2017-06-10(Sat)

骨太方針2017 各紙社説 財政健全化を取り繕うな

過去の成果検証と反省が前提だ  財政再建の道筋見えぬ  規律をさらに緩めるのか

<各紙社説・主張>
毎日新聞)財政健全化に新指標 規律をさらに緩めるのか (6/7)
読売新聞)骨太方針案 人材投資の財源確保が問題だ (6/5)
日本経済新聞)人材投資は待機児童対策を最優先せよ  (6/4)
産経新聞)人材投資 目指す方向に合う教育を (6/6)

河北新報)骨太方針案/「人への投資」必要だけれど (6/8)
京都新聞)骨太方針  財政目標から逃げるな (6/7)
神戸新聞)骨太方針/財政規律を緩めるのでは (6/5)
中国新聞)骨太の方針 財政再建の道筋見えぬ (6/6)

愛媛新聞)骨太方針 過去の成果検証と反省が前提だ (6/9)
西日本新聞)「骨太方針」素案 財政健全化を取り繕うな (6/8)
熊本日日新聞)政府の骨太方針案 財源あっての人への投資だ (6/5)




以下引用



毎日新聞2017年6月7日 東京朝刊
社説:財政健全化に新指標 規律をさらに緩めるのか


 政府は、経済財政運営の「骨太の方針」の素案に新たな財政健全化の指標を盛り込んだ。国内総生産(GDP)に対する借金総額の比率だ。
 現在は200%に近く、主要先進国で最悪だ。この比率を着実に下げるという目標を示した。国と地方合わせて1000兆円を超す借金の圧縮につなげるのなら意味はある。
 だが、歳出を増やして借金が膨らんでも、それ以上にGDPが増えれば比率は下がる。歳出の膨張を助長しかねないものだ。財政規律をさらに緩める余裕はない。
 政府がこれまで重視してきた健全化の指標は基礎的財政収支だ。
 社会保障や公共事業などの政策経費を税収などで賄えているかを示す。現在は20兆円の赤字と借金に依存する。政府は2020年度の黒字化を目標にしているが、大幅な歳出削減がなければ困難と指摘される。
 安倍晋三首相は1月の施政方針演説で、それまで必ず言及していた基礎的財政収支の黒字化に触れなかった。以前から「経済成長なくして財政健全化なし」と税収増に頼り、痛みを伴う歳出削減には消極的だ。
 一方、新指標は、基礎的財政収支を黒字化できなくても経済成長で健全化が進んだとアピールできる。
 「骨太の方針」は両方の指標を併記したが、内閣府は新指標の重要性を明確にしたと説明している。
 首相のブレーンの中には、基礎的財政収支の黒字化棚上げと消費増税再々延期を求める意見がある。今回がその布石との見方も出ている。
 新指標なら景気刺激を大義名分とした財政出動を行いやすくなる。
 首相は昨年「アベノミクスのエンジンをふかす」と大型経済対策に踏み切った。今年の「骨太の方針」でも幼児教育無償化などを打ち出し、歳出拡大に意欲をにじませる。
 日銀の金融緩和で金利も低い。新指標は首相に都合がいいのだろう。
 しかし、財政出動で期待したほど経済が成長しなければ、借金だけが積み上がり、新指標も悪化する。
 安倍政権は経済対策を繰り返したが、税収は最近伸び悩んでいる。成長頼みの財政健全化は危うい。
 25年ごろには団塊の世代が75歳以上になり、社会保障費が急増する。見かけの健全化に走らず、歳出削減に正面から取り組む必要がある。
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読売新聞 2017年06月05日 06時05分
社説:骨太方針案 人材投資の財源確保が問題だ


 日本経済の再生には人材への投資が重要だ。そのためには安定した財源の確保が欠かせない。
 政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」案をまとめた。
 人口減社会にあって経済成長を実現するカギとして、生涯教育の環境を充実させるなど、人材投資の拡充を柱に据えた。
 大学教育の質向上のため、学校経営に外部からの登用を促す。私立大の助成金は成果に応じて配分する。社会人向けの講座や職業訓練を充実させ、転職や女性の再就職を支援する。
 これらの施策を、「働き方改革」による長時間労働の是正などと合わせて行う。生産性向上を図り、社会の活力を高めるという。
 人材を重視する方向性は理解できる。着実に進めてほしい。
 問題なのは、新たな施策の費用について「適切な安定財源を確保する」との記述にとどめ、具体的な方策を示さなかったことだ。
 将来にツケを回す国債発行に安易に頼ってはなるまい。
 方針案は、幼稚園・保育園を無償化する方針も明記した。実質的な完全無償化には年1兆円超の予算が必要とされる。
 その財源は「こども保険」を想定した社会保険料への上乗せや、増税、歳出削減などを検討するという。政府は、政策の狙いを国民に十分説明し、費用負担の在り方を幅広く議論すべきだ。
 財政健全化については、2020年度までの目標として、従来の「基礎的財政収支の黒字化」に加え、新たに「債務残高の対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げ」を掲げた。
 新たな目標は、国の経済の規模に対する借金の割合を示す。
 高い経済成長を続ければ、それだけ数値は改善に向かう。経済成長を通じて財政再建を進める姿勢を明確にしたと言える。
 日本の債務残高のGDP比は250%超と先進国で最悪の水準だ。しかも、それを下げるのは容易ではない。経済の実力を示す潜在成長率は0%台にとどまる。
 基礎的財政収支の20年度までの黒字化も困難となっている。二つの目標のどちらを優先するかが曖昧で、結果的に財政規律が緩む恐れは拭えない。
 政府は消費税率の10%への引き上げを2度にわたり延期した。19年10月の増税実施を決断する時期が近づいてくる。
 確実な財政再建の実現へ向け、社会保障・税一体改革の道筋を抜本的に見直さねばならない。
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日本経済新聞 2017/6/4付
社説:人材投資は待機児童対策を最優先せよ


 政府は2017年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の素案をまとめた。柱は「人材投資の抜本強化」だ。第一歩として、幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消を打ち出した。それに必要な財源のあり方などの結論を年内までに出すという。
 まず最優先すべきは、待機児童の解消である。
 幼少期の子どもが安心して過ごせる保育サービスを増やす。これが社会や経済にあたえる効果は大きい。女性が出産後も働き続けやすくなり、足元で広がる人手不足を緩和しやすくなるからだ。
 さらに、仕事と子育ての両立が軌道にのれば、もう1人子どもを持つことへの壁も低くなるだろう。若い世代も結婚・出産に踏み切りやすくなる。待機児童対策は、少子化対策であると同時に、将来を担う人材を生み出す、もっとも重要な人材への投資といえる。
 政府は、17年度末までの待機児童解消を目指し、5年間で53万人分の受け皿づくりを進めてきた。だが需要増に追いつかず、このほど新プランをまとめた。新たに22万人分の受け皿を確保し、遅くとも20年度末までに待機児童を解消するという。
 財源をめぐり、財務省は高所得世帯向けの児童手当の特例給付を見直し、浮いたお金を待機児童対策に回す案を示している。企業が負担する拠出金を財源に、「企業主導型」の保育サービスを増やす案もある。
 先進国で最悪という財政事情をふまえ、社会保障の歳出見直しを含めて財源をしっかりと確保し、新プランを着実に実行しなければならない。
 幼児教育・保育の無償化は、これまで段階的に範囲を広げてきた。「こども保険」など新しい財源案も浮上しているが、「無償化ありき」は論外だ。まずは待機児童対策にめどをつけたうえで、どこまで無償化を広げるかの議論を深めたい。
 少子高齢化と人口減少は、日本が抱える構造的な課題だ。16年の出生数は初めて100万人を割り、人口は前年比で約33万人も減少した。合計特殊出生率は1.44となり、政府が掲げる「希望出生率1.8」に遠く及ばない。
 人口減の圧力を緩和し、日本経済の持続的な成長基盤を整えるには、仕事と子育てを両立しやすい環境づくりが急務だ。もはや一刻の猶予も許されない。
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産経新聞 2017.6.6 05:02
【主張】人材投資 目指す方向に合う教育を


 政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)の素案で、人材投資の強化が重点項目に挙がった。
 人材投資で生産性の向上を図り、少子高齢社会の中長期的課題を克服しようという考え方だ。
 資源の乏しい日本にとっては、人こそ大事な財産である。労働力人口が大きく減るなかで、個々の労働生産性を上げていかなければ、豊かさは維持できない。
 人材育成への投資を強化する意義は大きい。肝心なのは、どういった人材を育てるかであり、それに必要な教育とは何かを判断することだ。
 産業構造をどう作り替えるかという問題とも密接に関わってくる。ここを明確にしなければ、人材育成の方向性も定まるまい。
 骨太方針は、家庭の経済事情にかかわらず、誰もが教育を受けられる環境を目指すことも明記した。理念としては良いが、まんべんなく予算を投入することとは峻別(しゅんべつ)されるべきだ。
 公費を使う以上、社会に還元される成果が望まれる。どうメリハリを利かせるか、安倍晋三首相はよく考えてほしい。
 新たな成長分野で、戦力となる優秀な人材が必要なのは言うまでもない。これまでの人材育成の主体は企業だった。社会が流動化している現状では、企業内教育に限界も生じている。まず取り組むべきは職業能力開発である。
 骨太方針が、都道府県や大学、公的な研究機関などによる地域人材育成の仕組みの構築を図るとしているのは妥当だ。重点的に取り組んでもらいたい。
 新たな仕事に必要な技能を学び直す機会を増やせば、女性の復職や再就職、中高年の転職や就業促進にもつながる。労働力不足の解消にも資するだろう。
 懸念されるのは、大学経営の安定化策のような、矮小(わいしょう)化した議論が与党内から聞こえることだ。人材投資を学校救済策として当て込んでいるなら誤りである。
 人材投資の実効性を上げるためには、労働市場に弾力性を持たせなければならない。
 社会の変化に応じて何度も学び直せる仕組みを作ることによって、時代のニーズに即した仕事に就ける。
 こうした好循環を作り上げることができれば、少子高齢社会を乗り切る有効策となろう。
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河北新報 2017年06月08日木曜日
社説:骨太方針案/「人への投資」必要だけれど


 政策の柱に据えた「人への投資」に異論はない。ただ、財源をどう手当てするかという肝心の問題が先送りされたとあっては、実現可能性に疑問符を付けざるを得ない。
 政府が9日の閣議決定を見込む経済財政運営の指針「骨太方針」のことである。
 素案では、幼児教育と保育の早期無償化、待機児童の解消を優先課題に位置付け、低所得世帯でも大学に通えるよう、給付型奨学金や授業料減免の拡充も盛り込んだ。
 少子高齢化に伴う働き手不足は深刻で、成長の足かせになりかねない。
 そうした中、「人材投資」を強化することにより、教育を通じて「貧困の連鎖」の解消を含む格差の是正とともに、1人当たりの生産性の向上を図り、活路を開こうとの試みだ。投資に伴う家庭の教育費の負担軽減は、結婚・出産を促す少子化対策にもなる。
 問題は財源をどう確保するかだ。幼児教育・保育の無償化だけでも約7千億円が必要という。素案は歳出の削減、税、社会保険方式を選択肢に年内に結論を得るとする。
 議論のベースになるのは社会保険、自民党の若手議員らが提唱している「こども保険」とみられる。企業や働く人から保険料を集めて子育て世帯に分配する仕組みだ。
 負担は現役世代に集中し、子どもがいない世帯・子育てが終わった世帯も負担する。このため、公平性の観点などから国民の理解をどう得るかが課題で、実現に向けハードルは高いと言うほかない。
 こうした新政策の財源論とも絡むのが財政再建問題だ。
 素案は、借金に頼らずに政策経費を賄えているかを示す「基礎的財政収支」を2020年度までに黒字化するとの従来の目標は堅持した。
 見逃せないのは、同時に、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率の「安定的な引き下げ」を財政健全化の目標に据えたことだ。
 債務残高の増加がGDPの増加額を下回れば、数値は改善する。今の低金利下では達成しやすい目標であり、GDPの伸び率を下回っていれば借金が増えても構わないということにもなりかねない。
 黒字化目標を堅持したとはいえ達成は困難。となれば新目標がせり出し、むしろ歳出拡大に道を開くことになるのではないかと心配になる。
 「経済成長なくして財政再建なし」は安倍政権の大看板。だが赤字体質は一向に改善されていない。放漫な財政運営を今後も続けるようなら、将来世代にさらなるツケを回すことになり、許されない。
 20年度までの黒字化は国際公約といえ、未達成なら日本に対する国際的信認が損なわれる事態を招きかねない。
 財政規律を厳格化しつつ、人材投資といった新政策に必要な安定財源をどう確保するか。まずは既存の事業を徹底的に見直し、無駄を省くことから始めなければなるまい。
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[京都新聞 2017年06月07日掲載]
社説:骨太方針  財政目標から逃げるな


 借金頼みからの出口がますます見えなくなる。そんな懸念を深めざるを得ない。
 政府の経済財政運営の指針「骨太方針」の素案は、働き方改革に続く柱として「人材投資」を掲げた。幼児教育の早期無償化や待機児童の解消を優先し、人口減少の中で1人当たりの生産性を上げて成長への活路を見いだすという。
 人材重視の方向性に異存はない。教育、保育の充実は子育てや女性活躍の支援にとどまらず、長い目でみて格差や貧困の拡大・固定化を防ぐことにもつながる。
 問題は、財源について「年内に結論を得る」とするのみで、具体策を示さなかったことだ。
 幼児教育の無償化はこれまで段階的に拡大されてきたが、完全実施には年1兆円以上の追加が必要とされる。
 待機児童対策にも年に数千億円かかる。保育需要の伸びは供給を上回っており、政府は2017年度末までに待機児童をゼロにする目標を3年先送りした。20年度までに新たに22万人分の受け皿を整備し、さらに21~22年度に10万人分を上積みする計画だ。
 骨太方針の素案は、財源確保の選択肢として、歳出の効率化、税、社会保険方式の三つを挙げた。ただ、新たな借金は避けたものの、いずれも多難さは否めない。歳出の効率化だけで「兆円」規模の財源を捻出するのは厳しく、税は消費税率の10%への引き上げを2度延期している状況だ。
 社会保険方式は、自民党の若手議員が提唱する「こども保険」を念頭に置く。企業や現役勤労世代から保険料を集めて子育て世帯に分配するとの案に、経済界や子どものいない人を含めて理解を得られるか、ハードルは高い。
 もう一つ、懸念されるのが財政規律の緩みだ。素案では基礎的財政収支を20年度までに黒字化する財政再建目標を維持しつつ、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を「安定的に引き下げる」方針を前面に出した。
 低金利の下で経済成長が続けば改善する指標であるため、安易な歳出拡大論につながる恐れが拭えない。債務残高GDP比を政府が強調するのは黒字化目標の先延ばしの布石とも映る。すでに先進国で最悪水準の日本財政の信用を、これでは一層低下させかねない。
 仮に高成長を遂げても黒字化目標の達成が絶望的なのは、内閣府の最新の試算で明らかだ。政治は真摯(しんし)に課題に向き合い、財政再建の目標から逃げてはならない。
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神戸新聞 2017/06/05
社説:骨太方針/財政規律を緩めるのでは


 政府は経済政策や財政の基本方針となる「骨太方針」の素案を策定した。
 優先項目には幼児教育の無償化や待機児童の解消などを掲げた。低所得世帯でも大学に通えるよう、給付型奨学金や授業料減免の拡充なども盛り込んだ。格差解消に向け、人への投資に力を入れる狙いはうなずける。
 問題は財源の確保だ。巨額の負債を抱え、社会保障支出が増大を続ける中で新たな政策を打ち出すには、既存の政策を徹底的に見直し、無駄を省いた上で検討する必要がある。
 素案では、幼児教育と保育の無償化を目指し年内に結論を得ると明示した。憲法改正と絡め与野党の間で議論が進む教育無償化について、方向性を示したといっていい。
 一方、財源の選択肢は歳出抑制、税制、社会保険の三つを示し、年末にかけ検討するとした。自民党の一部が唱えた国債発行を拒んだのは、国と地方合わせて1千兆円を超す債務残高を考えれば当然である。
 議論のベースになるのは、自民党が提唱した「こども保険」だろう。子育て世帯だけでなく、保険料を負担する企業や国民から幅広く理解を得られる案を練り上げなければならない。
 政府は過去の骨太方針で財政健全化に向け、2020年度に基礎的財政収支の黒字化を目標に掲げた。借金に頼らず政策経費を賄うことを意味する。
 しかし実態は政策経費が税収を上回り、国債で穴埋めする構図が毎年続いている。目標達成は絶望的な状況にある。
 今回は、新たな目標も加えた。国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率を「安定的に引き下げる」という。これでは、GDPの伸び率を下回れば借金を増やして良いことになる。黒字化目標は維持したが、いずれは骨抜きにされ、歳出拡大の道を開くことにならないか。
 安倍政権は消費税増税を2度も先送りし、国と地方の財政は悪化した。経済成長で税収を増やし、財政健全化につなげるという道筋は政権発足から4年半を経ても、いまだ実現に至っていない。
 巨額の債務を抱える財政の現実を直視し、まずは歳出削減に本腰を入れるべきだ。
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中国新聞 2017/6/6
社説:骨太の方針 財政再建の道筋見えぬ


 政府が経済政策や財政の基本方針となる「骨太の方針」素案をまとめた。政策の柱には人材への投資を掲げ、家庭の教育費の負担軽減を優先課題に据えた。9日にも閣議決定される。
 幼児教育と保育の早期無償化や待機児童の解消を目指し、低所得世帯でも大学に通えるよう給付型奨学金や授業料減免などの拡充を盛り込んだ。
 人口減に伴う人手不足は深刻さを増すばかりだ。このままでは税収が不足し、財政の健全化や社会保障の安定運営もままならなくなるとの危機感があるのだろう。人への投資を強化し、経済格差や人手不足の解消につなげて活路を見いだそうとする狙いは理解できる。問題は、財源をどう確保するかだ。
 幼児教育の無償化には年間で1兆円を超す予算が必要とされる。素案では、歳出の効率化と税、社会保険方式の三つの財源候補を挙げ、年内に結論をまとめるとする。
 歳出の効率化や増税は調整が難しく、ハードルが高いとみられる。今のところは、自民党の若手議員が提唱した、社会保険料に上乗せして集める「こども保険」を含めた社会保険方式が議論のベースとなりそうだ。
 こども保険は、企業や会社員、自営業者から保険料を集めて子育て世帯に分配するのが基本的な考え方である。制度の詳細はこれからだが、子どもがいない人や子育てを終えた世帯にも負担がかかる可能性が高く、反発が予想されている。
 保険とはいえ、実質的に税の負担感と大きな違いはないだろう。保険料を負担する人の範囲や公平性の確保などの視点から、費用負担の在り方を幅広く議論して、国民の理解を得る必要がある。
 一方、財政健全化については、借金に頼らず政策経費を賄えるかを示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」を2020年度までに黒字化する従来の目標は堅持した。だが、あと3年で、どう達成するのか。実現に向けた道筋がまったく示されていないのは問題といえよう。
 新たに国内総生産(GDP)に対する債務残高の割合を「安定的に引き下げる」目標を加えた点も見逃せない。債務残高の増加がGDPの増加額を下回っていれば、数値は改善する。
 現在の低金利下では達成しやすい目標といえ、数値は当面改善に向かうとの試算もある。これではGDPの伸び率を下回っていれば、借金が増えても構わないことになりかねない。
 改善すれば歳出拡大の余地があると見なすことができ、デフレ脱却に向けて柔軟な財政出動を重視している政権の思惑とも重なる。3年後の達成が絶望的になった財政収支目標から国民の目をそらすつもりなのだろうか。財政規律がさらに緩むのではないかとの懸念が強まる。
 政権発足から4年半。経済成長に頼った財政運営は限界を迎えつつあると、そろそろ気付くべきではないか。新たな政策を打ち出す前に既存の政策を見直して、徹底的に無駄を省く必要があろう。
 放漫な財政運営を続ければ、経済成長などおぼつかない。借金をこれ以上増やし、財政をさらに悪化させるようなことになれば、子どもたちの世代に大きなツケを回すことになる。
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(愛媛新聞) 2017年6月9日(金)
社説:骨太方針 過去の成果検証と反省が前提だ


 「人材への投資による生産性向上」を柱とする経済財政運営の指針「骨太方針」が、きょう閣議決定される。毎年、新たな政策を打ち出すが、安倍政権が掲げる経済の数値目標の多くが達成できておらず、実行は極めて厳しいと言わざるを得ない。
 策定の前に、過去の方針の実績検証が必要だ。安倍晋三首相は「経済再生なくして財政健全化なし」と訴えるが、経済成長は振るわず、自らが描くシナリオが立ち行かなくなっている現実を直視しなければならない。
 最重要課題とするデフレ脱却を実現できていないことが、行き詰まりの象徴だ。日銀は、2%の物価上昇目標の達成時期先送りを繰り返し、昨年11月には「2018年度ごろ」に延期した。デフレ脱却の前提にもなる経済成長は、8日発表された今年1~3月期改定値の名目国内総生産(GDP)が年率換算1.2%減。首相は成長頼みの限界を認め、根本的な歳出・歳入改革に方針転換すべきだ。
 個別政策でも、昨年、子育て支援で盛り込んだ17年度末の待機児童解消を、20年度末へ先延ばしした。聞こえのいい目標を掲げるだけで、国民に約束した責任を全く果たしていない。
 今年の骨太方針案は幼児教育と保育の早期無償化、待機児童解消を優先課題とした。他には教員の長時間労働是正、中小企業へのITやロボット導入の促進など。過去の方針の「挫折」を証明するかのように、実現できなかった課題が並ぶ。
 財源も確保できていない。幼児教育無償化などの財源候補に歳出効率化、税制、社会保険の三つを挙げるが、歳出は他の予算を削るどころか、防衛や社会保障などの圧力が強まる一方。税制は、今年4月からの予定だった消費税再増税を見送っている。議論の土台となる「こども保険」は、国民に新たな負担を求めるもので看過できない。
 財政健全化目標自体も問題が大きい。国際公約でもある、基礎的財政収支を20年度までに黒字化する目標は下ろしていないが、試算では20年度は8兆3千億円程度の赤字。目標を達成できないと率直に認めた上で、予算編成を進めないと財政は悪化するだけだ。将来世代に負担のつけ回しをしてはならない。
 今回はさらに、新たな健全化目標として、GDPに対する債務残高比率引き下げを加えた。成長率が高ければ債務が増えても比率は下がる。基礎的財政収支の黒字化を確信できない政府が、新基準を仕立て逃げ道をつくったようにしか見えない。
 骨太方針は小泉政権時の01年に初めて策定され、当初は道路特定財源の見直しなど、既得権益とされてきた分野に切り込んだ。近年は見たことがあるメニューが並ぶ「政策のアドバルーン」と化し、成長戦略や1億総活躍、地方創生など似た計画も乱立している。骨太方針は方向性の大幅転換だけではなく、必要性そのものを検討しなければならない。
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西日本新聞 2017年06月08日 10時34分
社説:「骨太方針」素案 財政健全化を取り繕うな


 経済財政運営の指針となる「骨太方針」の素案が示された。
 幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消を目指す一方、財政健全化では国内総生産(GDP)に対する債務残高比率という新たな指標も明記した。
 勤労世代に配慮し、人材・教育投資を増やすことに異論はない。しかし、その財源や政策の順序、そして財政の新指標には懸念を抱かざるを得ない。人材・教育投資を大義名分に、経済成長重視型の新指標で政府の財政再建への取り組みに緩みが生じないか、監視する必要があるだろう。
 教育投資の柱である幼児教育無償化の完全実施には年1兆2千億円、待機児童対策には年数千億円の追加経費が必要とされる。
 ところが、その財源は▽社会保険方式▽財政の効率化▽税‐の3案を示すにとどまり、結論を先送りしている。肝心な財源論議は徹底的に詰めてほしい。
 他方、財政健全化では2020年度までに基礎的財政収支(PB=プライマリーバランス)を黒字化するとの目標を維持する一方、副次的な位置付けだった「債務残高の対GDP比」を新指標として併記し、その「安定的な引き下げを目指す」としている。
 PB黒字化は社会保障や公共事業などの政策的経費を国債発行に頼らず、その年の税収で賄うようにすることだ。内閣府によると、19年10月に消費税率を10%に上げ、名目3%以上の高成長を続けても20年度で8兆3千億円の赤字が残る。黒字化は極めて困難だ。
 そこで達成容易な新指標を持ち出した印象が否めない。こちらも財政健全化の重要指標だが、分子は債務残高で分母はGDPだ。借金を減らさなくても、経済を成長させて分母のGDPを増やせば、比率は下がり、健全化をアピールすることが可能となる。
 PB黒字化は財政健全化の第一歩であり、事実上の国際公約だ。新指標で財政健全化の体裁を取り繕うことによって、痛みを伴う歳出・歳入改革の本筋から逃れるようなことがあってはならない。
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熊本日日新聞 2017年06月05日
社説:政府の骨太方針案 財源あっての人への投資だ


 政府が今後の経済財政運営の基本となる「骨太方針」案を示した。最大の特徴は、働き方改革に続く政策の柱として「人への投資」を掲げた点だ。幼児教育や保育の無償化、待機児童の解消を優先的に進めるほか、高齢者に手厚い社会保障を全世代型に見直して子育て支援を強化するという。
 低所得世帯の人も大学に通えるよう給付型奨学金や授業料減免を拡充するほか、教育の質を上げるための大学改革、国公私立の枠を超えた連携・統合の促進なども盛り込んだ。
 日本社会は今、正社員と非正規社員の待遇格差や子どもの貧困が広がり、高齢者に手厚い社会保障を巡る世代間の不公平感が暗い影を落とす。将来を不安視する若者が出産や消費を控えるという悪循環を生んでいる。
 少子高齢化には歯止めがかからず、人手不足は既に深刻だ。こうした社会要因を背景に経済の低成長が続けば税収が不足し、財政健全化も社会保障の運営もままならなくなる。安倍晋三首相は「成長と分配の好循環を加速させるには、人材への投資を通じた経済社会の生産性向上が鍵となる」と述べ、所得格差と人手不足の解消につなげたい考えを強調する。
 確かに教育は経済成長にもつながる重要なテーマである。総論的には異論はないが、課題は財源だ。政府は幼児教育無償化などの財源候補として、歳出の効率化、税制、社会保険の三つの選択肢を示し、年内に結論を出すとした。
 しかし、歳出効率化や増税のハードルは高い。企業や働く人から保険料を集めて子育て世帯に分配する「こども保険」を土台に議論が進みそうだが、子どもの有無を問わず保険料負担を強いれば反発は必至だ。
 憲法改正の思惑も絡んで議論は盛り上がっているが、今回の方針は財源論を置き去りにした見切り発車の面が否めない。肝心の財源について、国民の理解を得られるような実効性ある手だてを速やかに示すべきだ。
 一方、財政健全化に関しては、借金に頼らず政策経費を賄えるかを示す国と地方の基礎的財政収支を2020年度までに黒字化する目標は維持したが、国内総生産(GDP)に占める借金の割合(債務残高比率)を安定的に引き下げる目標も併記した。
 基礎的財政収支の黒字化に向けた対応策は十分には講じられておらず、20年度までの目標達成は絶望的だ。政権内には毎年度の歳出にたがをはめる黒字化目標より、高い経済成長と低金利の組み合わせで指標が改善する債務残高目標に軸足を移すべきだとの意見もある。その意に沿ったものだろう。
 ただこれは黒字化目標を骨抜きにするものだ。そもそも前提となる高い経済成長が果たして実現可能なのか。とりあえず柔軟な財政出動を可能にしたいとの政権の思惑が透けて見える。こうした手法は借金を拡大させ、さらに財政を悪化させかねない。慎重な議論を求めたい。
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