2017-06-10(Sat)

成長戦略・骨太方針2017 閣議決定

アベノミクス5年 財政悪化の恐れも

◇「安倍1強」生かせず アベノミクス5年、骨太方針決定
----政府は9日の臨時閣議で、第2次安倍政権で5回目となる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略を決定した。アベノミクスは2万円台に回復した日経平均株価や堅調な有効求人倍率の成果が際立つものの、経済の体温を示す潜在成長率は上向かない。規制改革などを武器とした成長力のエンジンは不完全燃焼のままといえ、政権が掲げる経済最優先の看板はかすんで見える。
(日本経済新聞 2017/6/10 1:11)

◇財政悪化の恐れも 政府、成長戦略・骨太方針を閣議決定
----政府は9日、第2次安倍政権が発足してから5度目となる成長戦略と、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。「人材投資」で生産性の向上をめざすが、従来の焼き直しや財源があいまいな施策が目立ち、4年前に掲げた改革目標の進み具合もまばら。成長重視の新指標が入る一方、2019年10月の消費増税の記述もなくなり、財政再建の取り組みは後退しかねない。
(朝日新聞 2017年6月10日15時31分)

<各紙社説・主張>
しんぶん赤旗)成長戦略と「骨太」  大企業には応援、国民には犠牲 (6/10)
北海道新聞)政府の成長戦略 言いっ放しは許されぬ (6/8)
西日本新聞)成長戦略 批判に向き合い成果出せ (6/7)
毎日新聞)アベノミクスの新成長戦略 5度目は期待できるのか (6/5)
山陽新聞)新成長戦略 実現へ企業の力引き出せ (6/7)
神戸新聞)成長戦略/企業活力引き出す政策を (6/1)
 



以下引用

平成29年6月9日(金)午後
動画(政府インターネットTV)
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg15518.html
臨時閣議の概要について
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201706/9_p.html
 臨時閣議の概要について申し上げます。一般案件4件と人事が決定されました。大臣発言として、石原大臣及び安倍総理大臣から「『経済財政運営と改革の基本方針2017』及び『未来投資戦略2017』について」、山本幸三大臣から「『まち・ひと・しごと創生基本方針2017』について」及び「『規制改革実施計画』について」、安倍総理大臣から「海外出張不在中の臨時代理等について」、それぞれ御発言がありました。
 本日の臨時閣議において「経済財政運営と改革の基本方針2017」、「未来投資戦略2017」、「規制改革実施計画」、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」を閣議決定いたしました。骨太方針は、人材への投資を通じた生産性の向上を通じ、成長と分配の好循環を加速し、経済再生なくして財政健全化なしとの方針の下に、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という3つの改革を確実に進めていきます。未来投資戦略は、イノベーションを、あらゆる産業や日常生活に取り入れ社会問題を解決するSociety 5.0の実現に向け、成長戦略の実行に取り組みます。あわせて、規制改革実施計画に基づき、旧来の仕組みにとらわれず、牛乳・乳製品の流通改革などの分野で、柔軟に規制や制度を見直すことにより強い経済をつくります。また、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」は、地方創生に資する大学改革等、ローカル・アベノミクスの一層の推進や東京一極集中の是正に取り組みます。
関連リンク
• 経済財政諮問会議(内閣府HP)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/
• 経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性の向上~(内閣府HP)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/decision0609.html
• 日本経済再生本部(官邸HP)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/
アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!(官邸HP)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html - menu01
• まち・ひと・しごと創生本部(官邸HP)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/
• 規制改革実施計画(内閣府HP)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/

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日本経済新聞 2017/6/10 1:11
「安倍1強」生かせず アベノミクス5年、骨太方針決定


 政府は9日の臨時閣議で、第2次安倍政権で5回目となる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略を決定した。アベノミクスは2万円台に回復した日経平均株価や堅調な有効求人倍率の成果が際立つものの、経済の体温を示す潜在成長率は上向かない。規制改革などを武器とした成長力のエンジンは不完全燃焼のままといえ、政権が掲げる経済最優先の看板はかすんで見える。
 「長期的な安定成長には、成長戦略による労働生産性の向上、潜在成長力の強化が不可欠だ」――。政権発足から半年後、2013年6月にまとめた骨太の方針の一節だ。金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢を束ねたアベノミクスは市場の関心をさらい、日本への投資を呼び込んだ。
 あれから4年。日銀の推計は、日本経済の姿を冷徹に映している。足元の潜在成長率は0.69%。経済の実力は上がるどころか、14年度下期(0.84%)からむしろ下がっているのだ。
 この間、3本の矢のうち、政府・日銀が注力したのが金融と財政だった。日銀の総資産は500兆円を超え、長期金利は0%付近に張り付いたままだ。財政は5年間で7度の補正予算を編成。投じた国のお金は約25兆円に上った。
 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「極端な財政出動などが経済の資源配分をゆがめ、生産性を落とした」と警鐘を鳴らす。成長力が高まるまでの「時間稼ぎ」だったはずの金融・財政に頼るあまり、成長戦略はおざなりだ。
 日本経済新聞は10項目の経済分野についてエコノミスト10人に5段階の通信簿をつけてもらった。昨年の訪日観光客が2400万人を超えた観光分野は4.6点と高評価で、法人実効税率を7%超下げた法人税改革が3.3点と続いた。
 減税などで収益力は高まったが、企業はカネをため込む一方。3月末で企業の内部留保も390兆円と政権発足時から4割増加。内部留保解消の有効策はみえない。
 人手不足が深刻さを増す「労働市場改革」も厳しい評価だ。解雇の金銭解決の議論は遅々として進まず。外国人材の受け入れでは研究者ら高度人材のほか、国家戦略特区を活用し家事代行など専門人材にも門戸を開いた。大胆な外国人材受け入れは人手不足緩和のカギだが、本格論議を封印。岩盤規制を突破する気概は息切れ気味だ。
 改革の「サボタージュ」も見逃せない。政府は働く時間でなく成果で賃金を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」を創設する労働基準法改正案を15年の通常国会に提出。16年春にも制度導入としていたが、2年たった17年の通常国会でも、成立を見送られる。
 与党は衆院で3分の2の議席を確保。参院でも自民党が27年ぶりの単独過半数を占める。「安倍1強」の中で与党が同法案に高い優先度を付ければ、法案は確実に成立するはずだ。先送りは政府・与党に「やる気」がないことの表れだ。
 ほぼ落第点に近い評価が社会保障改革(2.2点)と財政健全化(2.1点)だ。選挙を前に増税を先送りしたり、社会保障の充実を約束したりする「選挙優先」で取り組みが遅れている。
 年金、医療などの社会保障給付費は16年度で118.3兆円。個人や企業の納める税や保険料で賄っているが、給付を抑える手立てはいまひとつみえてこない。現役世代の負担を増やさないためにも、高齢者の負担を増やしたり、医療費を受け取る日本医師会の岩盤に鋭く切り込んだりする姿勢が必要だ。
 もっとも、社会保障費の伸びを年5000億円に抑制しているように、政権が改革に取り組んでいないわけではない。評価が低いのは「安倍政権のように豊富な政治資源があるならばより大きな改革がなし遂げられるのではないか」との期待の裏返しだ。
 豊富な政治資源は高い支持率や国会の議席が何よりの証拠だ。2000年以降の歴代政権の内閣支持率の平均値を算出すると、第1次を除く安倍政権は56%と最も高い。「劇場型」と例えられ高い人気を誇った小泉内閣の52%をも4ポイント上回った。
 一方、政府が通常国会に提出した法案の数を数えると、小泉政権の平均106本に比べ、安倍政権は70本と約7割にとどまる。法案の内容も郵政民営化など経済分野が多かった小泉政権に比べ、安倍政権は特定秘密法など安全保障分野に偏っているのも特徴だ。
 安倍政権は5月28日に首相在職日数で小泉政権を超え戦後3位となった。菅義偉官房長官は記者会見で「政権はどれだけ長くやっているかではなく、何をやったかがいちばん大事だ」と意欲を示した。「経済最優先」の旗を掲げ続けるからには、「経済のレガシー」への期待に応える責務がある。
(川手伊織、重田俊介)
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朝日新聞 2017年6月10日15時31分
財政悪化の恐れも 政府、成長戦略・骨太方針閣議決定


 政府は9日、第2次安倍政権が発足してから5度目となる成長戦略と、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。「人材投資」で生産性の向上をめざすが、従来の焼き直しや財源があいまいな施策が目立ち、4年前に掲げた改革目標の進み具合もまばら。成長重視の新指標が入る一方、2019年10月の消費増税の記述もなくなり、財政再建の取り組みは後退しかねない。
 「4年半のアベノミクスの取り組みにより、GDPは過去最高の水準、雇用は大きく改善した」。安倍晋三首相は、この日の経済財政諮問会議でこう強調し、「この勢いをさらに加速させるため、人材への投資を通じた生産性の向上を図る」と力を込めた。
 ただ、その柱として骨太方針で掲げた「幼児教育と保育の早期無償化」にかかる年1・2兆円もの財源は「年内に結論を得る」として、先送りした。成長戦略に盛り込んだ自動運転やITを活用した金融サービス「FinTech」の推進にしても、従来の取り組みの延長線上にすぎない。
 4年前に掲げた改革目標の進み具合はどうか。
 日本銀行の大規模な金融緩和で円安が進んだこともあり、外国人旅行者数の増加など、前倒しで目標を達成したものもある。だが、政権の看板政策だった農業改革の目標である法人の農業参入は、あまり進んでいない。「イノベーション世界1位」や「ビジネス環境で先進国3位以内」といった目標は、逆に順位が下がって後退している。
 人口減少で人手不足が深刻化するなか、女性の就業率の向上に欠かせない待機児童の解消も、目標だった17年度末の達成を断念し、3年先送りした。
 その結果、日本経済の底力といえる潜在成長率は、政権発足前と同じ0・8%(内閣府調べ)。16年度の実質成長率は1・2%にとどまり、目標の実質2%に届かない。
 過去の戦略や方針がなぜ未達成なのか、徹底的に究明する姿勢を欠いたまま、今回も計200ページ超に及ぶ政策の山をまとめた。年に1度の成長戦略と骨太方針は、政権の取り組み姿勢をアピールする「道具」になっている。(松浦祐子、関根慎一)
■新指標、歳出拡大につながりやすく
 想定通りの成長が実現できないため、高成長を前提にした財政再建目標の達成も極めて厳しい。
 政府は、社会保障などの政策経費を借金なしで賄えることを示す「基礎的財政収支(PB)の黒字化」を2020年度に達成することを目指す。その目安として、18年度のPB赤字が国内総生産(GDP)に占める割合を1%程度にするはずだったが、昨年の消費増税の再延期で、最新の試算では2・4%と、全く達成できていない。
 さらに、昨年度は円高で企業業績が悪化して7年ぶりに税収が前年度を下回る見込みになり、赤字額が15年度の15・8兆円から20・0兆円に増える見通しだ。この結果、高成長でも20年度の赤字は8・3兆円。現状のままなら11・3兆円と、黒字にはほど遠い。
 PB目標自体は維持されたものの、今回の骨太方針では、国と地方の債務(借金)残高のGDPに占める割合を安定的に引き下げるという新たな指標も加わった。これは歳出を増やしても、高成長なら改善する指標で、歳出拡大につながりやすい。消費増税は「実施する方針に変わりはない」(菅義偉官房長官)としているが、低成長を抜け出す方策が見いだせていないいま、再び成長頼みで歳出を増やせば、さらなる財政悪化を招きかねない。(福間大介)
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しんぶん赤旗 2017年6月10日(土)
主張:成長戦略と「骨太」  大企業には応援、国民には犠牲


 安倍晋三政権の経済政策の基本となる、日本経済再生本部(未来投資会議)の成長戦略(未来投資戦略)と、経済財政諮問会議の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)が閣議決定されました。安倍政権が政権に復帰してから5回目で2018年度の予算編成などに反映されます。破綻した安倍政権の経済政策「アベノミクス」に固執、「企業は史上最高水準の経常利益」(成長戦略)と、企業の立場から現状を美化し、大企業のための対策を羅列する一方、国民には社会保障を切り縮めるなど、格差と貧困を拡大するものです。
効果が出ない経済再生
 安倍政権は12年末の政権復帰後、「経済再生」や「デフレ脱却」を経済政策の目玉に掲げ、異常な金融緩和や財政出動、「規制緩和」などを中心にした「成長戦略」に取り組んできました。そのためにそれまでの経済閣僚や民間議員を中心にした経済財政諮問会議に加え、全閣僚が参加する日本経済再生本部を発足させ、事実上経済政策の“司令塔”としてきました。
 しかし、政権復帰から4年半たち、異常な金融緩和や大企業減税は「円安」と輸出の拡大などで潤う大企業のもうけを増やしただけで、日本経済の立て直しにも、国民の生活向上にも役立っていません。政権復帰から5年目には17年1~3月期の国内総生産(GDP)で見ても実質の伸びは前期比わずか0・3%増、名目ではマイナス0・3%で経済再生とは程遠く、家計調査でみた消費支出は実質1年8カ月連続で前年同月を下回っています。消費者物価の上昇率も目標の2%に届きません。
 安倍政権は、大企業のもうけが増えれば消費も投資も増えるといい続けましたが、そのもくろみが狂っているのは明らかです。とりわけ、消費が増えないため、雇用も増えず、新しい産業への投資も活発になりません。安倍政権が「規制緩和」による「成長戦略」を看板にしながら、大企業のもうけはため込みに回るばかりで、投資も起きてこないのはその表れです。
 今年の成長戦略もIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどを活用し、さまざまな社会問題を解決する「ソサエティー5・0」の実現などを列挙していますが、これまでなぜうまくいかなかったのかを抜きにした全く“絵に描いた餅”です。企業からの申し出に応じ「規制」を「一時凍結」するなどというのはまさに大企業いいなりで、企業にもうけ口を提供するものです。
 骨太方針では幼児教育の「無償化」など「人材への投資」を掲げますが、財源は自民党内で浮上した「こども保険」を念頭にしており、高齢化などに伴って増える社会保険負担を毎年大幅に削減する「経済・財政再生計画」を「着実に実行」することを打ち出しています。国民にいっそうの負担増・給付減を押し付けるものです。
財政再建目標は先送り
 見過ごせないのは今度の「骨太の方針」でこれまで掲げてきた20年度までに政策経費を税収で賄う「基礎的財政支出の黒字化」をあいまいにし、「債務残高対GDP比」の引き下げを持ち出したことです。これではどんなに赤字が増えても、見掛け上GDPが増えれば「GDP比」は下がります。大企業本位の経済成長のために、財政のばらまきは許されません。
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北海道新聞 2017/06/08 08:55
社説:政府の成長戦略 言いっ放しは許されぬ 


 政府は、アベノミクスの新成長戦略「未来投資戦略2017」をあすにも閣議決定する。
 人工知能(AI)やロボットなどの先端技術を産業や暮らしに取り入れ、さまざまな社会課題を解決する「ソサエティー5・0」の実現を目標に掲げる。
 高齢化と人口減が進む日本は、技術革新によって労働生産性の低下を食い止める必要がある。その方向性そのものに異論はない。
 問題は、過去の成長戦略の成果が上がっていないのに、結果を検証する姿勢がないことだ。
 これでは毎回、聞こえの良いスローガンをただ言いっ放しにしているとしか映らない。
 経済構造を転換し、成長に導くまでには試行錯誤があって当然だ。成果が出ていない原因をしっかり分析し、次に生かすという真摯(しんし)な態度を政府に求めたい。
 今回は、日本社会の課題をビジネスチャンスに変えようとの観点から、人手不足が著しい物流、高齢化への対応が急がれる医療・介護などの分野に政策資源を集中投入する方針を示した。
 具体的な取り組みとして、自動運転技術を使い、1台の有人トラックを複数台の無人トラックが追従する隊列走行を20年までに高速道路で実現する目標を掲げた。
 AIを使った遠隔診療や介護ロボットの普及なども盛り込んだ。
 気になるのは、今回が5度目の成長戦略であるにもかかわらず、過去の蓄積や教訓がほとんど反映されていないことである。
 それどころか、これまで掲げてきた20年をめどとする数値目標が、達成のめども立たないまま放置されているというありさまだ。
 13年には、起業のしやすさなどを示す世界銀行のビジネス環境ランキングで「3位以内」の目標を掲げたが、当時15位だった順位が昨年には26位に下がった。
 「開業率と廃業率を米英並み(10%台)に」「外国企業による対内直接投資残高を35兆円に」などの目標も達成にはほど遠い。
 目標と現実が乖離(かいり)している原因を検証し、必要な手だてを講じるのが本来のあり方ではないか。
 これに限らず「20年度の名目国内総生産600兆円」など、威勢の良い数値目標を次々と打ち上げるのがアベノミクスの特徴だ。
 結果が出なくても「道半ば」と言い張り、失敗を上書きするように新たな目標を持ち出して「経済再生への熱心さ」を国民に印象付ける。こんなやり方がいつまでも通じると思ってもらっては困る。
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西日本新聞 2017年06月07日 10時53分
社説:成長戦略 批判に向き合い成果出せ


 政府が新たな成長戦略の素案をまとめた。人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットなどを活用し、快適な生活が可能な「ソサエティー5・0」を目指すという。
 成長戦略の提示は第2次安倍晋三政権になって5度目だ。今回は重点的な戦略分野として自動運転や小型無人機(ドローン)技術を活用した「移動革命の実現」、遠隔診療などを可能とする「健康寿命の延伸」など5項目を挙げた。
 時宜を得たものもあるが、どれだけ実現できるかは疑問だ。日本の成長力を高めるには、これらの戦略も踏まえ、民間企業が革新的な技術や製品、ビジネスを生み出すことが欠かせない。
 過去4回の成長戦略については「成果が不十分」との声も多い。政府はそうした批判に正面から向き合い、規制緩和などで戦略実現に本腰を入れねばならない。同時に、進捗(しんちょく)が遅い過去の成長戦略の検証も必要ではないか。
 アベノミクスは大胆な金融政策、機動的な財政出動とともに、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で経済再生を目指す。先行した金融・財政政策が限界を迎える中で、勝負どころの成長戦略が十分に機能していない。昨年2月には政府自ら成長戦略の3割は「目標未達」と認めている。
 今年の戦略では、移動革命分野でドローンでの配送や、過疎地での自動走行バスの導入、一台の有人トラックを複数の無人トラックが自動運転で追う隊列走行などに取り組む。健康寿命分野ではオンライン診療や介護ロボットの導入などを進める。民間企業の投資を促す迅速な環境整備が必要だ。
 また素案には、企業が規制に縛られずに革新的事業に取り組めるよう、規制を一時凍結する「サンドボックス」制度の創設を盛り込んだ。自動運転、金融技術など現行規制下での開発では後れを取る分野も多い。新制度を生かし、イノベーションを生んでほしい。
 政策の改良には、計画→実行→評価→改善の繰り返しが不可欠とされる。政府の成長戦略にこそ、このサイクル徹底を求めたい。
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毎日新聞2017年6月5日 東京朝刊
社説:アベノミクスの新成長戦略 5度目は期待できるのか


 政府は新しい成長戦略の素案をまとめた。先端技術を活用した生産性向上が柱だ。日本経済の成長を阻む人手不足を緩和する狙いという。
 第2次安倍政権が発足してから5度目の策定だ。アベノミクスの看板と位置づけてきたが、過去の戦略は目立った成果を上げていない。スローガンを並べるだけでは困る。
 今年は、人手不足が著しい物流分野などに政策資源を集中投入する方針を示した。自動運転トラックや小型無人機(ドローン)が対象だ。
 医療・介護の効率化に向け、人工知能(AI)を用いた診療や介護ロボットの導入促進も盛り込んだ。
 これらは「第4次産業革命」と呼ばれ、米国やドイツが先行している。日本も力を入れる必要がある。
 ただ、昨年も第4次産業革命の推進を掲げた。成長戦略のメニューがほぼ出尽くしたことの裏返しと言える。問われているのは実績だ。
 人口減に伴う人手不足は深刻さを増している。有効求人倍率はバブル経済期を超す高水準に達した。
 解決には、技術革新に加え、女性や高齢者、外国人の活用など多様な政策が不可欠だ。安倍政権はどこまで本腰を入れてきたのだろうか。
 女性の就労拡大は最初の成長戦略で明記された。だが「待機児童ゼロ」目標を先送りしたように子育て支援は不十分だ。就労を妨げるとされる配偶者控除の廃止も見送った。
 生産性向上には、企業の新陳代謝を促す規制緩和も欠かせない。
 成長戦略は、各国の起業のしやすさなどを評価する世界銀行のランキングを重視し、「先進国で3位以内」という目標を掲げてきた。
 だが、昨年も26位と低迷した。規制緩和がなかなか進まず、煩雑な行政手続きが壁になっている。
 アベノミクスのうち、金融緩和と財政出動は景気刺激効果が一時的だ。民間主導の持続的成長を実現するには成長戦略の実行が重要だ。
 日本経済の実力を示す潜在成長率は0%台にとどまっている。手っ取り早い金融緩和や財政出動に頼り、成長戦略にしっかり取り組んでこなかった結果ではないか。
 日経平均株価が2万円を回復したが、主因は米国経済への期待だ。政府は株高に安住せず、積み残した課題にきちんと向き合うべきだ。
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山陽新聞 (2017年06月07日 08時00分 )
社説:新成長戦略 実現へ企業の力引き出せ


 第2次安倍政権で5度目となる成長戦略の素案が示された。無人走行バスの自動運転など「移動革命」、ITを使った遠隔診療といった「健康」など五つの戦略分野を掲げた。その上で、企業の要請に応じて規制を一時的に凍結し、迅速な実証試験を可能とすることなどが柱だ。技術革新がもたらす新分野で企業の力を引き出し、実現の軌道に乗せられるかが問われる。
 経済成長を阻む一因である人手不足は深刻だ。素案には、それを補う人工知能(AI)や、あらゆるものがネットワークにつながる「モノのインターネット(IoT)」に関連する政策が並んだ。
 無人走行のバスやタクシーは「道の駅」などを10カ所以上選び、2017年度から実験を始めて住民の買い物などに役立てる。高速道路で隊列の2台目以降のトラックが無人で追走する試みは、早ければ22年の商業化を目指す。
 健康分野では、ITによる遠隔診療のほかに、医師の診療のAIを使った支援や、介護ロボットの導入促進などを盛り込んだ。新たな技術を取り込んで産業の生産性を高め、人口減少社会にあっても成長を確保していく狙いだ。
 未来社会を展望する内容が目立つが、戦略の改定は毎年重ねられており、施策メニューはほぼ出尽くした感もある。今回も全体として新味には乏しい印象だ。戦略を絵に描いた餅で終わらせぬために大切なのは、迅速さだろう。世界の技術革新は急ピッチで進んでおり、的確な規制緩和などで企業を後押ししていくことが求められる。
 地方創生関連では、素案は訪日外国人を中心とした観光を切り札と位置付けた。
 その手段として挙げたのは、日本の伝統的な生活が感じられる古民家の活用だ。レストランや宿泊施設に改修して観光に役立てている事例は各地でみられる。こうした取り組みを20年までに全国200カ所へ拡大する。同時に、誘客に向けた市場調査やプロモーションを担う組織を20年までに全国100カ所で発足させる目標も掲げた。
 中国人観光客らによる「爆買い」が沈静化した後、地域の自然や文化財に触れる「体験型観光」が人気を集めつつある。東京や京都など特定の地域から、地方へ広く足を運んでもらう仕掛けづくりに、国と地方、官民が連携を強めて取り組むことが必要だ。
 アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略を「三本の矢」と位置付けて日本経済の再生を目指してきた。しかし、3本目の矢である成長戦略がここまで十分に推進役を果たしてきたとは言い難く、アベノミクスは手詰まり感が強まっている。
 政府は1月時点で行った集計で、これまで安倍政権が打ち出した成長戦略の施策のうち、3割程度で目標よりも取り組みが遅れているとした。原因を十分に分析し、今後に生かすことが欠かせない。
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神戸新聞 2017/06/01
社説:成長戦略/企業活力引き出す政策を


 政府の未来投資会議が「移動」や「健康」「インフラ」など5分野に標的を定め、新たな成長戦略の素案を示した。人工知能や、あらゆるものをネットワーク化する「モノのインターネット」(IoT)などの先端技術の活用促進に向けて、予算措置や規制緩和を行う。
 4年半前に安倍政権が発足して以来、成長戦略を策定するのは5回目になる。しかし、既に掲げた施策のうち、3割は取り組みが目標より遅れている。
 今回も民間企業が着手済みの内容が多く、新味に乏しい。計画づくりを優先させて拙速に事を進めても、絵に描いた餅になりはしないか。
 大規模な金融緩和による円安株高や、安倍晋三首相自ら経済界に迫った賃上げなど、政府の経済政策は「官製」が前面に出たものが多く「手詰まり」と指摘される。持続的な経済成長を実現するには、企業の活力を引き出す手だてが欠かせない。
 素案は2020年代を目標に、バスやトラックの自動走行やドローンによる荷物配達の実現などを掲げた。人手不足や少子高齢化、地域の衰退といった社会課題の解決に民間企業がチャンスを見いだし、実用化を目指している技術だ。
 各社は開発を急ぐが、道路交通法や航空法などの規制があり、実証実験にはさまざまな手続きが求められる。そこで素案は「サンドボックス制度」の創設を盛り込んだ。
 既存の規制を一時的に凍結し、手続きを大幅に削減して実験を促す。その結果を基に、新たな規制の形などを探る。企業の自由度が高まり、弾みをつける効果が期待できる。
 自動走行の自動車やドローンを使う場合、安全対策に万全を尽くさねばならない。
 成長戦略の柱として安倍政権が掲げる「岩盤規制」の改革の一つが、国家戦略特区での獣医学部の増設だった。首相の知人が理事長を務める加計(かけ)学園に有利になるよう、圧力が働いたと取り沙汰されている。
 民間活力を高めるとする特区もサンドボックスも、特定の地域や団体、企業を政府が後押しする点に変わりはない。選考の公平性や透明性を高め、検証可能な形にするべきだ。
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