2017-03-26(Sun)

不動産融資 最高に 16年新規12.2兆円

アパート融資 異形の膨張 16年3.7兆円  不動産投資 リスク置き去りの活況

アパート融資、異形の膨張 16年3.7兆円 新税制で過熱
----金融機関による2016年の不動産向け融資が12兆円超と過去最高を記録した。背景の一つが相続対策のアパート建設だ。人口減社会には似つかわしくないミニバブル。まだ局所的とはいえ体力の弱い地域金融機関が主役だけに金融庁や金融界からも不安の声が上がる。米リーマン危機を引き起こしたサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の「日本版にもなりかねない」(大手銀行首脳)。

■金融庁、リスクの把握急ぐ
 アパート融資を含む与信の集中――。金融庁は昨年まとめたリポートで金融システムの健全性に影響を及ぼしうるリスクの一つにアパート融資を挙げた。昨年12月に実態把握に向けて融資残高を伸ばしている12の地方銀行を抽出し、詳細な契約内容の提出を求めた。
借り手には相続対策が必要な富裕層が多いこともあり、返済不能になっても担保の土地を没収すれば銀行の懐は痛まない。ただ人口が減り続けている地方都市で担保価値は長い目でみて当然、目減りしていくはずだ。調査では給与から返済している事例も見つかった。金融庁幹部は「担保を取っているから安全という問題ではない」と過度な融資増に警鐘を鳴らす。
 ある銀行幹部は「アパート融資の一部は流動化し投資家に売られている」とも明かす。複雑な証券化商品などが増えればリスクの芽は膨らむ。08年に破裂した米サブプライムローン問題も潜伏期間では誰も疑問を持たず危機は静かに進行した。需要と釣り合わないアパート融資急増のひずみは着実に増している。(小野沢健一、亀井勝司)

不動産融資 最高に 16年、新規に12.2兆円  節税アパート・REIT拡大
----日銀が9日発表した「貸出先別貸出金」によると、2016年の金融機関による不動産融資は前年を15.2%上回る12兆2806億円だった。統計を遡れる1977年以来で過去最高だ。地価上昇で不動産投資信託(REIT)向け融資などが増えた。「バブル」といえるような状況にはないものの、節税を目指したアパートの過剰建設などひずみも広がる。金融庁や日銀は少し警戒のレベルを引き上げている。

不動産投資リスク置き去りの活況 空室増え延滞懸念
----超低金利と巨額の緩和マネーに刺激されて不動産取引が活気づき、融資が伸びたのは経済活動が上向いたことの裏返しだ。ただ地銀などの融資がアパートを含む不動産向けに偏重し過ぎると財務の健全性を損なうリスクもあり、金融当局には不安の種になっている。
(日本経済新聞)




以下引用

日本経済新聞 2017/3/26 1:41
アパート融資、異形の膨張 16年3.7兆円
新税制で過熱
 金融機関による2016年の不動産向け融資が12兆円超と過去最高を記録した。背景の一つが相続対策のアパート建設だ。人口減社会には似つかわしくないミニバブル。まだ局所的とはいえ体力の弱い地域金融機関が主役だけに金融庁や金融界からも不安の声が上がる。米リーマン危機を引き起こしたサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の「日本版にもなりかねない」(大手銀行首脳)。
 近鉄名古屋線、津駅から車で10分ほど。海岸に近い中河原地区を中心にアパートが急に増え始めたのは6年ほど前だ。すぐ数軒が目についた。「入居者募集中」。1キロ平方メートルほどの地区に数十軒以上が密集するアパート銀座だ。表札付きの部屋は一部で駐車場の車もまばら。徒歩圏内に駅もないこの地になぜなのか。
 「ブームだからと不動産業者があちこちに営業をかけた」。市内の男性(70)は憤る。自身も約10年前、業者の勧めで銀行から約2億円を借りて畑にアパートを建てた。近隣工場に勤務する人が入居したが、土地の安さに目を付けた業者が営業を強化しアパートが急増。入居者の争奪が起き「今はどこも空室だらけ。誰が責任を取るのか」。
 日銀によると16年の全国の不動産融資は前年から15%増の12兆2806億円で統計のある1977年以降で最高。バブル期も上回った。アパートローンも同21%増の3兆7860億円と09年の統計開始以来、最高に達した。貸家の新設着工件数も41万8543件と8年ぶり高水準だ。
 理由の一つは、15年の税制改正で相続税の課税対象が広がったことだ。アパートを建てると畑や更地などより課税時の評価額が下がるため地主らが相続税対策で一斉に建築に走った。マイナス金利で貸出先を模索する金融機関も融資に動き、東京都の郊外などにとどまらず東北や山陰といった地方部にも異様なアパートラッシュが広がった。
 埼玉県羽生市は市内の空室率が10年でほぼ倍増。下水施設などの維持管理コストが膨らむことを懸念し、15年にはアパートの建設地域を従来よりも制限する規制を出した。関西や中部圏から同じ悩みを持つ自治体の視察も相次いでいる。
 融資急増の反動も出ている。「家賃減額分を支払ってほしい」。愛知県に住む80歳代の男性は2月、不動産大手を相手取った訴訟を地裁に起こした。「10年は家賃が変わらない契約だったのに、6年後に10万円減額された」と主張している。
 男性はある契約を交わしていた。家賃徴収などを会社に一任する「サブリース」で、契約で決めた家賃を大家に払い続けるためリスクが少ないとされる。だが契約大家でつくる会によると、業績悪化などを理由に家賃を減らし、トラブルになるケースが増えている。この不動産大手は「運営環境などに基づいて判断し、協議したうえで決めている。家賃を上げることもある」と説明する。
 こんな事例は氷山の一角との声がある。融資を受ける場合、毎月の家賃収入が返済額を下回ると収支が逆ざやになり、運営を続けられなくなる恐れがある。石川県内にアパートを2棟所有していた男性(61)は家賃を1割減らされたことなどで月々の収支が悪化し14年にアパートを売却した。資産価値下落で手元には約3000万円の借金が残った。
 融資実態も不透明だ。津市内のある大家は「不動産業者の紹介で2つの都市銀行から数億円借りたが事業性などの質問はほぼなかった」と証言する。中長期の入居見込みすら確かめていない可能性がある。
 日銀統計もメガバンクや地方銀行などが対象でノンバンクは含まない。工場の敷地内にアパートを建てるケースなども含まれず実情を反映していない。中小企業が運転資金の名目で借りる「事業性融資」が実はアパート向けだったりすることもあるが、金融機関によって定義はあいまいだ。
■金融庁、リスクの把握急ぐ
 アパート融資を含む与信の集中――。金融庁は昨年まとめたリポートで金融システムの健全性に影響を及ぼしうるリスクの一つにアパート融資を挙げた。昨年12月に実態把握に向けて融資残高を伸ばしている12の地方銀行を抽出し、詳細な契約内容の提出を求めた。
 借り手には相続対策が必要な富裕層が多いこともあり、返済不能になっても担保の土地を没収すれば銀行の懐は痛まない。ただ人口が減り続けている地方都市で担保価値は長い目でみて当然、目減りしていくはずだ。調査では給与から返済している事例も見つかった。金融庁幹部は「担保を取っているから安全という問題ではない」と過度な融資増に警鐘を鳴らす。
 ある銀行幹部は「アパート融資の一部は流動化し投資家に売られている」とも明かす。複雑な証券化商品などが増えればリスクの芽は膨らむ。08年に破裂した米サブプライムローン問題も潜伏期間では誰も疑問を持たず危機は静かに進行した。需要と釣り合わないアパート融資急増のひずみは着実に増している。(小野沢健一、亀井勝司)


日本経済新聞 2017/2/10付
不動産融資 最高に 16年、新規に12.2兆円
節税アパート・REIT拡大
 日銀が9日発表した「貸出先別貸出金」によると、2016年の金融機関による不動産融資は前年を15.2%上回る12兆2806億円だった。統計を遡れる1977年以来で過去最高だ。地価上昇で不動産投資信託(REIT)向け融資などが増えた。「バブル」といえるような状況にはないものの、節税を目指したアパートの過剰建設などひずみも広がる。金融庁や日銀は少し警戒のレベルを引き上げている。
 15年の不動産業向け新規融資の伸びは6%で、16年の伸びは2倍以上になった。新規融資全体でみると16年は10.4%増の48兆3988億円と97年以来の高水準を記録し、これも4分の1を占める不動産向けが伸びの原動力になっている。
 不動産向けの貸出残高は昨年12月末で70兆3592億円と70年3月末以降で過去最高だ。477兆9094億円に上る総貸出に占める不動産の割合は15%だった。
 追い風は地価上昇だ。国土交通省によると、16年10月1日時点で高層マンションなどが集まる100カ所のうち地価上昇は82カ所で下落はゼロ。20年の東京五輪をにらんだ大規模な都市開発や訪日客増への期待から土地の先高観が台頭。海外のヘッジファンドなどによる多額のマネーを呼び込むとともに、銀行の不動産関連融資が膨らんだ。
 16年に日銀がマイナス金利政策を導入したことで、運用難の銀行にとっても値上がりが見込まれるREIT向け融資の魅力が増した。ファンドなどの運用会社に潤沢な資金が集まり、REITの時価総額は現在、約12兆円とマイナス金利を決めたときに比べ1割増えている。
 大手銀は破綻した時に返済の優先順位が低い劣後ローンと呼ばれるややリスクの高い貸し付けなども増やすなど貸出先の開拓に躍起だ。不動産向けに加え、公共事業増による建設や宿泊施設関連などの融資が軒並み伸びたのも16年の特徴だ。
 個人の不動産投資も活発だった。16年の新規貸し出しで不動産と並び増加が目立ったのは個人向けで、前年比2割近く多い17兆7119億円。一部は住宅ローン向けが押し上げたとみられる。
 6件の賃貸物件を保有する建設会社勤務の男性(45)も今年、都内に新たな投資マンションを購入する予定だ。米金利上昇などで「超低金利には持続性はなく、今のうちに購入したい」と語る。
 アパートなどの貸家建設も大きい。国交省の住宅着工統計によると、15年度は4年前よりも3割強多い38万3千戸に拡大。16年度は4~12月だけで前年同期比12%近く多い33万戸に達した。
 アパートを造ると課税する際の資産の評価額が下がり、相続税の節税効果が期待できる。もっとも「人口減社会での貸家の大幅な着工増は実需に見合わず、融資行動がいびつだ」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)と批判的な声も出ている。
 ある日銀幹部は「不動産業全体では実需の裏付けがある」としつつも、「地方都市を中心に空室が増えると不動産価格の下落につながり、経済にとってマイナスに働く」と話している。


日本経済新聞 2017/2/10付
不動産投資リスク置き去りの活況 空室増え延滞懸念
 超低金利と巨額の緩和マネーに刺激されて不動産取引が活気づき、融資が伸びたのは経済活動が上向いたことの裏返しだ。ただ地銀などの融資がアパートを含む不動産向けに偏重し過ぎると財務の健全性を損なうリスクもあり、金融当局には不安の種になっている。
 アパート融資は2015年の税制改正で相続税の課税対象が広がったのを機に急増した。それまで相続税を納める必要がなかった人も広く対象に含まれるようになったことが背景にある。
 節税目的とはいえ、人口が減るなかで過剰供給になれば、融資の返済原資である家賃収入が落ち込む。建設請負業者が一定期間、家賃保証するのが一般的だが、空室率に応じて保証額が下がる契約になっている場合も多い。
 速いテンポで供給が増え続ければ、返済負担に苦しむ個人が増える恐れがある。「節税効果以上に融資の返済負担が重くなるような本末転倒のケースも増えかねない」(金融庁幹部)
 貸し出し競争の激化でノンバンクなどが審査基準を大幅に緩めているといった問題を指摘する声もあった。金融庁は将来、過疎などで空室が増え、返済が滞るリスクなどを銀行が適切に借り手に伝えているかも調べる。
 もっともアパート経営を始めるのは一定規模の土地を所有している人が多く、銀行側からみればその土地を担保にした融資の貸し倒れリスクは小さい。日銀の黒田東彦総裁が昨年12月の記者会見で「金融機関のリスク管理上の悪影響が懸念される状況にはなっていない」と話したのはそのためだ。
 金融庁幹部は「東京では不動産向けといっても千代田・中央・港の都心3区とそれ以外で状況は異なる」と指摘。全国で地価が高騰したバブル期とは様相が異なるとみる。


日本経済新聞 2016/12/14付
アパート融資 過熱警戒  金融庁、節税効果など調査 空室リスクに警鐘
 相続税の節税目的でアパート経営に乗り出すケースが増えている。部屋の借り手が見つかれば問題ないが、首都圏や人口減の地方で空室が増える兆しが浮かんできた。地方銀行などによる関連ローンの残高も急増していることから、金融庁は融資の過熱感を懸念。節税効果が薄まり、アパート経営者の負担が増える恐れもあるため、近く金融機関を通じた実態調査に入る。
 アパートローン急増の背景には2015年の税制改正で相続税の課税対象が広がったことがある。相続財産から控除できる金額が縮小。これまで相続税を納める必要がなかった人も対象になる見込みで、税金を安くするために借金をしてアパート経営に乗り出す人が増えている。
 金融庁は地方銀行105行を対象とし、特にアパートローンを伸ばす銀行などを抽出して年明けにも実施する。お金を借りる側に不利益な条件になっていないか調べる。
 金融庁は金融機関に節税効果をうたった事業者らの提案書を提出させて、1件ごとに節税につながるかどうかを点検する。実際に相続が発生するときに、アパートの資産価値がローン残高を上回っているような場合など、納税額が増えて結局は節税につながらないケースも出てくるとみて警戒を強めている。
 アパート経営では、一般的に建設請負業者が一定期間の家賃収入を保証する契約になっている。ただ空室率に応じて2年ごとに保証額を切り下げるなど、思わぬ形で大家の負担が増えるケースがある。修繕費を負担する必要があることを十分に認識せずにアパート経営を始める人もいる。
 節税効果が疑わしかったり、アパート経営の収支が赤字だったりする事例が多ければ、金融機関に検査・監督で問題点を指摘し、是正を促す。将来的な貸し倒れリスクが銀行の財務の健全性に与える影響という観点ではなく、ローンを借りている個人(施主)の実態把握に力点をおいて調べる方針だ。
アパートローンとは
 ▼アパートローン 土地を所有する個人を対象に建設資金を融資する商品。借り主は家賃収入をローンの返済に充てる。典型的なのは2階建て4部屋で建設費用が4千万円程度のアパートという。建設請負業者が建設や入居者の募集を担い、資金を銀行が融資する。
 日銀によると9月末の国内銀行の同ローン残高は約22兆円で前年同月比4%増えた。10月の住宅着工戸数も貸家は22%増と12カ月連続で増加し、2008年以来、8年ぶりの高水準になっている。

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