2017-02-01(Wed)

JR北海道の全線 3年後には運行不可能

「本州3社」と「3島会社」…広がり続ける7社の格差

<報道記事・社説>
東洋経済オンライン)JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題
経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を(1/28)

J-CASTニュース)北海道のJR全線、3年後には運行不可能 「JR北海道試算」報道の衝撃1/25
産経ニュース)【JR30年】「本州3社」と「3島会社」…広がり続ける7社の格差(1/4)
中国新聞)社説:JR30年と地方 公共財の使命忘れるな(1/9)
西日本新聞)社説:地方鉄道の苦境 地域振興に生かす発想を(12/30)

<産経ニュースより>
170104産経)JR各社の営業損益(単体)の推移




以下引用



東洋経済オンライン 2017年01月28日
JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題
経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を


大塚 良治 :湘北短期大学准教授
「できれば残してほしいけどね」。筆者がJR北海道の不採算路線の現状を視察するために訪れた、石勝線夕張支線の夕張駅舎内に入居する喫茶店「和(なごみ)」で、常連客の男性は鉄道についてこうつぶやいた。これから札幌へ向かうと話すと、男性は「俺たちが札幌へ行くときは車か高速バスだね。速くて安いから」と続けた。
「自分たちは乗らないけど、通学生や高齢者、障がい者などのために残してほしい」。公共交通の存続が問題となる場面で多く聞かれる声である。そうした声に対して、北海道旅客鉄道JR北海道)の西野史尚副社長・鉄道事業本部長は「乗らないけど残してほしいではなく、私たちも乗るから是非残してほしいと言ってほしい」と訴える。

若者の流出と過疎化が乗客減に拍車
筆者は新千歳空港に降り立ったその足で、千歳線千歳駅始発の普通夕張行き(列車番号:2629D)に南千歳駅から乗車した。同駅を10時43分に発車したキハ40形ディーゼルカー1両の列車の車内は10人ほどしか乗車しておらず、ほぼ全員が鉄道ファンとみられる旅客であった。新夕張駅からテレビの取材班が、そして北海道夕張高校最寄り駅の南清水沢駅からは高校生が大勢乗車し、ようやく車内は活気づいた。
夕張支線は廃止が決まっているが、通学の足の確保が気になるところである。夕張市まちづくり企画室は「通学に支障が出ないよう、代替交通の充実に万全を期したい」とする。一方、夕張駅まで残り時間がわずかとなった車内では、高校生たちが進路の話に花を咲かせており、男子生徒の一人は札幌市内の専門学校へ進学すると言う。地域鉄道にとって、高校生は重要な顧客だが、少子化、若年層の大都市圏への流出、そして過疎化が鉄道の乗車人員減少に拍車をかけている。
JR北海道の島田修社長が、夕張支線の鉄道事業廃止を正式表明したのは2016年8月17日。それから3か月が経った11月18日、同社は輸送密度が2,000人未満の13線区1,237.2キロメートルを「当社単独では維持することが困難な線区」(以下、「維持困難線区」)として公表した。
西野副社長は、このうち輸送密度200人以上2,000人未満の線区については「廃止になるというのは全くの誤解。目指すのは(線区の)存続だ」と強調する。この線区を維持する仕組みとして同社は、設備のスリム化と利用の少ない駅や列車の見直しによる経費節減、運賃値上げ、利用促進策、および上下分離を挙げている。
一方、輸送密度200人未満の3線区(札沼線北海道医療大学駅-新十津川駅間47.6キロメートル、根室線富良野駅-新得駅間81.7キロメートル、および留萌本線深川駅-留萌駅間50.1キロメートル)については、1列車あたりの平均乗車人員が10人前後と極めて少なく、線区の営業係数が1,000を大きく超えているなどとして、バス等への転換が適当と結論付けた。
同社はこれら3線区の廃止理由として、運営赤字とは別に老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で58億円程度(札沼線6億円、根室線22億円、留萌本線30億円)が必要になることを挙げている。また、12月21日にはこれら3線区とは別に、高波などの被害により2015年1月以来不通が続く日高本線鵡川駅-様似駅間116.0キロメートルについて、鉄道を持続的に維持する仕組みが合意に至らなかったことを理由に廃止を表明した。

このままでは資金が足りなくなる
JR北海道は「維持困難線区」の存続に向けた合意形成を図り、損益改善を目指す構えである。合意形成を急ぐ背景には、同社の厳しい決算事情がある。
西野氏は「JR北海道発足後の1988年度は、経営安定基金運用益498億円をもって営業損失533億円を埋め合わせていた。しかしその後の金利低下で当初想定していた7.3%の利回りを確保することができなくなり、2009年度には1988年比で運用益が256億円も少ない242億円にまで落ち込んでしまった。収支均衡を図るために、この時点で(『維持困難線区』の運営方法について)議論をしなければならかったのに、苦情や批判を恐れて安全投資や修繕費を削って対処した」と総括した上で、「しかし、削った悪影響が後で出てきて、事故続発の事態を招いた。それでもう一度、安全投資や修繕に投じる資金の増額を決めたが、このままでは資金が足りなくなるため、『維持困難線区』について、丁寧なご説明と粘り強い協議による合意形成が必要という結論に至った」と説明する。

構造物の老朽化「北海道だけの問題ではない」
2015年3月20日にJR北海道が発表した「安全投資と修繕に関する5年間の計画について」(以下「5年間の計画」)では、5年間で安全投資に1,200億円、修繕に1,400億円が必要であると記載された。
また、『北海道新聞』は今年1月22日に、JR北海道が「維持困難線区」13線区のうち、バス転換の意向を示すなどした区間を除く8線区について、橋や車両などの大規模修繕・更新費用が2017年度からの20年間で計435億円に上るとの試算をまとめたこと、そしてこの修繕費についても沿線自治体などに負担を求める方向であることを報道した。
西野氏は「今般、JR北海道で老朽構造物の維持更新問題が早期に明らかになったが、今後全国各地で同様の問題に直面することになる。北海道だけの問題ではない」と警鐘を鳴らす。

多額の修繕費、会計上の処理はどうなる?
JR北海道に限らず、全国の鉄道事業者では今後、将来の修繕費によって決算が影響を受ける可能性があるが、将来の修繕費発生が見込まれる場合、企業会計上どのように処理するのだろうか。
「企業会計原則注解 注18」は、「①将来の特定の費用又は損失であって、②その発生が当期以前の事象に起因し、③発生の可能性が高く、かつ、④その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部(中略)に記載するものとする。(中略)修繕引当金、特別修繕引当金(中略)等がこれに該当する」と規定する(番号は筆者)。
修繕見込額が、①~④の4つの要件を満たす場合、修繕が1年未満に実施されると見込まれるときは「修繕引当金」として貸借対照表の流動負債に計上するとともに、「修繕引当金繰入額」として損益計算書の販売費及び一般管理費(販管費)に計上する。数年に1度修繕が必要な固定資産の場合、修繕見込額を「特別修繕引当金」として固定負債に計上するとともに、「特別修繕引当金繰入額」として販管費に計上する。
今後5年間の修繕見込額1,400億円は、将来の修繕に必要な費用である点で①の要件を満たし、経年老朽という点で②に該当し、鉄道を維持する場合に将来確実に修繕が必要となる点で③を充足し、かつ1,400億円という金額を提示している点で④にも当てはまることから、1年超の修繕に対応する「特別修繕引当金」への計上が必要な4つの要件を充足していると考えられる。

「特別修繕引当金」JR北海道は計上せず
ローカル輸送の主力となっているキハ40形ディーゼルカー。安全投資には老朽化した車両の取り替えや、そのための量産先行車製造費なども含まれる(撮影:尾形文繁)
仮に「特別修繕引当金」が計上された場合、修繕の実施期間に取り崩されて、当該期間の費用を抑制する効果をもつ。つまり、当該期間の利益減少が回避されるのである。ただし、修繕に要する支出が、固定資産の使用可能期間を延長させ、又は価値を増加させる場合は、その部分に対応する金額は、資本的支出として固定資産の帳簿価額に加算した上で、事後の年度にわたって減価償却費として費用配分する。
2015年度のJR北海道の貸借対照表では、「修繕引当金」または「特別修繕引当金」は計上されていない。他方、JR北海道には2016年度から2018年度まで、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の特例業務勘定を通じた追加支援として、1,200億円がJR北海道に助成金または貸付金の形で提供される。内訳は、設備投資に600億円(助成金1/2、無利子貸付1/2)、修繕費に600億円(無利子貸付)である。
JR北海道は、2016年度以降、修繕費に係る無利子借入金600億円を返済義務のある負債に計上し、返済に応じて負債から減額処理することになる。借入金およびその返済は、期間損益には影響しないが、キャッシュ・フローに影響を与える。
適切な会計報告が理解と支援につながる
一方、JR旅客他社では、東海旅客鉄道(JR東海)が「新幹線鉄道大規模改修引当金」2,450億円を固定負債に計上している例がある。「修繕引当金」または「特別修繕引当金」を計上していない他社は、修繕に要した支出を「修繕費」として支出年度に一括して費用計上しているか、または固定資産の帳簿価額に加算するかのいずれかの会計処理をとっているものと推測される。会社ごとに事情が異なり一概には言えないが、JR東海の事例は、「修繕引当金」または「特別修繕引当金」を設定していない他社にとっても参考になるはずである。
西野氏は構造物老朽化が全国的な問題になる可能性を指摘しているが、鉄道施設で今後必要となる修繕が、全国の鉄道事業者の決算に大きな影響を及ぼしかねないという警鐘と受け止めることもできるだろう。鉄道事業者は、「修繕引当金」または「特別修繕引当金」を計上することでステークホルダーに修繕費負担の全容を早期に報告することが重要である。こうした適切な報告が、ステークホルダーからの理解と支援を得ることにつながるはずである。

上下分離の協議は難航するか
適切な会計報告が重要であるとの問題意識を踏まえつつ、JR北海道の経営改善に向けて、ステークホルダーと費用分担などについて議論する必要がある。JR北海道が考えている経営改善への主な方策は、「維持困難線区」のうち輸送密度200人以上2,000人未満の線区の維持に向けた上下分離などに関する自治体との合意形成、札幌都市圏の鉄道黒字化および関連事業の強化、そして北海道新幹線および在来線特急の利用促進の3点に集約することができる。
札幌都市圏の鉄道黒字化および関連事業の強化、そして北海道新幹線および在来線特急の利用促進はJR北海道の自助努力で進められるものであるから、異論は出ないだろう。しかし、上下分離については地方自治体の負担を伴うため、協議は難航が予想される。

鉄道に「ユニバーサル利用料」を
そこで筆者は、鉄道の「ユニバーサル利用料」を原資にした上下分離、あるいはJRグループ持株会社設立とそれに伴うJR北海道の子会社化を提案したい。『鉄道輸送統計月報』平成28年9月分によると、2015年度の我が国の鉄道利用者は年間約242.90億人である。そこで例えば、1人1乗車当たり3円を「ユニバーサル利用料」として全国の鉄道運賃に上乗せする形で徴収することができれば、約728.7億円の原資を生み出せることになる。
運賃値上げへの反発も予想されるが、類似する先例はすでにある。「特定都市鉄道整備積立金」である。この「積立金」は、鉄道運賃に上乗せする形で利用者から「前払い」を受け、都市鉄道の新線建設工事や複々線化などの工事完成後は運賃値下げなどを通じて積立金相当額を還元する。一方私案の「ユニバーサル利用料」は、経営難に陥っているJR北海道のみならず、JR四国および全国各地の地域鉄道の鉄道施設保有などの支援に活用することで鉄道ネットワークが維持され、結果として、鉄道利用者にメリットが還元されるとの考え方に立つ。
一方、コスト負担のあり方だけでなく、北海道民へJR北海道の利用を働き掛けることも重要である。
平成27年の国勢調査によると、北海道の人口は5,381,733人であるが、道民全員がJR北海道線の最低運賃170円区間を1人当たり月4回(2往復)利用するだけで、同社は約439億円の収入を手にすることができる。これは、2015年度の同社の営業損失447億円にほぼ相当する金額である。北海道庁はまず、JR北海道の乗車運動と回数券購入運動に率先して取り組んでみてはどうだろうか。
JR北海道の再生は、時間との闘いとなっている。あらゆる可能性を排除せず、JR北海道問題の解決に向けてステークホルダーの英知を結集させるための幅広い議論を強く望みたい。
ページのトップへ戻る

****************************



J-CASTニュース 2017/1/25 18:29
北海道のJR全線、3年後には運行不可能 「JR北海道試算」報道の衝撃


厳しい経営状況に陥っている北海道旅客鉄道(JR北海道)が、2020年度までに資金不足に陥り、道内で列車の運行ができなくなると試算しているとの報道に、地元に衝撃が走っている。
北海道交通企画課は2017年1月25日、J‐CASTニュースの取材に、「JR北海道が資金繰りに苦しんでいることは共通の認識です。ただ、鉄路の維持をやめるわけではないことも聞いています」と話している。
「毎年300億円規模の資金不足」
JR北海道が行ったとされる試算は、2017年1月24日に開かれた北海道議会の交通体系に関する特別委員会とJR北海道との意見交換で明らかにされたという。1月24日19時の北海道放送・HBCニュースは、「JR北海道『全道で運行不可能』と試算」と伝えた。25日付の北海道新聞も「JR北海道、20年度に資金不足 16年度から5年間試算」と報じている。
それによると、JR北海道は5年間の資金見通しとして、「2016年度からおよそ180億円の経常損失のほか設備投資や借入金の返済のため、毎年300億円規模の資金が不足する」とし、資金が不足すれば、「安全のために必要な修繕などができなくなり全道で列車の運行ができなくなる」と説明したという。
この試算について、JR北海道はJ-CASTニュースの取材に「意見交換会は非公開で行われたものですし、当社から発表したものではありません」と話している。
一方、北海道交通企画課は「JR北海道がいろいろと試算していることは承知していますが、鉄道ネットワークワーキングチームの会合などで明らかにされたことはありません」と話す。
ただ、JRの島田修社長が2016年11月の記者会見で「何もしなければ19年度末くらいで必要な(老朽化した車両の更新などに充てる)安全資金が確保できなくなる」と話していたこともあり、このため、道交通企画課は2020年度までに資金不足に陥る可能性について、「たしかにそのくらいかな、とは思います」と話している。
JR北海道は現在、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて、2016~18年度の3年間で総額1200億円(助成金を含む)の安全対策資金を借り入れている。交通企画課の担当者も「当面は国からの支援で賄えますが、借入れですから、返済がはじまり、支援が終われば、資金不足に陥ることは明らかです」と認めている。
少なくとも道北や道東の列車の運行はなくなる可能性
JR北海道が3年後にも資金不足に陥るとのニュースに、インターネットの掲示板などには、
「そもそも甘いんだよ。税金でなんとかしてくれるって思ってるもんな」
「JR九州は頑張ってるのに・・・ どうしてこうなったんだろ」
「経費を削減したうえで、廃止か値上げかを住民に問え!」
「すし詰め満員電車のJR東日本と合併すればOK」
「むしろ一度潰して出直したほうがよい」
「分割民営化のときから北海道が不利なことはあきらかだった。政策ミスのツケが回ってきただけ」
などと、JR北海道の責任の指摘や、「バスへの転換、やむなし」の声が少なくない。
だが、北海道から「列車の運行がなくなる」というのは衝撃的だ。JR北海道が2016年11月18日に発表した「当社単独では維持することが困難な線区について」でも、単独での「維持困難」な線区は、13線区1237.2キロメートルで、2015年度の営業損失は157億6400万円にのぼっていた。
留萌線(深川~留萌)や根室線(富良野~新得)、札沼線(北海道医療大学~新十津川)の179.4キロメートルは、1列車あたりの平均乗車人数が10人前後で、営業係数(100円の営業収益を得るために必要な営業費用の指数)が1000を大きく超えることから、維持することが難しく、バスに転換する意向を示している。
3線区では、運営赤字とは別に、老朽化した土木構造物の維持の更新費用として今後20年間で58億円程度が必要という。今回の試算はそれにとどまらないとみられるからだ。
その一方で、JR北海道が単独で維持可能な線区は、2030年度末なでに札幌開業を目指す北海道新幹線を含む、札幌~旭川、札幌~新千歳空港、苫小牧~室蘭、新千歳空港~帯広などの11線区1150.7キロメートル。少なくとも、道北や道東の列車の運行はなくなってしまう可能性がきわめて高いようだ。
北海道交通企画課は、「維持困難とされた線区の一部(網走~釧路~根室や旭川~北見~網走、名寄~稚内など)でも、鉄路の維持をやめるわけではないと聞いています」というが、具体策を聞くと、「それを検討しています」との答えが返ってきた。
ページのトップへ戻る



産経ニュース 2017.1.4 07:42
【JR30年】「本州3社」と「3島会社」…広がり続ける7社の格差


 JR各社の単体での営業損益を比べると、収益格差が広がり続けていることが明白だ。東海、東日本、西日本の「本州3社」が収益を上げ続ける一方、他の4社は低迷。「3島会社」の中でも、下がる北海道と上がる九州の間に格差が生じつつある。
 都市への人口集中を背景に格差は、分割・民営化時から見込まれた。そのため、37兆円に及んだ旧国鉄債務は本州3社と貨物が計5・9兆円を継承。5・7兆円を引き継いだ新幹線鉄道保有機構は平成3年に本州3社への新幹線売却に伴い解散した。残り25・5兆円は国鉄清算事業団(10年に解散)が引き継いだ。
 こうした“ハンディ”にもかかわらず、本州3社は18年までにいずれも完全民営化。21年以降、インバウンド収入の増加や新幹線事業の好調で軒並み収益を伸ばし続けている。
 一方の3島会社は分割以降、計1・3兆円に上る「経営安定基金」から生じる運用益を損失補填(ほてん)のために拠出されている。赤字経営から脱出した九州を除く2社は23年度以降、北海道計4千億円、四国計2千億円の追加支援を受け、かろうじて最終黒字化を図る綱渡り状態が続いているのが実情だ。
ページのトップへ戻る



中国新聞 2017/1/9
社説:JR30年と地方 公共財の使命忘れるな


 国鉄の分割民営化でJR各社が発足して、ことし4月1日で30年の節目を迎える。新幹線網は北海道から九州に達し、サービスも向上した。しかし光の部分だけでなく影にも目を向けるべきではないか。
 昨年9月にJR西日本が廃止を正式決定した三江線が象徴的だ。三次市と江津市を結ぶ全長108・1キロの三江線は来年春に全通から40年余りでその歴史に幕を下ろす。100キロを超す廃線は本州では初めてである。地元はもとより全国の過疎地域にも衝撃を広げた。
 年明けの三江線の光景に複雑な思いにとらわれた。平日の午前中、三次駅発の列車に約40人が乗り込んだ。多くは鉄道ファンだろう。車窓から盛んにシャッターを切っていた。ただ肝心の住民の利用は沿線自治体の促進運動でも伸びなかった。赤字ローカル線が抱える課題を浮き彫りにしていよう。
 北の大地の鉄路の危機はさらに深刻だ。JR北海道が道内の約半分に当たる1200キロ超の路線を「維持困難」としたからだ。路線廃止や大幅な運賃値上げ、沿線自治体への財政負担を求める提案を発表した。慢性的な赤字は分かるが、暮らしを支える「公共財」を託された責任をどう考えるのだろう。
 民営化当時、これほどまでの路線切り捨てが予想できていたら、国民は旧国鉄の解体を容認していただろうか。今こそ鉄道事業者としての使命を思い返してほしい。
 むろん民間会社として経営感覚は欠かせない。サービス向上や本業以外の多角化も求められよう。JR東日本、東海、西日本の本州3社に比べて環境が明らかに厳しい3島会社(四国、九州、北海道)からJR九州が昨年に株式上場を果たした。その努力は評価したい。
 ただ経営効率を優先して新幹線や都市部の黒字路線ばかりに目が向いていないか。JR東日本や西日本が運行予定の豪華寝台列車にしても観光振興につながるのは確かだが、生活路線としての鉄路の維持にどれほど貢献するかは未知数だろう。
 新幹線の黒字などで余力があるなら、ローカル線維持に経営資源を振り向ける視点がもっとあっていい。しかもJRグループ全体の課題として。旧国鉄時代の巨額債務の返済には国民の税金も充てられていることを忘れてはならない。
 政府の姿勢も問われている。リニア中央新幹線や整備新幹線の計画前倒しを数兆円の財政投融資でバックアップする。安倍晋三首相は「地方創生回廊を造り上げる」と繰り返すが、リニアの便益は東京、名古屋、大阪の三大都市圏が中心となる。これで地方に活力を生むのか。
 北陸新幹線の延伸ルート案選定も解せない。福井県敦賀―新大阪の3案から、与党は2番目に工事費がかさむ「小浜京都ルート」に決めた。高速増殖原型炉もんじゅ(敦賀市)廃炉に伴う地元対策との見方すらある。政治の思惑で路線を野放図に広げてきた「我田引鉄」は過去のものとはいえまい。
 公共財としての鉄道は地元住民や利用者の意向をまず重んじねばならない。路線の存廃はJR各社に委ねるだけでなく、国がもっと前面に出るべきではないか。地方のこれからを見据えた懐の広さが求められる。
ページのトップへ戻る



西日本新聞2016年12月30日 10時39分
社説:地方鉄道の苦境 地域振興に生かす発想を


 古里への帰省や旅行で新幹線や飛行機からローカル線への接続に苦労する人も多いのではないか。車窓を流れる風景に変わりはなくても、列車の本数が減っていたり、にぎわっていた駅がいつの間にか無人駅になっていたり…。中にはかつて通学で利用した路線が廃止され、寂しい思いをする人もいるだろう。地方鉄道を取り巻く環境は年々厳しさを増している。
 ●「輸送密度」を尺度に
 JR北海道が先月発表した「当社単独では維持が困難な線区」は衝撃的だった。その線区とは10路線13区間、計1237・2キロに及んだ。実にJR北海道の営業区間の半分以上に当たる。
 北海道も人口減少が著しく、JRの経営は厳しい。高速道利用のマイカーや航空路線との競合は激化する一方、相次ぐ自然災害に加え、2011年の特急脱線炎上など頻発した事故やトラブルに伴う安全対策への投資も重なった。
 13区間の対応は、1キロ当たり1日平均乗車客数の「輸送密度」で分かれる。200人未満の3区間は廃線を伴うバス転換を地元に提案する。200人以上2千人未満の10区間は「上下分離方式」を軸に鉄道存続を地元と協議する。
 上下分離方式とは線路や駅舎、トンネル、鉄橋などインフラ(下部)を地方自治体などが管理し、実際の運行(上部)は鉄道会社が担当する仕組みだ。鉄道会社は運行に専念でき、負担が軽くなる。
 九州など各地の第三セクター鉄道も採用を希望するが、財政難の自治体は簡単には応じられず、採用は三セクの若桜(わかさ)鉄道(鳥取県)など一部に限られる。JR北海道も今回の13区間とは別に、台風と高波の被害で運休中の日高線について上下分離を提案したが、関係7町は拒否している。
 JR北海道の苦境は、1987年の国鉄分割民営化を抜きには語れない。巨額の債務を抱えた旧国鉄を政府は「地域密着」の名の下に旅客6社と貨物会社に分割した。ドル箱の東海道、山陽新幹線などを保有する東日本、東海、西日本会社と、在来線ばかりで出発した北海道、四国、九州の「三島会社」の運命は分かれた。
 ●九州も人ごとではない
 三島会社は当初から厳しい経営が予想された。JR北海道と対照的に株式上場を果たしたJR九州は成功例として語られる。ただ、人口減少や地域経済の疲弊など鉄道を巡る環境の厳しさは共通している。北海道の鉄道リストラは九州にとっても人ごとではない。
 輸送密度2千人未満の路線はJR九州にもある。吉都、肥薩、日南、後藤寺、日田彦山、三角、宮崎空港の7線計383・7キロだ。このうち肥薩、日南、三角各線には観光列車を走らせるなどJR九州は懸命の営業努力を重ねているが、ローカル線を将来にわたって維持していくのは容易ではない。
 人的交流や物流を支える交通網は細かく網を張るようにつながってこそ意味がある。地方鉄道はその機能が弱体化してきた。
 ●国や自治体も支援を
 国鉄時代の68~72年に15線135キロ、国鉄再建法に基づき83年以降に計83線3157・2キロがそれぞれ廃止された。JR以後も9線330・4キロの廃止が続く。
 このうち九州はこれまでに29区間706・3キロ、北海道では33区間1870・8キロの路線が廃止された。その一部は三セク鉄道として運行を続けているが、交通網としての衰弱ぶりは明らかだ。
 三セク鉄道でも高千穂鉄道(宮崎県)や北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(北海道)などが廃止に追い込まれた。私鉄でも各地でローカル線の廃止が相次ぐ。
 では地方鉄道の存続にはどうすべきか。より利用しやすい鉄道への経営努力は必須だが、路線維持の責任を鉄道会社だけに求めるのは無理だろう。苦境の背景には少子高齢化や過疎化など地方が抱える構造的問題があるからだ。
 鍵を握るのは地域振興だろう。観光や産業、歴史や文化など、その地方の特性を生かした地域づくりに地方鉄道を組み込み、活用していく知恵と工夫が地域の住民や自治体に求められる。国も鉄道会社や自治体に任せきりにせず、財政支援も含めて積極的に後押ししてほしい。それこそ、地域に根差した「地方創生」のモデルとなり得るのではないか。
ページのトップへ戻る

/////////////////////////////////////////////////////


関連記事

テーマ : 政治・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : JR 北海道 運行不可能 鉄道

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

プロフィール

ajimu-ra

Author:ajimu-ra

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最近の記事
リンク
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ(タブ)
RSSフィード
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
カテゴリー
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2ブログランキング
↓↓クリックお願いします↓↓

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

フリーエリア
blogram投票ボタン