2017-04-05(Wed)

震災農地復旧で談合疑い 公取委

ゼネコン十数社立ち入り  「おたく取る?」農水省OB結託か 

震災農地復旧談合疑い 公取委、ゼネコン十数社立ち入り
----農林水産省東北農政局が発注した東日本大震災復旧事業の入札で談合をした疑いが強まったとして、公正取引委員会は4日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、ゼネコン十数社に立ち入り検査した。
対象は大林組、鹿島、前田建設工業、フジタ、東急建設、青木あすなろ建設、飛島建設、りんかい日産建設(いずれも東京)など。
 
関係者によると、各社は東北農政局が発注した宮城県内などの水路や農地、農道の復旧工事入札を巡り、事前の話し合いで落札業者を決めていた疑いがある。
(日本経済新聞)


◇「おたく取る?」農水省OB結託か 復興事業の談合疑惑
■東北に脈々、談合体質断てるか
----朝日新聞が企画連載「震災特需の深層」で問題視した東北農政局をめぐる事業の受発注と天下りの関係は、公取委談合の疑いで各社に立ち入り検査する事態に発展した。
 
東北地方の公共工事をめぐる談合の歴史は古い。仙台市を拠点に大手ゼネコン「鹿島」東北支店幹部を仕切り役とするゼネコン談合組織がかつて存在した。1993年に当時の宮城県知事や仙台市長が逮捕されたゼネコン汚職事件では、背景にこの談合組織があった。その後、福島県知事をめぐる汚職事件が摘発された2006年ごろ、談合組織は事実上、壊滅した。
 
しかし、ゼネコン関係者らの証言では、東北農政局発注の工事では大手以外のゼネコンを中心に談合がひそかに続けられていたとされる。この談合は、各社に天下りした農水省OBが調整していた疑いが浮かんでいる。
 
農水省から工事を受注するゼネコンなどへの天下りは、震災前後を通じて脈々と続いてきた。ある会社の幹部は「受注のための営業活動にOBが欠かせない」と口にする。天下りの継続が談合体質を断ち切れなかったことにつながっている可能性もあり、全体の構図を明らかにする必要がある。
(朝日新聞)





以下引用

朝日新聞 2017年4月5日05時00分
「おたく取る?」農水省OB結託か 復興事業の談合疑惑
 農林水産省東北農政局発注の震災復興事業などで談合が繰り返されていた疑いがあるとして、公正取引委員会が立ち入り検査に踏み切った。受注各社に天下りした農水省OBが談合に関与した疑いがあるという。あるゼネコン幹部は「OB同士は固い絆で結ばれている。そのネットワークで連絡を取り合っている」と口にする。
 仙台市中心部。東北農政局から北に200メートルのビルの一室にも4日、公取委の担当者が立ち入った。郵便受けには「東北土地改良建設協会・北杜会」とある。
 関係者によると、同協会はゼネコン各社が加盟する業界団体で、北杜会は東北農政局のOBたち約200人の親睦団体。同協会のなかに北杜会が間借りしている形で、北杜会のスペースにはテレビと囲碁が置かれ、日中は複数のOBが集っているという。
 「かつて農政局発注工事の希望を伝えるため、うちに天下っているOBと一緒に北杜会に行ったことがある」。ゼネコン東北支店幹部が明かした。
 この幹部らによると、震災前の2008年ごろまでは天下りOBらが中心となった調整会議が開かれていたが、震災後は携帯電話などで連絡をとり、「おたくはあそこ取る?」「うちはいきたい」といったやりとりを交わしているとされる。中心的な役割を担う数社の天下りOBが仙台市内で会合を開く程度で、調整行為は以前より見えにくくなっているという。
 ただ、その結束は固いとされ、天下りOBを受け入れていない建設会社の役員はこう語る。「OBがいる会社が受注するような比較的規模が大きい工事には入れない。やろうとしてもOBの調整ではじき出される」。別の会社幹部は「OB同士、外部に秘密がもれないようにしている。何かあれば、たちどころに連絡がまわる」と話した。
 農政局側からの情報収集も、天下りOBの重要な仕事だという。農水省発注事業を全国で請け負っている会社の幹部が説明する。「今後発注される工事の概要に加え、どのような技術的な問題が生じうるかを農政局の後輩職員から得る。これはOBがいないと出来ない仕事だ」
 朝日新聞の取材に、東北土地改良建設協会は「特にコメントはありません」、北杜会は「なぜ談合の疑いが持たれるのかわからない」とそれぞれ回答した。(矢島大輔、木原貴之)
■東北に脈々、談合体質断てるか
 朝日新聞が企画連載「震災特需の深層」で問題視した東北農政局をめぐる事業の受発注と天下りの関係は、公取委談合の疑いで各社に立ち入り検査する事態に発展した。
 東北地方の公共工事をめぐる談合の歴史は古い。仙台市を拠点に大手ゼネコン「鹿島」東北支店幹部を仕切り役とするゼネコン談合組織がかつて存在した。1993年に当時の宮城県知事や仙台市長が逮捕されたゼネコン汚職事件では、背景にこの談合組織があった。その後、福島県知事をめぐる汚職事件が摘発された2006年ごろ、談合組織は事実上、壊滅した。
 しかし、ゼネコン関係者らの証言では、東北農政局発注の工事では大手以外のゼネコンを中心に談合がひそかに続けられていたとされる。この談合は、各社に天下りした農水省OBが調整していた疑いが浮かんでいる。
 農水省から工事を受注するゼネコンなどへの天下りは、震災前後を通じて脈々と続いてきた。ある会社の幹部は「受注のための営業活動にOBが欠かせない」と口にする。天下りの継続が談合体質を断ち切れなかったことにつながっている可能性もあり、全体の構図を明らかにする必要がある。(編集委員・市田隆)


朝日新聞 2017年4月5日05時00分
天下り農水OB、受注調整か 談合疑いで公取委立ち入り
東北農政局発注事業をめぐる談合疑惑事件の構図
 農林水産省東北農政局が発注した東日本大震災復興事業などの入札で談合をしていた疑いがあるとして、公正取引委員会は4日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、ゼネコン18社の東北支店や本社などに立ち入り検査をした。農水省からゼネコンに天下りしたOBが中心となり、事前に受注を調整していた疑いがあるという。
 立ち入り検査を受けたのは、フジタ、りんかい日産建設、青木あすなろ建設、飛島建設(いずれも東京)などの18社。各社が加盟する仙台市内の業界団体「東北土地改良建設協会」にも入った。同協会内には、東北農政局OBの親睦団体「北杜(ほくと)会」も置かれている。
 関係者によると、各社は同農政局が発注した東日本大震災の復旧・復興事業を中心とした農業土木工事で、事前に決めた業者が落札できるよう談合していた疑いがある。検査の対象となった主な震災関連事業は総額約500億円にのぼるという。
 受注調整は、農水省や同農政局からゼネコン各社に天下りしたOBが中心になっていたとみられている。立ち入り検査を受けた会社の多くにこうした農水省OBが在籍し、日ごろから情報交換を繰り返していたとされる。
 東日本大震災で、東北地方沿岸部の農地は広範囲で津波の被害に遭った。東北農政局は、被災の対応に追われた現地の自治体に代わって一部の復旧事業を直轄で実施。仙台市沿岸部の「仙台東地区」では、約2千ヘクタールの農地でがれき撤去や除塩などの復旧事業に加え、区画を大規模化する整備も行った。
 これらの事業は当初、入札参加業者が集まらずに「不落」が続いたが、農地以外の復旧事業が落ち着いてからは参加業者が増えたという。
 朝日新聞は先月、企画連載「震災特需の深層」で、仙台東地区の事業を受注した多くの企業が農水省OBを受け入れている実態を明らかにした。各社の天下りOBが受注に深く関わっていることも示したが、同事業も立ち入り検査の対象に含まれている。
 震災復旧・復興事業をめぐっては、公取委は昨年2月、東北地方の高速道路の復旧工事の入札談合事件で道路舗装会社10社を刑事告発した。今年2月には、被災した宮城、福島両県の市や町などが発注した園芸ハウス建設をめぐる入札談合事件で、農業設備大手5社に計6億円の課徴金納付命令を出している。
 朝日新聞の取材に、フジタ、りんかい日産建設、青木あすなろ建設、飛島建設は「検査に全面的に協力する」などと回答した。(矢島大輔)


時事通信 (2017/04/04-20:06)
農地の震災復旧で談合疑い=東北農政局発注工事-ゼネコン十数社立ち入り・公取委
 農林水産省東北農政局が発注した東日本大震災の復旧工事などをめぐり、談合した疑いが強まったとして、公正取引委員会は4日、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、鹿島建設(東京都)や大林組(同)などゼネコン十数社を立ち入り検査した。
 ほかに立ち入り検査を受けたのは、前田建設工業や東急建設、飛島建設、フジタ、青木あすなろ建設、りんかい日産建設(いずれも東京)など。
 関係者によると、各社は東日本大震災で被災した農地や水路を復旧する土木工事などをめぐり、事前に受注予定者を決めるなどしていた疑いが持たれている。
 東北農政局の資料によると、同局管内では青森、岩手、宮城、福島の4県で2万ヘクタール超の農地が津波被害を受けた。被害の大きい宮城など3県では、農業以外に転用された土地を除き昨年11月時点で83%の農地が、がれき撤去や塩分除去作業を終え、農業再開が可能となった。
 農業分野での震災復旧・復興をめぐっては、農業用ハウスの復興工事で談合を繰り返したとして、公取委は今年2月、メーカー5社に課徴金納付を命じた。
 また、被災した高速道路の復旧をめぐり、東北、関東地方でそれぞれ談合を摘発している。
 鹿島建設、大林組、フジタなどは「検査には全面的に協力する」とコメントした。


毎日新聞2017年4月4日 14時22分
公取委:鹿島など立ち入り 震災復旧で談合疑い
 農林水産省東北農政局が発注した東日本大震災による津波被害の復旧事業を巡り、受注調整をしていた疑いが強まったとして、公正取引委員会は4日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で鹿島(東京都港区)など大手・中堅ゼネコン複数社の東北支店などに立ち入り検査に入った。関係者から事情を聴いて実態を解明する。
 関係者によると、複数社は数年前から、東日本大震災の被害に遭った宮城・福島両県での復旧事業の入札で、事前に調整して受注業者を決めていた疑いがある。
 農地や排水路の復旧のほか、区画整理事業など多岐にわたる事業で、受注調整をしていた疑いが持たれているという。
 鹿島の広報室は「立ち入り検査には全面的に協力してまいります」とコメントした。
 東北農政局によると、東日本大震災による宮城、福島、岩手の3県の農林水産関係の被害額は2兆円超で、農地の流出・冠水面積は約2万ヘクタール。うち約7割が宮城県だった。
 東北農政局発注の復旧工事を巡っては、宮城県亘理町での工事で、入札情報を漏らした見返りに飲食や宿泊の接待を受けたとして、山形県警が昨年11月、同局に勤務していた職員を加重収賄の疑いで、落札業者を贈賄容疑で逮捕している。【高木香奈】


日本経済新聞 2017/4/4 22:13
震災農地復旧で談合疑い 公取委、ゼネコン十数社立ち入り
 農林水産省東北農政局が発注した東日本大震災の復旧事業の入札で談合をした疑いが強まったとして、公正取引委員会は4日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、ゼネコン十数社に立ち入り検査した。
 対象は大林組、鹿島、前田建設工業、フジタ、東急建設、青木あすなろ建設、飛島建設、りんかい日産建設(いずれも東京)など。
 関係者によると、各社は東北農政局が発注した宮城県内などの水路や農地、農道の復旧工事入札を巡り、事前の話し合いで落札業者を決めていた疑いがある。
 東日本大震災では被災自治体だけでなく、国も直轄で復旧事業を実施している。同農政局は宮城県を中心に約10カ所で実施。このうち規模が大きい仙台市東部の事業は約1800ヘクタールが対象で、総事業費は約884億円。事業の7割が完了している。
 震災復旧を巡っては、公取委は昨年2月、高速道路舗装工事の入札談合事件で、10社を独禁法違反で刑事告発。今年2月には被災自治体が発注した農業用ビニールハウスの入札談合事件で、5社に課徴金計約6億円の納付を命じた。
 各社は「検査に協力していく」としている。

朝日新聞 2017年4月4日13時30分
被災地復興事業で談合か 18社に公取委立ち入り
津波の被害に遭った仙台市東部の農地の復旧事業。この事業も公取委の検査の対象になっている=2月22日午前、仙台市若林区、朝日新聞社ヘリから、福留庸友撮影
 農林水産省東北農政局が発注した農業土木工事の入札で談合をしていた疑いがあるとして、公正取引委員会は4日午前、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、ゼネコン18社の東北支店や本社などに立ち入り検査を始めた。東日本大震災の復旧事業を中心に、事前に受注を調整していた疑いがあるという。
 立ち入り検査を受けたのは、フジタ、りんかい日産建設、青木あすなろ建設、飛島建設(いずれも東京)など。
 関係者によると、各社は同農政局が発注した農業土木工事で連絡を取り合い、事前に落札業者を調整して、決めた業者が落札できるよう談合していた疑いがあるという。検査の対象となった業者は主に、東日本大震災後に同農政局が発注した総額約500億円の国直轄の復旧工事にかかわっていたという。
 農地の区画整理や排水路の整備など農業土木関連工事は地方自治体も担うが、大規模なものは国が発注して事業を進める。また、東日本大震災後は特例法などにより、被災の対応に追われた現地の自治体に代わって国が直轄で一部の復旧事業を行ってきた。
 朝日新聞は先月、企画連載「震災特需の深層」で、東北農政局発注の震災復旧事業を受注する多くの会社が農水省OBの天下りを受け入れている実態を明らかにした。各社の天下りOBが受注に深く関わっていることも示したが、この事業も立ち入り検査の対象に含まれている。
 震災復旧・復興事業をめぐっては、公取委は昨年2月、東北地方の高速道路の復旧工事の入札談合事件で道路舗装会社10社を刑事告発した。今年2月には、被災した宮城、福島両県の市や町などが発注した園芸ハウス建設をめぐる入札談合事件で、農業設備大手5社に計6億円の課徴金納付命令を出している。
 朝日新聞の取材に対し、飛島建設は「詳細について確認中」、フジタ、青木あすなろ建設は「調査に全面的に協力する」などと回答した。(矢島大輔)

産経ニュース 2017.4.4 16:12
ゼネコン十数社に立ち入り検査、震災復興事業で談合疑い 公取委
 東日本大震災の復興事業として農林水産省東北農政局が発注した土木工事の入札で談合を繰り返していた疑いが強まり、公正取引委員会は4日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、飛島建設(東京)などゼネコン十数社を立ち入り検査した。
 立ち入り検査が入ったのは飛島建設のほか、フジタ、青木あすなろ建設(いずれも東京)などの本社や東北支店。
 関係者によると、各社は農水省東北農政局が発注した土木工事で、事前に話し合いで決めた業者が落札できるよう談合していた疑いが持たれている。
 公取委が検査対象としている工事の内容は、東日本大震災の津波で、被害を受けた農地の除塩や水路を整備するものとみられる。
 震災復興事業をめぐっては、損傷した東北地方の高速道路の復旧工事で談合を繰り返していたとして、公取は昨年2月、道路舗装会社10社と各社の営業担当幹部ら11人を刑事告発した。
 産経新聞の取材に、飛島建設は「立ち入り検査が入ったのは事実。詳細は確認中」、青木あすなろ建設は「調査については全面的に協力していく」とコメントした。

読売新聞 2017年04月04日 14時34分
震災農地復旧で談合か、ゼネコンに公取立ち入り
 東日本大震災で被災した農地の復旧を巡り、農林水産省東北農政局が発注した工事で談合した疑いが強まったとして、公正取引委員会は4日午前、鹿島建設(東京)と大林組(同)などゼネコン十数社を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査した。
 立ち入り先は、各社の本社や東北支店など約20か所に上り、公取委は資料を分析し、全容解明を進める。
 他に立ち入りを受けたのは、フジタ、飛島建設、青木あすなろ建設(同)など。関係者によると、各社は同局が発注した、東日本大震災後の復旧に向けた農業土木工事などで、事前に受注予定者や落札額を決めるなどした疑いが持たれている。
 談合の疑いがある同局発注の「仙台東災害復旧関連区画整理事業」では、2013年12月~16年3月に計20件の工事の入札が行われたが、入札執行調書によると、平均の落札率は94%と高水準だった。
 大林組と飛島建設は「詳細な事実関係を確認中」、鹿島建設、フジタと青木あすなろ建設は「調査には全面的に協力したい」とそれぞれコメントしている。



朝日新聞 2017年3月19日08時06分
農地復旧の受注、天下りの影 「営業活動にOB不可欠」
「災害復旧事業」の実施地域
 東日本大震災の津波は、東北から関東にかけて2万ヘクタール超の農地に被害をもたらした。こうした農地の復旧事業には、農林水産省発注のものがある。
 「農水省から天下りを定期的に受け入れる仕組みがいまもある。農水省のOBが『受け入れるかどうか』を会社に打診してくる」
 農地復旧事業の取材を進めていた昨年、農水省発注の事業を全国で請け負っている会社の幹部が口にした。
 幹部は「受け入れを打診するOBとの交渉を担当している」と言った。彼が説明した仕組みはこうだ。
 仲介役のOBは複数いて、キャリア(幹部候補職員)とノンキャリアではルートが違う。受け入れの打診は再就職を望む職員が退職した後にある。年収はキャリアだと通常は900万円までだが、地方局長などだと1千万円以上になる。こうして就職したキャリアの天下りOBが退職すると、次の打診があり、また受け入れる。
 「かつては農水省側からもっと露骨に受け入れ人数の割り当てがあって、断ることができなかった。いまは希望も言えるようになった」と幹部は振り返った。
 事業受注会社の多くが天下りOBを受け入れている。なぜなのか。「農水省工事を受注する営業活動に天下りOBが欠かせないからだ」。幹部の答えは明快だった。別の受け入れ会社関係者もほぼ同様に語る。
 「農地復旧事業でも、うちの天下りOBに聞けば、ライバル社がどの工事を取るのかもわかる」と幹部は明かした。
 農業土木予算は削減が続き、工事受注のうまみは徐々に減っていたが、東日本大震災を契機に東北農政局の発注事業はふたたび増えた。
 仙台市沿岸部で続く事業について、集中的に取材を続けた。すると、各社に天下りしているOBが工事受注のために「活躍」しているとの証言を複数得た。
■「うちがとる。農政局も知っている」
 その事業は「仙台東地区災害復旧事業」と言う。
 東京ドームが約430個入る広さ。仙台平野沿岸部の約2千ヘクタールの土地で、東日本大震災の津波被害を受けた農地を復旧し、区画を大規模化する工事が2011年から続いている。2月中旬に訪れると、点在する現場にゼネコン各社の事務所が設けられ、水田の土を掘り起こす重機に乗った作業員たちの姿が見られた。
 発注者は農林水産省東北農政局。既に周辺地区を含め約386億円(11~15年度)の国費が投じられ、17年度まで工事が続けられる予定だ。15年度末までの競争入札での発注件数は140件以上に上り、農地や排水路の復旧や区画整理事業など多岐にわたる。受注した会社の数はゼネコンや測量・設計会社など50社以上にのぼる。会社側の話を総合すると、このうち20社以上が農水省からの天下りOBを受け入れている。
 ある工事関係者は昨年秋、翌年度発注予定の区画整理事業の受注を目指し、ゼネコンの天下りOBと打ち合わせしていた際に驚くことがあったと打ち明けた。途中、工事の内容で分からない点があった。するとOBが農政局職員に電話。まもなく職員が説明にきたという。
 このOBは15年度発注の区画整理事業で、入札の前に「うちがとることを農政局も知っている」と口にしたという。実際、OBが在籍するゼネコンが100%に近い落札率(予定価格に対する落札額の割合)で事業を受注した。
 別の会社幹部も同じような場面に遭遇したと証言する。15年度発注の2件の工事で、ゼネコン2社の幹部がそれぞれ入札前に自社の落札を明言。そのとおりの結果になり、ともに落札率は90%を超えた。落札後に会った際、「OBを通じて事前に農政局にも話をしていた」と打ち明けられたという。この2社には天下りOBが在籍している。
 東北農政局における「天下り」と「工事受注」の関わり。実は震災前から長い歴史があるのだという。仙台市内で会ったゼネコン東北支店の幹部は「自ら関わった」として口を開いた。
 「かつては『天の声』もあった。複数の会社の希望が重なってもめた際、幹事役の天下りOBが農政局幹部に意向を聞きにいき、その後、『お上の意向』として落札する会社名が各社に伝えられた」
 記者は、複数の東北農政局関係者にも取材を試みたが、震災前後の天下りと工事受注の因果関係を否定した。そうしたなかで今冬、同農政局で幹部を務めた人物が取材に応じた。
 「震災前、農政局から『天の声』が出ていたことは否定しない」と認め、「OBを受け入れた会社だけとは限らないが、それが中心になってしまう、ということはある」と語った。
 震災後については、「OB同士がどこの工事をとるかで相談することも仕方がない状況だった」「それを積極的に了承していたわけではないが、仕方がない状況だった」と繰り返し強調した。確かに震災直後は資材の高騰や人手不足が深刻化して入札不調が続いた。だが、今では福島県の除染事業を終えた会社などの間で参入希望が多くなっているという。
 なにより、天下りOBが工事受注に関わることをどう考えるか。「(再就職のあっせんを)直接はやっていない。だれがやっているか分からない」。記者が繰り返し尋ねても、この話題だけはほとんど語らなかった。(市田隆、阿久津篤史、木原貴之、矢島大輔)
■東北農政局「承知していない」
 朝日新聞の取材に東北農政局は、農水省OBらによる企業側への天下り打診と、震災前に発注事業で「天の声」を出していたことなど企業側との関係について「そのような事実は承知していない」と書面で回答。農水省秘書課も、OBによる打診について「承知していない」としている。
■不正生まれやすい構図
 東北農政局が発注する震災復旧事業の取材を重ねると、事業の受注者側に農水省OBの天下りが続いている実態に突き当たった。
 天下りにおける農水省の現役職員の関与は判明していない。だが、OBが仲介役となるやり方は、組織的な天下りあっせんが問題となった文部科学省の例とも共通している。文科省では天下りと行政執行との関わりが明らかになっていないが、東北農政局の震災復旧事業では、天下りしたOBが受注を目指す事業に絡んで農政局側と連絡を取っていたとの証言もあり、より解明が必要とも言える。
 農水省と受注会社の関係は、震災後の事業特需で突然発生したものではない。今回の取材で官業双方の関係者が、2008年ごろまでは官側が落札業者を指名する「天の声」まで出し、天下りOBが業者間の調整をしていたと証言した。
 過去に発覚した天下り問題では、談合や不適切な発注など天下りを通じた官民の癒着が行政のゆがみにつながっている。06年に幹部ら3人が逮捕された旧防衛施設庁の事件では天下り先の確保が官製談合の目的だった。国土交通省でも天下りOBが関与した談合事件が何度も摘発されている。
 天下りと公共事業の受発注が接近すると不正が生まれやすいことは、歴史が物語っている。(編集委員・市田隆)
     ◇
 〈東日本大震災による農業被害〉 地震や津波による被害額は約9千億円にのぼる。国は13カ所の農地、農業用施設で直轄災害復旧事業を実施し、このうち仙台東地区では同時に除塩や区画整理事業も国が一貫して進めている。津波被災農地のうち、営農再開が可能な面積の割合は今年1月時点で83%(転用されたものを除く)。


朝日新聞 2017年2月11日05時10分
発注請け負い公社が情報漏らす 震災復旧工事の入札談合
震災復興事業での発注情報漏洩の構図



 東日本大震災で被災した園芸ハウスの復旧工事の入札談合事件に絡み、宮城県亘理(わたり)町から工事の発注業務を請け負った「宮城県農業公社」(現みやぎ農業振興公社)が、入札前に積算価格を業者側に漏らしていたことがわかった。こうした外部委託は震災直後に多用されたが、発注者の情報漏洩(ろうえい)を処罰する官製談合防止法では立件が困難で、法の抜け穴となっている。
 関係者によると、亘理町は津波で被災したイチゴ用の園芸ハウスを復旧するため、2012年8月に総額約74億円で計5件の建設工事の入札を実施。少なくともこの一部の入札で、町から設計や積算などの業務を請け負った同公社の担当者が、入札予定価格の算出根拠となる積算価格を業者側に伝えたという。
 これらの工事費は、全額が復興交付金などの国費でまかなわれた。公正取引委員会は、亘理町を含め、12~15年に宮城、福島両県内の市や町などが発注した計19件、総額100億円超の園芸ハウスの復旧工事入札で談合があったと認定。入札に参加した農業設備大手各社に、独占禁止法違反で計約6億円の課徴金納付命令を出す方針を通知している。各社を調べる過程で、同公社から情報が漏れていたことが発覚したとみられる。
■法の抜け穴、立件は困難
 公共工事で市町村などの発注者側が情報を漏らして談合を助ければ、官製談合防止法違反に問われる。2013年に発覚した北陸新幹線の設備工事をめぐる談合事件では、予定価格を漏らしたとして独立行政法人「鉄道・運輸機構」の当時の幹部が同法違反で立件された。
 関係者によると、公正取引委員会は今回のケースも「談合を助長する行為」と問題視し、情報を漏らした宮城県農業公社(当時)側を同法違反に問えるか検討した。だが、あくまでも入札の当事者は宮城県亘理町で、公社は発注業務の支援にとどまるため、適用できないと判断した模様だ。
 災害で被災した市町村などが、復旧事業の発注業務を外部に委託するケースは多いという。亘理町の担当者も「当時は被災者支援や復旧工事に追われて手が回らず、園芸ハウスの工事発注を公社に委託した」と話す。公社への委託数は10年度の3件から、震災後の11年度は10件、12年度は11件と急増した。
 こうした発注業務の請け負い先として、国などは公共性の高い団体を認定している。東北農政局と東北地方の各県で構成する協議会は現在、同公社を含めて9団体を認定。守秘義務などに違反した場合、認定取り消しなどの規定がある。(矢島大輔、木原貴之)
■「なれ合いになってしまった」
 みやぎ農業振興公社の責任者は、取材に対して次のように説明した。
 ――なぜ積算価格を業者に伝えたのか
 後ろ(完成時期)が決まっていて待ったなしだった。亘理町のイチゴは復興のシンボル。仮設住宅などに住む被災農家に早く明るい話題を届けたい、働く場所を確保したいという使命感とプレッシャーがあった。
 ――どういう経緯で伝えることになったのか
 設計や積算の期間が短く、業者と接触する機会が多かった。しょっちゅう電話をしたり会ったりしているなかで、なれ合いになってしまった。
 ――談合を誘発したのではないか
 復興事業とはいえ、秘密をもらすのはありえなかった。職員の研修を実施するなどコンプライアンスを強化している。

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