2017-05-24(Wed)

「共謀罪」衆院通過  「戦前」に戻してどうする

戦前の悪法を思わせる  強権で「監視社会」進める異常  社会を窒息させる懸念

<各紙社説・主張>
日本経済新聞)なお残る「共謀罪」法案の懸念 (5/24)
東京新聞)「共謀罪」衆院通過 戦前の悪法を思わせる(5/24)
しんぶん赤旗)「共謀罪」法案攻防 強権で「監視社会」進める異常(5/24)
北海道新聞)「戦前」に戻してどうする(5/24)
北海道新聞)「共謀罪」法案 監視型捜査 懸念拭えぬ(5/24)

信濃毎日新聞)共謀罪法案 社会を窒息させる懸念(5/24)
京都新聞)「共謀罪」参院へ  審議尽くす責任がある(5/24)
神戸新聞)「共謀罪」参院へ/国民の理解を得ていない(5/24)
中国新聞)「共謀罪」参院へ 議論を一からやり直せ(5/24)
西日本新聞)「共謀罪」衆院通過 「良識の府」で徹底審議を(5/24)




以下引用



日本経済新聞 2017/5/24付
社説:なお残る「共謀罪」法案の懸念


 組織犯罪処罰法の改正案が、与党などの賛成多数により衆院本会議で可決された。テロや組織犯罪を実行前の計画段階で罰するため、「共謀罪」の構成要件を改めたテロ等準備罪を新設するというのが大きな目的だ。
 この法案をめぐっては、「処罰の対象が不明確で、恣意的に運用されかねない」「思想や内心の自由を侵す」といった懸念がかねて指摘されている。衆院での審議でもこうした点はなお解消されておらず、国民が法案を理解しているとは言えないのが現状だろう。
 そのような法案が、先立つ衆院法務委員会に続き、本会議でも与党側が押し切る形で採決されたことは残念だ。参院では、政府・与党は法案の成立をいたずらに急ぐのではなく、十分に時間をかけて繰り返し丁寧に説明を尽くす必要がある。
 「共謀罪」は国際組織犯罪防止条約を締結するための前提として、各国に整備が義務付けられている。組織犯罪の封じ込めは国際社会の大きな課題であり、条約を締結する意義や、そのためにテロ等準備罪を導入する必要性自体は理解できる。
 だがこれまでの衆院の審議では、政府側の答弁は一貫性を欠いたり、根拠があいまいなままに強弁したりといった場面が目立った。野党側の追及が理念的だったこともあり、議論がかみ合わないやり取りも多かった。
 それでも議論を積み重ねることで、疑問点や課題は徐々に集約されつつある。仮に法案が成立した際には、国会での審議が運用面での大きな指針や歯止めにつながることも忘れてはならない。
 政府・与党には、「想定時間に達したから採決する」という態度ではなく、改めて反対の立場の意見を真摯に聞き、受け止めていく姿勢が求められる。
 議論のなかで必要があれば、処罰範囲の明確化や対象犯罪のさらなる削減など、条文の見直しをためらうべきではない。国会のあり方が問われている。
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東京新聞 2017年5月24日
【社説】「共謀罪衆院通過 戦前の悪法を思わせる


 「共謀罪」法案が衆院を通過した。安倍晋三政権で繰り返される数の力による横暴だ。戦前の治安維持法のような悪法にならないか心配だ。
 警察「自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることをご存じか」
 電力会社子会社「以前、ゴルフ場建設時にも反対派として活動された」
 警察「自然破壊につながることに敏感に反対する人物もいるが、ご存じか。東大を中退しており、頭もいい。しゃべりも上手であるから、やっかいになる」
◆監視は通常業務です
 岐阜県大垣市での風力発電事業計画をめぐって、岐阜県警が反対派住民を監視し、収集した情報を電力会社子会社に提供していた。二〇一四年に発覚した。
 「やっかい」と警察に名指しされた人は、地元で護憲や反原発を訴えてもいる。ただ、ゴルフ場の反対運動は三十年も前のことだった。つまりは市民運動というだけで警察は、なぜだか監視対象にしていたわけだ。この問題は、国会でも取り上げられたが、警察庁警備局長はこう述べた。
 「公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環」-。いつもやっている業務というのだ。
 公安調査庁の一九九六年度の内部文書が明らかになったこともある。どんな団体を調査し、実態把握していたか。原発政策に批判的な団体。大気汚染やリゾート開発、ごみ問題などの課題に取り組む環境団体。女性の地位向上や消費税引き上げ反対運動などの団体も含まれていた。
 日本消費者連盟。いじめ・不登校問題の団体。市民オンブズマン、死刑廃止や人権擁護の団体。言論・出版の自由を求めるマスコミ系団体だ。具体的には日本ペンクラブや日本ジャーナリスト会議が対象として列挙してあった。
◆監視国家がやって来る
 警察や公安調査庁は常態的にこんな調査を行っているのだから、表に出たのは氷山の一角にすぎないのだろう。「共謀罪」の審議の中で繰り返し、政府は「一般人は対象にならない」と述べていた。それなのに、現実にはさまざまな市民団体に対しては、既に警察などの調査対象になり、実態把握されている。
 監視同然ではないか。なぜ環境団体や人権団体などのメンバーが監視対象にならねばならないのか。「共謀罪」は組織的犯罪集団が対象になるというが、むしろ今までの捜査当局の監視活動にお墨付きを与える結果となろう。
 国連の特別報告者から共謀罪法案に「プライバシーや表現の自由の制限につながる。恣意(しい)的運用の恐れがある」と首相に書簡が送られた。共謀罪は犯罪の実行前に捕まえるから、当然、冤罪(えんざい)が起きる。政府はこれらの問題を軽く考えてはいないか。恐るべき人権侵害を引き起こしかねない。
 一九二五年にできた治安維持法は国体の変革、私有財産制を否認する目的の結社を防ぐための法律だった。つまり共産党弾圧のためにつくられた。当初はだれも自分には関係のない法律だと思っていたらしい。
 ところが法改正され、共産党の活動を支えるあらゆる行為を罰することができるようになった。そして、反戦思想、反政府思想、宗教団体まで幅広く拘束していった。しかも、起訴されるのは少数派。拷問などが横行し、思想弾圧そのものが自己目的化していったのだ。
 共謀罪も今は自分には関係がないと思う人がほとんどだろう。だが、今後、法改正など事態が変わることはありうる。一般人、一般の団体なども対象にならないと誰が保証できようか。国会審議でも団体の性質が一変すれば一般人も対象になるとしている。何せ既に警察は一般団体を日常的に調査対象にしているのだ。
 少なくとも「内心の自由」に官憲が手を突っ込んだ点は共謀罪も治安維持法も同じであろう。
 捜査手法も大きく変わる。共謀となる話し合いの場をまずつかむ。現金を下ろすなど準備行為の場もつかむ。そんな場面をつかむには、捜査当局は徹底的に監視を強めるに違いない。政府は「テロ対策」と言い続けたが、それは口実であって、内実は国内の監視の根拠を与えたに等しい。
◆「デモはテロ」なのか
 何よりも心配するのが反政府活動などが捜査当局の標的になることだ。「絶叫デモはテロ行為と変わらない」とブログで書いた自民党の大物議員がいた。そのような考え方に基づけば、反政府の立場で発言する団体はテロ組織同然だということになる。共謀罪の対象にもなろう。そんな運用がなされれば、思想の自由・表現の自由は息の根を止められる。
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しんぶん赤旗 2017年5月24日(水)
主張:「共謀罪」法案攻防 強権で「監視社会」進める異常


 憲法が保障する思想・良心の自由を侵害する「共謀罪」法案をめぐる自民、公明の与党と日本維新の会の強権的な国会運営は、異常という他ありません。審議のたびに新たな疑問や論点が出てくるのに金田勝年法相の迷走答弁などで議論がかみあわないまま衆院法務委員会で強行採決し、野党の反対を無視して衆院本会議を開き、可決を押し切る―。「内心」を処罰する重大法案を、乱暴極まるやり方でしか押し通せないこと自体、「共謀罪」法案の危険と矛盾を示しています。もの言えぬ監視社会づくりを推進する安倍晋三政権の暴走を阻むたたかいが急務です。
異論封じの姿勢際立つ
 与党や維新は法案の衆院での審議は尽くされたといいますが、そんな言い分はとても通用しません。法案の実質審議が4月中旬から委員会で始まって1カ月―。はっきりしてきたことは、政府のいうような法案導入の理由は全くなく、むしろ「心の中」を取り締まる法案がもたらす危険な実態です。
 政府が持ち出した「テロ対策」のためという口実は、とても成り立ちません。もともと法案の原案に「テロ」という文言すらなく、国会提出直前につじつまを合わせるために「テロ」を書き込んだという経過からも、その主張は破綻していました。法案が対象とする277の犯罪に「テロ」と無関係のものが多く含まれていることについて、政府は審議の中でも説明できません。対象犯罪の恣意(しい)的な選び方にも批判が集まっています。
 テロ対策に不可欠としていた国際組織犯罪防止条約(TOC条約)加盟のためという主張は、そもそも同条約の目的は「テロ対策」でなく、日本政府もかつて同条約に「テロ対策」を盛り込むことに異議を唱えていたことと矛盾します。そのことを追及された政府はまともに答えられませんでした。「テロ対策」の名で法案の本質をごまかすことは、もはや許されません。
 政府は「一般人は関係ない」「内心を処罰するものでない」と繰り返しましたが、法案に歯止めがないことは浮き彫りになるばかりです。すでにいまでも環境保護などを訴える市民まで不当に調査・監視している警察が、「共謀罪」によって、さらに大きな捜査権限を手にすることで、「国民監視社会」への道が加速する危険があることは、あまりに明白です。
 国連人権理事会から任命された特別報告者が、「共謀罪」法案がプライバシーに関する権利、表現の自由への過度の制限につながる可能性があると警告する書簡を安倍政権に出したことは重大です。国内外から相次ぐ批判を無視し、異論を封じて数の力で「共謀罪」法案を押し通す安倍政権と与党、維新には一片の道理もありません。
過酷な歴史の再来許さず
 戦前の治安維持法で弾圧された人や家族たちが法案反対を懸命に訴えているのは、思想・良心を取り締まる法律が一たび作られれば、国家権力によって乱用され、一般市民も容赦なく拘束、逮捕、投獄されることを、身をもって知るからです。そんな過酷な時代を再来させてはなりません。
 憲法9条改憲を鮮明にした安倍政権による「戦争をする国」づくりと、深く結びついた「国民監視社会」づくりを阻むため、「共謀罪」法案を廃案に追い込むたたかいをさらに強めることが必要です。
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北海道新聞 2017/05/24 09:00
社説:「戦前」に戻してどうする


 罪名を「テロ等準備罪」とし、共謀を「計画」と言い換え、構成要件に「準備行為」を加えた。
 だがその本質は、「平成の治安維持法」と呼ばれ、過去3度廃案になった法案の内容と何も変わらない。
 組織犯罪処罰法改正案が衆院を通過した。いわゆる「共謀罪」法案である。
 捜査は個人の内心に向けられ、犯罪の計画段階での処罰が可能となる。実行行為を処罰する刑法の大原則を転換することになる。
 捜査当局による市民生活への監視を強め、思想や表現の自由などを保障する基本的人権を侵しかねない。危険な法案は参院で徹底審議し、廃案にすべきだ。
 安倍晋三首相は特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制に続き、憲法の基本原則を曲げる重大法案をまたも数の力で押し通そうとしている。
 一連の流れはこう映る。
 まず、特定秘密保護法で国民の「目と耳」をふさいだ。
 国家の秘密保持のために国民の知る権利を奪い、民主主義の重要な基盤を掘り崩した。国民主権に逆行するものだ。
 続いて、あいまいな定義の安保法制によって実力組織である自衛隊の活動を格段に広げ、海外での武力行使に道を開いた。平和主義の空洞化を進めたといえる。
 そして今度は、国民の「口」を封じかねない共謀罪である。捜査当局の権限をなし崩しに拡大する狙いが透けている。
 立憲主義をねじ伏せる首相の手法は、国の在り方を戦前の国家主義に回帰させることを目指しているかのように見える。
 共謀罪法案の衆院審議で金田勝年法相は「一般市民は捜査の対象外」と繰り返した。
 だが、戦前の治安維持法も当初は「善良な国民に何ら刺激を与えるものではない」とされていた。法律はできてしまえば拡大解釈され、独り歩きする可能性がある。それが歴史の教訓だ。
 国の政策に反対する市民運動や労働運動の関係者を「摘発されるかもしれない」と萎縮させれば、改憲反対の運動に影響を与える効果が見込めるかもしれない。
 それによって、究極の目標である憲法9条改定のお膳立てを整えるつもりなのだろうか。
 施行70年を迎えた憲法の根本理念と共謀罪は、明らかに相いれない。
 共謀罪法案はまだ成立していない。参院は「良識の府」としての自負があるはずだ。この国の行く末も見据えて法案の危険性をあぶり出してほしい。
 テロ対策の必要性は誰しも否定しない。だが、そのためになすべきは共謀罪の制定ではない。空港の保安対策の強化など、まず優先してやるべきことは少なくない。
 国内には既遂、未遂でなくても重大犯罪を罰する予備罪、準備罪、陰謀罪などが既にある。国際組織犯罪防止条約締結の要件は満たしているとみることもできる。
 ただちに加盟し国際的な捜査の連携に乗り出せばいい。
 そうした点も、参院の審議で深めるべきだ。
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北海道新聞 2017/05/24 08:55
社説:「共謀罪」法案 監視型捜査 懸念拭えぬ


 きのう衆院を通過した組織犯罪処罰法改正案で最も問題なのは、市民生活を脅かす監視や捜査が、既成事実化していく懸念が拭えないことである。
 この法案で共謀罪を「テロ等準備罪」と言い換えた政府は、「新たな捜査手法を導入することは予定していない」と説明する。
 しかし監視型の捜査はこれまでも長年、ひそかに行われてきた。
 捜査対象者らの車両などに、衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けた捜査が代表例だ。
 最高裁は令状や法律がないことを問題視して違法と判断した。
 留意すべきは、判決が「個人の意思を制圧して、憲法の保障する重要な法的利益を侵害する」と、踏み込んだ見解を示したことだ。
 手法自体の危うさを認めたに等しい。犯罪摘発の網を広げる共謀罪の捜査が、同じ轍(てつ)を踏まぬと言い切れるのか。
 一般市民や正当な活動をする団体は「捜査の対象外」とする政府の言い分も、怪しい。
 岐阜県警が4年ほど前、風力発電所の建設に反対する市民の個人情報を、こともあろうに事業者の電力会社側に漏らしていたことが明らかになっている。
 本来の役割を踏み外した、市民監視以外の何物でもない。
 昨年夏の参院選を巡っても、大分県警が野党の支援団体が入る建物の敷地に隠しカメラを違法に設置していた。
 共謀罪の導入で、「公共の安全や秩序の維持」を理由にした監視捜査がより強まる―。果たして考えすぎだろうか。
 昨年施行された改正通信傍受法では、対象犯罪が大幅に増えている。そもそも通信傍受自体、プライバシーや「内心の自由」を脅かす捜査手法だ。これが共謀罪の捜査に広がる危惧は消えない。
 これだけ疑問や懸念が山のようにありながら、今回の法案を巡る衆院審議では、金田勝年法相が不安定な答弁を重ね、国民の不信感を増幅させた。
 共同通信社の世論調査で、「政府の説明が十分だと思わない」が77%に上ったのも当然である。
 熟議からほど遠かった審議を、参院で繰り返すようなことがあってはならない。
 少なくとも共謀罪を新設する277の犯罪について、政府が選んだ理由や罪になる事例を個別具体的に説明するのは大前提である。
 そうすれば「テロ対策」という言葉にほころびが生じ、いかに法案の必要性がないかが分かろう。
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信濃毎日新聞(2017年5月24日)
社説:共謀罪法案 社会を窒息させる懸念


 国民の基本的人権は「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」―。憲法は13条に明記している。人権保障の根幹として置かれた条文である。内心の処罰につながる共謀罪法案を強引に成立させようとする政府・与党に、この規定の重みをかえりみる姿勢はうかがえない。
 与党の自民・公明と、日本維新の会の賛成で法案は衆院を通過した。数の力で押し切る国会審議の進め方は民主主義の基盤を崩すものだ。国会は政権の追認機関ではない。議論を尽くそうとすらせずに成立へ突き進めば、立法府本来の役割と責任は果たせない。
◇ 論拠を欠くお題目
 共謀罪法案は、広範な犯罪について、計画に合意しただけで処罰できるようにする。実行行為を罰することを原則とする刑法の法体系を覆し、国家の刑罰権を格段に強化、拡大する。意思を根拠にした無用な処罰によって、人権や尊厳が脅かされかねない。
 共謀を察知し、立証するには監視や情報収集が欠かせない。プライバシーが侵され、言論・表現の自由や内心の自由が損なわれる危険は大きい。
 「東京五輪に向けたテロ対策のため」「一般の人が対象になることはあり得ない」…。安倍晋三首相をはじめ政府は、お題目のように繰り返してきた。
 その説明は論拠を欠き、既に破綻している。共謀罪は、設ける必要も理由もない。そのことをあらためて確認しておきたい。
 法案は、テロ対策の実体を備えていない。国会提出前に与党に示した段階で「テロ」の文字は条文になかった。付け焼き刃で、適用対象を定める条文に「テロリズム集団その他の」と加えたものの、肝心のテロとは何かを定義していない。「テロ等準備罪」は単に“呼び名”である。
◇ 市民運動を圧迫する
 国際組織犯罪防止条約を締結するため、という説明にも偽りがある。そもそも条約はテロ対策が目的ではない。マフィアなどの経済犯罪に対処するためのものだ。
 確かに条約は、重大な犯罪の共謀または犯罪集団への参加を国内法で処罰するよう締約国に求めている。ただし、あくまで「国内法の基本原則に従って」である。憲法や刑法の根幹を揺るがす立法の根拠にはならない。
 日弁連は、条約締結に新たな立法は必要ないと指摘する。殺人や放火の予備罪、凶器準備集合罪をはじめ、重大な組織犯罪を実行前に処罰する規定は既にある。
 テロ防止のための国連の主要13条約を日本は全て締結し、国内法を整備してきた。仮に不備な点が残っているとしても、個別の立法で足りる。300近い犯罪に共謀罪をいちどきに設ける乱暴な立法は正当化できない。
 共謀罪法案は2000年代に3度、廃案になった。今回は、適用対象を「組織的犯罪集団」とし、一定の「準備行為」を処罰の条件とした点で従来と異なる。ただ、対象が限定されたわけでも、要件が厳格化されたわけでもない。
 市民団体や労働組合も、「目的が一変した」場合は組織的犯罪集団とみなされる。一般の人は対象にならないと政府が強調しても、何の保障にもならない。
 資金や物品の手配、下見などの準備行為は、日常の行動と見分けにくく、どうとでも判断できる。通りかかっただけでも下見とみなすことは可能だ。
 また、準備と判断するために、当局はあらかじめ目を付けた組織や市民を監視し、動向をつかもうとするだろう。警察が強大な権限を手にし、市民の運動や意見表明を圧迫する恐れは増す。
 現に今でも、市民運動を敵視するような警察の活動が各地で明らかになっている。沖縄では、米軍基地反対運動のリーダーが威力業務妨害の疑いなどで逮捕、起訴され、5カ月も勾留された。
◇ 暴走防ぐ仕組みなく
 共謀罪の対象犯罪には、組織的な威力業務妨害も含まれる。基地や原発に抗議する座り込みを計画した人たちが一斉に摘発されることが現実に起こり得る。
 目を付けられるようなことはやめようと、人々が声を上げるのをためらうようになれば、民主主義の土台は崩れる。密告が促されることも、人を疑心暗鬼にさせ、社会を窒息させるだろう。
 乱用や暴走を防ぐ仕組みはないに等しい。裁判所の令状審査は、歯止めの役割を果たしているとは言いがたいのが実情だ。
 法案は、言論や思想が厳しく弾圧された戦時下の治安立法に通じる危険性をはらむ。政府の情報を広範に秘匿する特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障法制に続き、共謀罪が成立すれば、“有事体制”の色合いはさらに強まる。
 衆院の審議は、法相がしどろもどろの答弁に終始し、政府の強弁も目に付いた。なお追及すべき論点は多い。参院で徹底して審議し、廃案にすべき法案であることを明確にしなければならない。
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[京都新聞 2017年05月24日掲載]
社説:「共謀罪」参院へ  審議尽くす責任がある


 「政府の説明は不十分」との国民の声を無視した、強引な国会運営と言わざるを得ない。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正をめぐり、与党側が先週の衆院法務委員会に続いて本会議での採決に踏み切り、法案を通過させた。
 国会は熟議の場であるはずだ。ところが閣僚答弁の迷走もあって、野党と政府側のやりとりはほとんどかみ合わないままだ。数々の疑問点や異論を置き去りにするのなら、一昨年の安全保障関連法の時と同様、与党の「数の力」の乱用である。
 参院では、あらためて議論を仕切り直すべきだ。
 共同通信の世論調査では77%が、説明が十分でないと答えている。法案そのものへの賛否は40%前後で拮抗(きっこう)しているが、「今国会で成立させるべき」との意見は31%にとどまり、逆に「成立させる必要はない」が56%に上る。
 過去3回の廃案時と異なり、政府は共謀罪の適用対象を絞ったことで「一般人は対象にならない」と繰り返す。だが捜査機関による拡大解釈の余地は大きく、人権を過度に制約しかねないと国連の専門家までが懸念を示している。
 こうした指摘に政府・与党は真摯(しんし)に向き合うべきだ。2020年東京五輪・パラリンピックを控えたテロ対策との一点張りで押し切ろうとするのでは、政治不信に拍車がかかるのはもちろん、本来必要なテロ対策の議論までゆがめかねない。
 内心の自由をはじめとする個人の権利とテロ対策をどう両立させるのか。捜査の行き過ぎをどうチェックするか。そもそもテロをどう定義するのか。一つ一つ熟考と国民への丁寧な説明が欠かせない。自民、公明両党と日本維新の会の修正協議で、取り調べの可視化やGPS捜査の制度化の検討が法案に盛り込まれたが、それも十分な討論の結果とは思えず、今後の憲法改正などをにらんだ3党の妥協という印象が拭えない。
 与党は会期延長も視野に、今国会で法案を成立させる方針を堅持する。だが何より優先すべきは、数の力におごらず審議を尽くすことだ。民進党など野党にも一層の論戦力が求められよう。
 諸外国には、共謀罪を含めて強い捜査権を導入している例が少なくないが、英国のコンサート会場で22日に起きた爆発事件をみてもテロ防止は一筋縄ではいかない。だからこそ対策の実効性と、人権とのバランスの議論が必要だ。
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神戸新聞計 2017/05/24
社説:「共謀罪」参院へ/国民の理解を得ていない


 テロ対策として「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法の改正案が衆議院を通過した。世論調査の数字が法案への国民の思いを示している。「政府の説明は十分と思わない」との回答が77・2%に上った。
 今もって「よく分からない」というのが率直な受け止めだろう。国民の理解が得られないまま政府、与党の政治日程で法案を成立させてはならない。
 欧州で一般市民を標的にした事件が相次ぐ。テロと戦うのは政府と警察当局だけではない。国民の理解と協力がなければ実効性を欠くだろう。
 テロ対策と社会の在り方について、判断するのは私たち一人一人のはずだ。ところが、衆院法務委員会での政府の説明はあまりに中身が乏しく、深く考える材料にはならなかった。
 「一般人は捜査対象となるのか」という争点一つとっても、説明が二転三転した。「告発があっても一般人なら捜査しない」という理解しづらい法相の答弁もあった。
 テロ行為を認定するのは捜査当局だ。日常の買い物や預金の引き落としも、当局がテロの準備行為と判断すれば取り調べの対象となり得る。計画段階とみなされれば日々の行動や人との接触が監視される。
 もとより「共謀罪」は憲法が保障する「内心の自由」を脅かす恐れがある。今の政府がいくら否定しても、後の法解釈や運用などで適用拡大は可能だ。
 戦前の治安維持法がそうだった。成立時の政府は、普通の市民は対象にならず、裁判所が乱用を防ぐと国民に訴えた。教訓とすべき歴史の事実である。
 捜査への歯止めをどう担保するのか。曖昧な議論のままでは、乱用の懸念が募るばかりだ。
 世界からも厳しい視線が注がれる。人権の状況を調査・監視する国連の特別報告者は「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」とする書簡を、日本政府に送った。
 安倍晋三首相は法案を通さねば東京五輪・パラリンピックを開催できないと主張する。しかし問われているのは五輪だけでなく、私たちの社会の未来だ。
 参議院では国民の疑念に答える審議が求められる。政府は明確な説明に努めるべきである。
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中国新聞 2017/5/24
社説:「共謀罪」参院へ 議論を一からやり直せ


 国民の不安が置き去りにされたままではないか。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきのう、衆院本会議で可決され、衆院を通過した。
 4月から始まった審議は、金田勝年法相らの答弁の迷走もあり、議論するほど疑問が深まった。共同通信が20、21日に実施した全国電話世論調査でも、「政府の説明が十分だとは思わない」と答えた人は77・2%に達した。今国会中に「成立させる必要はない」との回答も56・1%に上る。
 にもかかわらず、30時間で審議を打ち切り、衆院本会議の採決に突き進んだ強引な姿勢は理解し難い。さまざまな懸念に耳を傾けることなく、ここまで数の力で押し切ってきた政府、与党に強く抗議したい。
 法案を巡る疑問は多岐にわたる。これから始まる参院の審議では、議論を一からやり直す必要がある。
 何より法改正の目的さえ、いまだに納得できない。
 政府は2020年の東京五輪に向けたテロ対策を理由として挙げる。世界各地で相次ぐ卑劣なテロに憤りを感じ、対策の強化を望む人は多いだろう。きのうも英国マンチェスターのコンサート会場の爆発で多くの死傷者が出た。自爆テロとみられている。
 しかし今回の法案は、03~09年に3回廃案になった共謀罪を修正し、焼き直したものだ。共謀罪は00年に日本が署名した国際組織犯罪防止条約に加盟するために検討してきたが、この条約は経済マフィア対策を念頭に置く。テロ対策と政府が声高に言い始めたのは昨年夏からである。結局、今年3月に示した改正案に初めて「テロリズム」の文言が明記された。
 「テロ対策は後付けの理由」と、政府や与党が批判されても仕方あるまい。
 テロ対策の法整備が必要だとしても、日本の刑法では既に、殺人や強盗、放火などの重大な犯罪は予備段階から処罰ができる。さらに爆発物による罪や内乱罪は、犯罪について合意する共謀段階から処罰できる。テロ対策を強化するとしても、本当に必要な幾つかの犯罪について個別に検討し、予備罪を設けるだけで十分という指摘もある。
 今回のように対象となる罪が277と広範に及ぶ法案が実際に必要かどうか、あらためて検討すべきだろう。
 法案の「副作用」を心配する声も強いからだ。277もの犯罪について計画した疑いがあると警察が判断すれば、捜査に入ることが可能になる。捜査、国家権力の肥大化や暴走を招きかねない。国民の基本的人権を損なう恐れがある。
 ケナタッチ国連特別報告者は安倍晋三首相宛てに、今回の法案がプライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある、との書簡を届けたという。菅義偉官房長官は内容に抗議したというが、謙虚に受け止めるべきだ。参院ではケナタッチ氏の指摘を踏まえ、法案の副作用について十分な検討が要る。
 政府、与党は6月18日に迫る会期を延長することも視野に、法案の今国会中の成立を目指す。だが、急ぐ必要などない。国民が理解し納得できるまで、議論を尽くしてもらいたい。
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西日本新聞 2017年05月24日10時38分
社説:「共謀罪」衆院通過 「良識の府」で徹底審議を


 国民の懸念や疑問は解消されていない。にもかかわらず、法務委員会に続いて本会議もまた、野党の反対を押し切っての採決強行だった。衆院は「言論の府」の看板を自ら下ろしてしまったのか。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院本会議で自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。
 不安定な答弁を続ける金田勝年法相をはじめ質問に正面から向き合わない政府、30時間を費やしたから審議は尽くしたと言い張る与党、同調した維新にはそれぞれ重大な責任がある。
 過去3回も廃案になった共謀罪とは本質的に何が違うのか。適用対象を「組織的犯罪集団」と規定し、犯罪の「準備行為」を構成要件にすると政府は言う。だが、いずれも定義は曖昧で、政府答弁すら二転三転した。一般市民が対象になる疑念は拭えないままだ。
 「内心」を取り締まるために、捜査当局による監視が強まる恐れもある。安倍晋三首相は東京五輪に向けたテロ対策と強調するが、テロとは無関係と思われる犯罪まで対象に含まれる。極めて不十分な衆院審議で少なくともはっきりしたのは市民社会を萎縮させかねない法案-ということだ。
 政府は国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約の締結にも成立が必要と主張する。野党も条約には賛成だが、現行法で締結可能だという。どちらが正しいのか。
 条約の目的はテロ対策ではなく、マフィアによる国境を越えた薬物や銃器の不正取引に絡むマネーロンダリング(資金洗浄)などの防止だとの指摘もある。そうだとすれば「テロ対策」という政府の主張との整合性も問われよう。
 共同通信社の最新世論調査によると、「政府の説明が十分と思わない」は8割近くに及ぶ。法案の賛否は拮抗(きっこう)しているが、国民は政府の説明責任を問うているのだ。
 法案審議の舞台は参院へ移る。まさに「良識の府」「再考の府」の出番である。今度こそ国民が納得するまで審議を尽くすべきだ。
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