2017-01-23(Mon)

トランプ新大統領 米政権船出 各紙社説等(1)

米国第一」を世界に拡散させるな 建国の精神を忘れるな 分断を世界に広げるな

<各紙社説・主張>
朝日新聞)トランプ政権 内向き超大国を憂う(1/22)
朝日新聞)トランプ氏と世界 自由社会の秩序を守れ(1/21)
読売新聞)トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説(1/22)
毎日新聞)トランプ新大統領 分断を世界に広げるな(1/22)

日本経済新聞)「米国第一」を世界に拡散させるな (1/22)
産経新聞)トランプ新大統領 世界にどう向き合うのか(1/22)
東京新聞)トランプ米政権船出 建国の精神を忘れるな(1/22)
しんぶん赤旗)トランプ氏就任 「米国第一」を強く危惧する(1/22)




以下引用



朝日新聞 2017年1月22日05時00分
(社説)トランプ政権 内向き超大国を憂う


 この日から「米国第一」のみがビジョンになる――。
 就任演説でのこんな宣言とともに、米国でトランプ政権が発足した。
 おおむねツイッターなどを通じて発せられてきた内容であり、想定の範囲内だった。そう冷静に受け止められたようだ。
 しかし、世界最強の超大国のトップに就任後、最初のメッセージである。「貿易、税金、移民、外交問題に関するすべての決定は、米国の労働者や米国民の利益になるものにする」「防御が大いなる繁栄と強さをもたらす」。自国優先と内向き志向の言葉の数々に、改めて驚きと懸念を禁じ得ない。
 通商分野では早速、転換を打ち出した。日米など12カ国で合意済みの環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、メキシコやカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)では再交渉を求めるとホワイトハウスのホームページで公表した。
 世界貿易機関(WTO)を舞台にした自由化論議が暗礁に乗り上げるなか、取り組みを再起動する役割が期待されたTPPの発効は、完全に見通せなくなった。NAFTAの見直しも、トランプ氏が標的とするメキシコに動揺が広がれば、日系を含む自動車メーカーなど立地産業への悪影響が予想される。
 トランプ氏は「すべての国々が、自己の国益を第一に考える権利がある」と強調する。
 その通りだろう。しかし、それぞれが目先の利益を追って対立するのではなく、協調しつつ人やモノ、カネの行き来を自由にしていけば、経済が発展して得られる富は大きくなる。第2次大戦後、当の米国が主導して築いてきた様々なルールを通じ、そのことを追求してきたのではなかったのか。
 貿易や為替をめぐる著しい不均衡は、それ自体が持続的な成長への妨げになる。修正することは必要だが、その作業は協調を土台とした冷静な交渉を通じて進めるべきだ。
 一方的に要求をぶつけても何の解決にもならず、貿易戦争のような不毛な対立を招くだけだろう。ましてや米国は圧倒的な経済大国である。力ずくで他国をねじ伏せるような姿勢をとれば、その弊害は計り知れない。
 自由な市場が米国に投資を呼び込み、雇用を生んできた。活力の一翼を担ってきたのは移民だ。開かれた国であることが米国の魅力であり、強さである。
 トランプ氏はそのことに早く思いを致してほしい。日本を含む各国も、粘り強く米国に説いていく必要がある。
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朝日新聞 2017年1月21日05時00分
(社説)トランプ氏と世界 自由社会の秩序を守れ


 「自由な選挙、言論や信教の自由、政治的抑圧からの自由」
 戦争の惨禍の記憶も鮮明な1947年3月、トルーマン米大統領は議会演説で、米国が守るべき価値観を挙げ、宣言した。
 「自由な人々の抵抗を支援する。それこそ米国の政策だ」
 「共産主義封じ込め」をうたったトルーマン・ドクトリンである。
 東西対立という時代状況にあったとはいえ、いらい米国は自由や民主主義の「守護者」としての求心力を強めていく。同盟関係が結ばれ、米国を軸とした国際秩序が築かれた。
 それから70年。新大統領のドナルド・トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げている。
 「偉大な米国の復活」は、国際秩序と一線を画す孤立主義への回帰なのか。大国としての責任を担い続ける覚悟はあるのか。しっかりと見極めたい。
 ■あやうい取引の政治
 実業家としての経験からトランプ氏は取引(ディール)の巧者を自負する。
 かけひきを駆使し、手の内を明かさず、相手を出し抜く。
 だが外交交渉は、商取引とは別物だ。自国の最大利益が目標だとしても、相手国への配慮や、国際社会の一員として守るべき原則を尊重する姿勢が欠かせない。
 懸念すべきは、トランプ氏が普遍的な理念や原則まで、交渉を有利に進める「取引材料」と扱いかねないことだ。
 トランプ氏は最近、ロシアとの関係をめぐり、核兵器の削減と対ロ制裁解除を結びつける可能性を示唆した。核軍縮という大きな目標も場当たり的な取引材料とされないか、心配だ。
 さらにトランプ氏は、英国に続く欧州連合(EU)加盟国のEU離脱に期待を示した。北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と切り捨てた。
 確かに利害の調整が煩雑な多国間組織より、ロシアのプーチン大統領のような強権的なリーダーを相手にする方が、取引は効率的に進められるだろう。
 だが、共通の利益で長年結ばれてきたパートナーを軽んじる姿勢は、米国が築き上げてきた国際秩序への自傷行為にほかならない。長い目で見れば、米国の利益を損なうことをトランプ氏は悟らねばならない。
 ■分断の言葉と決別を
 トランプ氏は就任時点で「米史上、最も嫌われる大統領」のひとりになりそうだ。全米で抗議の声が渦巻く中での異例の就任式となった。
 無理もない。トランプ氏はこれまで敵意や不安をあおる言葉の数々で社会を分断し、米国への信頼を傷つけてきた。
 深刻なのは、批判に真摯(しんし)に耳を傾けず、異論を排除する姿勢が、多様な意見の共存で成り立ってきた民主主義の土台を崩しかねないことだ。
 トランプ氏は、米国の外に工場を移す企業を攻撃した。一部が移転を見直したことを「雇用を増やした」と自賛した。
 だが経済学者のポール・クルーグマン氏は、トランプ氏が守ったと主張する雇用をはるかに上回る規模の失業が、米国では毎日起きていると指摘する。
 多くの雇用が日々入れ替わる経済の全体像からみれば、トランプ氏が誇る「成果」はほんの微々たるものだ。
 「強い指導者」を演出する派手な言葉は、格差拡大や賃金の停滞、地域社会の劣化など、むしろ向き合うべき本質を覆い隠すリスクもはらむ。
 ■民主主義を立て直す
 一方、国際合意や歴史的経緯への認識を欠く言葉は、すでに世界に混乱を広げている。
 「一つの中国」を疑問視するトランプ氏の発言に対する中国の反発の矛先は、米国より先に台湾に向かう恐れがある。
 疑心暗鬼は予期せぬ過剰反応を誘発する。相手を混乱させる発信も取引を有利に進める手段と考えているのであれば、ただちに改めるべきだ。
 いま一度、思い起こしたい。
 金融業界との癒着やロビイストの影響力にまみれたエリート政治の打破こそ、有権者がトランプ氏にかけた期待ではなかったか。政界アウトサイダーとしての改革をめざすのならば、政治扇動の発信よりも、分け隔てない国民各層との対話で分断の克服に努めるべきだろう。
 民主主義を守る責任は、新大統領を迎える米国の政治と社会が担うべき課題でもある。
 議会と司法は監視役を十分に果たしてほしい。偏見や対立をあおる虚言を排し、多様で寛容な言論空間を再生するのはメディアや市民社会の役目だ。
 トランプ氏の米国が孤立主義の殻に閉じこもらないよう、同盟国や友好国は今こそ関与を強める必要がある。民主主義と自由の価値観の担い手として、日本が果たせる役割も大きい。
 自由社会の秩序をどう守り育てていくか。米国に任せきりにせず、国際社会が能動的にかかわる覚悟が問われている。
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読売新聞 2017年01月22日 06時03分
社説:トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説


 ◆「米国第一」では安定と繁栄失う
 新たな指導者を迎える高揚感には程遠い。米国の内外で、多くの人々が不安に包まれた。国際秩序と世界経済の先行きの危うさが懸念される船出となったからだろう。
 ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。演説で「今日から米国第一だ」と宣言し、外交と経済の両面で国益を最優先する立場を鮮明にした。
 自由、民主主義、法の支配への言及は皆無に近かった。米国の価値観の揺らぎは避けられまい。
 ◆攻撃姿勢は融和妨げる
 就任式は異例ずくめだった。多くの議員がボイコットした。会場周辺では、抗議デモが行われ、警官隊との衝突が相次いだ。
 最新の世論調査で、トランプ氏の支持率は40%と歴史的に低い。自らを批判する政治家らを「敵」に仕立て、ツイッターで逐一非難する攻撃的な姿勢が、分断を深めたと言えよう。大統領にふさわしい手法や態度ではない。
 トランプ氏は演説で、貧困や犯罪など米国の暗い面をことさら強調した。
 既存の支配層の失政により、雇用と安全が損なわれたという一方的な見方を示し、「ワシントンの権力を国民に返す」と訴えた。
 目を向けているのは、大統領選勝利の原動力となった工場地帯の白人労働者なのだろう。
 賛否が二分する医療保険制度「オバマケア」の見直しも、大統領令を就任初日に出した。
 議会が厳しい対決局面に入るのは間違いない。「力を合わせ、米国を再び偉大にする」という宣言も空々しく響くだけだ。これでは国民融和の実現は難しい。
 ◆事実誤認目立つ貿易観
 トランプ氏は「忘れ去られた男性や女性」に配慮し、中間層の生活向上に取り組む姿勢を示した。歓迎する国民もいる。
 看過できないのは、具体策として、「米国製品を買い、米国人を雇う」原則を表明したことだ。海外からの製品や労働者の流入を拒絶する露骨な保護主義である。
 日米など12か国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱する。カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)も再交渉する。こうした基本政策がホワイトハウスのホームページで発表された。
 トランプ氏は、経済のグローバル化を念頭に、「我々は米国の産業を犠牲にして、外国の産業を豊かにしてきた」という見解も示した。事実誤認も甚だしい。国際分業が進み、相互依存が強まった現実を無視したものだ。
 日本、中国、メキシコを相手に1980~90年代のような貿易戦争を仕掛け、2国間の通商交渉を通じて、自国に有利な協定を結ぶ思惑なのだろう。
 就任前から、個別企業に「海外拠点からの製品には高い国境税を課す」と圧力をかけている。
 保護主義は、米国の投資環境の悪化と生産性低下、物価高を招く。雇用増や所得向上につながらず、格差が拡大しかねない。「誰かが得をすれば、誰かが損をする」というゼロサムの発想は不毛だ。
 トランプ氏は演説で、「古い同盟を強化し、新しい同盟も作る」と述べたが、日米同盟をどうとらえるのか。
 外交・安全保障の前提として、「各国が自国の利益を最優先するのは当然の権利だ」とも語った。
 同盟関係と国際協調よりも、「力の支配」や2国間の取引を重視する考えが透けて見える。
 「他国の軍を助成する一方で、我々の軍の消耗を容認してきた」と主張したのも的外れである。
 日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)は、中国や北朝鮮、ロシアなどの脅威を抑止する。米国も、アジア太平洋地域と欧州の安定から利益を享受している。
 ◆力の支配認められない
 テロ対策では、「文明化した世界を結束させ、過激なイスラム・テロに対抗し、地球上から完全に撲滅する」と強調した。これではイスラム教を敵視し、文明間の戦争を始めるととられかねない。
 過激派組織「イスラム国」などの掃討には、サウジアラビアやヨルダンなど、地域のイスラム教国の協力が不可欠である。
 米国優先の孤立主義では、国際平和は保てない。自らが指名した退役軍人のマティス国防長官も、同盟重視、対露警戒の見解を示している。トランプ氏は、現実に即した戦略の構築が求められる。
 日本政府は、新政権に対し、日本の投資が米国の雇用増を生んでいることやTPPの意義、日米同盟強化の重要性を粘り強く説明せねばならない。
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毎日新聞2017年1月22日 東京朝刊
社説:トランプ新大統領 分断を世界に広げるな


 米国社会に走る断層の先端は海を越えて欧州やアジアにも届いているのか。いずれ世界は米国発の分断に直面するのではないか。
 そんな暗い予感に襲われる。
 ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。首都ワシントンでは厳かな式典が行われる一方、就任に反対するデモも盛り上がった。
 「トランプは我々の大統領じゃない」と叫ぶ人々は暴徒化し、警官隊と衝突して多くの逮捕者が出た。米国は深いところで分裂している。
 国の在り方をめぐる対立だ。自由と民主主義を象徴する国の未曽有ともいえる混迷。それは、とりも直さず国際秩序の混迷でもある。
 先が見えない時代が始まった。
理念なき政治の危うさ
 新大統領の就任演説は良くも悪くもユニークだった。「権力をワシントン(の既成政治)から、あなた方米国民に戻す」。やや分かりにくいが、「既成の権威(エスタブリッシュメント)」を排除し、市民本位の政治を取り戻すというのだろう。
 「米国第一」も強調した。経済面でも安全保障でも、米国は世界からもっとお金を集められるし、強くもなれると言いたいのだ。
 演説には同じ共和党の故レーガン大統領の影響も見えたが、米国を世界の「希望の灯台」と呼び、同盟国との協調の大切さをうたったレーガン演説とは根本的な違いがある。
 米国の歴史や建国の理想など、理念を語っていないのだ。トランプ氏も承知の上だろう。同氏は歴代大統領をも「既成の権威」ととらえ、格調の高さとは無縁な演説を通して「自分は型破りの大統領になる」と宣言したように思える。
 それは米国の在り方を変えることでもある。米国は特別な存在であり「丘の上の街」(新約聖書)のように他の模範となるべきだ。そんな伝統的な考え方はトランプ政権では希薄になり、米国はふもとから仰ぎ見る「街」でも「世界の警察官」でもないという時代に入ったのだろう。
 だが、理念なき政治や単独行動主義は結局、その国を危うくし、国際社会に不利益をもたらす。
 トランプ氏は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を宣言し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求めたが、こうした措置が米国民の長期的な利益につながるかは疑問である。
 場当たり的な外交姿勢も問題だ。ロシアの核削減と引き換えにウクライナ情勢をめぐる対露制裁を緩和する可能性に言及したのは、外交と商取引の混同としか思えない。
 険悪な米露関係を改善するのはいい。シリア情勢や過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いに関して、米露共闘の可能性を探るのもいい。だが、米露の融和と米欧による対露制裁の緩和は別である。
 しかもトランプ氏は自身の弱みになり得る映像などをロシア側に握られているとの情報もある。ロシアがハッキングで米大統領選に介入した疑惑も含めて、一連の問題は超党派で解明すべきだろう。
 気になるのは、トランプ政権が米国の在イスラエル大使館のエルサレム移設を検討していることだ。だが、イスラエルの首都と認定されていないエルサレムへの移設はイスラム世界の猛反発を呼ぶ。大義なき移設は見合わせるべきである。
日本は主体的な外交を
 中国との関係も波乱含みだ。南シナ海の埋め立てや軍事拠点化について、オバマ前政権は有効な対応策を取れなかった。トランプ政権が中国の動きを警戒し、毅然(きぜん)たる態度を保つのは日本にとっても有益だ。
 だが、一つ間違えば米中の衝突が生じ、日本を含めた近隣に影響が及ぶ恐れもある。トランプ氏は「一つの中国」政策の見直しをちらつかせているが、慎重な対応を求めたい。
 日本としては米国の動きが読みにくい分、主体的な外交が重要になった。米中の取引で思わぬ不利益をこうむる恐れもあるし、日米同盟に基づく米軍の役割の再確認も必要だろう。日本は、米国の政策形成に関与するつもりで積極的な意見交換を重ねてもいいはずだ。
 世界の分断を防ぐ上で、トランプ氏はなぜ大統領になれたのかと考えることも必要だ。ポピュリズム(大衆迎合主義)や反知性主義の勝利だと片付けるのは、同氏に懸命にすがった人々を軽く見ることになる。
 1990年代から進んだグローバリズムは、世界経済の成長を促した半面、社会の格差を広げ移民やテロも増えた。英国民が欧州連合(EU)離脱を選択し、米国民がトランプ氏を大統領に選んだのは、グローバル化の問題点に関する「気付きの連鎖」だと、古矢旬・北海商科大教授は指摘する(毎日新聞1月18日)。
 そうであれば今後とも欧州などで「連鎖」が起きるのは想像に難くない。米国の分断が欧州や他の地域に及ぶのを防ぐには、さまざまな問題と向き合う必要があり、本来その中心になるべきは米国である。
 トランプ氏は英国以外のEU離脱も推奨しているが、世界の分断は米国の利益にならないし、分断機運をあおる発言もやめてほしい。それをトランプ氏に理解させるために私たちは知恵を絞るべきである。
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日本経済新聞 2017/1/22付
社説:「米国第一」を世界に拡散させるな


 世の中は持ちつ持たれつだ。「俺が俺が……」の人は必ず周囲とあつれきを生む。国際社会だって人の世だ。すべての国が国益に固執したら、行き着く先は国際紛争だ。米国のトランプ新大統領が掲げる自国第一主義が世界を覆い尽くすことのないように、協調の輪を広げることが大切だ。
 「新しいビジョンがこの国を支配する。それはアメリカ・ファーストだ」。トランプ氏は就任演説で改めてこう力説した。
保護貿易阻止へ行動を
 国益をないがしろにする政治指導者はいない。問題は手法だ。トランプ氏は「保護こそが繁栄と強さにつながる」と、保護貿易主義を駆使して強引に投資や雇用を呼び戻す姿勢を示した。
 公正さを欠いた自由貿易では自国の産業が不利になる。そんな主張ならばまだわかるが、保護主義こそ正義と言わんばかり。ダボス会議で中国の習近平国家主席が自由貿易の推進を訴えたが、まるであべこべだ。
 トランプ政権はさっそく「環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱」を発表した。知的財産などを含む新時代の貿易・投資ルールの漂流は憂慮すべき事態だ。
 北米自由貿易協定(NAFTA)でもメキシコなどとの再交渉を表明した。2国間交渉で不均衡の改善を個別に要求する可能性もある。管理貿易的な手法が横行すれば、貿易の流れが滞り、世界経済の成長を損ねかねない。
 メキシコに工場を移す自動車大手などに高関税を課すと脅し、米国内の雇用増を打ち出す企業を称賛する。そうした手法は短期的な評価を得ても、中期的には国際的な供給網の寸断や企業活動の萎縮を招く。米消費者も割高な商品を買わされて不利益を被る。
 トランプ政権は年4%の経済成長を目指し、世界的にみて高い法人税の減税、道路や空港などのインフラ投資、エネルギーや金融の規制緩和に取り組む姿勢だ。経済活性化につながる政策も多いが、財政赤字の拡大や温暖化対策との整合性に配慮する必要がある。
 通貨政策も一貫性を求めたい。トランプ氏は「ドルは強すぎる」と通貨安誘導を示唆した。ところが、ムニューチン次期財務長官がすぐに「長期的には強いドルが重要」と軌道修正した。そもそもドル高が進む背景には積極財政策で米経済の成長が高まるという市場の期待感がある。闇雲に口先介入をしても市場は混乱するだけだ。
 日本は欧州連合(EU)などと手を携え、米国の保護主義への傾斜に歯止めをかける必要がある。粘り強く自由貿易体制の大切さを説くとともに、日・EUの経済連携協定(EPA)やアジア圏での質の高い経済連携を実現させる。そうした具体的な行動が重要だ。
 歴代の米大統領は就任演説で未来への希望を語ってきた。トランプ氏は相変わらず既成政治への批判が中心だった。敵をつくり、自己を正当化する劇場型の政治手法は、国民の分断を深めるだけだ。「我々はひとつの国民だ」との呼びかけに現実味はなかった。
 大統領として発した最初の行政命令は、オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革の見直しだった。新たな設計図もないまま、中低所得層を無保険状態に戻せば混乱は避けられない。
日米同盟を再確認せよ
 国内のあつれきが深まれば、外交に目を向ける時間は少なくなり、政権の内向き志向は一段と強まろう。そうなれば、中国の海洋進出や北朝鮮の核開発などで不安定化しつつあるアジアの安全保障環境はさらに悪化する。
 トランプ氏が安保政策への関心が薄いのは、就任演説で「イスラム主義テロリズムの撲滅」以外にほとんど言及がなかったことからも明らかだ。
 安倍晋三首相は今月、オーストラリアなどを訪問し、地域の連携の枠組みを強化することでアジアの安定を目指す姿勢を示した。妥当な判断だが、あくまでも補完措置だ。通商と同じく、安保においても周辺国と連携し、米国をアジアに関与させ続けるよう努めることが重要になる。
 自分たちの生活が脅かされる。英国のEU離脱もトランプ政権の誕生も、人々のそんな不安感によって起きた現象だ。今年は欧州でフランス大統領選など重要な選挙が相次ぐ。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な風潮にどうすれば待ったをかけられるか。
 日本ができる最大の貢献は、トランプ政権に同盟の価値を再確認させ、それをより大きな枠組みに広げることだ。安倍首相の役割は極めて重大である。
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産経新聞 2017.1.22 05:01
【主張】トランプ新大統領 世界にどう向き合うのか


 ■自由貿易を日本は働きかけよ
 「今日から米国第一になる」という言葉が象徴するように、トランプ米大統領は就任演説を通じて、国益最優先に徹する姿勢を強調した。
 自国や国民の利益をまず考えるのは当然だが、どんな方法でその結果を着実にもたらすかが為政者には問われる。「偉大な米国」と唱え、支持者の心を鼓舞するのは本来、選挙戦までの話だ。
 好むと好まざるとにかかわらず、超大国として世界にどう関わっていくのか。その明確な指針が演説から抜け落ちていたのは、とりわけ残念である。
 ≪国益最優先だけなのか≫
 自由や民主主義、法の支配など米国が至高と掲げてきた普遍的価値観まで、捨て去るのか。そうした疑念が生じれば、平和と安定のための秩序は崩れかねず、世界は混迷を深める。
 強い米国への尊敬や畏怖を内外から得るため、まず超大国の指導者として理念を示し、哲学を語ることが欠かせない。
 首都ワシントンの一部のグループの手による政治を、米国民に返すとも語った。既成政治を打破するというトランプ氏の主張には強い意思を感じるが、国民に返すだけで国家は運営できない。
 実業家出身で、既成の枠組みにとらわれない点がセールスポイントだったが、すでに政治家トランプとしてスタートを切った。他者に失敗の原因を求めることは、もはや許されない。
 就任への抗議デモは一部が暴徒化し、警察官と衝突した。米国民の分断の深刻さが印象づけられた。責任の一端は、これまでのトランプ氏の発言にもある。
 就任演説では、人種を超えた結束を呼びかけた。言葉通りに排他的な姿勢は改めてほしい。国内に生じた傷を癒やさなければ、強い米国は取り戻せまい。
 演説と同時に発表された新政権の基本政策では、「力による平和」や「米軍の再建」が挙げられ、過激組織「イスラム国」(IS)の壊滅が最優先事項に位置づけられた。
 かつてない重大な脅威に国際秩序はさらされている。ISに代表される暴力的過激主義の蔓延(まんえん)もその一つだ。ロシアは隣国の領土を侵し、中国は南シナ海に軍事施設を構築する。国際ルールを無視して「力による現状変更」をいとわない。これにどう対処するか。
 むろん、米国の力が相対的に低下するなかで、その責任を押しつけるつもりはない。日本など同盟国との協力を強めることが重要になる。だからこそ、新政権が国際社会にどう関与するかの指針を早く示す必要があるのだ。
 懸念された通り、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を柱とする通商政策の転換が打ち出された。
 ≪TPP離脱の弊害説け≫
 自由貿易の意義を理解せず、貿易相手国を敵視しようとする姿勢に変化がみられないのは、失望を禁じ得ない。「何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた」との認識は一面的すぎる。
 東西冷戦終結後に米国主導で本格化したグローバル化で、多くの米企業は安い労働力を求めて生産拠点を海外に移した。それが中国を筆頭とする新興国の成長につながったのは確かである。
 同時に米経済の成長をもたらしたことも忘れてはならない。安価で質の高い製品の流入は米国民の暮らしを豊かにした。各国経済との結びつきを無視し、「米国製品を買おう。米国人を雇おう」というのは大衆迎合主義の極みだ。
 TPPが米国の離脱で発効できなければ、日本の成長戦略は根底から崩れる。日本は他の参加国との連携を強め、時間がかかっても米国の翻意を促すべきだ。
 その際、離脱は真の米経済の利益につながらないことを説く必要がある。例えばTPP頓挫は、対日輸出の拡大が期待された米国農業にはデメリットだ。
 アジアでのビジネス機会が減じれば、域内での中国の存在感が高まる。それはトランプ氏が嫌う事態ではないのか。
 基本政策で北朝鮮の名を挙げミサイル防衛に言及した点には注目したいが、アジア太平洋地域にどれだけ重点を置くのか。安倍晋三首相は首脳会談を通じ、日米同盟の重要性や世界戦略について早急に意思疎通を図るべきである。
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東京新聞 2017年1月22日
【社説】トランプ米政権船出 建国の精神を忘れるな


 建国の精神を置き去りにし、世界のリーダーの座も降りる-。トランプ大統領の就任演説の含意だ。米国にも国際社会にとっても大転換の時が訪れた。
 演説は大統領選で訴えたことを基本的に踏襲した内容だ。言葉に発したことよりも、むしろ語られなかったことの方が意味が重い。
 トランプ氏は「文明国をまとめ上げ、イスラム過激派のテロを根絶する」と語った。戦後の国際社会を主導してきた米国の指導者らしさが出たのはこれだけだ。
◆「米国の平和」の幕引き
 逆に、「われわれの富や強さ、自信が地平線のかなたに消えていく間に、他国を豊かにしてきた」と述べたように、世界のために米国が犠牲になってきたと繰り返し主張した。
 そのうえで、貿易、外交など一切を「米国第一」に進めていくと表明した。これは「パックス・アメリカーナ(米国の平和)」の幕引き宣言に等しい。
 米国が偉大なのは、群を抜いた経済力、軍事力だけが理由ではない。他者をひきつけるソフトパワーも持っているからだ。
 世界中の同盟国・友好国と価値を共有する民主主義、人権、法の支配という国家原理のほかに、移民を拒まぬ開放性や自分とは違う他者を認める寛容さ、率直さ…。
 米国は一七七六年の建国以来、そうした価値を育んできた。源流は自由と平等をうたった独立宣言だ。建国の精神・理念が巨大な移民国家を束ねてきた。
 米国の国際教育研究所によると、二〇一五~一六学年度に米国の大学・大学院に留学した外国人は百万人の大台に乗った。米国は世界最大の留学生受け入れ国だ。
 海外からの移民も毎年、百万人以上を受け入れている。留学生と移民だけで岐阜県の人口を超える人々が米国に渡ってくる計算だ。
 米国を目指す理由は人それぞれだが、米国に高い訴求力があるのは確かだ。
◆ソフトパワーはどこへ
 歴代の大統領は就任演説で、この建国の精神に触れながら自分が求める理想をうたい上げた。
 ところが、トランプ演説には言及がまったくなかった。これまでも米国の価値を軽んじる言動を繰り返してきたトランプ氏だが、異例のことだ。
 建国の精神が衰えた米国は、求心力を低下させる。トランプ氏は「われわれの流儀を誰にも押しつけたりはしない。むしろ模範として見習うように、われわれを光り輝かせよう」と語ったが、米国は逆に輝きを失うだろう。
 それだけではない、理念が力を失えば、国の結束は弱まり、国民も国も自己の利益だけを追うようになるだろう。
 実際、トランプ氏は目先の利益を追い求める「取引外交」を展開しようとしている。損得勘定に理念は不要なのだろう。
 だが、大国には自律が求められる。利己的な行動は摩擦をいたずらに起こし、国際秩序は揺らぐ。
 米国第一主義は米国のありようを変容させるばかりでなく、世界に紛争の種をまく危うさをはらんでいる。
 トランプ路線は「米国を再び偉大にする」という自身の目的にも外れる。再考を勧める。
 トランプ氏は大統領選で、移民排斥や障害者、女性を蔑視する発言をした。選挙後の米社会は、黒人、ヒスパニック(中南米)系などへの憎悪犯罪(ヘイトクライム)、人種対立が目立っている。
 就任演説で、米国の繁栄と成功で生まれる「新しい国家威信」によって「分断は癒やされる」と語ったが、そんな簡単なものではあるまい。
 社会の底辺に眠っていた差別意識と偏見を解き放ったトランプ氏には、それを鎮める責任がある。まずは大統領という立場をわきまえ、言動を慎むことだ。
 女優メリル・ストリープさんの批判にむきになって反論し、先の記者会見では一部メディアを罵倒した姿を見ると、衝動的で自己制御ができない性格なのかと疑われてもしかたがない。
 そんな人物が核のボタンを預かって大丈夫なのか、と懸念する人は多いだろう。
◆お手本のない時代に?
 明治維新で近代化の道を歩みだした日本は、「脱亜入欧」をスローガンに国を挙げて欧米文明の導入に邁進(まいしん)した。
 戦後は米国主体の連合国軍総司令部(GHQ)の下で民主化が図られ、一九五〇年代に黄金期を迎えた米国の豊かな生活に多くの日本国民があこがれた。
 米国を手本にして、その背中を追いかけてきた日本。トランプ路線が定着すれば、そんな時代は終わりを迎える。
 モデル不在のまま将来の日本の自画像を描く、という作業が私たちを待っているのかもしれない。
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しんぶん赤旗 2017年1月22日(日)
主張:トランプ氏就任 「米国第一」を強く危惧する


 トランプ米大統領の就任式は、全米各地での抗議集会やデモに彩られました。社会の分断の深刻さ、政治の行方の不透明感、米国民の不安を象徴するような政権の幕開けです。
変革の処方箋は示さず
 トランプ氏の当選自体、多国籍大企業優先のグローバル資本主義、弱肉強食の経済政策の矛盾、国民の声が届かなくなった既成政治への怒りを背景にしていました。
 トランプ氏は就任演説で、雇用を取り戻すと述べ、同じ日に環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明しました。しかし、同氏は、外国や外国企業が米国の犠牲で不当に恩恵を受けていると決めつけるばかりで、これまでの経済界優先の米政治の変革の処方箋を示したわけではありません。
 TPPも、各国の経済主権を無視した「自由貿易」のあり方を見直すというのでなく、むしろ、米国の国益優先の立場からの2国間交渉で他国にさらなる譲歩を迫る圧力を強める懸念が出ています。
 就任早々、国内政策で大問題となっているのは、オバマ前政権が導入した皆保険を目指す医療保険制度(オバマケア)の廃止です。トランプ氏は廃止を公約し、新議会はすでに、その手続きに入っています。これでは、保険会社が横暴をほしいままにしていた状態への逆戻りだとの批判が、サンダース上院議員ら多くの議員、市民団体から上がっています。社会保障制度にどのような立場で臨むのかは、トランプ政権が、格差問題に真剣に取り組むかどうかの試金石として問われます。
 トランプ氏は就任式で、「急進イスラムテロ」を打倒するための「文明世界」の結束を訴えました。大統領として特定の宗教とテロを結びつける姿勢は、9・11テロ後の反イスラムの社会風潮を克服しようと努力してきた米市民の取り組み、テロ根絶に向けた国際社会の共同の取り組みという観点からも、さらなる懸念を呼ぶものです。
 トランプ氏に抗議して、民主党議員数十人が就任式を欠席し、分断の溝の深さが浮き彫りになりました。同氏の地元ニューヨークでは前夜、1万人規模の抗議デモが開かれ、映画監督のマイケル・ムーア氏や俳優のロバート・デ・ニーロ氏らも参加。市民たちは「あきらめるな」をスローガンに真の政治改革の思いを訴えました。市民の側からの対抗運動の息吹が、さっそく高まりをみせています。
 トランプ政権の世界戦略の方向性は、いまだ不透明です。中国、イランなどに対する警戒感が聞かれる一方、これら諸国とどのような関係構築をめざすのかの具体策はみえていません。
軍事負担増の要求も
 トランプ氏は就任演説で、米国は自国の軍隊を犠牲にして他国を防衛してきたとして、軍事的負担の増大を求める姿勢をにじませました。外交関係も、自国第一の立場から考えると表明しています。トランプ氏の「米国第一主義」の姿勢は、強い警戒をもって、注視していく必要があります。
 新たな市民運動の高まりとともに、米国の新政権は発足しました。日本にとっても「日米同盟絶対」の思考停止ではなく、対等で友好の新しい日米関係を柔軟に構想するさまざまなレベルでの活発な議論と取り組みを広げる機会となりうるものです。
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