▼運送業人手不足 総務省の労働力調査によると2015年のトラック運転手は80万人で前年比で3万人減少した。トラック運転手を含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は15年度に2.25倍で、全業種平均の1.21倍を大きく上回る。若者の就業が少なく、高齢化も進んでいる。7割が40代以上で、15%は60代以上だ。新規就業の減少と高齢者の退職で人手不足の深刻化が懸念される。鉄道貨物協会は20年度には約10万人のトラック運転手が不足すると予測する。
 トラック運転手の減少は長時間労働の割に賃金が低く、職業としての魅力が薄れていることが背景にある。厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は「運輸・郵便業」で約2割となり、全業種で最も高かった。一方、トラック運転手が含まれる「道路貨物運送業」の平均賃金は14年に月額約29万4千円で、全産業平均を2万円下回る。
 恒常的な人手不足物流の停滞を招きかねない。ビール業界で共同輸送に取り組む動きが出始めたほか、バスや鉄道を使った貨物輸送も広がってきた。ヤマトホールディングスは岩手県や宮崎県の路線バスで乗客と一緒に荷物を運ぶ「客貨混載」に取り組んでいる。トラック輸送の一部を公共交通機関で代替し、荷物の少ない地域の輸送効率を高める。佐川急便も第三セクターの北越急行(新潟県南魚沼市)の鉄道車両で荷物を運ぶ事業を来年度に始める。
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日本経済新聞 2017/1/8 2:00
トラックが足りない 日本の物流は大丈夫か  編集委員 志田富雄


 クリスマス連休の前あたりから、頼んだ商品が指定の時間帯にとどかなくなったという読者は多いのではないでしょうか。インターネット通販の拡大などで、宅配便が扱う荷物は年間37億個に達します。その一方で、日本の物流現場では従業員の高齢化や人手不足が深刻になっているのです。今年最初の解説は、日本経済を支える物流の危機を取り上げます。
■超過労働に支えられていた物流
 国土交通省の統計によれば、2014年度に日本国内で輸送された貨物の距離と重さをかけた量は4150億トンキロメートルになります。そのうち半分の2100億トンキロがトラック輸送で、海運の1830億トンキロを合わせると全体の95%を占めます。その2つの業界で従業員の高齢化が進み、人手不足が深刻になっているのです。
 影響を受けるのは宅配便などで商品をとどけてもらう消費者だけではありません。農林水産省と経済産業省、国土交通省は昨年12月21日、第1回の「農産品物流対策関係省庁連絡会議」を開きました。物流コストを削減し農家の所得拡大につなげることが主眼ですが、九州などの産地でトラックを確保できない事態が相次ぎ、早急な対応を迫られていることも理由です。JA熊本経済連によると、熊本県内の農家は東京や大阪など大都市市場への出荷を前提に野菜などを作っており、出荷量が増える年末などにとりわけトラックの確保が難しくなるといいます。
 運輸業や建設業は労使協定によって一般職種の労働基準よりも大幅に拘束時間を延ばすことができます。もともと過重な労働が広がりやすい環境にあるのです。とりわけ長距離を走るトラックの勤務はきつくなる傾向があり、それが慢性的な運転手不足をもたらす背景にもなっています。
 運転手の過酷な勤務は深刻な交通事故にもつながります。そのため厚生労働省は「運転時間は2日平均で1日9時間以内」「連続運転は4時間以内」「休息は連続で8時間以上」など、労使協定で拘束時間を延長した場合でもこれだけは守ってほしいという基準を定めています。
 こうした基準は以前からあったのですが、守っていない企業が多かったのです。しかし、政府の働き方改革などを受け、労働基準監督署は過重な労働を放置する企業の摘発を強化しています。その結果、九州と東京を結ぶ長距離トラックなどがこれまでの日程で走れなくなってきたのです。中でも産地を回って野菜などを集荷する農産物の輸送は時間がかかり、基準に抵触しやすいといいます。
 企業が労働基準を守るのは当たり前のことです。労働基準の適用が厳格になったことで運転手の不足が一段と深刻になったとすれば、これまでの物流がそれだけ過度な勤務に支えられていたことになります。
■現場にしわ寄せ
 消費者はインターネット上に開設した店舗で商品を買う機会が増え、それを即日届けてくれるサービスも広がってきました。ただ、こうした利便性も安定した物流があって成り立つのです。
 宅配便をめぐっては昨年、大手の佐川急便の複数の社員が駐車違反の身代わり出頭を知人らに依頼して逮捕される事件も起きました。運転手が配送業務を続けられなくなる事態を避ける目的で、半ば組織的に身代わり出頭が横行していたとみられています。
 どんな理由があっても違法な行為は許されません。昨年末には佐川急便の従業員が配送中の荷物を投げつける光景がインターネット動画として投稿され、ニュースでも取り上げられました。企業が従業員のモラルを維持することも重要です。
 同時に、こうした問題が続出し、昨年から遅配が増えてきたことは物流の安定が揺らいできた前兆と考えるべきです。宅配便の数は右肩上がりで増え続け、単身や共働き世帯の増加で再配達の頻度も増しています。即日配達などの競争が物流の処理能力を超え、現場に過度な負担をかけていないか、よく点検する必要があるでしょう。
 日本と外国を結ぶ貨物船や大型タンカーなどの乗組員はすでに大部分を外国人に頼っています。日本人が残っているのは超大型原油タンカーや液化天然ガス(LNG)を輸送する特殊船の船長くらいです。それ以外は船長を含め、フィリピンやインドの人たちで運航されています。最近ではミャンマー人の船員も増えているといいます。
 長期間の乗船を強いられる外航船の勤務は日本の若者から敬遠され、商船大学への志願者も減少。神戸商船大学は神戸大学と統合し、東京商船大学は東京水産大学と合併して東京海洋大学となり、「商船大学」の名称は国内から消えました。日本郵船や商船三井などの海運大手は、国策として船員の養成に力を入れるフィリピンの学校などと連携し、船員を安定確保できる体制づくりを進めています。
■外国人に頼れない内航船
 一方、国内沿岸を航行する内航船は外航船のように乗組員を外国人に置き換えることはできません。船員は日本に居住する必要があるからです。外航船ほど長くなくても内航船の乗船期間は2~3カ月になります。その結果、若者の確保は難しくなり、船員は高齢化が止まりません。日本内航海運組合総連合会の調べで、2015年10月時点で60歳以上の船員は全体の26%を占め、9年前の比率から2倍に上昇しました。55歳以上だと全体の4割強に及び、80代の船員も現役で働いているそうです。
 小さな船ほど船員の居住環境は悪く、女性の就業も遅れています。2万人強いる船員のうち「女性は150人ほどにすぎない」(日本内航海運組合総連合会)といいます。
 乗船期間を短くしたり、船内の居住環境を改善したりして若者や女性の船員を呼び込む対策が必要です。製造業の海外移転で輸送量は減少傾向にあるとはいえ、内航海運は鋼材や石油製品、自動車などの運搬には欠かせない存在です。船員の年齢分布をみれば分かるように、あと10年もすれば大量の退職者が出て、運航が立ちゆかなくなるおそれがあります。残された時間は少ないのです。
 内航船の船員、トラックの運転手とも人手不足から賃金は上昇傾向にあります。それでもトラックの運転手は「一般産業に比べ勤務時間が2割長く、賃金は2割安い」(全日本トラック協会)といいます。輸送を依頼する荷主からすれば、ある程度のコスト上昇は覚悟しなければならないと思います。少なくとも「高速道路の料金も負担してもらえない」(同)という運賃の現状は修正が必要でしょう。農産物の物流対策でいえば、合理化を進めないとコストは削減どころか増大し、輸送手段の確保もままならなくなります。
 運輸業で人手が不足する影響は建設、外食分野以上に深刻になる可能性があります。トラック、海運といった業界の枠を超え、鉄道やフェリーなど他の輸送手段とうまく組み合わせることで荷物を効率的に輸送し、現場の労働条件も良くする工夫を運輸業界全体で考えることが重要です。
■再編や連携必要な国内市場
 少子高齢化が進む日本の現状を考えれば、将来は運輸の現場も外国人に頼らざるを得ない可能性はあります。ただ、その前に国内でできる努力は多いはずです。トラック輸送も内航海運も中小企業が多いのが特徴です。経営が零細なままでは新たな船を建造したり、従業員の福利厚生を充実したりする対応も期待できません。企業の再編や連携を進め、集荷、配送効率を高めるためのIT(情報技術)投資を推進しやすくすることも課題です。
 将来は自動運転やドローンを利用した宅配も可能になるでしょうし、それに向けた技術開発投資も重要です。しかし、日本の物流の危機は目前にあるのです。官民挙げての対策が急務です。
--
志田富雄(しだ・とみお) 83年日本経済新聞社入社。欧州編集総局(ロンドン)時に初めて原油、金、非鉄金属などの国際商品市場を取材。北海ブレント原油が1バレル10ドル台を割り込む相場低迷や「すず危機」などを目の当たりにして商品市場の奥深さを知る。英文記者を経て商品部へ。石油、食品、鉄鋼を担当。現在、編集局編集委員兼論説委員。
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日本経済新聞 2016/12/27 12:41
佐川駐車違反逃れ、背景に運転手不足 免停や内勤処分回避か


 佐川急便社員らによる駐車違反の身代わり出頭事件では、背景として配送トラックの運転手が置かれた厳しい労働環境が指摘されている。運送業界は慢性的な人手不足で、駐車違反で摘発され運転できなくなった場合の影響が大きい。物流業界関係者からは「組織的な対応が必要」との声も漏れる。
 「またかよ」。12月下旬、東京都心の路上で、トラックの男性運転手がフロントガラスに貼られた駐車違反のステッカーに舌打ちした。駐車監視員がステッカーを貼ったのは、運転手が荷物の配達を終えて駆け足で車に戻る1分前だった。
 別の運転手(41)は「年末は配送量が増え、車を離れている時間も長い。摘発されるのではないかといつもストレスを感じている」と話す。短時間で荷物を配るため、パーキングなどに止める余裕はないという。
 駐車違反は点数が累積すれば免許停止処分になる。運送会社によっては駐車違反を繰り返すと配送業務から外されることもある。
 複数の運転手が知人らに身代わり出頭させていたことが発覚した佐川急便の東京営業所(東京・江東)では、7~8人の運転手がチームを組む。「免許停止などで外れても人員が補充されず、残りで配送ルートを分担するしかない」(同社の現役運転手)という。
 ほかの運転手も調べに「違反を会社に報告して下車勤務(内勤)を命じられ、同僚に迷惑をかけるのを避けたかった」と供述している。
 インターネット通販の普及などを背景に荷物の取扱量は増えている。国土交通省によると、2015年度の宅配便の取扱個数は37億個で10年前から27%増えた。一方、全日本トラック協会(東京)の調査では、加盟企業の7割が「人手不足」と回答した。
 物流関係者は「中小企業も違反を防ぐ努力を重ねている。身代わり出頭は論外だ」と指摘。ただ「人員不足への対応策を考え、組織を変えなければ不正はなくならない」(佐川急便元幹部)との声もある。
 警視庁は過去2年半に身代わり出頭に関与した疑いがある同営業所の社員ら44人を犯人隠避教唆容疑などで立件した。同様の不正は都内の他の複数の営業所でもあった疑いがあり、同庁は年明け以降も社員らを任意で事情聴取し、不正の全容を解明する方針だ。

NHK 1月13日 20時23分
佐川急便の身代わり出頭事件 新たに18人書類送検
宅配便大手「佐川急便」の東京営業所で運転手が駐車違反で検挙された際に知り合いなどに身代わり出頭させていた事件で、警視庁は新たに社員ら18人を書類送検しました。一連の捜査で逮捕または、書類送検されたのは東京営業所の社員35人を含む62人に上りました。
新たに書類送検されたのは佐川急便東京営業所の36歳の係長を含む社員10人と知人や家族など8人の合わせて18人です。
 警視庁によりますと平成26年から去年にかけて集配中の運転手が駐車違反で検挙された際、知り合いなどに頼み身代わり出頭させた犯人隠避教唆などの疑いが持たれています。
 警視庁は東京営業所では身代わり出頭が常態化していたと見て去年11月に社員の係長ら6人を逮捕するなど捜査を進め、これまでに逮捕または書類送検されたのは東京営業所の社員35人を含む62人に上りました。
 佐川急便は事件を受けて社外調査委員会を立ち上げたほかHP上で「全社一丸となって再発防止に取り組む」とのコメントを掲載しています。

産経新聞 2017年1月13日 17時31分
佐川急便身代わり出頭事件、33件62人を摘発 東京営業所の捜査終結 警視庁
ざっくり言うと
• 佐川急便の運転手が、駐車違反を隠すため知人らを身代わり出頭させた事件
• 警視庁交通捜査課が摘発した社員らは、33件分の62人にのぼった
• 摘発された62人のうち、37人が同社関係者で、残りは知人や家族だった
 宅配便大手「佐川急便」東京営業所(江東区)の運転手が駐車違反を隠すため知人らを身代わり出頭させた事件で、警視庁交通捜査課は犯人隠避教唆などの容疑で、新たに同社の男(36)ら男女18人を書類送検し、東京営業所への捜査を終結した。
 同課が摘発した社員らは33件分の62人に上った。ほかの営業所にも身代わり出頭させていた運転手がいたとみられ、同課は捜査を継続する。
 18人の書類送検容疑はそれぞれ、平成26年5月から昨年4月にあった8件の運転手の駐車違反について、知人や家族らに身代わり出頭させたとしている。
 同課によると、東京営業所では25年12月から昨年7月の間、48件の駐車違反があり、約7割にあたる33件で身代わりが行われていた。摘発された62人のうち、37人が派遣社員を含む同社関係者で、残りは知人や家族だった。
 同営業所では違反の取り締まりを受けると運転業務をしない「下車勤」となることが通例だった。62人のうち4人が事件当時係長という立場で、「下車勤になると係の仕事が回らなくなる」「係の評価を下げたくなかった」などと説明している。
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日本経済新聞 2017/1/12 5:30
ヤマトHD、ネコの手借りても…迫る限界


証券部 菊池貴之
 「とにかく荷物を配るだけで精いっぱいで、時間指定配送はしんどいです」。12月末、記者宅に荷物を届けにやってきたヤマトホールディングス子会社、ヤマト運輸の配達員は疲れた表情でこうこぼした。この荷物が記者宅に届いた日時は、購入時に指定した日時より1日早かった。業界一のサービス品質を誇るヤマト運輸にしては珍しい事態といっていい。
荷物の2割を占める再配達コストの削減も課題だ
 上旬のお歳暮に始まり、インターネット通販のクリスマス商戦、月末にはおせち料理やふるさと納税の返礼品――。ひっきりなしに荷物がやってくる12月は、宅配便業者にとっては文字通り、ネコの手も借りたいほどの繁忙期だ。多い時には1人の配達員が1日200個を超える荷物を配達して回るという。仮に10時間で配達するとしたら1時間に20個、3分に1個の荷物をさばかなければならない。冒頭の配達員の言葉からは、すでにサービス品質を維持するのが厳しい物量になっていることがうかがえる。
 昨年12月にヤマト運輸が扱った「宅急便」の個数は前の年に比べ5.6%多い2億3404万個だった。5年前の2011年に比べると2割増えている。一方で人員は17年3月期末見通しが20万500人と、12年3月期実績(17万7301人)に対し13%増にとどまる。パートやアルバイトなど非正規従業員を含む売上高人件費比率は今期に51.0%と、12年3月期より約1ポイント下がる見込みだ。数字だけを見れば少ない人数で効率的に配送できているようにみえるが、実態はそうではない。自社での人手確保が追いつかず、外部業者への配送委託が増えているのだ。
 ヤマトHDの売上高に占める委託費の比率は今期、15.5%と5年前に比べ1ポイント近く上昇する見通し。同業の佐川急便で大規模な遅配が起きた影響もあり、昨年の12月は特に「うちに流れてきた荷物をさばくために配送委託の費用が膨らんだ」(ヤマトHD幹部)といい、委託費比率はさらに上昇する可能性が高い。
 荷物の急増の背景は言うまでもなく、インターネット通販の拡大だ。消費者向け電子商取引(EC)の市場規模は15年度実績で13兆円を超え、百貨店の2倍の規模に達した。個人消費に占める割合が8%と日本の2倍程度の米国並みにまで拡大すればECの市場規模は20兆円を超えるとみられ、宅配便の個数がさらに増えるのは確実だ。
 再配達の負担も重い。現状では荷物の2割程度が再配達の対象となっているとみられる。ヤマトHDは再配達になるのを防ごうと、駅などへの宅配ロッカーの整備やコンビニエンスストア受け取りなどのサービス拡大に動いている。だが、再配達は無料とあってこうしたサービスは消費者にはなかなか浸透していない。
 本来であれば、配達量が増えるのは望ましいこと。しかし、現状では「荷物が増えても利益は増えず、素直に喜べない」(ヤマトHD幹部)のが実態だ。16年4~12月期は連結営業利益が560億円前後と前年同期に比べ1割ほど減ったとみられる。現場に限界が迫るなかで、株式市場からは「コストに見合う利幅を確保すべきだ」(国内投信ファンドマネジャー)との声があがる。ヤマトHDが2014年以来の大口顧客の値上げや無料での再配達取りやめといった手を打つ日も遠くないかもしれない。


日本経済新聞 2017/1/8 2:00
ヤマトHD、一転減益 宅配増え人件費かさむ
16年4~12月営業
 宅配便最大手、ヤマトホールディングスの業績を人手不足が圧迫している。2016年4~12月期は本業のもうけを示す連結営業利益が560億円前後と前年同期より1割ほど減ったようだ。インターネット通販の拡大で物量が増える中、人材確保の費用が膨らんだ。大口顧客の荷物は料金を割り引くため単価も下がり、9月までの増益から一転して減益となった。
 「宅急便」の取扱個数は増加が続く。ヤマト運輸が4~11月に扱った宅急便の個数は12億385万個と、前年同期に比べ8.8%増になった。
 ネット通販のような大口の荷物は料金を割り引いている。15年3月期に大口顧客の料金を引き上げたが、個人向けに比べ大口顧客が安い状況は変わっていない。ネット通販の拡大に伴い宅急便の単価は下落傾向が続き、16年4~12月の連結売上高は4%増の1兆1300億円程度と取扱個数ほどには増えなかった。
 宅急便の数量増加に伴って人員の採用を増やしている。人手不足で待遇の改善が必要になっている中、非正規の従業員も含めて今期は4000人ほど増やす見通しだ。需要のピークに備えた期間雇用のアルバイトも早めの確保を迫られた。
 かつては年末などの繁忙期だけだった外部への配送委託は常態化している。物量の増加で委託料金も上昇傾向にあり、荷物の増加がヤマトHDの利益につながりにくくなっている。パート従業員への社会保険の適用拡大も10億円程度のコスト増加になったようだ。
 17年3月期の通期の営業利益は前期に比べて5%減の650億円を見込んでいるが、人件費の増加で届かない可能性が出てきた。
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日本経済新聞 2016/10/25 2:01
物流停滞回避へ企業が自衛策 運転手不足深刻
 日本企業が国内で深刻化する物流の運転手不足に対応するため、抜本的な業務の効率化に乗り出した。ヤマトホールディングス(HD)は宅配便の拠点間輸送に2両のトレーラーを連結する新車両を導入。三井化学、出光興産など化学6社は自動車部品メーカーへの樹脂製品の共同配送を始める。手当てが遅れれば競争力を左右しかねず、各社は改善の兆しが見えない人手不足に一段の業務改善で自衛するすべを模索している。
 ヤマトHDは国内の基幹物流網である幹線道路の輸送を見直す。トレーラー2両を連結する特大トラックを導入する。既存の大型トラック(積載量10トン)に比べ8割多い荷物を積める。全長は約21メートル。規制緩和で使用可能になった大きさで、宅配大手の採用は初めて。
 近く神奈川県と愛知県の大型物流拠点間の輸送に2台を配備する。通常の大型トラックより積載能力が4割高いトラックも2台導入する。関東、中部、関西間を走る120台の更新に合わせ、効果をみながら順次入れ替える。現状の人員規模で荷物の増加に対応する。
 運送業の人手不足は深刻だ。トラックを含む運転職の有効求人倍率は2倍超で推移し、高齢化が進む。一方、ネット通販拡大で宅配便の取扱個数は2015年度に37億個を超え10年度比2割弱増えた。消費増税の駆け込み需要の際は荷受け増量で遅配も発生。20年度前後にかけて現状より2割増を見込む大手もある。
 荷主となる企業も対策を急がざるを得ない。三井化学と同社のグループ2社、出光興産、東レ、JSRは物流会社に委託する化学品の輸送に共同で取り組む。競合する化学各社が工場の集荷から最終顧客まで共同配送するのは初めて。千葉県から東北の部品メーカー向けに年内に始める。従来は各社が個別に委託していた。1日に4人が必要な運転手を1人に減らせる。名古屋や関西、九州への拡大も検討する。
 北海道と東北が地盤の食品スーパー、アークスと共同仕入れ機構のシジシージャパン(CGC、東京・新宿)、日本貨物鉄道(JR貨物)は鉄道を使った農産物の共同輸送を近く始める。全国から野菜を北海道へ運ぶ。トラック輸送はドライバー不足で道内の需要増に対応できないこともあった。一方、北海道産の野菜も鉄道で全国のCGC加盟店に供給する。
 陸運大手は主婦層を活用して宅配をしたり、自動運転の実証実験に取り組んだりしている。企業向けサービスでも製造業が部品や素材の納期順守を厳しく求めている。運転手不足は人件費高騰で利益の圧迫要因になるほか、顧客離れにつながりかねないと見て各社の対策は加速している。

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