2017-05-21(Sun)

「共謀罪」採決強行 国民置き去りの強行だ

こんな法案を強行とは  国民の不安を軽んじている  監視社会招く懸念拭えない 懸念は残されたままだ

<各紙社説・主張>
朝日新聞)「共謀罪」採決 国民置き去りの強行だ(5/20)
毎日新聞)「共謀罪」法案委員会で可決 懸念残しての強行劇だ(5/20)
東京新聞)「共謀罪」採決 懸念は残されたままだ(5/20)
しんぶん赤旗)「共謀罪」強行採決 違憲法案を力で押し通す暴挙(5/20)

北海道新聞)「共謀罪」可決 こんな法案を強行とは(5/20)
河北新報)「共謀罪」採決強行/国民の不安を軽んじている(5/20)
信濃毎日新聞)共謀罪採決 国会が存在意義を失う(5/20)
京都新聞「共謀罪」可決  監視社会招く懸念拭えない(5/20)

神戸新聞)「共謀罪」採決/政府の強引さが目に余る(5/20)
中国新聞)「共謀罪」衆院委可決 国民の懸念、無視するな(5/20)
西日本新聞)「共謀罪」採決強行 「1強」のおごり目に余る(5/20)




以下引用



朝日新聞 2017年5月20日05時00分
(社説)「共謀罪」採決 国民置き去り強行


 「法案の内容を知らない」63%、「いまの国会で成立させる必要はない」64%、「政府の説明は十分ではない」78%――。
 「共謀罪」法案をめぐる朝日新聞の最新の世論調査の結果だ。首相がその厚さを自慢する内閣支持層についてみても、回答状況は順に60%、56%、73%と同じような傾向にある。
 法案への理解がまったく進んでいないにもかかわらず、自民、公明両党はきのうの衆院法務委員会で、日本維新の会と共同で提出した修正案の採決強行した。
 国民の声に耳を傾け、施策の必要性を説明し、不安の解消に努める。政治に求められるこうした責務を投げ出し、数の力で主張を押し通す政権の体質が、ここでもあらわになった。
 委員会で本格審議が始まったのは先月19日。以来、思わずため息の出る光景が続いた。
 金田法相に代わって刑事局長が答弁を引きうける。ようやく法相の出番が来たと思ったら、後ろに控える別の役人が耳打ちする内容を、ただ繰り返す。かみ合わぬやり取りが続き、時間だけが空疎に過ぎる。
 これが、与党が一方的に採決のめどに設定した「審議時間30時間」の実態である。
 犯罪が行われなくても、計画し準備に乗りだした段階で処罰するのが法案の目的だ。捜査当局が法を恣意(しい)的に運用したり、「計画」「準備」を察知するためにゆきすぎた監視や情報収集に走ったりするのではないか。そんな懸念はぬぐえず、なお多くの疑問が残されたままだ。
 277の罪に広く共謀罪を設ける理由も判然としない。かつて同じ趣旨の共謀罪法案が国会に提出された際、自民党議員の立場で修正案づくりに携わった早川忠孝弁護士は、今回、参考人として委員会に呼ばれた。
 「一つ一つ検討すれば、さらなる絞り込みができる」と提言したが、そうした地道な作業はついに行われなかった。
 維新の意向を受けていくつかの手直しはされた。だが、いずれも問題の本質に迫るものではなく、見るべき点はない。
 むしろ維新は、捜査当局の力を高める必要があるとして通信傍受の範囲を広げるよう唱えていた。共謀罪が導入されれば、次は摘発のための手段を与えよということになると心配されたが、それを先取りする話だ。
 政府が現時点での傍受拡大を否定する答弁をしてきた手前、与党は同調を見送ったが、この3党連携は極めて危うい。
 民意を置き去りにした強引な国会運営に、強く抗議する。
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毎日新聞2017年5月20日 東京朝刊
社説:「共謀罪」法案委員会で可決 懸念残しての強行劇だ


 国会の焦点となっている「共謀罪」法案が、自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数により衆院法務委員会で可決された。
 多くの懸念を残したまま、与党は質疑終局の動議を出して審議を打ち切った。極めて乱暴な採決だ。
 国際組織犯罪防止条約を締結するために必要な法整備だと政府は説明する。条約に加われば、捜査共助や犯罪人の引き渡しなどメリットがある。確かに締結は必要だろう。
 ただし、共謀罪法案がなくても条約の締結ができると民進党や共産党など野党は主張する。政府・与党との溝は埋まっていない。審議を尽くすのが言論の府の姿のはずだ。
 「共謀罪」法案は、277もの犯罪について、計画・準備段階での処罰を可能とするものだ。対象は組織的犯罪集団に限定される。とはいえ、一般人が警察の捜査対象となり、監視社会に道を開くことへの懸念は依然残っている。
 実行後の犯罪を罰する日本の刑事法制の基本を大きく変える法改正でもある。捜査権の乱用による副作用は見過ごせない。
 仮に「共謀罪」法案が必要だとしても、不安を最小化するかたちでの法整備が求められるはずだ。
 そのため、対象犯罪を大幅に絞り込むことと捜査権乱用の歯止め策を法案に具体的に書き込むことの二つが必要だと私たちは主張してきた。
 中でも対象犯罪のさらなる限定は不可欠だ。政府は、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定される罪を選択したと説明する。だが、組織犯罪との関連性が明らかに薄い犯罪が含まれている。政府が前面に押し出したテロ対策とも無縁と思える犯罪も少なくない。
 可決された与党と日本維新の会の修正案は、対象犯罪の絞り込みには手を付けず、微修正にとどまった。まったく不十分な内容だ。
 金田勝年法相は、ペーパーを棒読みしたり、担当局長の発言を繰り返したりするなど不安定な答弁ぶりが目立った。不信任決議案は否決されたが、適格性には疑問符がつく。
 まだまだ議論は足りない。衆院を通過したとしても、参院ではいったん立ち止まり、法案の問題点を洗い直すべきだ。このまま成立させることには反対する。
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東京新聞 2017年5月20日
【社説】「共謀罪」採決 懸念は残されたままだ


 組織犯罪処罰法改正案の採決が衆院法務委員会で強行された。犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を含む危うい法案だ。議論が尽くされたとは言い難く、懸念は残されたままだ。
 今国会中の成立を期す与党の強引さが目立つ審議だった。四月十四日に始まった委員会審議では一般の人は本当に対象にならないのか、法案が処罰対象の主体とする「組織的犯罪集団」の定義や「準備行為」の内容などをめぐり、曖昧さを指摘する意見が相次いだ。
 犯罪の共謀、計画段階と準備行為の段階で処罰できるようになるこの法案は、罪を犯した「既遂」後に処罰するという日本の刑事法の原則を根底から覆す。
 官憲が内心に踏み込んで処罰して、人権を著しく侵害した戦前、戦中の治安維持法のようなことにならないか、との懸念が国民の側から出てきて当然だ。
 しかし、政府側から説得力のある答えが聞かれたとは言い難い。所管する金田勝年法相の不誠実な答弁ばかりが、多くの人の印象に残ったのではないか。
 このような一般国民にも影響が出かねない重要な法案を、与党側が委員会での審議時間のめどとした三十時間を経過したからと言って、野党側の反対を振り切り、採決を強行していいわけがない。
 政府はかつて、国際組織犯罪防止条約を締結するためには「共謀罪」法案が必要だとし、対象犯罪の削減はできないとしてきたが、この法案では対象を二百七十七に絞り込んだ。過去の答弁との整合性は全く取れていない。
 また、安倍晋三首相は二〇二〇年の東京五輪開催に向けたテロ対策のために、この法案が必要だと強弁するが、そもそもこの条約はテロ対策が目的ではない。
 日本は、現行法でも十分、条約を締結できるレベルにあり、テロ対策も整えられているのに、なぜ「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法案の成立を強引に進める必要があるのか、理解に苦しむ。
 権力に批判的な市民運動を抑え込もうとの意図があるとしたら、見過ごすわけにはいかない。
 与党は二十三日の衆院通過、二十四日の参院審議入りを目指し、今国会成立を確実にするため、六月十八日までの国会会期の延長も検討されている、という。
 政府・与党に今、必要なことはこの法案を強引に成立させることではなく、内心に踏み込むような法整備を断念することである。
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しんぶん赤旗 2017年5月20日(土)
主張:「共謀罪」強行採決 違憲法案を力で押し通す暴挙


 自民、公明の与党と日本維新の会が衆院法務委員会で、「内心」を処罰対象にする「共謀罪」法案の採決を強行しました。審議をすればするほど人権を侵害する危険な中身が明らかになり、国民の不安と懸念が広がって、今国会で成立させる必要がないという声は世論調査でも多数です。世論に逆らい、野党の抗議も無視して質疑を乱暴に打ち切り、数の力で押し切った自公と補完勢力の責任は極めて重大です。思想・良心の自由などを大本から脅かす憲法違反の悪法を、民主主義を破壊する強引な手法で推し進める安倍晋三政権の暴走は絶対に許されません。
刑法の大原則を覆す危険
 犯罪が起こっていない段階でも2人以上が犯罪を「計画」し、「準備」したと捜査機関が判断すれば、取り締まり、処罰の対象にする「共謀罪」法案は、日本の近代刑法体系の大原則を覆すものです。
 近代刑法は、犯罪があって具体的な被害が生じた場合に初めて処罰することを基本原則にしています。ところが「共謀罪」は、「犯罪をしようと相談しているらしい」と警察がみなせば、捜査が開始され、処罰されるというものです。対象とする罪は277にも及びます。文字通り日本の刑法体系の大転換につながる悪法です。
 政府は「対象は組織的犯罪集団」「一般人は関係ない」と繰り返しますが、そんな歯止めはまったくないことが、国会審議の中で次々と浮き彫りになっています。
 どんな団体や個人を対象にするかを決めるのは警察です。その警察はいまでも恣意(しい)的な判断によって、秘密裏に一般市民に対する尾行や盗撮などを行って、病歴・学歴を含む詳細な情報を収集する人権侵害にあたる違法捜査をしており、そのことを「通常業務の一環」などと正当化しています。
 そんな警察が、「話し合った」「準備をした」ことで捜査・処罰できる「共謀罪」を手にしたらどんな事態になるか。「犯罪を話し合った」証拠を手に入れるために、いまよりはるかに早い段階で範囲も広げた捜査を行うことを可能にします。「実行準備行為」は、ATMでお金を下ろすなどの日常行為と違いがないため、その行為の目的を捜査するとして「内心」に踏み込むことは避けられません。「話し合い」を調べるとして電話やメール、LINEなどのやりとりも常に監視される危険もあります。集会やパレードなどの参加者への不当な監視にお墨付きを与え、いっそうの強化につながりかねません。
 憲法が保障する、思想・良心の自由(19条)、集会・結社・表現の自由、通信の秘密(21条)などに根本から反する「共謀罪」法案は廃案にするしかありません。
政府追い込む世論さらに
 安倍政権が持ち出す「テロ対策」のためという口実も崩れています。法案を所管する金田勝年法相が法案をまともに説明できないことは、大臣の資質や能力の欠如と同時に、「共謀罪」法案の深刻な矛盾と破綻を示しています。
 「数の力」で強権的にしか押し通せない法案の道理のなさは明白です。世論の高まりで、当初描いていた審議日程を狂わせるなど安倍政権を追い込んでいます。「戦争する国」づくりと一体となった監視社会づくりを許さない「共謀罪」阻止の世論と運動を広げることが急務となっています。
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北海道新聞 2017/05/20 08:55
社説:「共謀罪」可決 こんな法案を強行とは


 衆院法務委員会はきのう、「共謀罪」の構成要件を変更してテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案を自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決した。
 与党が、野党の反対を押し切り採決を強行した。23日に衆院を通過させる方針だ。
 共謀罪は既遂犯罪の処罰を原則とする現行刑法体系の大転換であり、自由な言論や市民生活を脅かす危険性が拭えない。
 にもかかわらず、特定秘密保護法、安全保障法制に続きまたも数の力で押し切ろうとする安倍政権の手法は、1強のおごりがますます顕著だと言わざるを得ない。
 怒号に包まれる委員会室で採決が行われる異様な光景が、今回も繰り返された。政権の「問答無用」の姿勢を象徴していよう。
 与党は、審議時間がめどとしていた30時間を超え、議論は尽くされたとしている。
 だが、30時間は取り調べの可視化などを導入した2015年の刑事訴訟法改正案に比べて大幅に短い。審議を通じ疑問は深まり、採決の環境にはほど遠かった。
 「組織的犯罪集団」や「準備行為」の定義は、政府がいくら説明を重ねても結局は捜査当局の運用次第という印象を免れない。
 そのような状況で「一般市民は捜査の対象外」と言われても、額面通りに受け止めることができないのは当然だろう。
 金田勝年法相からは「一般人は刑事告発されても捜査対象にならない」と、捜査実務からして明らかにおかしな見解も飛び出した。
 国民の不安に正面から答えず、ひたすら「テロ対策」を錦の御旗にして理解を求める。だが、テロ対策に共謀罪が本当に必要なのかどうかという疑問にも、国民の納得のいく答弁はなかった。
 放火や強盗などの共謀罪が、実行段階に近くより危険性の高い予備罪より量刑が重いなど、法案の矛盾点も次々に明らかになった。
 そうした中、16日の参考人質疑で注目を集めた発言があった。
 「犯罪をしようとしている人の内心を立証しないといけないので、さまざまな捜査手法が導入されると予想される。捜査手法に法的規制がなされていないのに法整備は行うべきではない」
 こう述べたのは日本維新の会が推薦した成城大の指宿信(いぶすきまこと)教授である。共謀罪の導入により、捜査当局の監視の目が強まることに警鐘を鳴らした発言と受け止めたい。
 それでも賛成に回った維新の対応も理解に苦しむ。
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河北新報 2017年05月20日土曜日
社説:「共謀罪」採決強行/国民の不安を軽んじている


 何をそんなに急ぐ必要があるのか。数の力によるごり押しと言わざるを得ない。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案がきのうの衆院法務委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決された。
 審議が尽くされたとは到底認め難い。国の刑法体系を一変させ、国民の権利を脅かしかねない重要法案であるにもかかわらず、審議30時間で打ち切っての採決強行である。
 特定秘密保護法をはじめ、安保法、環太平洋連携協定(TPP)の承認、カジノ法など、賛否が割れる法案採決での与党の強権的な議事運営は目に余る。「安倍1強」のおごりの表れではないか。
 きのうの法務委でも、前日に不信任案が否決された金田勝年法相は、法案の趣旨などをおうむ返しのように読み上げる答弁が目立った。
 立法の目的、運用のあり方、国民生活への影響。どれを取っても議論は一向に深まっていない。法案の曖昧さはむしろ増している。
 最大の疑問は「一般人は捜査の対象になることはない」と金田法相ら政府側が言い張っていることだ。組織的犯罪集団と関わりがない人を「一般人」と呼び、「何らかの嫌疑が生じた段階ならその人はもはや一般人ではない」という理屈を押し通した。
 組織的犯罪集団であるかどうかや、計画に基づき犯罪の準備に入ったかを見極めるにはメンバーに対する日常的な監視が不可欠。それを容認するのがこの法案の本質だ。
 そこに捜査機関の恣意(しい)が働けば、誤認捜査や冤罪(えんざい)を生む可能性が高くなる。共同通信の直近の世論調査では、法改正によって市民運動や政治活動が「萎縮する恐れがある」との回答が51%を占めた。
 個人のプライバシーや「内心の自由」など国民が抱く人権侵害への懸念に、政府は誠実に向き合うべきだ。
 また、国民の共感を得やすい東京五輪・パラリンピックのテロ対策と法案を結びつけてきたことも問題だ。
 国際組織犯罪防止条約に加入する目的のために、新たな立法が必要になるという論法には無理がある。「現行の条約と国内法でテロには対応できる」という野党の反論と全くかみ合っていない。
 過去3度廃案になった「共謀罪」法案である。どう表紙を替えても政権側の思惑は、テロ対策とは別の所にあると思われても仕方あるまい。
 特定秘密保護法では国民を重要な情報から遠ざけ、安保法では民意に背いて集団的自衛権の行使を認めた。今度は国による監視社会の強化が進む懸念がある。
 安倍政権は一体、私たちをどこに連れて行こうとしているのか。国民が軽んじられているのではないか。参院では、人々が抱く不安に応える徹底審議が求められる。衆院と同じ轍(てつ)を踏んではならない。
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信濃毎日新聞(2017年5月20日)
社説:共謀罪採決 国会が存在意義を失う


 テロ対策という名目の下、市民の生活が恒常的に監視される社会を招き寄せてしまわないか。共謀罪の危うさは一層あらわである。
 にもかかわらず、衆院法務委員会で与党は法案の採決を強行した。是が非でも今国会で成立させようと、数の力に頼んだ乱暴なやり方だ。立法府本来の姿から懸け離れている。
 特定秘密保護法も、安全保障関連法も、与党が一方的に審議を打ち切って成立させた。民主主義や平和主義の根幹に関わる重大な法案を押し通すことにためらいがない。政府与党の姿勢を厳しく問わなければならない。
 幅広い犯罪について、共謀しただけで処罰を可能にする。合意した全ての人に網がかかる。共謀を察知するには監視が不可欠だ。
 実行行為を罰する刑法の原則を逸脱し、刑罰の枠組みを一気に広げる。公権力がプライバシーに踏み入り、内心の自由や言論・表現の自由を侵す恐れは大きい。
 何より心配なのは警察権限の歯止めない拡大だ。適用対象の「組織的犯罪集団」も、処罰の条件である「準備行為」も、当局がどうとでも判断できる余地がある。
 ただでさえ、警察による権限の乱用は相次いでいる。市民の運動を敵視する姿勢も目につく。
 岐阜では、風力発電施設に反対する住民の個人情報を集め、事業者と対策を協議していた。反原発グループの仲間と費用を分担して車を借りた人が「白タク行為」とされ、逮捕された事例もある。
 共謀罪は、市民の活動を押さえつける強力な武器となるだろう。政府の方針に異議を唱える運動が標的にされる恐れがある。
 幅広い対象犯罪のどれかに関連づけ、嫌疑さえかければ捜査できる。政府が言う「一般の人に累は及ばない」ことなどあり得ない。逮捕や起訴には至らなくても、萎縮させる効果は大きい。
 旧憲法下の治安立法によって思想・言論が弾圧された反省を踏まえ、現憲法は刑罰権の乱用を防ぐ詳細な規定を置いた。それが土台から崩れかねない。
 国会議員は全国民を代表している。そして、憲法を尊重し擁護する義務を負う。成立ありきで、違憲の疑いが拭えない法案を通すことがあってはならない。
 その責務を与党議員も再認識すべきだ。政権の意向のままに動くのでは国会の存在意義に関わる。衆院本会議、参院の審議が残っている。異論を押さえ込んで成立へ進まないよう、厳しい目を向けていかなくてはならない。
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[京都新聞 2017年05月20日掲載]
社説:「共謀罪」可決  監視社会招く懸念拭えない


 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院法務委員会で可決された。与党は民進党などの反対を押し切って採決した。
 戦前、治安維持法などによる思想弾圧が行われた反省から、人が心の中で何を考えても自由という「内心の自由」は、戦後民主主義の基本となってきた。改正案はそれを危うくしかねない。
 現行の刑法体系は犯罪行為の実行後の処罰を原則とするが、改正案は計画段階で処罰する。適用の基準が明確でなければ、捜査機関による乱用の危険がある。ところが、これまでの審議では基準の曖昧さがあらわになるばかりで、恣意(しい)的な運用や監視の強化などの恐れはむしろ強まっている。
 法案の必要性という根本的な問題さえ十分に議論されたとはいえない。共謀罪を新設する法案は過去3度国会に提出されたが「市民団体が処罰される恐れがある」などの批判で廃案になった。今回の法案も一から見直すべきだ。
 委員会審議は最初から日程ありきだった。与党は安倍晋三首相が出席するサミットなどの日程を見据え、審議時間を30時間程度としていた。これほどの重要法案にもかかわらず、審議内容より時間を優先させるのは強引にすぎる。
 与党と日本維新の会は、適正な捜査や捜査可視化の検討を明記する法案の一部修正で合意した。強行採決ではないとの印象を与えたい与党の思惑も透けるが、修正されても、審議が尽くされていないという懸念は拭えない。
 本当に新設が必要か
 「共謀罪」の新設について、政府は国際組織犯罪防止条約を締結するために必要だ、と説明してきた。条約は、国境を越える薬物や銃器の不正取引など、主にマフィアらによる経済的犯罪に対処するため設けられた。187の国・地域が締結し、未締結なのは日本など11カ国のみだ。ただ、政府は2020年の東京五輪・パラリンピックを控えたテロ対策を前面に打ち出して、国民が受け入れやすいイメージを先行させてきた。
 だが、本当に必要なのか異論がある。日弁連や法学者は、日本の法律にはすでに組織犯罪集団による犯罪を取り締まる「予備罪」があることから、共謀罪がなくても締結は可能、と指摘している。
 政府は、共謀罪を新設しなければ条約の義務を履行できないとする一方、対象犯罪は676から277に絞り込んだ。条約の規定を理由に「犯罪内容に応じて選別できない」としていた過去の答弁と異なるが、やはり条約規定に基づいて絞り込んだという。
 条約は、締結国に大きな裁量を与えているとの指摘がある。政府が共謀罪を新設するため、条約を都合よく解釈していないか、さらなる検証が不可欠だ。
 拡大解釈を許す恐れ
 対象犯罪の絞り方も不可解だ。森林法違反や刑法の墳墓発掘死体損壊など、テロとの関連が薄いものが含まれる一方、公選法や政治資金規正法などは除外された。
 中でも不安が大きいのは、適用対象の曖昧さだ。
 「共謀罪」の対象は、暴力団やテロ組織など「組織的犯罪集団」と規定され、2人以上で犯罪を計画し、少なくとも1人が資金の手配や関係場所の下見などの「準備行為」をした時、計画に合意した全員が処罰される。
 一般市民が対象になることはない、というのが政府の説明だ。
 しかし、組織的犯罪集団の認定には、犯罪の常習性や反復継続性が要件となっていないため、恣意的に解釈される余地がある。法務副大臣が「一般人も捜査対象になる。嫌疑が向けられた段階で一般人ではない」と答弁し、大臣と見解が食い違う場面もあった。
 準備行為も明確ではない。散歩や銀行で現金を下ろすなどの日常生活の場面と区別できるのだろうか。政府は「携帯品などの外形的な事情から区別されうる」と答弁するが、そう簡単ではあるまい。結局、内心に踏み込んで判断せざるをえないのではないか。
 条文に歯止めがない限り、将来的に拡大解釈される可能性があると考えるべきだ。
 捜査には裁判所のチェックがあるというが、現行制度が冤罪(えんざい)や不当逮捕を防ぎえていない事実から目をそらしてはならない。
 捜査の肥大化に懸念
 与党は採決にあたり「十分に論点を踏まえている」との認識を示したが、あまりにも無責任な態度といわざるをえない。
 治安維持法が立法時には「善良な国民」は対象にならないと説明されていたことを忘れてはなるまい。安倍首相は「戦前の旧憲法下における法制で、そういうイメージをするのは間違っている」と述べたが、果たしてそうだろうか。
 犯罪実行前に自首した場合は刑を減免する規定は「密告を奨励する」との批判がある。共謀の立証は困難と見られるため、捜査手法の拡大も懸念される。捜査の肥大化は市民を萎縮させる。
 数多い疑問が解消されないまま「共謀罪」が導入されれば、思想の自由やプライバシーを脅かす監視社会を招く恐れが大きい。将来に禍根を残してはならない。
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神戸新聞 2017/05/20
社説:「共謀罪」採決/政府の強引さが目に余る


「努力を重ね、誠実に対応してきた」。金田勝年法相の言葉がむなしく聞こえる。
 昨日、衆院の法務委員会で組織犯罪処罰法の改正案が修正可決された。犯罪を計画した段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を、新たに設ける法案である。
 採決はまたも怒号が飛び交う中で強行された。議論が深まらないまま時間を費やし、審議は尽くされたとばかりに与党が数の力で押し切る。強引と言うしかない。特定秘密保護法、安保法制、「カジノ」法…。何度、同じ場面を目にしたことか。
 「共謀罪」は犯罪行為を実行していなくても相談しただけで捜査や監視の対象となる。一般市民も含まれる可能性があることから反対の声が根強く、過去に3度、廃案になった。
 今回は適用の対象を絞ったとはいえ、対象犯罪は277もある。自由やプライバシーが制限されるという国民の懸念は変わらない。
 一般市民の活動は含まれないというのなら、不安を払拭(ふっしょく)するよう丁寧な説明に努めることが誠実な対応だろう。
 法相は「一般人が対象となることはない」と繰り返し、政府を信用しろといわんばかりである。しかし裁判所の令状が要らない任意捜査なら、警察の判断で調べることができる。
 耳を疑ったのは、花見と犯罪の下見をどう見分けるのかとの質問に対する説明だ。「酒を持っていたら花見、双眼鏡なら準備行為」。込み入った質問には刑事局長が答えたが、盛山正仁副大臣が「嫌疑があれば一般人ではない」と答えるなど、法相との食い違いもあった。
 あいまいで、捜査機関の判断でいかようにも解釈できる。危うい法案との印象が強まる。
 反対する国民も野党もテロ対策の重要性は認める。だが、なぜ「共謀罪」を盛り込まなければならないのか、納得のいく答弁は聞かれなかった。
 たとえ起訴されなくても捜査当局に監視されたり、事情を聞かれたりするだけで一般の市民は萎縮してしまい、社会全体が息苦しくなる。立ち止まって審議し直す必要がある。政府、与党は国民の不安と正面から向き合わねばならない。
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中国新聞 2017/5/20
社説:「共謀罪」衆院委可決 国民の懸念、無視するな


 国民の不安に正面から答えないまま突き進むつもりなのか。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきのう、衆院法務委員会で可決された。
 審議時間が30時間を超えたとして、与党側が反対を押し切って採決を強行した。しかし、これまで指摘された多くの問題点は残されたままだ。懸念の声を無視した暴挙といえる。
 「共謀罪」法案は過去3度も廃案になっている。捜査機関による恣意(しい)的な運用や、処罰対象が不明確で市民団体や労組のメンバーが摘発される恐れへの不安が高まったからだ。
 今回、テロ対策を前面に出して適用対象を組織的犯罪集団に限定し、現場を下見するなどの準備行為を要件とした。それでも危険な本質は変わらず、日本社会を根底から覆しかねない。
 何より気になるのは、実際に罪を犯して初めて処罰の対象となる刑事法の原則を崩すことである。計画した段階で処罰できるようになれば、内心の自由や表現の自由が軽視される事態になりかねない。一般市民も人ごとではなくなる。「監視社会」への扉を開くのではないか。
 法案の問題点は他にもある。政府は、2020年の東京五輪に向けたテロ対策のため必要だと主張している。確かに、対策が不要だと考える人はいないだろう。しかし、法案の目的を示した第1条にテロ対策の文言は見当たらない。
 国際組織犯罪防止条約の締結に法整備が不可欠だとも政府は説明するが、異論も多い。この条約は本来、マフィアなどによる経済的な犯罪の撲滅が目的で、テロとは関係ない。国連がテロ防止の条約とする10余りの条約には含まれていない。
 さらに、今の法制度でも条約締結は可能だと、日弁連などは指摘している。テロ対策という国民受けのする包装紙でごまかして、全く異なる物を買わせようとしているのではないか。そんな疑念さえ浮かんでくる。
 一般の人は処罰対象にならないのか―。委員会審議で取り上げられた論点について、政府は「ならない」と繰り返すが、説得力は乏しい。例えば、対象となる集団を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と表現しているなど、条文にあいまいさが残っているからだ。「その他」で逃げず、明確に定義しない限り、恣意的な運用への不安は消えまい。
 法案で対象とされる277の犯罪が適正かどうかも疑わしい。当初は676だったが、半分以下に減らした。それでも森林法違反や著作権侵害など組織的犯罪集団とは関係なさそうなものも含まれている。捜査の網を広げることが真の狙いではないかと勘ぐってしまう。
 逆に警察などによる職権乱用罪や暴行陵虐罪、政治家の関わる公選法や政治資金規正法違反のような罪は対象から外している。身内に甘く納得できない。
 与党は23日に衆院を通過させて、24日の参院審議入りを目指している。
 将来に禍根を残しかねない法案である。議員だけではなく、私たち一人一人もあらためて考えたい。「テロ対策」の言葉に惑わされず、条文をしっかり点検して、本当に必要なのか、この内容でいいのか、判断して声を上げるべきである。
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西日本新聞 2017年05月20日 10時43分
社説:「共謀罪」採決強行 「1強」のおごり目に余る


 議論は一向に深まっていないのに、今国会で成立させるタイムリミットがきたということなのか。徹底審議を求める野党の反対を押し切って採決が強行された。
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきのうの衆院法務委員会で採決に持ち込まれ、自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。
 市民社会を脅かしかねない法案だ。適用される「組織的犯罪集団」の定義が曖昧で一般市民が捜査対象になる恐れがある。捜査当局の監視が強まる懸念も拭えない。テロとは無関係と思われる犯罪も対象に含まれ、本当に東京五輪に向けたテロ対策か疑わしい。過去3度も廃案になった共謀罪とはどこがどう違うのか-さまざまな懸念や疑問は残ったままだ。
 法務委の審議は法案を所管する金田勝年法相の拙い答弁もあって数々の疑問に対する明解な答えを国民に示せなかった。国会の役割を果たしたとは到底言えない。
 私たちは社説で審議は費やした時間ではなく内容こそ重要だと指摘してきた。与党はきのうの審議で目標の30時間に達したから採決したという。法案の重大性に照らしてあまりにも拙速ではないか。
 共同通信社の先月の世論調査では改正案に賛成は41・6%、反対は39・4%と拮抗(きっこう)した。市民運動や政治活動が萎縮する恐れがあるとした人は51・0%だった。
 賛否が割れる法案だからこそ、政府の丁寧な説明と与野党の徹底的な論戦が求められていたはずだ。付則に取り調べの可視化などを盛り込む修正を加えたが、付け焼き刃の対応である。法案の危うい本質は何ら変わっていない。
 第2次安倍晋三政権になって、国民の知る権利を侵しかねない特定秘密保護法、憲法違反の疑いが指摘される安全保障関連法に続いて、今度は市民生活を萎縮させかねない法案の採決が衆院の委員会で強行された。「数の力」で反対論や慎重論をなぎ倒していく。「1強政治」のおごりが目に余る。
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