2017-02-13(Mon)

日米首脳会談 (2) 「親密外交」の代償が不安だ

関係強化で背負うリスク  不安拭えぬ課題先送り  防衛強化に傾かないか

<各紙社説>
北海道新聞)日米首脳会談 「親密外交」の代償が不安だ(2/12)
河北新報)日米首脳会談/物申す関係を構築せねば(2/12)
信濃毎日新聞)日米首脳会談 不安拭えぬ課題先送り(2/12)

京都新聞)日米首脳会談  友好演出では物足りない(2/12)
神戸新聞)日米首脳会談/本当の対話はこれからだ(2/12)
中国新聞)「同盟」の行方 防衛強化に傾かないか(2/12)
西日本新聞)日米首脳会談 関係強化で背負うリスク(2/12)




以下引用



北海道新聞 2017/02/12 08:50
社説:日米首脳会談 「親密外交」の代償が不安だ


 安倍晋三首相はひとまず胸をなで下ろしているに違いない。
 トランプ大統領との初の首脳会談で日米同盟強化を確認し、フロリダの別荘に2泊してゴルフを楽しむ破格の厚遇を受けている。
 予測不能と評されたトランプ氏から懸念された強い対日批判や要求は出ず、逆に在日米軍受け入れへの感謝の念すら示された。
 だが、焦点の経済問題で主張の隔たりが表に出ないようにし、成功を演出した側面もある。
 貿易・投資分野などで幅広く協議する枠組みを新設することで合意したが、今後トランプ氏が同盟強化の見返りに譲歩を迫る可能性は十分想定される。安全保障面での新たな要求も警戒が必要だ。
 会談結果を手放しで歓迎することはできない。
 イスラム圏7カ国からの入国禁止措置で米国内外が揺れる中、会談は世界の注目を集めたが、首相はこの問題に言及しなかった。
 両首脳の親密な関係が、かえって国際社会から浮き上がらないか。心配はそこだ。
■浮かんだ「取引」重視
 両首脳は沖縄県・尖閣諸島に日米安保条約が適用されることを確認した。この問題で態度を曖昧にしていたトランプ氏から言質を得ることを首相は最も重視した。
 海洋進出を強める中国へのけん制に米軍の抑止力は欠かせないと考えているからだ。
 だが、オバマ政権当時に確認済みの話を日本側にあらためて成果として与え、自衛隊の米軍への一層の協力を引き出す「貸し」をつくったとの見方もできる。
 首相は記者会見で「日本も積極的平和主義の旗の下、より大きな役割を果たしていく」と述べた。
 今後、米側は公約の実行を求めてくるだろう。集団的自衛権の行使を容認した安保法制の下、自衛隊と米軍の際限ない一体化が加速しないか。
 注目すべきは、トランプ氏が首相と会う前日に中国の習近平国家主席と電話会談し、「一つの中国」の維持を表明した動きだ。
 ここでも従来政策を外交カードに使い、経済交渉を有利に運ぼうとする意図が見え隠れする。
 「取引」を重視するトランプ氏の一面を垣間見た感がある。
 とはいえ、米新政権が中国との関係構築に動きだした。日本が日米同盟一辺倒でいいはずがない。東アジアの平和と安定のために首相は停滞している対中外交を一刻も早く動かす必要がある。
■双方に利益あったか
 経済分野は当面、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップにした枠組みで議論していく。
 首脳会談を通じて浮かび上がったのは、トランプ氏の唱える「米国第一」主義に、首相が密接な協力を強調した姿勢だ。
 首相は記者会見で、新幹線を例に挙げ「日本は高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。そして米国に新しい雇用を生み出せる」と胸を張った。
 一方のトランプ氏は「当選以来、自動車会社に『米国に戻ってこい』と言ってきた。みんな戻ってきた」と述べ、米国第一主義への手応えを示した。
 果たして日米双方の利益になる話し合いが行われるだろうか。
 共同声明では米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱を踏まえ、2国間交渉を含めて「最善の方法を探求する」と明記した。
 もともとトランプ氏は2国間交渉入りに意欲を示してきた。2国間では主張がぶつかり合い、大国に有利に働くことが多い。
 米国の畜産団体はトランプ氏に対して、TPPに代わる2国間交渉を始めるよう要望している。
 TPP合意を出発点に、日本側ばかりが譲歩を迫られるような交渉には注意しなければならない。
■言うべきを言わねば
 米国の入国禁止措置問題について首相は記者会見で「難民・移民政策は内政問題」とこれまで通りのノーコメントを繰り返した。
 トランプ氏も「国の安全に必要なことはやっていく」と述べ、新たな大統領令発令を検討していることを移動中の機内で表明した。
 入国禁止措置は、難民・移民政策以前の人権問題である。テロ対策どころかイスラム圏の米国への憎悪を増幅させ、テロ誘発の危険すら高まるだろう。
 英国ではこの問題がトランプ氏の公式訪問中止を求める署名運動に発展しているが、首相はトランプ氏の年内訪日を招請し、トランプ氏はこれを受け入れた。
 日米同盟は自由と民主主義、法の支配という共通の価値観で結ばれていると首相は言ってきた。
 にもかかわらず、先進7カ国(G7)でも3番目の長期政権を敷くリーダーが、国際社会の分断に拍車を掛ける移民制限に何も言わずにゴルフに興じる。世界にはどう映るだろうか。
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河北新報 2017年02月12日日曜日
社説:日米首脳会談/物申す関係を構築せねば


 自分の別荘に招いて食事を重ねゴルフに興じようというのだから、過激な言動は慎み、第一歩は友好的に、というのは当然と言えば当然か。
 安倍晋三首相とトランプ米大統領による初めての首脳会談である。両首脳は、日米同盟と両国経済関係を一層強化していくことで合意した。
 この中で大統領は、かねて批判してきた対日貿易赤字、円安誘導とみなす金融緩和策とともに、環太平洋連携協定(TPP)離脱に伴い意欲的な2国間の自由貿易協定(FTA)交渉について、持ち出すことはなかったとされる。
 だが「持論」を撤回したわけではあるまい。絆の強化という「総論」を確認しつつも摩擦を生みかねない「各論」へ深入りを避けた印象だ。
 防衛面の負担や通商問題といった各論はこれから。懸念が横たわる新たな日米関係が始まったばかりであることを安倍政権は覚悟したい。
 アジア太平洋地域の安全保障を巡る懸念については、取りあえず拭われた形だ。中国が東・南シナ海進出を強め、北朝鮮が核・ミサイル開発に固執する中、不安定化しかねないこの地域に米国が強く関与し続けることを確認した。
 沖縄県・尖閣諸島については、米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと、トランプ氏から改めて言質を得た。その意義は小さくあるまい。
 問題なのは、安保にしても経済にしても、具体的な議論に関しては安保は既存の、経済は新設の「閣僚協議」に委ねられたことだ。その中で、在日米軍駐留経費の負担増や自衛隊の役割拡大が、俎上(そじょう)に載らないとは限らない。
 特に通商分野については懸念が大きい。会談の成果である共同声明が、TPPを念頭にアジア太平洋地域での貿易・投資ルールづくりを重視する日本の立場を記す一方で、FTA交渉入りを排除しない「玉虫色」の表現だからだ。
 忘れてならないのは、トランプ氏は自国利益を最優先する「米国第一」主義者であることだ。閣僚協議でも、自動車貿易の不均衡是正や農産物の大幅な市場開放を求めて、交渉入りを迫ってくるのは想像に難くない。
 そうした要求に、どう対応するのか。新たな日米関係を占う意味でも、大統領招待による「食事・ゴルフ会談」の行方から目が離せない。
 安倍首相は施政方針演説で連携していく相手として挙げたのは「自由、民主主義、人権、法の支配といった価値観を共有する国」である。
 自由貿易を含め、そうした世界秩序を主導してきた米国は、トランプ政権誕生で大きく変質したというほかない。
 個人的な信頼関係を構築するにしても、トランプ氏に追従するのではなく、自らが挙げた価値観に基づいて物申す関係を築かねばなるまい。その結果を日本国内ばかりか、国際社会も注視している。
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信濃毎日新聞(2017年2月12日)
社説:日米首脳会談 不安拭えぬ課題先送り


 安倍晋三首相とトランプ米大統領の初の首脳会談は、両国の関係強化をアピールする場になった。貿易・投資などについて幅広く協議する枠組みを設けることで合意している。
 難題には深く踏み込まず、これからの協議に委ねた形だ。トランプ氏は自動車貿易の不均衡などを巡り日本を批判してきた。今後の道筋が見えたわけではない。
 安全保障問題を含め、米側の出方によっては厳しい交渉を迫られる。政府は米国追従に流れることなく、新政権との関係づくりを進めなくてはならない。
   <親密さをアピール>
 ホワイトハウスに到着した首相をトランプ氏がハグで出迎えるなど両首脳は親密さを演出した。トランプ氏は年内の日本公式訪問の招きにも応じている。
 会談後は大統領専用機に同乗してフロリダに移動した。トランプ氏の別荘に泊まり、会食やゴルフをする異例の厚遇である。
 日本重視の表れと単純に喜べない。イスラム圏7カ国からの入国禁止の大統領令に対し、国内外で批判が続いている。日本との関係を強め、孤立を回避しようと考えているのかもしれない。
 入国禁止について首相はトランプ政権を刺激しないよう論評を避けてきた。共同記者会見でも「入国管理、難民・移民政策は内政問題であり、コメントは差し控えたい」と述べている。明確に異を唱える他国首脳とは対照的だ。
 首相は自由、民主主義、人権といった基本的な価値観の共有を強調してきた。ならば、今回の大統領令に反対を表明するのが筋ではないか。米国に擦り寄るばかりでは他国からも批判されかねない。
   <経済摩擦再来の懸念>
 会談は、経済と安保の二つが大きな焦点だった。
 経済分野では、共同声明に「自由で公正な貿易ルールに基づいて両国間と地域における経済関係を強化する」との文言が盛り込まれた。トランプ氏は保護主義的な政策を重視するだけに一定の成果といえる。
 とはいえ、課題解決はほぼ全てが先送りされた。
 トランプ氏は大統領就任後、環太平洋連携協定(TPP)を「永久に離脱」するとした大統領令に署名し、2国間の通商協定締結を目指す方針を鮮明にした。
 不公正貿易の例として日本に触れ、「米国車の販売を困難にしているのなら公平ではない」と強調していた。円を切り下げて貿易を有利にしているとも批判した。
 首相は今回、自動車貿易について会見後のワーキングランチで日本企業の対米投資や雇用増への貢献を説明し、トランプ氏は評価したという。今回は穏やかに済んだとしても楽観はできない。
 2国間の貿易に関する課題を含め新設の閣僚枠組み「ハイレベル経済対話」で議論する。今後、自由貿易協定(FTA)交渉に発展する可能性がある。
 クリントン政権時の日米貿易摩擦を思い起こさせる。当時は貿易不均衡を是正するために「日米包括経済協議」が設けられた。この場で米政府は関税の大幅引き上げをちらつかせ、自動車市場の開放を日本に迫った。
 日本メーカーは対米輸出を自主規制し、自主的に米国産部品の購入や米国での完成車生産に乗り出した経緯がある。今回も一方的に譲歩する結果を招きかねない。
 2016年の米国の対日貿易赤字は689億3800万ドル(約7兆7千億円)となり、ドイツを抜き、中国に次ぐ2位となった。米側が対日批判を強め、利害がぶつかることも予想される。
 両国にとってメリットがある経済対話にするには、日本として反論するべきものは反論していく姿勢が欠かせない。TPPに代わるアジア太平洋地域の新たな自由貿易体制の構築を含め、粘り強く協議する必要がある。
   <軍事一体化が一段と>
 安保では、沖縄県・尖閣諸島について米国の防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象であることを再確認した。トランプ氏は、在日米軍の受け入れに謝意も示している。
 気掛かりなのは、防衛協力の拡大だ。共同声明は日米同盟について日本が「より大きな役割、責任を果たす」とした。防衛技術、宇宙やサイバー空間における安全保障、テロ集団との戦いのための協力などを挙げている。
 同盟強化を理由に防衛費の増額や自衛隊の装備増強を図ろうとしているのではないか。武器の共同開発や軍事に関わる共同研究を含め、米軍と自衛隊の一体的な運用がさらに進む可能性がある。
 テロとの戦いについて首相は会見で「日本は日本の役割を果たしている」とした。「地域紛争、難民、貧困、感染症などの課題」に取り組む考えを示している。
 テロを生む土壌をなくそうというのであれば異論はない。問題はこの先、米国から自衛隊の活動を要求されないかという点だ。首相の詳しい説明を求めたい。
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[京都新聞 2017年02月12日掲載]
社説:日米首脳会談  友好演出では物足りない


 安倍晋三首相が米国のトランプ大統領と初めて会談し、日米同盟を一層強化する決意を確認したとの共同声明を発表、経済関係強化のため、貿易・投資分野などで幅広く協議する閣僚枠組みの新設に合意した。
 数々の問題発言で世界を揺るがしてきたトランプ氏である。日本に対しても日米安保条約は不公平だと主張し、貿易不均衡や為替政策について度々「口撃」してきただけに、安全保障体制や通商政策でどのように関係を構築できるのか懸念されていた。
 首脳会談では、日米同盟を中心としたアジア太平洋地域の安全保障体制に大きな変更がないことを確認し、経済関係では「自由で公正な貿易のルールに基づいて経済関係を強化する」ことで一致した。安保から経済まで両国の友好協力関係を推進する基本的な立場を確認する成果は得られたといえよう。
 ただ、トランプ氏が貿易問題などで主張を変えたわけではなく、双方が難しい問題に踏み込まないよう友好関係を演出した結果でもあろう。防衛面の負担や為替政策など、今後具体的な問題で協議を始めれば摩擦が生じる懸念は消えない。
 トランプ氏は記者会見で、日米同盟を地域安定の「礎石」だと強調し、共同声明には、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島について、米軍の防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象だと明記された。
 さらに、北朝鮮に核・ミサイル開発の放棄を求めることや、中国の東・南シナ海進出を念頭に「力による現状変更の試み」に反対することでも一致した。
 日本政府としては安全保障上の懸念を払拭した格好だが、一層の強化が何を意味するかが問題だ。今回は議題に上らなかったが、米軍駐留経費の負担増が取引材料にされない保証はあるまい。自衛隊の役割拡大を求められる可能性もある。安倍首相は防衛力強化に前向きだが、専守防衛は厳守しなければならない。普天間飛行場の辺野古移設を「唯一の解決策」としたのは残念だ。沖縄の民意を無視しては解決が遠のくばかりだ。
 経済関係の新たな枠組み「ハイレベル経済対話」は、麻生太郎副総理兼財務相とペンス米副大統領をトップにマクロ経済政策、インフラやエネルギーなどでの協力、2国間の貿易に関する枠組みの3分野を議論する。
 米国は環太平洋連携協定(TPP)を離脱し、自国に有利な2国間協定を進めたい意向であり、これから本当の交渉力が問われることになろう。
 両首脳はワシントンでの会談後、トランプ氏の別荘に移動して、ゴルフや会食を行うなど親密さをアピールしている。信頼関係を深めることは必要だが、トランプ氏の「ご機嫌取り」では困る。
 各国が非難したイスラム7カ国からの入国を禁じる大統領令について、安倍首相は「内政問題」とコメントを避けた。今回の首脳会談は世界が注目している。無批判な同盟関係では、国際社会における日本の地位を低下させかねない。時には苦言も呈し、世界の安定に寄与するような関係をつくるため腰を据えて取り組まねばならない。
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神戸新聞 2017/02/12
社説:日米首脳会談/本当の対話はこれからだ


 安倍晋三首相が訪米し、トランプ米大統領と初の首脳会談を行った。トランプ氏は選挙中から日本に対して厳しい発言を繰り返してきたが、会談ではもっぱら首相との親密さをアピールした。
 在日米軍駐留経費の負担には触れず、対日貿易赤字などの通商問題にも深入りしなかった。正面きって持ち出されれば利害の対立が表面化しかねず、日本側関係者は胸をなで下ろしたのではないか。
 印象深いのは、安全保障での日本に対する配慮である。
 先日来日したマティス国防長官に続き、トランプ氏も沖縄県・尖閣諸島が米国の防衛義務を定めた日米安保条約の対象だと確認した。中国の海洋進出を念頭に威嚇や力による権利の主張に反対するなど、日本との連携を重視する姿勢を示した。
 基本的にオバマ前政権の対日政策を引き継いだともいえるが、首脳同士で関係強化を改めて確認したことは一定の成果と評価していい。
 トランプ氏は一部外国首脳に儀礼を欠く対応をしたと批判される。対照的に首相はフロリダ州の別荘に移動して一緒にゴルフを楽しむ。厚遇の背景には、北朝鮮の核・ミサイル開発などをにらみ、日本との同盟強化を優先したとの見方がある。
 一方で、トランプ氏は直前に中国の習近平国家主席とも電話会談を行った。中国と台湾を不可分の領土とする「一つの中国」の原則を尊重する考えを伝え、米中関係の重要性を確認したとされる。今後の両大国の動向を注視する必要がある。
 気がかりなのは今回、日米で閣僚級の枠組みによる「ハイレベル経済対話」の開始が決まったことだ。首相は「自由で公正なマーケットを、日米のリーダーシップでつくり上げる」と語った。だが、枠組みの中には米国が目指すとされる日米2国間の貿易協議も含まれている。
 トランプ氏は自国優先の保護主義的な姿勢を掲げ、環太平洋連携協定(TPP)から離脱する大統領令に署名した。TPP推進に尽力した首相が自由貿易の意義をどこまで伝えて説得できたか、疑問が残る。
 具体的な協議が始まれば、米国が貿易赤字解消などで圧力を高めてくる可能性がある。トランプ氏が年内の日本公式訪問を受け入れるなど関係は順調に滑りだしたように見えるが、本当の対話はこれからだ。
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中国新聞 2017/2/12
社説:「同盟」の行方 防衛強化に傾かないか


 安倍晋三首相はトランプ米大統領とホワイトハウスで初めて会談し、同盟強化の決意を盛り込んだ共同声明を発表した。沖縄県・尖閣諸島について、米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると、あらためて確認したことは日本政府の思惑通りだろう。安倍氏はほっとしていよう。
 日米同盟につけいる隙がないことを中国に示すべく、日本政府は首脳会談に当たって尖閣への安保条約5条適用の再確認を極めて重視してきた。オバマ前政権が中国との関係を重んじ、5条適用を表明するまでに時間がかかったこともあろう。
 しかし、焦点の新たな通商枠組みや、自動車貿易の不均衡是正については新設する協議に委ねた形で、首相が目指す相互利益の関係を構築できるかどうかは見通せない。それだけに、同盟強化が通商交渉の取引に使われる懸念も打ち消せまい。
 日本は防衛力を強化し、日米同盟の抑止力や対処力の向上に貢献してきた。2018年度まで5年間の中期防衛力整備計画(中期防)は対象経費に関し年平均0・8%の増加を見込んでいる。このペースがさらに加速し、防衛費が「聖域化」するならば違和感を禁じ得ない。
 トランプ氏は今回「日米同盟はアジア太平洋地域安定の礎石だ」と強調し、尖閣を念頭に「日本の施政下にある全ての領域の安全保障に責任を持つ」と明言した。在日米軍の受け入れにも謝意を示し、会談では在日米軍駐留経費の負担増問題は議題にならなかったという。
 だが、トランプ氏は選挙戦では駐留経費の負担増を求めてきた人物である。このまま旗を降ろすとも思えない。両首脳は外務・防衛担当閣僚に対し、日米同盟をさらに強化するための方策を特定するため、安全保障協議委員会(2プラス2)を開催するよう指示した。この協議を注視しなければなるまい。
 両首脳は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の推進についても申し合わせた。共同声明では「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である」としているが、普天間の運用停止にめどを示さず、基地負担の重圧を全く省みない言い回しとしかいいようがない。
 県民の求める真の負担軽減や日米地位協定の抜本改正から、目を背けるべきではない。
 一方、安倍氏はトランプ氏が発した入国禁止の大統領令について「内政問題」として首脳会談では直接言及しなかった。「基本的価値の共有」を外交の基本方針としてきたのに、自由や人権を強調すると大統領令との矛盾が生じることになるからだろうが、納得できない。
 入国禁止の大統領令は、米国内だけでなく国際的な批判と反発を招いている。しかしトランプ氏は差し止めを求めた判事に対し、「何か起きたら彼の責任にしろ」などと個人攻撃を繰り返している。民主主義の根幹であるべき三権分立を全く理解しない言動というほかない。
 米国は世界最大の軍事力を持つ超大国である。そのリーダーが国内雇用を奪われたというような被害者意識だけに凝り固まっていては極めて危険だ。
 日米外交に民主主義の物差しを当て、取引(ディール)に偏しないことを強く求める。
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西日本新聞 2017年02月12日 10時45分
社説:日米首脳会談 関係強化で背負うリスク


 安倍晋三首相とトランプ大統領による初の首脳会談が、ワシントンで行われた。
 両首脳は日米同盟の強化を高らかにうたい上げた。その一方、利害の対立が予想される通商・経済問題では深入りを避けた。日本政府にしてみれば、一応の成果を上げた会談だと言えるだろう。
 しかし、暴走も懸念される「トランプ氏の米国」との関係をやみくもに強化していけば、日本にとって思わぬリスクを生みかねない。これから「自国第一主義」の米国とどう向き合うか。日本外交に新たな課題が浮上している。
 ●駐留経費に触れず
 「日米同盟はアジア太平洋安定の礎石だ」。会談後の記者会見に臨んだトランプ氏の口からは、日米同盟を重視する発言が次々と飛び出した。共同声明には、沖縄県・尖閣諸島が米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用対象であることも明記された。
 これまでマティス国防長官など高官レベルが言及していたとはいえ、大統領が自ら、歴代政権の安全保障の基本原則を踏襲する意思を示した意義は大きい。
 またトランプ氏は、中国の海洋進出への対応や、北朝鮮の核・ミサイルからの防衛を「極めて優先度が高い」と位置付けた。
 トランプ氏は以前、在日米軍駐留費用の負担増を日本に求める発言をしていた。会談ではその問題に触れなかったばかりか、会見で「日本国民に、米軍を受け入れてくれていることへの感謝を伝えたい」とまで語った。
 安全保障問題に関しては、今回の会談は日本政府にとって、ほぼ「満額回答」といえるほどの出来高だった。トランプ氏が継続的な安保政策を示したことで、この分野の不透明感が一定程度晴れたことは評価できる。
 ●先送りの経済課題
 通商・経済分野では、問題が先送りされた印象だ。
 会談で両首脳は、貿易・投資分野などを幅広く協議する枠組みを新設することで合意した。麻生太郎副総理とペンス副大統領が双方のトップを務める。
 環太平洋連携協定(TPP)に代わる日米間の通商協定や、自動車貿易の不均衡是正などのテーマは、この枠組みの中で協議する。
 日本側としては、政治経験の長いペンス氏を相手とすることで、予想可能な範囲で交渉を進めたい思惑がある。ただ、トランプ氏自身のこだわりの強い分野だけに、過大な要求を突きつけられる恐れは消えていない。
 会見で安倍首相は「日本は新幹線やリニアなど高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。米国に新しい雇用を生み出す」と、トランプ氏の雇用政策への協力アピールに懸命だった。
 トランプ政権が、日米同盟強化の代償として、経済分野で見返りを求めてくる可能性もある。理不尽な要求をされた場合、日本がどれだけ踏ん張れるか。交渉力が試されるのはこれからだ。
 ●主体性が問われる
 今回の会談で安倍首相は、トランプ氏との「個人的な信頼関係」のアピールに軸足を据えた。
 トランプ氏のポピュリズム(大衆迎合)的な政治手法や、イスラム圏からの入国禁止などの排他的な政策には世界中から批判の声が上がる。打ち上げる外交方針も生煮えで危なっかしい印象が強い。
 そうした中、安倍首相は会見で「トランプ氏の当選は民主主義のダイナミズムだ」と持ち上げた。また入国禁止に関する記者の質問に対し「内政問題であり、コメントしない」と述べ、この問題で批判を浴びるトランプ氏を実質的に擁護した。
 こうした姿勢が国際社会から見てどう映るか、日本政府は一度考えてみた方がいい。トランプ氏を喜ばせる一方で、世界での信頼を失う恐れはないだろうか。
 今回、政府はトランプ氏との一日も早い会談実現に全力を挙げた。少し距離を置き、時間をかけて新政権の本質を見極めよう、という発想は皆無だったといえる。
 今回の会談を政府は「大成功」と自賛するだろうが、米国と距離を詰めすぎれば、米国が暴走した場合に日本が背負うリスクは大きい。日米関係を絶対視せず、米国の行く先を見極める主体性が日本外交に求められている。
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