2017-06-17(Sat)

「共謀罪」強行成立 民主主義の原則踏みにじる暴挙

おごり極まる議論封じ   頂点に達した政権の横暴  捜査への監視こそ必要だ

<各紙社説・主張・論説>
日本経済新聞)「共謀罪」は厳格な運用を  (6/17)
西日本新聞)「共謀罪」施行へ 捜査への監視こそ必要だ (6/17)

東奥日報)「1強」のおごり極まった/「共謀罪」法成立 (6/16)
秋田魁新報)「共謀罪」法成立 熟議の府否定する暴挙 (6/16)
岩手日報)「共謀罪」成立 おごり極まる議論封じ (6/16)
福島民報)【「共謀罪」法成立】恣意的運用を許さない (6/16)
新潟日報)「共謀罪」成立 乱用防止へ国民が監視を (6/16)

福井新聞)「共謀罪」法 成立 疑念払拭なきままの暴挙 (6/16)
山陰中央新報)共謀罪法成立/運用には十分な説明を (6/16)
山陽新聞)「共謀罪」法成立 「良識の府」の使命どこへ (6/16)
愛媛新聞)「共謀罪」強行成立 民主主義の原則踏みにじる暴挙 (6/16)
徳島新聞)共謀罪成立 民主主義を否定するのか (6/16)

高知新聞)【「共謀罪」法成立】民主主義壊す「安倍1強」 (6/16)
佐賀新聞) 「共謀罪」法成立 1強のおごり極まった (6/16)
熊本日日新聞)「共謀罪」法成立 頂点に達した政権の横暴 (6/16)
宮崎日日新聞)「共謀罪」法成立 市民の手で歯止めかけよう (6/16)
南日本新聞)[「共謀罪」法成立] 数の力の暴挙に政権のおごり極まる (6/16)

琉球新報)「共謀罪」法成立 民主主義の破壊許さず (6/16)
沖縄タイムス)[「共謀罪」採決強行]極まった暴挙 信を問え (6/16)




以下引用



日本経済新聞 2017/6/17付
社説:「共謀罪」は厳格な運用を


 改正組織犯罪処罰法が成立した。これにより、重大な組織犯罪やテロを、実行される前の計画・準備の段階で摘発できるテロ等準備罪が、新設された。
 テロ等準備罪の原型である共謀罪を導入する法案は、過去3回国会に提出されたが、いずれも廃案になっている。「処罰対象が不明確」「内心の自由が侵される」といった批判が強かったからだ。
 構成要件を厳しくしたとはいえ、その共謀罪に連なるテロ等準備罪に多くの国民が不安や疑問を感じていることは、政府・与党もよく分かっていたはずだ。それなのに参院では委員会での採決を省いて審議を打ち切り、いきなり本会議で採決する異例の形で法律を成立させた。残念でならない。
 与野党間での丁寧な議論を通して、「組織的犯罪集団」や「準備行為」の定義を明確にしたり、処罰の対象となる277の罪種を個別に精査したりするような見直しは結局行われないまま、幕切れとなってしまった。
 法律は成立したが、今後も折に触れて法律の意義や狙いについて説明を尽くし、疑問にこたえていく責任が、政府にはある。
 国民の十分な理解が得られていないなか、警察は懸念が残されたままの法律を捜査の現場で運用していくことになる。国会審議などで示された疑念を十分踏まえ、慎重、厳格に適用していかなければならない。
 検察や裁判所、公安委員会などは、これまで以上に捜査のあり方を厳しくチェックしていく姿勢が求められる。実際の運用を通して問題が明らかになれば再び法改正するといった対応も必要だ。
 今回の法改正は国際組織犯罪防止条約を締結するのが目的だった。改正の対象は組織犯罪処罰法であり、条約も法律も、ともにテロ対策ではなくマフィア型の犯罪を封じる枠組みである。政府・与党はテロ対策を掲げて説明してきたが、期待される効果には限界がある。テロの抑止策は改めて見直し、検討していくべきだ。
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西日本新聞2017年06月17日 10時35分
社説:「共謀罪」施行へ 捜査への監視こそ必要だ


 実際に犯した罪を罰する「既遂罪」を原則とした刑事法体系から、大きく踏み出す懸念は強い。
 犯罪を計画段階で処罰する共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」が改正組織犯罪処罰法で新設された。近く施行される。
 刑法の未遂罪や予備罪よりさらに前の段階の「準備行為」を取り締まる。恣意(しい)的な解釈や運用を許さないためにも裁判所のチェックなど厳格な運用を強く求めたい。
 改正法の対象となる「組織的犯罪集団」とは、重大な犯罪を目的に作られた「継続的な結合体」とされ、政府は一般市民は含まないとしている。
 では、警察は捜査対象が犯罪集団であることや、準備行為の有無をどんな方法で認定するのか。情報を収集するしかない。組織内部からの通報や密告も含まれよう。
 とりわけ捜査当局が着目しているとされるのは、警察が電話を傍受できる通信傍受法である。政府は、テロ等準備罪は同法の適用外とする一方、将来同罪にも拡大する可能性を否定していない。
 電話の傍受は通信の秘密を侵す恐れがあるため、歯止めとして裁判所から傍受令状を受けなければならない。それでも法務省によると、一昨年傍受した約1万4千回の通話のうち3分の2近くは犯罪と無関係な内容だった。
 テロ等準備罪の対象犯罪は、特許法や著作権法などテロとは直接関連性のないものを含む277に及ぶ。改正法施行でこれまで以上に幅広い情報収集が迫られる。
 裁判所には厳格な令状審査を求めたい。最高裁によると、逮捕や傍受などの全令状請求の却下率は2015年度でわずか0・008%にすぎなかった。
 捜査の対象は既遂の犯罪ではないため自白偏重も懸念される。取り調べの可視化(録音・録画)は不可欠だ。可視化は相次ぐ冤罪(えんざい)事件の反省から始まった。
 「共謀罪」反対論の背景には、捜査当局に対する国民の不信があることを忘れてはならない。警察による市民監視が常態化するようなら民主主義の根幹は揺らぐ。
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東奥日報 2017年6月16日(金)
社説:「1強」のおごり極まった/「共謀罪」法成立


 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日の参院本会議で可決、成立した。政府は国民の不安や疑問に十分説明を尽くそうとはせず、与党は衆院通過を強行したのに続いて、参院では「中間報告」という異例の手続きを取り、法務委員会採決を省略して本会議採決を強行した。
 中間報告の根拠は国会法にあり「特に必要があるとき」に認められるが、審議の打ち切りで議会制民主主義の否定につながる異例の手法とされる。加計学園問題を巡る野党の追及を逃れようと、国会を閉じることを最優先したようにも見える。国会の議論や国民の声をないがしろにする暴挙だ。安倍晋三首相の下で増長する「1強」のおごりはここに極まったといえよう。
 犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法の原則の大転換である。277の罪で共謀・計画が処罰の対象となり「内心」の領域を探るため警察は団体や個人に対する監視を一層強めることになる。
 社会の隅々に監視が及び、プライバシーが脅かされ、言論・表現の自由が後退するようなことがあってはならない。あらゆる団体や個人が連携し、市民の手で恣意(しい)的な運用や捜査権限の膨張に歯止めをかけていくしかない。
 改正法には、テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員らが重大な犯罪を計画し、資金を用意したり下見をしたりする「実行準備行為」に取り掛かれば処罰するとある。当初、これをもって政府は適用の対象が限定され、準備行為がないと処罰されないから「一般人が対象になることはない」と強調した。
 ところが審議が進むにつれ、正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」とも説明。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。犯罪集団と正当な団体、構成員と一般人という線引きはあいまいになり、誰が何をすれば罪に問われるか、分かりにくい。
 さらに、電話やメールの内容をチェックする通信傍受の対象犯罪拡大や新たな捜査手法の導入の検討が加速することにもなるだろう。民主主義の根幹を成す自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるか-を市民がそれぞれの立場で、じっくり考える必要がある。
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秋田魁新報 2017年2017年6月16日
社説:「共謀罪」法成立 熟議の府否定する暴挙


 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。
 安倍政権下では与党が数の力で採決を強行することが常態化しているが、今回のやり方は特にひどい。法案は参院法務委員会で審議中だったにもかかわらず、自公両党は「中間報告」という異例の手続きを取り、委員会採決を省略して本会議採決を強行するという暴挙に出た。
 改正案は、捜査の在り方によっては人権侵害の恐れがあるなど多くの問題をはらんでいた。そうした懸念が解消されないまま「中間報告」により一方的に審議を打ち切ったことは、「熟議の府」とされる参院の役割を否定するものだ。議会制民主主義の危機と言わざるを得ない。
 改正法は適用犯罪を277とし、処罰対象をテロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」と規定。2人以上で犯罪を計画し、うち少なくとも1人が現場の下見や資金調達などの「準備行為」をすれば計画に合意した全員が処罰される。犯罪実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系が、大きく変容することになる。
 法案審議では「組織的犯罪集団」の定義が曖昧だという指摘が相次ぎ、警察の恣意(しい)的な捜査により「一般人も処罰対象になる恐れがある上、内心の自由やプライバシーが侵害されかねない」と野党が強く反対した。
 しかし、金田勝年法相の不安定な答弁などによって衆院では国民の理解が深まらないまま与党による採決が強行された。安倍晋三首相は「参院の法案審議では丁寧な説明を心掛ける」と約束したが、実際は違った。
 政府は、処罰対象が組織的犯罪集団に限定されるため「一般人は対象にならない」と強調してきた。ところが金田法相は参院審議の中で、犯罪集団の構成員でなくてもその「周辺者」であれば処罰される可能性があることに初めて言及。周辺者の範囲がどこまで及ぶのか、一般人が含まれる恐れがないのか、十分議論する必要があった。
 それなのに参院法務委の審議時間は18時間足らず。野党が「国会の会期(18日まで)を延長して審議を尽くすべきだ」「参院の自殺行為だ」と採決に猛反発したのも当然だろう。
 政府、与党が法案成立を急いだ背景には、首相の友人が理事長を務める「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡る問題で、野党の厳しい追及から逃れるため会期延長を避けたいという思惑が透ける。国会審議よりも党利党略を優先したとすれば、本末転倒も甚だしい。
 捜査機関による恣意的運用で市民団体などが捜査対象にならないか、監視が強化されないかなど多くの問題が積み残されたまま改正法は来月にも施行される見通しだ。そうした懸念をどう払拭(ふっしょく)するのか、政府は納得できる説明をすべきだ。
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岩手日報 (2017.6.16)
論説:「共謀罪」成立 おごり極まる議論封じ


 国論を二分する重大な法案を、国民が熟睡している時間帯に、国民が理解に苦しむ方法で成立に突き進んだ自民、公明両与党の国会運営に疑義がある。
 監視社会化への国民の強い懸念から、国会で過去3回廃案となった「共謀罪」を「テロ等準備罪」と呼称変えした改正組織犯罪処罰法は、数ある疑問や不安の声を押しやって、15日朝の参院本会議で可決、成立した。
 自公両党が繰り出した「中間報告」という手続きは、国会法に定めがある。直近の実施例は第1次安倍政権下の2007年6月。衆院で4回、参院では18回あるという。近年はともかく国会対策上の手段としては珍しくない。
 特異なのは、国会法にある「特に必要があるとき」への与党側の説明が一切ないことだ。加えて、従来は与野党対決型の法案で野党出身委員長が採決に応じない場合の与党の対抗手段として活用されてきた。今回、法務委の委員長は与党公明党の議員だ。
 同党が重視する東京都議選の告示が23日に迫る中で、イメージ戦略上、同党が仕切る委員会が紛糾する事態を避けた-という見方が取り沙汰されるゆえんだ。これが本当なら、本会議で強行批判の矢面に立たされた金田勝年法相はいい面の皮だろう。
 会期最終盤の駆け引きの産物とはいえ、会期延長の選択肢もある中で、実質的な議論の場である委員会の採決を理由なくすっ飛ばし、極めて簡易な委員長報告だけで本会議で賛否を問うのはいかにも乱暴。それも真夜中だ。政権の国会軽視は、すなわち国民軽視と言わざるを得ない。
 かつて「共謀罪」の対象犯罪は600を超え、適用対象は「団体」だった。解釈次第で市民運動や労働組合が摘発対象になる-との批判が巻き起こったのは当然だ。
 今回、政府は対象犯罪を277に絞り、適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と限定的に書き換え。単なる共謀だけでなく、犯罪を実行するための資金集めや物品調達などの準備行為を要件に加えた。
 これをもって政府、与党は「一般人が対象になることはあり得ない」と強調する。しかし国会での議論が具体論に及ぶほどに、判断基準のあいまいさを露呈。拡大解釈や恣意(しい)的運用など、捜査機関の裁量で処罰対象が拡大する懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
 「持ち物がビールや弁当なら花見、地図や双眼鏡などなら犯罪の下見」と金田法相は言った。これで一般人が監視対象にならないとなぜ言い切れるのか。根拠も希薄なままに「あり得ない」の一点張りで議論を封じるのは、おごり以外の何ものでもない。
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福島民報 ( 2017/06/16 08:35 )
論説:【「共謀罪」法成立】恣意的運用を許さない(6月16日)


 今国会の焦点だった「共謀罪」法が成立した。与党は参院法務委員会の採決を省略する「中間報告」という異例の手続きで採決を強行した。日本の刑法体系を激変させる重要な法律が、通常の国会運営の原則から外れるような手法で成立したのは大変残念だ。
 国民が抱く法律への懸念を十分拭うに至らない段階で審議を終了させた自公両党の判断は、国会議員が有権者から委託された役割を放棄したように見える。審議を深めることより、「加計学園」問題や東京都議選への影響という政権や党の都合を優先して採決を急いだことは、国会の在り方に大きな禍根を残した。
 成立した改正組織犯罪処罰法は、犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新たに設けるものだ。
 日本の刑法では、殺人など一部の重大犯罪を除き、実行があって初めて処罰されるのが原則だ。
 テロ等準備罪では、テロ組織などの組織的犯罪集団の構成員らが2人以上で、対象となる277の犯罪の実行を計画し、現場の下見といった準備行為をすれば、計画に加わった全員が処罰される。
 国会審議では組織的犯罪集団の定義や、構成員・関係者の範囲について、担当大臣から国民が安心できる明確な答弁があったとは言いがたい。
 これまで犯罪ではなかった計画段階から罰するということは国民の権利の範囲が従来より狭まるということだ。日本国憲法が保障してきた思想信条の自由など基本的人権に影響を及ぼす可能性がある。
 法律の運用について、政府側は要件が厳格で乱用できないとする一方、反対派は捜査機関による恣意[しい]的な認定の可能性を指摘してきた。しかし、厳格な定義や運用が明確に示されなければ、国民の側には自主規制、萎縮、相互監視といった感情が生じかねない。戦後日本の重要な価値である自由で寛容な社会の在り方を損ねる恐れがある。
 テロ対策は必要だが、マスメディアや国民は反テロを「錦の御旗」とするような恣意的な運用を許さないよう目を光らせ、声を上げ続けなければならない。計画や準備行為の立証のため、捜査機関が捜査手法の拡大を求めることも考えられる。歯止めとなる規制が必要ではないか。
 安全保障関連法の時もそうだったが、政府与党は強引な手法で内閣支持率が多少下がっても、政権運営に大きな影響はないと見ている。「安倍一強」のおごりだ。これが国民が望む「決められる」政治だろうか。(佐久間順)
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新潟日報 2017/06/16
社説:「共謀罪」成立 乱用防止へ国民が監視を


 改正組織犯罪処罰法が自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛った「テロ等準備罪」が新設される。
 成立後、金田勝年法相は「恣意(しい)的な捜査は絶対にあってはいけない」と述べた。だが、政権と与党が強引に成立に持ち込んだ経過を見れば不安は拭えない。
 捜査機関の乱用を防ぐため、国民の側が運用を厳しく監視していくことが不可欠になる。
 内心の自由を脅かす恐れや監視社会につながりかねない危険が生じれば、強く廃止を求めていかなければならない。
 対象とするのはテロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」だ。構成員が2人以上で犯罪を計画し、少なくとも1人が現場の下見や資金調達といった「準備行為」をすれば、計画に合意した全員が罰せられる。
 法案を審議する過程で大きな焦点となったのが、一般人が捜査対象になる可能性である。政府は当初から対象にならないとしたが、答弁は二転三転し、曖昧さを払拭(ふっしょく)しきれていない。
 野党側は「捜査しなければ一般人なのかどうか分からない」などと繰り返し疑問を突き付けた。
 「準備行為」についても「花見と下見をどう区別するのか」を巡るやりとりは話題になったが、何が該当するのかという肝心な部分は明確になっていない。
 こうした問題に議論が集中したのは、「共謀罪」が犯罪実行後の処罰を原則とする日本の刑法体系を変えるものだからだ。
 計画を把握するには捜査対象者の「内心」に踏み込んだり、監視したりすることが不可欠なのではないか。それが社会を萎縮させることにならないか。背景には、こうした疑問や懸念がある。
 改めて「共謀罪」がはらむ問題点を見つめ、不適切な捜査手法や国民の生活を脅かしかねない運用拡大の動きに厳しく目を凝らしていかなければならない。
 「共謀罪」が適用対象とする277の犯罪についても、さらなる絞り込みができないのか検証を続けていく必要がある。
 「共謀罪」新設の根拠として安倍晋三首相や政府が前面に出してきたのが、2020年に開かれる東京五輪・パラリンピックに備えたテロ対策である。この点についても検証が欠かせない。
 テロ対策を講じるには国際組織犯罪防止条約を早期に締結しなければならず、それに向けて国内法を整備するために「共謀罪」が必要-これが政府側の理屈である。
 一方で、野党などは条約締結のために「共謀罪」が必要とはいえないと主張し、議論は平行線をたどった。
 「共謀罪」を土台にしたテロ対策が本当に有効なものとして機能するのかについてもチェックしていかなければならない。
 議論が尽くされたとはいえない中で政権と与党が強権的に成立させた法律が、本当に国民のためになるものかどうか。それが分かるのはこれからである。
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福井新聞 2017年6月16日 午前7時30分
論説: 「共謀罪」法 成立 疑念払拭なきままの暴挙


 【論説】「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が参議院で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数により可決、成立した。法務委員会の採決を経ないまま「中間報告」という禁じ手ともされる手法で採決を強行。国会審議を通じて疑念は払拭(ふっしょく)されるどころか膨らむ一方だというのに、この強硬姿勢は暴挙と言わざるを得ない。
 国会審議では金田勝年法相の迷走で不毛の時間を費やした感が否めない。「一般人は対象にならない」と言い続けてきたが、最近では正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」と答弁。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にも触れた。
 この曖昧(あいまい)さに国民の多くが懸念を抱いている。安倍晋三首相は丁寧な審議や分かりやすい説明を重ねて約束してきたが、「何を行えば罪になるのか」の線引きが結局見えずじまい。国民の安心安全が目的と主張した特定秘密保護法や安全保障関連法と同様に最後は数の力で押し切った。
 「共謀罪」法は、犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法を大転換するものであり、対象とする罪は277にも上る。テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員が重大犯罪を計画し資金を準備したり下見をしたりする「実行準備行為」に着手すれば処罰するとしている。
 計画や準備行為を突き止めるために警察は怪しいと目した団体や個人に対する監視を一層強め、「内心」の領域にまで踏み込むはずだ。そのために電話やメールをチェックする通信傍受の対象犯罪の拡大など新たな捜査手法の検討を加速させるのではないか。
 まっとうな団体や個人であっても、嫌疑を掛けられたくないとの思いから萎縮して発言や行動を控えることにもつながるだろう。憲法で保証された「表現の自由」が損なわれかねない。民進党議員が衆院本会議で述べたように「いったん萎縮した自由を取り戻すのは並大抵ではない」のだ。
 ノーベル賞受賞者の故湯川秀樹氏らが人道主義と平和主義に立つ有志らでつくった「世界平和アピール七人委員会」が「この政権はまさしく国会を殺し、自由と多様性を殺し、メディアを殺し、民主主義を殺そうとしているのである」などとした緊急アピールを出した。「1強」のおごりここに極まれり、だろう。
 会期末が迫る中、審議を尽くさないまま採決を強行。その上でこの日、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡る文書について文部科学省は14の文書が存在したと再調査結果を発表した。16日には参院予算委員会で集中審議が行われるが、明らかに「加計隠し」であり、この機に乗じて一気に疑惑に決着をつけ幕引きを図ろうしている。
 会期を延長し、文書に記された発言者や「行政がゆがめられた」と証言した前川喜平前事務次官の国会招致など徹底解明を尽くすべきだ。
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山陰中央新報 ('17/06/16)
論説:共謀罪法成立/運用には十分な説明を


 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日の参院本会議で可決、成立した。与党は強引に衆院通過をはかったのに続き、参院では「中間報告」という異例の手続きを取り、法務委員会採決を省略して本会議採決に持ち込んだ。国民に残る不安や疑問を払しょくするため、運用面では政府は今後も十分な説明を尽くしてほしい。
 中間報告の根拠は国会法にあり「特に必要があるとき」に認められる。一方で、審議の打ち切りにより議会制民主主義の否定につながりかねない「禁じ手」とされてきた。法案審議とは別に、加計学園問題を巡る野党の激しい追及に対して、政府の対応は後手に回っていたため、国会を閉じることを最優先した対応と取られかねない。
 改正組織犯罪処罰法は、「テロ対策」のために必要だと説明してきた。国際協調でテロを封じ込めるため、とするその本来的な目的は理解できる。同時に犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法の原則の大転換となり、一気に277の罪で共謀・計画が処罰の対象となる。そうした「内心」の領域を探るため、警察は団体や個人に対する監視を一層強めるのではないかという不安はつきまとう。
 社会の隅々に監視が及び、プライバシーが脅かされ、言論・表現の自由が後退するようなことがあってはならない。
 今回の法案審議では政府側の対応のまずさが目立った。5月の参院法務委員会で、民進党の質問に対して答弁に立とうとした金田勝年法相を隣にいた安倍晋三首相が慌てて押しとどめ、政府参考人の法務省刑事局長が答えた。金田法相の答弁は質問とかみ合わないことが多かった上に、法案の中身を理解していないのではないかと思わせる場面もあり、たびたび野党の追及の的になっていた。
 所管大臣がまともに説明できないことで不安が増した。官僚の答弁で取り繕うのではなく、政府としてしっかりした説明をすべきだった。
 また、テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員らが重大な犯罪を計画し、資金を用意したり下見をしたりする「実行準備行為」に取り掛かれば処罰すると改正法にはある。当初、これをもって政府は適用の対象が限定され、準備行為がないと処罰されないから「一般人が対象になることはない」と強調した。
 これに対しても審議が進むにつれ、正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」とも説明。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。犯罪集団と正当な団体、構成員と一般人という線引きはあいまいになり、誰が何をすれば罪に問われるかなど、重要な部分は分かりにくい。
 さらに監視強化が社会に重くのしかかる。電話やメールの内容をチェックする通信傍受の対象犯罪拡大や新たな捜査手法の導入の検討が加速することになろう。民主主義の根幹を成す自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるかを市民がそれぞれの立場で、じっくり考える必要がある。
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山陽新聞 (2017年06月16日 08時00分)
社説:「共謀罪」法成立 「良識の府」の使命どこへ


 「良識の府」といわれてきた参院の使命は一体、どこへ行ったのか。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が参院で可決、成立した。審議が尽くされたとは言えない中、与党は委員会採決を省く「中間報告」という異例の手法で一気に本会議で採決した。
 改正法は2人以上で犯罪の計画を立て、誰かが準備行為を行った場合、計画に合意した全員に刑罰を科すものだ。犯罪の実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を大きく変える内容である。
 与党はかねて、慣例で参院の審議時間は衆院の3分の2の約20時間で十分との見方を示していたが、実際にはそれにも満たない約18時間で打ち切った。あまりに強引な幕引きで、熟議を放棄したとのそしりは免れまい。
 過去には委員長が野党議員で委員会採決に応じない場合、与党が対抗手段として「中間報告」の手法を使ったことはある。ところが今回、参院法務委員長は与党の公明党議員であり、採決ができない環境にはない。
 改正法の成立を期すため、政府、与党は当初、国会会期の延長を検討していた。ところが一転、異例の手段を使ってまで成立を急いだ。国会では学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐって野党が追及を強めており、少々乱暴でも早く改正法を通して国会を閉じた方が得策という判断が働いたのではないか。そう見られても仕方なかろう。
 さらに、混乱が予想される委員会採決の場面を有権者に見せれば、23日告示の東京都議選で公明党にも悪影響を与えるとの配慮から、与党が委員会での採決を省いたとの見方もある。事実なら、あまりにも国会を軽視した対応と言わざるを得ない。
 改正法について、政府は「適用対象は組織的犯罪集団であり、一般人は関係ない」と説明してきた。しかし、組織的犯罪集団の要件は条文に明記されていない。適用対象は曖昧で、捜査機関による拡大解釈を招くのではないかとの指摘がある。犯罪を計画しようとする人の内心を立証するために、捜査機関による監視態勢がこれまで以上に強まる恐れもある。
 こうした懸念に対し、国会では一つずつ具体例を挙げながら、議論を積み重ねることが求められていたはずだ。だが、金田勝年法相の答弁は不安定で、与野党の議論はかみ合わないままだった。国連人権理事会の特別報告者は「深刻な欠陥のある法案を拙速に押し通すことは正当化できない」と批判するが、政府、与党は一顧だにしていない。
 「安倍1強」体制の下、強硬な国会運営が続く。目につくのは対話を重視しようとせず、批判や異論に向き合おうとしない政府、与党の対応だ。議会制民主主義の根幹が揺らいでいるのではないか。そんな危機感すら覚える。
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(愛媛新聞)2017年6月16日(金)
社説:「共謀罪」強行成立 民主主義の原則踏みにじる暴挙


 「言論の府」が、自らの存在意義と尊厳をかなぐり捨てたような国会の風景に、暗たんたる思いがする。今国会最終盤の昨日の朝、野党や国民の激しい反発を無視し、与党が「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を強行成立させた。
 「良識の府」であるはずの参院で、委員会採決を省略していきなり本会議採決に持ち込む、異例の「中間報告」の手続きに踏み切った。国会法が定める、「特に必要があるとき」には全く当たらないのに、国民に説明を尽くす努力を放棄して、突然「禁じ手」を持ち出し数の力で押し切った。政権与党の暴挙に強い憤りをもって抗議する。
 国家が個人の内心に介入、処罰する改正組織犯罪処罰法は、憲法が保障する国民の人権を大きく脅かしかねず、公権力の恣意(しい)的な監視、乱用の危険が極めて大きい。にもかかわらず、山積する疑問や懸念を払拭(ふっしょく)できる説明は、国会でついになされなかった。重大法案をこれほど乱暴かつ拙速に押し通すことは、議会制民主主義の原則を踏みにじるもので到底許されない。決して忘れず、諦めず、直ちに廃止を求めつつ法の運用や政治への監視を強めねばならない。
 大義なき採決強行の理由は、ひとえに「政権の都合」にすぎない。会期を延長すれば、学校法人「加計学園」問題や、国有地の大幅値引き売却が未解明の「森友学園」問題、そして「共謀罪」の瑕疵(かし)が追及され続けることを嫌がったのだろう。
 しかし、誠実に説明責任を果たすことは当然の、最低限の責務。納得できる答弁をしようともせず、与党が勝手に設定した時間数に達したからと「決めるときは決める」(菅義偉官房長官)とうそぶく姿勢は、看過できない。説明が十分かどうか、「決めるとき」かどうかを判断するのは国民の側である。
 そもそも「共謀罪」の法案はテロ・五輪対策を口実に掲げながら、当初「テロ」の文言すら入れ忘れていたことを思い起こしたい。事前の監視なくして一般人とテロリストを区別することなど不可能で、テロ防止には恐らく役に立たない。
 対象の「組織的犯罪集団」かどうかを判断するのは警察や検察で、真の狙いが意に沿わない国民の監視にあることは明白。誰が何をすれば罪に問われるのか、根本の構成要件さえ曖昧な法が、そして担当大臣さえ理解できない法が、成立後に急に適切に運用されるとは思えない。安倍晋三首相は成立を受け「適切に、効果的に運用していきたい」と述べた。「効果的に」の意味するところを注視したい。
 民主主義は、問答無用の多数決ではない。選挙で国民の負託を受けても、個々の政策まで白紙委任されたわけでもない。議論を通じて少数派の意見に真摯(しんし)に耳を傾け、「合意」を丁寧に形成していく過程こそが重要。それを忘れては、信は必ず失われる。すべての国会議員、政治家が肝に銘じてもらいたい。
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徳島新聞 2017年6月16日付
社説:共謀罪成立 民主主義を否定するのか



 国会会期末を控えて、与党が強行突破した。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を、参院本会議で可決、成立させた。
 本来行うべき参院法務委員会での採決を省略し、本会議採決に持ち込む「中間報告」という形でである。
 議論を尽くして最善の結論を得る道を踏み外し、数の力で異論を封じる。まさに、国会の役割と民主主義を否定する暴挙である。
 国民の不安と疑問の声を無視したやり方は、到底認められない。改正法が悪用されないよう、政府を監視していかなければならない。
 改正法は、適用対象をテロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団と規定。2人以上の構成員が犯罪を計画し、少なくとも1人が下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員を処罰するとした。
 政府は一般の人が対象になることはないと説明したが、組織的犯罪集団の定義は曖昧で、何が準備行為と見なされるのかも判然としない。
 正当な市民活動や政府に対する抗議行動が、当局の判断次第で捜査対象にされる恐れは十分にある。
 昨年8月には、野党の支援団体が入居する建物敷地内に、大分県警が隠しカメラを設置する事件が発覚した。
 改正法により「監視社会」が助長され、自由に物が言えない状況になるのではないか。多くの国民がそう懸念するのは当然である。
 批判は海外からも寄せられている。国連特別報告者が「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と政府に書簡を送ったのに続き、国際ペンクラブの会長も同趣旨の声明を発表した。政府・与党はこうした指摘にも耳をふさいだままだ。
 国民の間には「テロ対策」を理由に、改正法に賛成する意見があるのも確かだ。
 国際組織犯罪防止条約の締結に必要だと、政府が強調してきたのも一因だろう。
 しかし、条約の「立法ガイド」を執筆した米国の大学教授は「条約はテロ対策が目的ではない」と明言した。
 そもそも、日本は既にテロ対策の主要13条約を締結しており、国内法の整備もほぼ終わっている。
 脅威をあおり、反対の強い法案を通すのは「特定秘密保護法」や「安全保障関連法」でも見られた安倍政権の常とう手段である。
 政府・与党は、18日までの国会会期を延長して改正法を成立させる方向で検討していた。中間報告という「禁じ手」で、急きょ採決に踏み切ったのはなぜか。
 野党は、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題に対する攻勢を強めている。国会を早く閉じて、幕引きを図り、追及をかわしたかったのではないか。
 「加計問題隠し」だとしたら断じて許されない。
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高知新聞 2017.06.16 08:00
社説: 【「共謀罪」法成立】民主主義壊す「安倍1強」


 安倍政権によって「言論の府」が踏みにじられる光景を、これまで何度見せられたことだろう。
 今また「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案の採決を参院本会議で強行、成立させたことで繰り返された。しかも参院法務委員会での採決を省き、本会議採決に持ち込む「中間報告」という奇手を使った。
 中間報告は国会法で「特に必要があるとき」に認められている。しかし今回、委員会審議を打ち切るだけのどんな「必要」があったのか。
 「野党は同じ質問を繰り返すだけ」と与党は批判する。だがそれは、国民が納得できるだけの答弁がなされていないことの裏返しでもある。まるで理由にならない。
 学校法人「加計(かけ)学園」問題の追及を避けるため、早期に成立させ国会を閉じたい。そんな思惑も指摘されている。事実なら実に手前勝手と言うほかない。
 採決の強行は特定秘密保護法や安全保障関連法でも行われた。世論がどれほど割れていようと「審議時間の積み上げ」を理由に、最後は与党が「数の力」で押し切る。異論や反論に真摯(しんし)に耳を傾けることもない。問題点を指摘するメディアには、どう喝めいた振る舞いさえ見せる。
 安倍政権の強権体質への懸念は自民党内にも散見されるが、大きな声となって執行部と対峙(たいじ)することはない。党内に多様な意見を抱え、バランス機能も働いた往時からは程遠い姿だ。
 むろん多数決は民主主義のルールである。そうではあっても立法府には少数意見を尊重し、行政府の行き過ぎにブレーキをかける役割があるはずだ。現状では立法府は行政府のチェックどころか、「追認」「下請け」機関となっている。政権が推し進めていることとは、民主主義を壊すことにほかならない。
 「組織的犯罪集団」はテロ組織や暴力団だけでなく、労働組合など一般の団体も対象となるのではないか。謀議の有無を内偵するため市民監視の手段が拡大され、合法化されはしないか。
 こうした不安に対し政府、与党は「一般市民が処罰されることはない」と、拡大解釈や乱用を否定する。だが、それを担保する仕組みはない。「口約束」だけでどうして安心できるだろう。
 仮にテロ対策であったとしても、プライバシー侵害などに目を光らせる仕組みは必要となってくる。専門家は捜査機関による監視の件数や概要を国会に報告するよう義務付けたり、政府から独立した組織が点検したりすることを提案している。
 実際に共謀罪と同じような法律を整備している国では、検証可能な歯止め策を設けている。組織犯罪処罰法にも最低限、そうした仕組みが入らない限り容認できない。
 安倍1強政権の下、国会で繰り広げられている光景から目をそらしてはならない。民主主義、立憲主義を損なう行為に異議申し立てを続けること。今ほどそれが求められている時はない。
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佐賀新聞 2017年06月16日 05時00分
論説: 「共謀罪」法成立 1強のおごり極まった


 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日の参院本会議で可決、成立した。政府は国民の不安や疑問に十分説明を尽くそうとはせず、与党は衆院通過を強行したのに続いて、参院では「中間報告」という異例の手続きを取り、法務委員会採決を省略して本会議採決を強行した。
 中間報告の根拠は国会法にあり「特に必要があるとき」に認められるが、審議の打ち切りにより議会制民主主義の否定につながる「禁じ手」といわれる。加計学園問題を巡る野党の激しい追及から逃れようと国会を閉じることを最優先し、国会の議論や国民の声をないがしろにする暴挙だ。
 安倍晋三首相の下で増長する「1強」のおごりはここに極まったといえよう。結果は深刻である。犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法の原則の大転換となり、一気に277の罪で共謀・計画が処罰の対象となる。そうした「内心」の領域を探るため警察は団体や個人に対する監視を一層強めることになる。
 社会の隅々に監視が及び、プライバシーが脅かされ、言論・表現の自由が後退するようなことがあってはならない。政府は「テロ対策」を強調するが、人権への配慮は一切ない。あらゆる団体や個人が連携し、市民の手で法の恣意(しい)的な運用や捜査権限の膨張に歯止めをかけていくしかない。
 今回の法案審議を象徴する光景が5月の参院法務委員会で見られた。民進党の質問で答弁に立とうとした金田勝年法相を隣にいた安倍首相が慌てて押しとどめ、政府参考人の法務省刑事局長が答えた。金田法相の答弁は質問とかみ合わないことが多い上に、法案の中身を理解していないのではないかと思わせる場面もあり、たびたび野党の追及の的になっていた。
 所管大臣がまともに説明できないこと自体、異常というほかない。官僚に答弁させ取り繕おうとしたが、政府としての説明のほころびを覆い隠すことはできなかった。
 テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員らが重大な犯罪を計画し、資金を用意したり下見をしたりする「実行準備行為」に取り掛かれば処罰すると改正法にはある。当初、これをもって政府は適用の対象が限定され、準備行為がないと処罰されないから「一般人が対象になることはない」と強調した。
 ところが審議が進むにつれ、正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」とも説明。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。犯罪集団と正当な団体、構成員と一般人という線引きはあいまいになり、誰が何をすれば罪に問われるか、分かりにくい。
 できるだけ幅広く網を掛けるために、政府が意図的にそうしているとも考えられ、反原発や反基地などの運動をする団体が捜査対象にされるとの懸念を拭い切れない。
 さらに監視強化が社会に重くのしかかる。電話やメールの内容をチェックする通信傍受の対象犯罪拡大や新たな捜査手法の導入の検討が加速することになろう。民主主義の根幹を成す自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるか-を市民がそれぞれの立場で、じっくり考える必要がある。(共同通信・堤秀司)
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熊本日日新聞 2017年06月16日 
社説:「共謀罪」法成立 頂点に達した政権の横暴


 国民のプライバシーと自由を脅かしかねない法律が、十分な説明もないまま数の力によって成立してしまった。いくら「安倍1強」の政権下にあるといっても、このような横暴がまかり通ってよいはずがない。
 犯罪を計画段階で罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日、参院本会議で可決、成立した。法務委員会での審議を求める野党に対し、与党は委員会採決を省略して「中間報告」で済ませるという“禁じ手”を繰り出し、本会議での採決を強行した。
 安倍晋三首相は法案の可決に向けて、丁寧な審議や、分かりやすい説明に努めることを繰り返し約束していただけに、国会軽視のそしりを免れない。突然方針を転換し、なぜ横暴さが目立つ手法をあえて選んだのか。国民に明らかにするべきだ。
<テロを防げるのか>
 改正組織犯罪処罰法は、過去3度廃案となった共謀罪をテロ対策の名の下に復活させたものだ。「テロ等準備罪の『等』はテロ以外の組織犯罪」とし、対象はテロに限定されない。
 政府は、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えたテロ対策のために、国際組織犯罪防止条約の早期締結が必要だと主張。条約締結には、共謀罪を処罰する国内法の制定が欠かせないと唱えてきた。首相も「条約を締結できなければ、東京五輪を開催できないと言っても過言ではない」と述べ法整備に理解を求めていた。
 しかし、条約の「立法ガイド」を執筆した米国の法学者によれば、この条約はテロ対策を目的としたものではないという。条約の締結に必要な予備罪や準備罪の立法措置は完了しており、共謀罪の新設は必要ないとの指摘もある。
 過去を振り返っても、共謀罪と五輪の招致・開催が結び付けて議論されたことはなかった。単独犯によるテロも世界を震撼[しんかん]させている中、同法がテロ防止にどの程度役立つのか不明瞭なままだ。
<不明確な適用対象>
 疑問はそれだけではない。適用対象も不明確なままだ。政府はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」に限定され、下見や資金の用意など「実行準備行為」がないと処罰できないから「一般人が対象になることはあり得ない」と繰り返したが、一方では、正当な活動を行っていた団体でも目的が「一変」した場合は処罰の対象になる、とも説明した。
 目的の「一変」を誰が見極めるのか。捜査機関の恣意[しい]的な判断が入りこむ余地はないのか。犯罪の計画を立てていない人が捜査対象として巻き込まれない保証はあるのか。市民の監視が強まる恐れはないのか…。次から次へと浮かぶ疑問に、政府も国会も明確な答えを示していない。政府はできるだけ幅広く網を掛けるために、意図的に分かりにくくしているように見える。
 反原発や反基地などの運動をする団体が捜査対象になるとの懸念も拭い切れない。適用犯罪の絞り込み方にも疑問がある。公権力を私物化する政治資金規正法違反や政党助成法違反など政治家にとって都合の悪い犯罪は、なぜ対象外となったのか。
<露骨な「加計隠し」>
 幾多の疑問を抱えながら成立を急いだ背景には、首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題の幕引きを図りたいとの思惑が透ける。国会最終盤に入り、政権は野党の攻勢を受けて記録文書の再調査に追い込まれた。与党は改正法案の審議難航を受けて国会会期の小幅延長も検討していたが、延長すれば野党が勢いを増し、23日告示の東京都議選にも影響しかねない、との判断が働いたようだ。
 さらに、異例の中間報告で乗りきった背景には、参院の法務委員長を公明党の議員が務めていたことも影響しているようだ。野党議員の抗議を押しのけて委員会採決を強行することになれば、公明党への打撃は計り知れない。自民党にこうした忖度[そんたく]も働いたことは想像に難くない。
 政府、与党は早く国会を閉じてけむに巻くつもりかもしれないが、一連の動きは議会制民主主義の否定であり、安倍1強の横暴が頂点に達したことを物語る。強権的な手法を許してしまう野党の弱体化は嘆かわしい限りだが、以前なら自民党の中にも政権を批判する勢力がいたはずだ。
 国家による社会の監視強化が進むのは間違いない。自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるか-。市民がそれぞれの立場で考え、恣意的な運用や捜査権限の膨張に歯止めをかけていく必要があろう。
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宮崎日日新聞 2017年6月16日
社説:「共謀罪」法成立 ◆市民の手で歯止めかけよう◆


 犯罪の計画を罰する共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日の参院本会議で可決、成立した。政府は国民の不安や疑問に十分説明を尽くそうとはせず、与党は衆院通過を強行したのに続いて、参院では「中間報告」という異例の手続きを取り、法務委員会採決を省略して本会議採決を強行した。加計学園問題を巡る野党の激しい追及から逃れようと国会を閉じることを最優先し、国会の議論や国民の声をないがしろにする暴挙だ。
1強のおごり極まる
 中間報告は国会法で「特に必要があるとき」は認められるが、審議の打ち切りにより議会制民主主義の否定につながる「禁じ手」。安倍晋三首相の下で増長する「1強」のおごりは極まった。
 結果は深刻である。犯罪が実行されて初めて罰するという刑事法の原則の大転換となり、一気に277の罪で共謀・計画が処罰の対象となる。そうした「内心」の領域を探るために警察は団体や個人に対する監視を一層強めることになる。
 政府はテロ対策を強調するが、人権への配慮は一切ない。あらゆる団体や個人が連携し、市民の手で法の恣意(しい)的な運用や捜査権限の膨張に歯止めをかけるしかない。
 金田勝年法相の答弁は質問とかみ合わないことが多い上に、法案の中身を理解していないと思わせる場面もあり、たびたび野党の追及の的になっていた。所管大臣がまともに説明できないこと自体、異常というほかない。
 テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」の構成員らが重大な犯罪を計画し、資金を用意したり下見をしたりする「実行準備行為」に取り掛かれば処罰すると改正法にはある。当初、政府は準備行為がないと処罰されないことから「一般人が対象になることはない」と強調した。
幅広い網は意図的か
 ところが審議が進むにつれ、正当な活動をしている団体が犯罪集団に一変することもあるとした上で「嫌疑があれば、もはや一般人ではない」とも説明。構成員ではない「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。犯罪集団と正当な団体、構成員と一般人という線引きはあいまいになり、誰が何をすれば罪に問われるか、分かりにくい。
 できるだけ幅広く網をかけるために、政府が意図的にそうしているとも考えられ、反原発や反基地などの運動をする団体が捜査対象になるとの懸念を拭いきれない。
 さらに監視強化が社会に重くのしかかる。電話やメールの内容をチェックする通信傍受の対象犯罪拡大や新たな捜査手法の導入の検討が加速することになろう。民主主義の根幹を成す自由に物を言える権利を奪われないために何をすべきか、何ができるか-を市民がそれぞれの立場でじっくり考える必要がある。
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南日本新聞 ( 2017/6/16 付 )
社説:[「共謀罪」法成立] 数の力の暴挙に政権のおごり極まる


 熟議を軽視し、なりふり構わずに数の力に物を言わせた「1強」政権の暴挙である。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が参院本会議で可決、成立した。
 与党が用いたのは、参院法務委員会の法案審議を打ち切って「中間報告」を求め、本会議で採決する異例の手続きだ。
 委員会採決の後で本会議にはかる「委員会中心主義」は、法案の慎重な審議を重視する立法府の根幹である。手順を省く乱暴な手法に、野党が「憲政史上に汚点を残す」と猛反発するのは当然だ。
 しかも、「監視社会や捜査権乱用につながる」「内心の自由を侵される」といった国民の懸念が噴出していた法案だ。基本的人権に直結する重要な内容にもかかわらず、安倍政権は加計学園を巡る野党の追及から逃れるため、国会を閉じることを優先した。
 国民を代表する立法府と向き合おうとしない姿勢は、極めて不誠実というほかない。政権のおごり体質を見る思いだ。
 参院の運営も問題だ。「良識の府」として衆院に行き過ぎがあれば歯止めをかけることが、参院に期待される役割である。与党が過半数を占めるとはいえ、安倍政権が望む早期幕引きに手を貸したのは情けない。
■法の根幹に疑問残る
 成立した改正法は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」を新設して、捜査機関の権限を大幅に拡大する内容である。
 政府はテロ対策を名目に、過去3回廃案になった共謀罪法案とは別物であることを強調した。ところが、審議が進むにつれて説明は二転三転した。
 処罰対象の「組織的犯罪集団」について、政府は当初「一般人は対象にならない」としていた。
 しかし、金田勝年法相は一般の団体でも性質が一変した場合に処罰対象になる可能性を示した。犯罪集団の「周辺者」が処罰される可能性にまで言及した。
 政府は、「一般人」を巡って「通常の社会生活を行っており、組織的犯罪集団とかかわりのない人」と説明する。だが、線引きはあいまいだ。しかもその判断は捜査機関に委ねられる。
 捜査対象が際限なく広がるのではないか。国民が抱く不安を払拭(ふっしょく)する説明は、ついに聞くことができなかった。
 金田法相の答弁は質問とかみ合わず、法案の中身を理解しているとは思えない場面も目立った。所管大臣がまともに説明できないこと自体、異常というほかない。
 適用犯罪を277としたことも、根拠はあいまいだ。保安林でキノコを採る森林法違反や、墓を荒らす墳墓発掘死体損壊罪なども含まれる。組織犯罪とどう結びつくのか疑問だ。
 政府は法整備の目的として「テロ対策」を掲げる。
 組織的犯罪集団の構成員2人以上で犯罪を計画し、うち少なくとも1人が現場の下見や資金調達などの「準備行為」をすれば計画に合意した全員が処罰される。
 野党側は現行法の予備罪などで対応できると主張した。犯罪が実行されて初めて罰することを原則とする刑法体系の転換にもかかわらず、政府の説明にはほころびが際立った。
 法整備のもう一つの柱は、東京五輪・パラリンピックに向けて国際組織犯罪防止(TOC)条約を締結することだという。
 だが、条約はイタリアのシチリア島で調印されたことに象徴されるようにマフィア対策である。組織的な経済犯罪の摘発が狙いだ。
 締結に改正法は必要ないという専門家は多い。条約の「立法ガイド」の執筆者も「条約はテロ対策が目的ではない」と明言した。政府の説明は信ぴょう性に欠ける。
■恣意的な運用を懸念
 法は誰が何をすれば罪に問われるのか分かりにくい。政府が意図的にそうしたとも考えられる。できるだけ幅広く網をかけ、捜査対象を広げる狙いが透ける。
 反原発や反基地などの市民運動にも矛先が向くのではないか。
 昨年、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設の抗議活動をしていた県民が公務執行妨害罪などに問われ、拘束期間は5カ月間にも及んだ。市民グループは、「共謀罪」成立で警察の強引さが加速する恐れを指摘する。
 米国家安全保障局(NSA)による大量監視を内部告発した米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン氏は、あらゆる通信情報をスパイできるシステムを日本に供与したと証言した。
 対象犯罪が拡大した通信傍受など強力な武器を持つ捜査手法と、「共謀罪」が組み合わされば、警察の活動範囲は飛躍的に広がる。内心にまで踏み込んで権力を恣意(しい)的に運用する人権侵害は、自分と関係のない「犯罪者」だけに起こり得る話ではない。
 世界各地でテロが頻発する中、治安強化の必要性を認めないわけではない。だからといって、これに乗じた不当な人権侵害は到底容認できない。
 「共謀罪」成立で、日本は監視社会に大きく一歩踏み出した。国民一人一人が、法の恣意的運用や捜査権限の膨張に厳しい目を向け続けなければならない。
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琉球新報 2017年6月16日 06:01
<社説>「共謀罪」法成立 民主主義の破壊許さず


 数の力を借りた議会制民主主義の破壊は許されない。
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法が参院本会議で成立した。自民、公明両党が参院法務委員会での審議を省略する「中間報告」と呼ばれる手続きで採決を強行し、与党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。
 この法律は監視社会を招き、憲法が保障する「内心の自由」を侵害する。捜査機関の権限を大幅に拡大し、表現の自由、集会・結社の自由に重大な影響を及ぼす。
 衆院は十分な論議もなく法案を強行採決した。「良識の府」であるはずの参院も20時間足らずの審議で同様の暴挙を繰り返したことに強く抗議する。法案の成立は認められない。もはや国民に信を問うしかない。
 中間報告は国会法が定める手続きだが、共謀罪法は熟議が必要であり、一方的に質疑を打ち切るのは国会軽視である。学校法人「加計学園」問題の追及を避けるためだとしたら本末転倒だ。
 政府は共謀罪法の必要性をテロ対策強化と説明し、罪名を「テロ等準備罪」に変更した。テロ対策を掲げて世論の賛同を得ようとしたが、同法なくしては批准できないとする国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は、テロ対策を目的としていない。
 TOC条約の「立法ガイド」を執筆した米国の大学教授は「条約はテロ対策が目的ではない」と明言している。政府が強調する根拠は崩れている。
 日本政府は共謀罪法を巡り、国連人権理事会のプライバシーの権利に関する特別報告者からも「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」と指摘されている。だが、理事国である日本政府は国際社会の懸念に対して真剣に向き合っていない。
 共謀罪法は日本の刑法体系を大きく転換し、犯罪を計画した疑いがあれば捜査できるようになる。政府は当初「組織的犯罪集団」のみが対象であり一般人には関係がないと強調してきた。しかし参院で「組織的犯罪集団と関わりがある周辺者が処罰されることもあり得る」と答弁した。周辺者を入れれば一般人を含めて対象は拡大する。
 さらに人権団体、環境団体であっても当局の判断によって捜査の対象になると言い出した。辺野古新基地建設や原発再稼働、憲法改正に反対する市民団体などが日常的に監視される可能性がある。
 かつてナチス・ドイツは国会で全権委任法を成立させ、当時最も民主的と言われたワイマール憲法を葬った。戦前戦中に監視社会を招いた治安維持法も、議会制民主主義の下で成立した。
 共謀罪法は論議すればするほどほころびが出ていた。強行採決によって幕引きしたのは「言論の府」の責任放棄である。過去の過ちを繰り返した先にある独裁政治を許してはならない。
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沖縄タイムス 2017年6月16日 07:30
社説:[「共謀罪」採決強行]極まった暴挙 信を問え


 「再考の府」参院の自殺行為に等しい。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が参院本会議で成立した。審議中だった参院法務委員会の採決を飛び越し、本会議で採決するという「禁じ手」を使った上での異例の採決強行だ。
 いわゆる「中間報告」と呼ばれる国会の運営手法で、過去に衆院で4回、参院で18回使われた。しかし大抵は、野党が委員長を務めることによる審議停滞解消を目的としてきた。直近2009年の改正臓器移植法成立時も、与野党から相次いで修正案が出されるなど、曲がりなりにも活発な審議の末の行使だった。
 だが今回はどうか。自公が圧倒的多数を占める国会で、審議停滞の懸念は全く見当たらず、早期成立の必要性もない。逆に、各社の世論調査では、法案の徹底した審議を求める声が根強くあった。
 必要のない「中間報告」の行使は、国会での議論を一方的に封じ込める暴力にほかならない。
 「共謀罪」の参院での審議は20時間に満たず、自公が目安としてきた衆院法務委員会の30時間にも遠く及ばない。審議不足の同法が、テロ対策を口実に国民の監視強化を招く危惧は深まっている。
 「共謀罪」成立を受け安倍晋三首相は「東京五輪・パラリンピックを3年後に控えている。一日も早く国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結し、テロを未然に防ぐため国際社会としっかり連携していきたい。そのための法律が成立したと考えている」と発言した。
■    ■
 しかし首相のこの言葉こそが、審議の未成熟さと異常さを露呈している。
 首相が同法成立の目的とするTOC条約は、マフィアなどの経済犯罪が対象だ。条約の「立法ガイド」を執筆した米国の大学教授ニコス・パッサス氏も「テロ対策が目的ではない」と切り捨てる。
 こうした条約締結とテロ対策の必要性の「すり替え」は、早くから国会内外で指摘されてきたが、政府は同法の通称を「テロ等準備罪」とするなど、見解を改めるどころか前面に打ち出した。
 首相は衆院代表質問で「条約を締結できなければ東京五輪を開催できないと言っても過言ではない」とも明言。だがそれが事実なら、そもそも五輪招致などできないはずで、答弁には疑問符が付く。
 あからさまな矛盾でさえ、今国会では修正されることもなかった。
 それどころか、二転三転する答弁で厳しい批判を浴びた金田勝年法相の挙手を、首相や副大臣が制止。代わって法務省刑事局長が説明に立つなど、これまでの国会では見たことがない醜態をさらした。
 結果として審議は一向に深まらず、逆に審議するほど同法への疑念が新たに湧いてきた。当初「組織的犯罪集団に限定」と説明した対象者についても、審議終盤で「環境保護団体」や「周辺者」も対象とするなど、捜査機関による恣意(しい)的運用への疑念はますます高まっている。
 異なる意見に耳を貸さない。「印象操作」や「レッテル貼り」などの発言を繰り返し質疑に正面から答えない-。参院審議では、これまでもあった安倍政権の特異な国会対応がさらに際立った。
■    ■
 今回の採決は、横暴とも言えるこうした政権の本質を表しているといえよう。首相が矢面に立たされている「加計(かけ)学園」や「森友学園」問題の早期の幕引きと、都議選を念頭に置いた党利党略にほかならない。
 異例の「禁じ手」が断行された15日、松野博一文科相は、これまで「確認できない」と突っぱねてきた「総理のご意向」文書の存在を一転認めた。
 奇妙なタイミングの一致に「国会が閉会すれば追及もされまい」との「安倍1強」のおごりが透けて見える。
 「特定秘密保護法」「安保法」など、数を盾に「違憲立法」の採決を次々と断行してきた安倍政権の強行姿勢は、ついにここまできた。行政府・内閣をチェックするはずの立法府・国会がその役割を放棄するなら、ただすのは国民しかいない。
 安倍首相は選挙で国民に信を問うべきである。
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