2017-07-23(Sun)

物価2%目標 6回先送り アベノミクスの破綻浮き彫り

信頼失う安易な見通し  終わりなき暴走が心配だ  現実味が薄れる一方だ

<各紙社説・主張>
朝日新聞)日銀と物価 信頼失う安易な見通し (7/22)
読売新聞)物価目標先送り 焦らずに脱デフレを完遂せよ (7/21)
毎日新聞)日銀が6度目の目標先送り 終わりなき暴走が心配だ (7/22)
日本経済新聞)物価2%目標、好循環伴う実現目指せ (7/21)

しんぶん赤旗)日銀物価目標延期  アベノミクスの破綻浮き彫り(7/22)
北海道新聞)日銀物価目標 2%への固執は疑問だ(7/21)
信濃毎日新聞)日銀物価目標 もはや現実的ではない(7/22)
京都新聞)物価目標先送り  日銀への信認揺るがす(7/22)

神戸新聞)日銀物価目標/緩和策の限界を見極めよ(7/22)
中国新聞)日銀の物価目標 現実味が薄れる一方だ(7/22)
西日本新聞)物価2%目標 6回先送りは信用問題だ(7/22)




以下引用



朝日新聞 2017年7月22日05時00分
(社説)日銀物価 信頼失う安易な見通し


 「期待に働きかける」と言いながら、逆に期待を裏切り続けているのではないか。
 日本銀行が、物価の2%上昇という目標を達成する時期の見通しを、18年度から19年度に先送りした。4年前の「異次元緩和」開始から6回目の修正だ。
 これだけ前言撤回が続くと、今後の見通しにも信頼が置けなくなるのが普通だろう。先送りが続けば、緩和策を終える出口で日銀が被るコストも膨らむ。それだけに、安易な見通しが続くのは見過ごせない。
 今回の先送りの理由は「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っている」「労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重」といったことだという。
 そうした要因があるのは確かだ。だがそれは、前回の見通しを示した4月時点でも分かっていた。実際、民間のエコノミストは、日銀よりかなり低い水準の物価上昇を予測していた。なぜこうしたことが繰り返されてしまうのか。
 黒田東彦総裁は先月の講演で、「中央銀行が物価安定に向けた強い意志を示すことが、人々の期待に働きかけ、金融政策の効果を高める」というのが今の政策の要点だと説明した。バブル崩壊後の経済低迷の中で人々に根付いた「物価は上がらない」というデフレ心理を、払拭(ふっしょく)するのが狙いだ。
 そうだとしても、これまでのような先送りを繰り返せば、日銀の物価安定目標に対する信認はむしろ低下し、インフレ期待の形成にもマイナスに働くのではないか。
 黒田総裁は、今回の先送り決定後の会見で、賃金や物価が上がらない状況が「ずっと続くということはありえない」と述べた。好況が続き、失業率も低下する中で、いずれは物価上昇が強まるとの見方だ。
 一般論としては正しいかもしれない。だが、人手不足なのに賃金が上がらないという「謎」については、専門家の間でも多くの仮説がある。家計の消費動向も、様々な要因の影響を受ける。現実の経済の中で家計や企業の意思決定に影響を与えたいのであれば、より緻密(ちみつ)で丁寧な分析と説明が必要だ。
 先行き見通しは、政策目標とは切り離して、現実的、客観的に立てる。期待に働きかけるためには、国民に納得のいく言葉で説明を尽くす。そうした姿勢に徹しなければ、政策効果は上がらず、中央銀行への信頼も失われていく。
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読売新聞 2017年07月21日 06時00分
社説:物価目標先送り 焦らずに脱デフレを完遂せよ


 デフレ脱却に近道はない。政府・日銀が粘り強く政策を遂行していくしかあるまい。
 日銀が、経済成長や物価の先行きを示す「展望リポート」で、物価上昇率2%の目標達成時期を、これまでの「2018年度頃」から「19年度頃」に1年先送りした。
 達成時期の先送りは、日銀が13年4月に異次元緩和を始めてから6回目だ。黒田東彦総裁の任期が切れる18年4月までのデフレ脱却を断念したことになる。
 展望リポートは、今後の物価上昇率の見通しも下方修正した。
 17年度は前回4月の1・4%を1・1%に、18年度は1・7%を1・5%に引き下げた。19年度も1・9%を1・8%とした。
 物価回復の遅れによる先送りは残念だ。デフレ退治に魔法の杖(つえ)はないことを改めて銘記したい。
 ただし、先行きを過度に悲観することはなかろう。企業や家計を覆うデフレ心理は根強いが、物価は緩やかながら上向いている。
 昨年はマイナス圏だった消費者物価指数の上昇率は、今年1月にプラス0・1%に転じ、5月は0・4%まで回復した。
 黒田総裁は記者会見で「物価は2%に向けて上昇率を高めていく」との見通しを強調した。今こそ焦らず、腰を据えて金融緩和に取り組むことが大切である。
 日銀は昨年9月、金融政策の軸足を「お金の量」から「金利」に切り替える新たな枠組みを導入した。国債大量購入やマイナス金利政策の副作用を緩和し、長期戦に舵(かじ)を切った手法は、一定の効果を上げつつあるのではないか。
 気がかりなのは、市場金利の上昇圧力が強まってきたことだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに転じるなど欧米当局の政策方針などが影響している。
 日銀の保有国債は、発行残高の約4割に達する。日銀や内外の動きに国債市場が過敏になり、金利は乱高下しやすくなっている。
 日銀は今月7日、指定した利回りで国債を買い入れる「指し値オペ」によって長期金利の上昇を抑え込んだ。今後も機動的な金利操作に努めることが大事である。
 無論、金融政策だけではデフレに勝てない。企業利益が賃金を押し上げる。消費が活性化し、物価が緩やかに上向く。そんな「好循環」を作ることが肝要だ。
 それには、政府が実効性のある成長戦略を進め、民間企業の生産性を向上させる必要がある。日本経済の底力を強めることで、デフレ脱却を成し遂げたい。
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毎日新聞2017年7月22日 東京朝刊
社説:日銀が6度目の目標先送り 終わりなき暴走が心配だ


 これほどやっても効果が出ない政策を、いつまで続けるのか。
 日銀が、目標とする「物価上昇率2%」の達成予想時期を、再び先送りした。もう6度目だ。今回は、4月時の見通しより1年遅い「2019年度ごろ」になるという。
 日銀が13年4月に異次元緩和を導入した時の約束は、「2年程度で2%を達成する」というものだった。しかし、大量の国債などを日銀が買う異例の政策を始めて4年以上が経過した今も、物価上昇率は、0・5%以下にとどまっている。
 記者会見した黒田東彦総裁は、景気が回復しても物価が上がらない状況が「ずっと続くことはない」と述べたが、最新見通しの「19年度ごろ」が再度、先送りになることも否定できない。実際、政策委員会のメンバー9人中8人が、現時点での物価見通しより、実際は低くなる可能性があると見ている。
 目標と実際の物価上昇率のズレが続くことは、他の中央銀行も経験している。日銀の問題は、副作用の強い劇薬のような政策を、物価上昇率の2%超えが持続するまで続けると宣言していることだ。
 長期化するほど弊害も大きくなる。大量の国債を買い続けた結果、日銀が保有する国債は、発行残高の4割を突破した。日銀は株式を組み込んだ投資信託も買っているが、その結果、日銀が大株主となる企業は増える一方だ。
 市場での存在感が増すほど、方向転換の時が来ても、悪影響を恐れて動けなくなる。
 別の心配もある。2人の政策委員が今回の金融政策決定会合を最後に任期満了で交代し、9人全員が安倍晋三政権下での任命という陣容になる。マイナス金利政策や積極的な金融緩和路線に異議を唱えてきた2人が去り、ますます緩和一辺倒となりはしないか。
 多様な主張がぶつかり合う意思決定機関は、一方向に暴走するリスクが抑えられる。反対に、「右へ倣え」のような同一意見の組織は、大きく間違う恐れがある。政治的圧力にも、もろいだろう。
 大規模緩和を収束する道筋が見えず、政策委員会メンバーの均一化が一段と進みそうな日銀に、不安を抱かずにはいられない。
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日本経済新聞 2017/7/21付
社説:物価2%目標、好循環伴う実現目指せ


 日銀が、消費者物価の上昇率が安定的に2%に達する時期を、従来の予想から1年先送りして「2019年度ごろ」とすることを決めた。収益が好調な企業が賃金を引き上げ、それが個人消費の拡大につながり、物価も上がるという好循環の実現に政府・日銀は粘り強く取り組む必要がある。
 黒田東彦日銀総裁が2013年4月にいわゆる異次元緩和を始めてから物価安定目標の達成時期を先送りするのはこれで6回目になる。
 日銀は20日の金融政策決定会合にあわせてまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、物価見通しを引き下げる一方、経済成長率の見通しは上方修正した。景気の先行きについては「景気は緩やかな拡大を続けるとみられる」とした。
 日銀は、内外経済が堅調なこともあり、「物価安定目標の達成に向けたモメンタムは維持されている」として、追加の金融緩和は見送った。
 経済が成長し人手不足にもかかわらず、賃金・物価がなかなか上がらない。
 携帯電話機や通信料引き下げという一時的な物価の押し下げ要因に加えて、日銀が指摘しているのは、物価が上がらないことを前提にした企業や家計の考え方や慣行だ。
 企業は人手不足に対応してパート従業員の賃金を上げているが、正社員の賃上げは抑制気味で、その代わりに省力化投資などにお金を振り向けている。賃金・価格の決定権を持つ企業が、依然として引き上げに慎重姿勢だという。
 賃金の上昇に広がりがないと、個人消費も盛り上がらないし、人々の予想物価上昇率もなかなか上がってこない。
 物価安定目標の達成には、日銀の金融政策だけではなく、企業の意識改革や、政府による構造改革を通じた成長戦略の推進も欠かせない。
 企業が日本経済の将来に自信を持ち、正社員も含めた賃上げに動く環境を整えることが必要だ。企業は生産性向上を実現すれば、その分を賃上げに振り向けることができる。
 規制改革を通じた国内投資機会の創出や、生産性向上に役立つ雇用市場の改革など政府の後押しも不可欠だ。経済が拡大基調にある今こそ、既得権益者の抵抗が強い構造改革を進める好機でもある。
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しんぶん赤旗 2017年7月22日(土)
主張:日銀物価目標延期  アベノミクス破綻浮き彫り


 日本銀行(黒田東彦(はるひこ)総裁)が、消費者物価の上昇率を「2%」に引き上げるとした目標時期を、これまでよりさらに1年先送りし「2019年ごろ」にすると決めました。安倍晋三政権の発足に合わせて総裁が交代し、13年4月に金利の引き下げや国債買い上げなど「異次元の金融緩和」で物価上昇率2%を目指すと、打ち出して以来、先送りは6回目です。18年4月までの黒田総裁の任期中の達成を断念したことは明白で、金融緩和を柱の一つにした「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)の破綻は明らかです。
安倍政権の発足に合わせ
 安倍氏は12年12月に首相に就任する以前から、日本経済の「再生」のためには物価が下がり続ける「デフレ」からの脱却が必要だと、消費者物価の上昇を目標に、異常な金融緩和を実行することを求めて当時の白川方明(まさあき)日銀総裁らに迫り続けてきました。消費者物価の上昇は経済活動が活発になり、消費や賃金が上昇する結果で、金融の緩和で人為的に物価上昇を引き上げるのは当時の経済学でも“邪道”とされていました。
 しかし「異次元の金融緩和」に固執する安倍首相は、就任直後、任期が残っていた白川前総裁をやめさせ、自らの主張に近い黒田氏を新総裁に据えて、異常な金融緩和に乗り出します。日銀の金融政策は普通、日銀が銀行と取引する政策金利を上下させたり、市中に出回っている国債などを買い上げたりしますが、金融緩和を目指す黒田総裁になって金利は「ゼロ」どころか「マイナス」が常態化する異常ぶりで、日銀が買い上げる国債や投資信託の量も増え続けています。安倍首相や黒田総裁は、この「異次元の金融緩和」を財政の拡大政策や「規制緩和」による成長政策と並べて「アベノミクス」の柱だと称してきました。
 しかし間違った政策をいくら拡大し続けてもその効果は出てきません。金融を「緩和」し拡大すれば、物価が上がり、消費も増え、賃金も増えるというのが安倍政権・日銀の“シナリオ”でしたが、もともと経済が落ち込んでいるのに、金融緩和や大企業減税で大企業のもうけを増やしても、もうけはため込みに回るばかりで消費も賃金も改善しません。「アベノミクス」になって増えたのは大企業のもうけやため込みばかりで、消費も賃金もマイナスの連続です。
 黒田日銀が当初13年4月には「2年程度」としていた「2%」の消費者物価目標達成の時期を、15年4月、10月、16年1月、4月、11月と再三再四延期し、今回6回目の延期に踏み切ったのはまさに破綻の象徴です。日銀は「デフレ心理が残っている」と言いますが、「アベノミクス」の結果が大企業のもうけやため込みを増やすばかりで、賃金が上がらないのでは消費は増えません。「アベノミクス」をやめることこそが必要です。
経済と金融にもひずみ
 黒田日銀が異常な「マイナス金利」を続け、国債などを買い続けている結果、経済と金融へのひずみは大きくなっています。日銀が抱える国債は名目GDP(国内総生産)に迫っており、安倍政権が発行する国債を日銀が引き受けているといわれるありさまです。
 「異次元の金融緩和」を含め、間違った「アベノミクス」は直ちに中止し、転換すべきです。
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北海道新聞 2017/07/21 08:55
社説:日銀物価目標 2%への固執は疑問だ


 日銀はきのうの金融政策決定会合で、消費者物価2%上昇の目標達成時期を「2019年度ごろ」と1年先に延ばすことを決めた。先送りはこれで6度目だ。
 看過できないのは、逃げ水のように遠ざかる「2%」を追いかけ、4年余りにわたって続けている異次元緩和の副作用である。
 日銀が銀行に資金供給するために購入した国債は427兆円に達し、発行残高の4割超を占める。
 債券市場の機能はゆがみ、日銀が将来、国債の保有を減らす際には金利の急騰を招きかねない。
 見通しの全く立たない「2%」に固執せず、金融政策の転換を図るべき時期なのではないか。
 日銀は13年春、デフレ脱却を目指して異次元緩和を始めた。
 市中にお金を大量供給すれば、企業や家計に「インフレが起きそうだ」との心理が働き、物価が上がる。企業業績は好転し、賃金も上向く―との想定だった。
 黒田東彦(はるひこ)総裁は当時、2%の物価目標について「2年で実現する」と明言した。だが思うように物価は上がらず、いまや来春の総裁任期満了の後に先送りされた。
 はっきりしたのは、人々の心理に働きかける異次元緩和が短期的な効果しかなかったことだ。
 当初こそ「黒田バズーカ」と呼ばれた大胆な緩和策に市場が驚き、株高・円安の流れができた。
 4年たったいま、企業は円安効果で稼いだ利益を内部留保としてためこみ、バブル期を上回る人手不足にもかかわらず、賃金は伸び悩んだままである。
 賃金が増えなければ、消費は上向かず、物価も上がらない。
 企業の守りの姿勢を解き、賃金を増やすよう導くのは、日銀の仕事ではない。安倍政権が経済政策を通じて解決すべき課題である。
 デフレ脱却を日銀任せにしてきた政権の責任も重い。
 心配なのは、もはや効果の疑わしい異次元緩和が確実に日本経済をゆがめていることだ。
 長期金利が0%前後に固定され、国債を発行しても利払いがほとんど生じないため、国の財政規律の緩みが目立ち始めている。
 一方、資産運用の利回り悪化で金融機関の収益は圧迫され、企業年金の積立額不足、生命保険の予定利率下げなど国民の将来への不安を助長する副作用も目に付く。
 日本は曲がりなりにも経済成長が続く。次の不況で刺激策を打つ余力を残すためにも、日銀は国債購入を徐々に減らすなど「出口戦略」の検討を急ぐべきだ。
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信濃毎日新聞 2017年7月22日
社説:日銀物価目標 もはや現実的ではない


 達成はもはや現実的ではなくなっているのではないか。
 日銀が掲げている物価上昇率2%の目標である。達成時期をこれまでの「2018年度ごろ」から1年先送りした。延期は昨年11月に続き6回目になる。
 黒田東彦総裁は13年の就任時、2%目標を2年程度で達成すると宣言していた。今回の先送りでその時期は当初から4年遅くなる。
 黒田総裁は景気や雇用情勢の改善傾向を踏まえれば「(物価の伸び悩みが)ずっと続くことはあり得ない」という強気の姿勢を崩さず、現行の緩和策を当面続ける考えを示している。
 日銀が描いたシナリオはすでに崩れている。
 世界経済の回復傾向で企業収益は好調を維持している。雇用情勢も改善して、人手不足が顕著になった。日銀は企業が賃金の上昇分を販売価格に転嫁して、物価が上がるとの見通しを示していた。賃金の上昇は消費を改善させ、経済の好循環が実現するはずだった。
 それなのに賃金も物価も上昇しない。16年度の全国消費者物価指数は前年度に比べ0・2%下落した。17年度も物価上昇ペースは想定よりも下振れしている。
 黒田総裁はこの理由を家庭や企業のデフレ心理に求めている。家庭には賃金や物価が上がりにくいことを前提にした節約志向があり、企業もそれに対応して値上げに慎重、という分析である。
 人口減や年金問題など将来不安もあるだろう。解消するのは簡単ではない。緩和策は限界に達し、日銀が打つ手は限られている。
 大規模金融緩和で国債を大量に買い集めた結果、日銀の総資産は国内総生産(GDP)とほぼ同規模の500兆円超に達している。国債発行残高に占める日銀の保有割合は4割を超えた。
 現実味に乏しい物価上昇目標を掲げ続けると、異様ともいえる大規模金融緩和の出口を見失いかねない。政策の転換を考える時だ。
 08年のリーマン・ショック後の世界的な金融危機に対応した先進国の金融緩和は、手じまいの動きが始まっている。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は3回目の追加利上げに踏み切り、欧州中央銀行(ECB)も追加利下げを打ち切る方針を表明した。日銀だけが取り残された。
 世界的な景気減速が起きても、効果的な景気刺激策を日銀が打てない事態も想定される。日銀は金融政策の正常化に向けて目標を見直し、早急に大規模緩和の出口戦略を示す必要がある。
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[京都新聞 2017年07月22日掲載]
社説:物価目標先送り  日銀への信認揺るがす


 日銀が金融政策決定会合で、目標とする物価上昇率2%の達成時期を、「2019年度ごろ」と1年延期した。
 2%目標は、黒田東彦総裁が、異次元の金融緩和によるデフレ脱却の指標として、13年4月に掲げた。当初は2年程度で実現するとされたが、いまだにできず、達成時期の先送りを続けていた。
 延期は、今回が6度目となる。これでは、設定された目標自体が非現実的ではないか、との疑念がわいてくる。日銀への信認が、揺らぎかねない事態だ。
 会合後に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、景気の現状判断を「緩やかに拡大」と引き上げ、17年度経済成長率の見通しを4月時点より0・2ポイント高い1・8%とする。
 ところが、物価上昇率については、0・3ポイント低い1・1%に引き下げた。景気が改善しつつあり、人手不足で賃金が上昇基調にあるのに、どうして物価上昇につながらないのか、原因を明らかにしなければならない。
 黒田総裁は、これまでの先送りでは、新興国経済の減速、原油安などを理由にしてきたが、今回は家計の節約志向に対応して企業が値上げに慎重な姿勢を崩さないからだ、と分析した。
 物価上昇率の目標は、消費者や企業のデフレ・マインドを取り払うために設定されたはずである。総裁の分析は、日銀の政策がうまく機能していないことを、認めたものといえそうだ。
 ただ、ここで目標を引き下げると、金融緩和縮小への思惑から、為替市場が急速な円高に振れ、日本経済への大打撃につながる、との懸念がある。
 追加緩和を見送る一方で、長期金利を0%程度に抑える現行の政策を継続する方針は、現時点ではやむを得ないようだ。
 とはいえ、金融機関の収益圧迫などの副作用を伴うマイナス金利への批判は根強い。
 加えて、米連邦準備制度理事会が昨年暮れのゼロ金利解除後、3回の追加利上げに踏み切り、欧州中央銀行も今年6月に追加利下げの打ち切りを決めるなど、欧米の中央銀行は金融緩和からの出口戦略を進めている。
 こうした動きから、日銀が金利目標の引き上げを求められる状況も想定され、2%目標の達成はますます遠ざかる可能性がある。
 黒田総裁の任期も来年4月に迫っている。日銀は、政策転換の局面に入ったのかもしれない。
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神戸新聞 2017/07/22
社説:日銀物価目標/緩和策の限界を見極めよ


 日銀が物価上昇率2%の目標達成時期を、「2019年度ごろ」に1年延期した。先送りは6回目で、黒田東彦(はるひこ)総裁は来年4月までの任期中の目標達成を断念したことになる。
 大規模な金融緩和は維持するというが、いつまでも続けるわけにはいかない。デフレ脱却に実効性があるのか。副作用が生じていないか。限界も含めて冷静に見極める必要がある。
 13年3月に就任した黒田総裁は、2年程度での目標達成を掲げた。デフレ脱却を掲げる安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一環として金融緩和を続けた結果、景気や雇用が一定水準までは回復した。
 しかしスーパーやコンビニ、外食チェーンなどでは値下げの動きが相次ぐ。コスト上昇分を、値上げではなくサービス見直しなどで吸収する例も多い。景気回復と物価上昇が連動しない事態は思惑違いだろう。
 最大の要因は、賃金の上昇が鈍いことではないか。
 人手不足を背景に非正規労働者の賃金は上向いているが、正社員の賃金は頭打ちだ。値下げラッシュは消費者の節約志向の反映といえる。物価が上昇しないので年金が増えず、高齢者の消費意欲をそいでいる。
 2%の目標が「非現実的」との見方も市場には根強いが、目標を引き下げれば緩和の縮小と解釈され、円高を招きかねない。物価低迷はアベノミクスが全体に手詰まりになっている証しで、金融政策以外の手段も不可欠だ。
 08年のリーマン・ショック後、先進国の中央銀行は緊急対策として金融緩和に踏み切った。しかし、今は緩和から正常化に転じつつある。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は2年前に事実上のゼロ金利を解除し、その後は3回の追加利上げを実施している。欧州中央銀行(ECB)も追加利下げを打ち切る方針を示した。
 2%の目標に固執し、大規模緩和の継続を明言する黒田総裁は、世界の流れに取り残された形になった。
 国民生活にとって最も望ましいのは、賃金が増え、消費が伸びた結果の物価上昇だ。その実現に向け、政府、日銀はあらゆる政策を動員するべきだ。
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中国新聞 2017/7/22
社説:日銀の物価目標 現実味が薄れる一方だ


 2%の物価上昇目標を満たす時期について、日銀が「2019年度ごろ」とまた先送りした。13年春に就任した黒田東彦(はるひこ)総裁が「異次元緩和」に取り組んで以来、達成時期を先送りするのは6回目である。
 当初、達成までのめどは「2年程度」としていた。今回の新たな見通しでは、少なくとも6年かかることになる。
 現実味が薄くなる一方の目標を下ろさぬ日銀に対し、市場の信認が地に落ちる恐れも拭いきれない。金融政策の抜本的な見直しが望まれていよう。
 金融政策決定会合の後には「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表し、17年度の物価上昇率見通しを1・1%に引き下げた。その見通しも、直近の5月の消費者物価指数は0・4%の上昇にとどまっており、達成は容易でない。
 景気拡大は既に4年以上続き、1990年前後の「バブル景気」を抜いた。労働需給もほぼ完全雇用の状態で、人手不足感が強い。にもかかわらず、理論通りに賃金や消費者物価が上向かないのはなぜか。
 約20年続いた日本経済の停滞で、賃金や物価は上がらないとの考え方や慣行が企業にも家計にも染み付き、手ごわい。黒田総裁はどうやら、そう見立てているらしい。いわゆるデフレ心理のことだろう。
 「異次元緩和」で消費者の心理は上げ潮に変わると、説明を重ねてきたのは黒田総裁にほかならない。今更、泣き言を口にしても始まらない。
 いつまで「2%」にこだわり続けるつもりだろうか。
 人口減少の時代に変わり、日本社会は下り坂に入っている。加えて、年を取ることのリスクばかりが目に付く超高齢化の時代でもある。
 「右肩下がり」を織り込んだ人生設計や生活防衛策が、もはや国民の暮らしに定着しつつあるのではないか。リーマン・ショックや東日本大震災も経た今、この社会や世界は持続可能なのかといった、将来不安こそ現実味を増していよう。
 日銀とは裏腹に、米欧の中央銀行は、超低金利や金融の量的緩和といった異例の金融政策に終止符を打つ「出口戦略」を探っている。遠くない将来、世界景気が減速する局面を見越した動きと見て取るエコノミストもいるようだ。
 今のうちに、日銀も「出口」の道筋を付けておかなければ、もし不況に転換した場合、打つ手が限られてしまう。
 マイナス金利などという奇策が「当たり前」のように続く世の中は、生活感覚として、やはりおかしく、受け入れ難い。
 一方で日銀は昨年、年間4兆6千億円を超す上場投資信託(ETF)の購入で株価を支えた。「官製相場」ともいえ、株高に日本経済の成長という裏付けが十分あるとは言い難い。
 世の中を直視した、腹蔵のない議論が今こそ欠かせない。そんな折も折、日銀の金融政策を決める審議委員の構成が憂慮されている。「異次元緩和」に異を唱えてきた、エコノミスト出身の委員2人が任期終了で23日に退任してしまう。
 9月からの金融政策決定会合は委員の9人全員が、第2次安倍政権で任命されたメンバーになる。忖度(そんたく)の入り込まぬ、独立した議論を望みたい。
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西日本新聞2017年07月22日 10時38分
社説:物価2%目標 6回先送りは信用問題だ


 景気は上向きなのに、物価は低空飛行を脱する兆しが見えない。
 日銀が7月の金融政策決定会合で、物価上昇率の見通しをまたも下方修正した。
 足元の物価が低迷していることから、2017年度の前年度比上昇率を1・1%、18年度は1・5%と前回4月会合より、それぞれ0・3ポイント、0・2ポイント引き下げた。
 これに伴い、「18年度ごろ」としていた2%の物価上昇目標の達成時期も「19年度ごろ」に1年先送りした。
 目標達成時期の先送りは6度目だ。度重なる修正は日銀の信用に関わる。景気が拡大基調にもかかわらず、なぜ物価や賃金の上昇率が鈍いのか。この難題には日銀だけでなく政府や有識者も含めた総合的な分析が求められる。日銀は緩和の効果や副作用を再度、検証する必要があるのではないか。
 日銀は、景気回復と雇用環境改善で人手不足が進行していることから、企業が人件費の上昇分を販売価格に転嫁し、物価も上昇する-とのシナリオを描いていた。だが、5月の消費者物価指数の上昇率は0・4%にとどまるなど物価の基調はむしろ弱まっている。
 その理由について日銀は「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っている」とし、節約志向などデフレマインドが払拭(ふっしょく)できていないことを強調した。
 確かにその側面はあろうが「2年で2%の物価上昇」と宣言していたのに、度重なる先送りで、国民は現在の金融政策継続へ疑問も抱き始めている。副作用も目立つ。総括的な検証をすべきだ。
 金融政策の今後について、黒田東彦総裁は「2%の物価目標を実現するため、強力な金融緩和を粘り強く推進していく」という。
 しかし今、大切なのは2%の物価目標をより柔軟に捉え、金融緩和の副作用にも目配りする政策運営ではないか。今後の政策決定会合ではそうした議論を望みたい。
 もちろん、安定的な物価・賃金上昇は日銀だけの仕事ではない。成長戦略など政府の責任も重い。
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日本経済新聞 2017/7/20付
物価2%目標、1年先送り 「19年度ごろ」
日銀決定会合、金融緩和は維持
 日銀は20日まで開いた金融政策決定会合で、物価上昇率が安定的に2%に達する時期について「19年度ごろ」とし、従来予想から1年先送りすることを決めた。先送りは、2013年4月に異次元緩和を始めて以来、6回目となる。物価が上昇に向かうシナリオは維持されているとし、追加的な金融緩和策は打たず、物価動向を見極める。
 物価目標の先送りは、同日まとめた3カ月に1度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に盛り込んだ。日銀はこれまで、物価の2%達成時期について「18年度ごろ」と見通していた。先送りは緩和手法の軸足を「量」から「金利」に変更した直後、16年10月のリポート以来、9カ月ぶりとなる。
 物価の見通しに関しては、17年度が従来予想の1.4%から1.1%に、18年度は1.7%から1.5%にそれぞれ引き下げた。19年度も1.9%から1.8%に引き下げた。
 日銀は、2%達成時期の変更と前後して追加的な緩和策をとることが多かったが、今回は見送った。堅調な世界経済を背景に、輸出は好調で国内の消費や設備投資も回復の兆しがある。円相場が安定している状況も支えに企業収益の改善が続けば、いずれ賃金が上昇して物価が上がるとの見通しがあるためだ。
 人手不足に伴う賃金上昇圧力もあり、日銀内部では「賃金や物価が上がる環境は整ってきている」との見方も出ている。
 経済成長については強気の見通しを示した。日銀は今回の展望リポートで、成長率見通しは17年度を1.6%から1.8%、18年度を1.3%から1.4%といずれも上方修正した。景気の先行きについては「緩やかな拡大を続けるとみられる」とした。
 経済が回復しても物価が上がらないのは世界的な傾向だが、現在の緩和策を続けて緩和効果を強め、需要の喚起や物価上昇につなげる考えだ。
 同日までの会合で、金融政策は9人の政策委員による賛成多数で現状維持を決めた。黒田東彦総裁は20日午後に記者会見し、会合や展望リポートの決定内容を説明する。
 今回の会合を最後に、佐藤健裕氏と木内登英氏の両審議委員は任期満了で退任する。両氏は現状の緩和策に対し副作用が大きいなどと反対票を投じることが多かった。
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