2017-07-22(Sat)

高層住宅火災 広がる怒り 警鐘無視した行政

外断熱総点検 外装材の安全確認 建基法義務付けよ

高層住宅「避難を」、火災1カ月の英国で何が
----■日本の延焼防止策
 日本ではどうか。総務省消防庁によると、11~15年、11階建て以上の共同住宅では全国で2512件の火災が起きた。平均焼失面積は3・34平方メートル。11階建て以上はスプリンクラーの設置が原則、義務づけられ、扉で延焼を防ぐ仕組みなどがあるためだ。
 東京消防庁の担当者は「ロンドンのような大規模火災が起きる可能性は低い」。ただ、東京消防庁が昨年、立ち入り検査をした都内の高層マンションでは、消防計画をまとめる防火管理者の未選任や消防設備の未点検など約8割で消防法違反が見つかっている。
(朝日新聞 2017年7月20日05時00分)

◇英高層住宅火災で広がる怒り 貧困地域、警鐘無視した行政
 【ロンドン=小滝麻理子】ロンドン西部で14日に起きた低所得者向け高層公営住宅の大火災の波紋が、英国内で広がり続けている。住民らが発し続けた防災に関する行政への懸念が無視されていたことが明らかになり、メイ首相や歴代政府への批判は強まる一方だ。火災は格差拡大や規制緩和の影で隅に追いやられた労働者たちの怒りの象徴となりつつある。
(日本経済新聞 2017/6/28 18:23)


外断熱の中高層建築物は総点検を  外装材の安全確認を建基法義務付けよ
----「外断熱を採用した中高層建築物は、使用建材の点検を急げ」「一定規模以上の建物に採用する外装材は、燃え広がりの安全性確認を建築基準法などで義務付けるべきだ」――。外装材の燃え広がりの問題に詳しい東京大学の野口貴文教授は、英国で発生した高層公営住宅の火災を教訓にこう訴える(日経ホームビルダー)。
----外断熱を採用した中高層建築物における火災リスクに警鐘を鳴らす野口貴文・東京大学教授。そのリスク評価につながるJIS(日本工業規格)の制定に尽力した同氏は、建築基準法の規制を強化する必要性を訴える。
(日経アーキテクチュア 2017/07/20-21)




以下引用


朝日新聞 2017年7月20日05時00分
(ニュースQ3)高層住宅「避難を」、火災1カ月の英国で何が
 79人の死者・行方不明者を出したロンドンの高層公営住宅火災から、14日で1カ月がたった。英国では、安全性に問題のある高層建築物が200棟以上に上ることが判明。住民を避難させる動きも出ている。何が起きているのか。
 ■200棟超が「不合格」
 「今すぐ避難してほしい。とどまるならあとは自己責任だ」
 火災発生から10日後の先月24日。ロンドン北部カムデン区にある23階建ての高層公営住宅で、留学生アイザック・ツァイさん(35)は区側の男性に警告された。時刻は午前1時だった。
 同区はその前日、「住民の安全を保証できない」と4棟の高層公営住宅の改修を発表。入居する計650世帯が4週間にわたって避難を強いられることになった。
 英政府によると、今回の火災を受けた英政府の緊急検査で、同区を含む全国57の自治体にある高さ18メートル以上の高層建築物のうち、少なくとも235棟が「不合格」と判定された。いずれも「外壁材」の耐火性が問題視された。
 ■燃えやすい外壁材
 外壁材は、建物の見栄えをよくしたり、断熱性を高めたりするパネル型の部材。火災があった建物の外壁材は、プラスチックの板をアルミニウムで挟んだ構造で、炎が外壁材を伝って高層階に達し、被害が拡大したとみられる。
 防災コンサルタントのフィル・バレー氏によると、ドイツなど多くの国で、燃えやすい外壁材の高層建築物への使用は禁止されている。一方、英国では「業者向けの手引も、こうした外壁材の使用を明確に排除していない」と言う。
 外壁材の危険性を指摘する声は以前からあり、政府は十分な対応をとってこなかったとの批判も出ている。ハモンド財務相は英BBCに対し「我々の規制が正しい材質を認め、間違った材質を禁止していたかどうか、という問題はある」と釈明した。
 スプリンクラーにも目が向けられている。英国では、2007年以降に建てられた高さ30メートル以上の建築物にスプリンクラーを設置することになっているが、さかのぼって付ける必要はない。火災があった建物は24階建てだが、1974年建造でスプリンクラーはなかった。火災が起きた建物にスプリンクラーを設置する場合、20万ポンド(2900万円)かかるとの推定もある。古い建物だと、構造的に取り付けが難しいケースも多い。
 BBCによると、英国の高層公営住宅でスプリンクラー設備があるのは全体の1%に満たないという。ロンドン南部クロイドン区は、区内に25ある10階以上の公営住宅すべてにスプリンクラーを後付けする、と発表した。
 ■日本の延焼防止策
 日本ではどうか。総務省消防庁によると、11~15年、11階建て以上の共同住宅では全国で2512件の火災が起きた。平均焼失面積は3・34平方メートル。11階建て以上はスプリンクラーの設置が原則、義務づけられ、扉で延焼を防ぐ仕組みなどがあるためだ。
 東京消防庁の担当者は「ロンドンのような大規模火災が起きる可能性は低い」。ただ、東京消防庁が昨年、立ち入り検査をした都内の高層マンションでは、消防計画をまとめる防火管理者の未選任や消防設備の未点検など約8割で消防法違反が見つかっている。
 (榊原謙=ロンドン、国吉美香)


日本経済新聞 2017/6/28 18:23
高層住宅火災で広がる怒り 貧困地域、警鐘無視した行政
 【ロンドン=小滝麻理子】ロンドン西部で14日に起きた低所得者向け高層公営住宅の大火災の波紋が、英国内で広がり続けている。住民らが発し続けた防災に関する行政への懸念が無視されていたことが明らかになり、メイ首相や歴代政府への批判は強まる一方だ。火災は格差拡大や規制緩和の影で隅に追いやられた労働者たちの怒りの象徴となりつつある。
現場近くは火災の行方不明者を捜すポスターが随所に貼られている=ロイター
 「貧乏人がどう死ぬか。知りたければグレンフェルタワーを見においで」。ロンドンで育ったナイジェリアの著名詩人、ベン・オクリ氏はこの週末、こんな詩を火災現場となった高層住宅「グレンフェルタワー」の犠牲者を追悼して発表し、無念と憤りを表した。火災発生から約2週間。現場近くには今も多くの被災住民が避難し、ボランティアらによる支援活動が続く。
 火災の被害は英史上最悪となった。警察発表によると、少なくとも79人が死亡。120世帯、約600人とされる住民の多くは中東やアフリカ、アジア、南欧などから集まった多様な人種の移民たちで、イスラム教徒の姿が目立つ。建物全体が激しく燃えたため、逃げ遅れた住民の遺体の収容や身元確認は難航し、現場周辺は行方不明者を探すポスターで埋め尽くされている。
 悲しみはいま激しい怒りへと変わっている。
 「政府は私たち労働者の声を無視している」。近隣に約40年住み、郵便配達員の夫と暮らす女性は憤りをあらわにする。
 グレンフェルタワーは1974年、低所得者向けの高層公営住宅として建てられた。その後老朽化が進み、特に2009年にロンドンであった住宅火災の後は専門家や住民たちが防災の不備を行政に度々指摘していた。BBCによると、これまで少なくとも4人の閣僚が大規模火災につながる恐れの陳情を受けた。
 しかし、対策は取られなかった。昨年の改装で使われた耐火性の低い安価な外壁材が、火が広がる大きな原因になったことも発覚。非常階段は1つしかなく、スプリンクラーもなかった。最大野党の労働党は「住民たちは政府の緊縮策に殺された」と批判を強める。
 底流には拡大する一方の格差への怒りがある。
 グレンフェルタワーがあるケンジントン・アンド・チェルシー王室特別区は、セレブリティや富裕層、銀行家などが暮らす全英で最も豊かな高級住宅地だ。だが、グレンフェルタワーがある一角だけは、古くからの貧困地域で、貧しい労働者や移民系が押し込められるように住む高層の公共住宅が隣接する。住民の多くは病院やホテルの清掃、クリーニング、レジ店員など低賃金労働に従事する。
 英政府が金融危機後に外資による不動産投資への税優遇を強めたこともあり、近年は中東やロシア、中国などの富裕層による物件取得が一段と増え、グレンフェルタワーの近隣でも物価が急上昇していた。地域の学校で事務員として働くナガット・カリングトン(56)さんは「物価は上がるのに、規制緩和が進み、年金や医療など福祉サービスは低下する一方。まるで富裕層に包囲されているようだ」と言う。別の住民男性も、「政府は富裕層を優先し、労働者を後回しにした」と話す。
 火災直後に、メイ氏が被害者をすぐに慰問しなかったことへの批判も爆発した。「メイは退陣しろ」「恥を知れ」。火災を受けて、ロンドン各地で住民らによる政府への抗議デモが発生し、地元の区役所に数百人が詰めかけた。
 メイ氏は21日に再開した議会で火災への対応が「政府の失敗だった」と認め、謝罪。火災原因と責任を徹底的に究明するための調査を指示した。英政府は27日、グレンフェルタワーと同じ外壁材を用い、火災が広がりやすい高層建築が少なくとも95あると発表した。8日の総選挙で自らが率いる保守党の議席が過半数割れとなり、窮地に追い詰められるメイ氏だが、英国内では「火災対応こそメイ政権の命取りとなりうる最重要課題」との声が増している。
 「まるでバベルの塔だ」。英国内で著作活動の多いトラバー・フィリップ氏は、多数の労働階級を住まわせるために高く建てられ、今は黒焦げとなったグレンフェルタワーをこう表現し、人々を孤立させた社会のありように疑問を呈した。これから何をどう変えていくのか、火災は英国の分断の新たな側面を浮かび上がらせ、重く問いかけている。

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日経アーキテクチュア 2017/07/20
外断熱の中高層建築物は総点検を 東京大学・野口貴文教授に聞く(前編)
外断熱を採用した中高層建築物は、使用建材の点検を急げ」「一定規模以上の建物に採用する外装材は、燃え広がりの安全性確認を建築基準法などで義務付けるべきだ」――。外装材の燃え広がりの問題に詳しい東京大学の野口貴文教授は、英国で発生した高層公営住宅の火災を教訓にこう訴える(日経ホームビルダー)。
 発泡系断熱材を外壁に張る外断熱工法は、国内外で採用が増えつつある。比較的手軽に、高い省エネ性能を確保できるからだ。一方、同工法を採用した中高層建築物で外壁が燃え広がる大規模火災が、近年海外で相次いで発生している。 
 2008年の米国・モンテカルロホテル、09年の中国・テレビ文化センター(TVCC)、10年の韓国・釜山高層マンションなどだ。
 私はTVCCの火災現場を調べ、日本でも対策を急ごうと、建築研究開発コンソーシアムに「有機系外壁材の燃え拡がり抑制に関する勉強会」を11年5月に立ち上げた。東京大学、東京理科大学、建築研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所、建材メーカーなどの有識者がメンバーだ。
 その成果を踏まえてJIS(日本工業規格)原案作成委員会を組織し、15年1月に外装材の燃え広がりの試験方法を記したJISA1310を制定した。
◇広島市営基町高層住宅は外壁の上階延焼
 日本において、外装材が燃え広がった中高層建築物の火災例は、1996年の広島市営基町高層住宅だ。バルコニーの手すり壁にアクリル板が使用されていて、火元の9階から最上階の20階でまで上階延焼した。
図)1996年に発生した広島市営基町高層住宅の火災を扱った日経アーキテクチュア2001年10月15日号の記事(資料:日経アーキテクチュア)
 2014年に発生した東京・新宿の歌舞伎町におけるビル火災では、外装材に有機物が多く含まれる防水外装塗料を重ね塗りしていて、これが延焼を招いた。その後は国内において外装材の延焼が著しかった火災を確認していないものの、潜在的なリスクがあると懸念している。建築基準法には外壁の非損傷性、遮熱性、遮炎性に関する規制があるだけで、外装材の燃え広がりについての定めがないからだ。
 特にロンドンで火災を起こした公営住宅のように外断熱を採用した中高層建築物は、使用建材の性能や組み合わせを急いで点検すべきだ。
 2000年の建基法改正以前は、建築行政外断熱工法を比較的厳しく扱ってきた。1985年の建設省建築指導課長通達に基づく指導だ。
 建基法改正後は根拠に乏しい行政指導ができなくなり、2002年の日本建築行政会議でRC(鉄筋コンクリート)造、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造、S(鉄骨)造などであれば外壁に有機系の断熱材を用いた外断熱を施すことが可能と示された。そのため現在は、設計者と建て主が外断熱工法の仕様を自由に決められる。
 一方、木造については、02年の日本建築行政会議で、告示に書かれた耐火構造(準耐火構造、防火構造、準防火構造も含む)の仕様の外側にグラスウールやロックウールを張ることは可能と示された。それ以外の発泡系断熱材は、原則として大臣認定が必要だ。
 ただ、外装材の燃え広がりに規制がない点は、木造もRC造と変わらない。(談)


日経アーキテクチュア 2017/07/21
外装材の安全確認を建基法義務付けよ
東京大学・野口貴文教授に聞く(後編)
 外断熱を採用した中高層建築物における火災リスクに警鐘を鳴らす野口貴文・東京大学教授。そのリスク評価につながるJIS(日本工業規格)の制定に尽力した同氏は、建築基準法の規制を強化する必要性を訴える。前編はこちら (日経ホームビルダー)。
 2015年1月に制定したJISA1310は、高さ約4m、幅1.82mの試験体に0.91m角の開口部を設け、開口部から火炎を噴出する試験だ。外装材の温度や熱流束、延焼高さ、外装材の脱落状況、通気層内の状況などを確認する。 
 外装材の燃え広がり試験に関する国際規格としては、ISO13785-1およびISO13785-2がある。ISO13785-1は、試験体の下部にバーナーを置いてあぶるので、試験体が溶融する場合に支障が出るなど、いくつか問題がある。
 一方、ISO13785-2は、JISA1310と同様に開口から火炎を噴出する試験であるが、試験体寸法が大きいので、試験の実施が技術的・費用的に困難である。
 しかも、両方とも、採用している国が限られる。そこで、JISA1310は上記のISOを基に加熱方法などを見直した。
図)左は、JISA1310に記された燃え広がりの試験方法、右は試験中の様子。開口部を設けた高さ約4m、幅1.8mの外装材を試験体に使い、室内側から開口部に向かって炎を噴出させる。試験体の表面温度や熱流速を測定し、炎の到達範囲、試験体の脱落状況なども記録する(資料: JISA1310に基づき日経ホームビルダーが作成、写真:野口貴文・東京大学教授)
 英国にも、BS8414という外装材の火災安全性を評価する試験がある。新築の建物はそれに合格した製品しか使えない仕組みだ。
 BS8414では、高さ8m以上、主翼壁の幅2.8m以上、袖壁の幅1.5m以上の試験体に2m角の開口部を設け、開口部の上端から1m上までの熱流束などを調べる厳しい試験だ。英国・ロンドンで起こった高層公営住宅の火災例は、この試験をクリアした外装材を用いていたとは想定しにくい。
 米国には、NFPA285という外装材の火災安全性を評価する試験がある。試験体は実大の3分の2に相当する、高さ5.5m、幅4.1mの2階建てだ。 
 JISA1310を作成する際はBS8414やNFPA285も参考にした。ただ、どちらもかなり大掛かりな試験なので、日本の試験機関での実施は難しいと判断し、試験体をひと回り小さくした。
◇30種類以上の仕様で火災実験
 JISA1310の試験方法を検討するために、実用化している30種類以上の外装材を施した試験体で、実験を実施した。窯業系サイディング仕上げの外張り通気工法で、断熱材の種類やファイヤーストップの有無を変えたもの、湿式外断熱工法で開口部まわりを防火被覆したもの、断熱材の厚さや密度を変えたもの、金属板複合パネルで芯材に使う断熱材の種類を変えたものなど、多様な仕様を扱った。
 この実験を通して、ファイヤーストップや開口部まわりの防火被覆、不燃化処理剤を使用する効果を確認できたことは成果だ。燃え広がりの検討が必要な仕様があれば、今後もこうした実験を続けるつもりだ。
図)左の試験体Aは、仕上げ材に窯業系サイディング、断熱材にビーズ法ポリスチレンフォームを使用したもの。断熱材が全て溶けている。右の試験体Bは、同じ仕様で開口部から80cm上に鋼板製のファイヤーストップを追加したもの。開口部の左右に断熱材が残る。
 15年に完成したばかりのJISA1310だが、18年2月末を目標に、規定などを追加する作業を既に進めている。
 追加するのは、袖壁を追加した状態での試験方法と加熱強度に関する詳細、さらに関連団体から要望のあった試験結果の評価基準だ。評価基準は解説に参考情報として追記する。
◇一定規模以上の建物は規制強化を
 研究会とほぼ同じメンバーで、内装用サンドイッチパネルの燃焼試験の原案も作成した。17年3月にJISA1320として制定したばかりだ。サンドイッチパネルを奥行き1.68m×幅0.84m×高さ0.84mの箱形に組み立てた状態で、燃え方を調べる。
 こちらも試験方法ができただけなので、JISA1310の改正が終わり次第、評価基準を追加する作業に着手する予定だ。
図)JISA1320に記されたサンドイッチパネルの燃焼試験方法。奥行き1.68m×幅0.84m×高さ0.84mの箱形に組み立てた状態で燃え方を調べる(資料:JISA1320)
 サンドイッチパネルとは、鉄板などで発泡系断熱材の芯材を両面から挟んだ内装材だ。免震層を設置した空間などにも使われている。神戸市で09年に全焼した食品用倉庫の内装材にも使用されていた。天井と壁全面にパネルを張っていた室内で炎が異常に燃え広がり、消防隊員が殉職した。 
 このサンドイッチパネルは不燃材料の大臣認定を取得していた。にもかかわらず異常な燃え広がりを予想できなかった原因は、大臣認定の試験方法にある。
 コーンカロリーメータ試験という、10cm×10cm×最大厚さ5cmの小片の発熱を測るだけの試験方法が大臣認定で採用されているからだ。
 この試験方法で不燃材料の大臣認定を取得したサンドイッチパネルを天井や壁全体に張る場合は、同じような火災リスクを抱えている場合があると考えたほうがいい。
 英国の大規模火災は、JISA1310とJISA1320を制定したタイミングで発生した。試験方法を制定しただけでは火災が防げないことを伝えたかのようだ。一定規模以上の建物には、JISに即した試験方法で安全性確認することを、建基法などで義務付けるべきとの思いを強めた。
 設計者は建基法が最低基準であるとの認識に立ち、建物使用者が避難などに困難を抱えているか否かといった状況も踏まえて、外装材やサンドイッチパネルの設計内容の妥当性を判断してほしい。(談)
荒川 尚美 [日経ホームビルダー]



日経アーキテクチュア 2017/07/05
ロンドン火災、惨事の原因 空間構成と改修工事にみる高層住宅の死角
 現地時間6月14日未明に大規模火災が発生した英国ロンドンの「グレンフェル・タワー」。24 階建て、高さ68mの高層公営住宅は、外壁に張り付けた断熱材などを燃やし、急激に上層階まで延焼した。
 「ロンドンでこれほどの大火災が発生するとは…」。建築や防災の専門家の声に耳を傾けると、被害の大きさに対する驚きが自然に口をついて出てきた。延焼の規模や被害者の多さなど、先進国の大都市では近年まれにみる大規模火災に、肝を冷やした建築関係者は多かった。
 6月14日午前1時20分ごろ(日本時間14日午前9時20分ごろ)、ロンドン西部に立つ高層公営住宅「グレンフェル・タワー」で火災が発生した。火元は居住フロアの4階(地上8階に相当)とみられている。
 消火活動には約40台の消防車と、約200人の消防士が動員された。約120 世帯が入居する公営住宅では6月30日までに死者・行方不明者79人、重傷者約20人が確認されている。現地報道によると、スプリンクラーは設置されていなかった。
図)グレンフェル・タワーの断面図。地上1階から4階まではオフィスや保育所、ジムなどが入っていた。火元は地上8階に相当する居住フロアの4階とみられる(資料:取材を基に本誌が作成)
 被害者が増えた背景には「タワーの空間構成が関係している」との見方が多い。平面図から浮き彫りとなるのは、火災発生時の避難の危うさだ。居住フロアは6室がエレベーターホールを囲むコア型の配置となる。各住戸にバルコニーは見当たらない。避難はコア内にある階段からのみ可能で、2方向避難はできないつくりだ。
 炎が外壁から室内に侵入した経路については検証が必要だが、建物内部では避難経路となるコアまで煙が充満していた。現地報道が伝えた生存者の話では、15階に住んでいた男性が「逃げようとしたが熱い黒煙に覆われて呼吸ができなかった。視界を奪われ、死体につまずきながら避難階段を探した」と証言している。
図)グレンフェル・タワー居住フロアの平面図。1ベッドと2ベッドの2種類の部屋が計6室あり、エレベーターホールを囲むコア型の配置となっていた。築43年のタワーは2方向避難ができなかった(資料:取材を基に本誌が作成)
◇「選択的」に改修されたグレンフェル・タワー
 グレンフェル・タワーの壁面に張り付けた断熱材はポリイソシアヌレートフォーム。高い難燃性を有する素材とされるが、化粧用の亜鉛の金属パネルとの間に通気層があったことから、「煙突効果」で延焼スピードが速くなったとの分析が多い。
 玄関扉の防火性能が不十分であったり、扉を開放したまま避難したりすることで、コアへの炎や煙の侵入を許し、住民が逃げ場所を失った可能性もある。エレベーターの昇降路や階段室に防火区画が設けられていたかは分かっていない。炎や煙がそれら垂直方向に建物をつなぐ空間に入り込みめば、煙突効果で上層階に広がってしまう。
 グレンフェル・タワーは、1974年に竣工した。2016年5月に外断熱の外装材を取り付ける改修を終えている。英政府は17年6月25日、同国内にある高層住宅の緊急点検を実施。60棟が検査基準を満たしていないと分かった。いずれもグレンフェル・タワーと同様の外装材を使っていた。
 外装に断熱材を設置する改修は外壁の作業となるため、施工中に住人が移動する必要がない。そのため、英国では過去20年ほど公営住宅で似たような改修を進めてきた。 また、老朽化した高層住宅には、エレベーターホールを中心に持つコア型の空間構成が多いという。
 現地を視察した東京大学生産技術研究所の野城智也教授は「英国では老朽化した公営住宅を改修する際に防犯性を重視した。外廊下の建物を解体して低層住宅に建て替える。一方、コミュニティーが形成できるグレンフェル・タワーのようなコア型の高層マンションを残し、選択的に改修してきた」と指摘する。
◇大規模改修が消火作業のあだになった
 改修の目玉だった外装部分が「火災の被害を拡大させた」と分析する研究者は多い。東京理科大学大学院国際火災科学研究科の小林恭一教授は「外壁などを含む大規模改修があだになった」とみている。理由の1つは消火活動を困難にした点だ。
 グレンフェル・タワーの既存外壁は厚さ250㎜のコンクリートだ。16年までの改修では外壁に厚さ150㎜の断熱材を張り付け、厚さ3㎜の金属パネルを化粧用に覆った。断熱材と金属パネルの間には50㎜の通気層を設けた。この通気層に入り込んだ炎によって、断熱材が急速に燃え広がった可能性が高いと小林教授は分析している
図)グレンフェル・タワーの外壁面の構成とその断面図。外装パネルと断熱材の間には50mmの通気層があり、その隙間に炎が入り込んだ可能性が高い(資料:取材を基に本誌が作成)
 消防隊は通報から6分で火災現場に到着した。放水は火元に届く距離だったが、「断熱材が燃えていたのだとすると、外から水をかけても外装の金属パネルが邪魔をして消火できない。パネルはいずれ燃えて脱落するため、燃焼している断熱材がむき出しになった部分に放水できるが、そのころにはさらに上層階が燃えており、延焼が止められなかった」と小林教授は推測する。
 詳細な現場検証を待つ必要があるが、柱を覆う外装材が延焼を加速させた一因になった可能性もある。外周の南北面に5本、東西面に4本設けた柱には、外壁と同様に断熱材(厚さ100㎜)と金属パネルが設置されていた。断熱材には難燃性が高いとされるポリイソシアヌレートフォームが使われていたが、金属パネルと断熱材の隙間にある通気層が「煙突効果」を助長して、上層階に延焼が急拡大する要因になった可能性がある。
図)柱部分の水平断面図。断熱材と柱との間にも空隙があり、「煙突効果」を助長した可能性が指摘されている(資料:取材を基に本誌が作成)
 外装材を扱う建築関係者は、壁材、柱材ともに通気層には延焼を防ぐファイアストップがあったとみている。しかし、断熱材を燃やしながら通気層を通過する炎は止められなかった。加えて、「柱を伝って燃え上がる炎が壁材との継ぎ目から横に燃え広がった」との見方が多い。
 断熱材などを製造するJSP総合技術本部の小浦孝次主管は「柱の通気層を通って上昇した炎は金属パネルの隙間から水平方向にも延焼し、“あみだくじ” のように燃え広がったのではないか」と分析する。
江村 英哲 [日経アーキテクチュア]

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