2017-11-14(Tue)

所有者不明の土地  「都市のスポンジ化」 どう解決

捨てられる不動産  放置食い止める抜本策を  登記の義務化含む土地対策を

◇捨てられる不動産 どう解決(複眼) 増田寛也氏/谷沢淳一氏/中川雅之氏
----持ち主が分からない土地、増え続ける空き家、再開発が思うに任せないまま進行する「都市のスポンジ化」……。かつての「土地神話」が崩れた日本では、有効利用されない資産が経済成長の足かせになりつつある。人口減少時代の「捨てられる不動産」に、我々はどう向き合うべきか。
(日本経済新聞 2017/11/14付)

<各紙社説>
日本経済新聞)登記の義務化含む土地対策を  (10/27)
山陽新聞)持ち主不明土地 放置食い止める抜本策を  (10/29)
朝日新聞)所有者不明地 縦割り排して対策急げ (9/21)
中国新聞)所有者不明の土地 地方再生で登記促進を (9/21)

◇持ち主不明の土地、九州より広く 「満州国在住」登記
----相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積が、九州より広い約410万ヘクタールに達するとの推計結果を、有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が26日公表した。こうした土地の増加は、森林の荒廃や土地取引の停滞などにつながるとして、研究会は年内に対策案を政府に提言する。

◇道路工事したいのに… 地権者107人、進まぬ買収
----南アルプスや中央アルプスに囲まれた長野県南部の飯田市。片側1車線の県道の半分をふさぐように突き出た土地がある。県道を管理する県飯田建設事務所によると、2008年10月にかけてこの一帯の道路を拡幅する工事を行ったが、この土地だけ買収できないまま残っているという。
(朝日新聞 2017年6月26日)




以下引用

日本経済新聞 2017/11/14付
捨てられる不動産 どう解決(複眼) 増田寛也氏/谷沢淳一氏/中川雅之氏
時論・創論・複眼
 持ち主が分からない土地、増え続ける空き家、再開発が思うに任せないまま進行する「都市のスポンジ化」……。かつての「土地神話」が崩れた日本では、有効利用されない資産が経済成長の足かせになりつつある。人口減少時代の「捨てられる不動産」に、我々はどう向き合うべきか。
◇  ◇
登記の義務化 罰則も 元総務相 増田寛也氏
ますだ・ひろや 77年東大法卒。旧建設省を経て95年から岩手県知事を12年務めた。自民党政権で総務相。現在は野村総合研究所顧問のほか、東大客員教授などを務めている。65歳
 誰の所有かわからない土地があり、道路建設などの支障になっていることは、岩手県知事の頃から認識していた。問題が顕在化したのは東日本大震災後だ。高台に移転用の宅地を整備しようと思っても土地所有者がわからず、進まなかった。こんな状態で万一、首都直下型地震が発生したら東京はどうなるのか。そんな問題意識があり、民間有識者で研究会を立ち上げた。
 地籍調査などのデータをもとに地目ごとに分類・推計したところ、所有者不明土地は2016年時点で九州の面積を上回る410万ヘクタール程度あるとわかった。40年には約720万ヘクタールと北海道本島に近い面積まで増えかねない。
 人口減少と少子化で使い道のない土地が増えたうえ、地価は上がるという土地神話が崩れたことが問題を深刻にした一因だ。土地を持っていると税金がかかるし、維持管理するように求められるから、相続時に登記しない人が増えた。世代交代する度に相続人が枝分かれし、誰か1人でも行方不明になると、その土地全体が利用できなくなる。
 所有者を把握する手段として不動産登記があるが、民法学者によると、登記は第三者に対して所有権を示す制度で現時点での所有者を表す台帳ではないという。登記簿には2億3千万筆の土地が記載されているそうだが、所有者が死亡している場合がかなりある。自治体が固定資産税を課税する際に使う台帳も、小さな土地は対象にしていない。
 対策としてまず考えられるのは不動産登記を義務化し、罰則も設けることだ。それが難しいなら、フランスのように土地取引をする際に必ず資格者を通す仕組みにすれば、登記が今よりも進む。代わりに登録免許税は下げ、手続きに必要な手数料も安くする。相続放棄された土地を預かる受け皿も考えるべきだろう。
 所有権と切り離して、利用権を設定することも考えられる。農地や山林ではすでにそうした仕組みがあり、宅地にも広げる。後日、所有者が名乗り出た場合は金銭の支払いで解決する。そのためにも新法をつくって、土地所有者には管理する義務があることを明記すべきだろう。義務を果たしていないから、所有権を制限したと整理すればいい。
 利用権を設定できる対象は国や自治体の事業に限定せず、民間の事業にも広げるべきだ。公共性があるかどうかで判断すればいい。首都直下型地震の後に素早い復興に取り組むためにも、あらかじめ要件を広げた方がいい。
 最終的には土地情報を一元化した新たなデジタル台帳を整備すべきではないか。登記簿の情報のほか、不動産鑑定士や司法書士の協力も得て、「地理空間情報」に所有者を書いていく。それをマイナンバー制度とも結びつける。
 空き家では、利用可能な物件は例えばシェアハウスや外国人向けの宿泊施設などに活用する。老朽化が著しく、所有者がわからない物件は土地と一体で考えることになる。
 これから多死社会に入り、相続放棄が増えれば手遅れになる。残された時間はせいぜい十数年。今ならまだ間に合う。
(聞き手は谷隆徳)
◇  ◇
■機能集約で地価向上を 三菱地所執行役専務 谷沢淳一氏
たにさわ・じゅんいち 81年東京都立大(現首都大学東京)経卒、三菱地所入社。ビルアセット開発部長や経営企画部長、常務執行役員などを経て17年4月から現職。59歳
 不動産事業で土地の所有者が分からず隣地との境界を画定できない問題は、現実に起きている。現在の案件はたまたま地方が中心だが、今後は東京や大阪などの都市圏でも発生しうる。最近では再開発事業が活発だが、権利変換の際に土地の特定ができないという事態から開発スケジュールが滞るケースもある。
 相続を繰り返したことで所有者が分からない土地はねずみ算的に増えている。最近は先祖伝来の土地という意識も薄くなった。解決策としての登記の義務化は中長期的には必要だと思うが、所有者は資産価値が無い土地に費用をかけてまで登記はしたくない。自治体による地籍調査にしても膨大な労力と費用がかかるため難しい。まずは不明土地をこれ以上増やさないという視点で、できる部分から手をつけることが大事だ。
 仲介手数料の見直しはその一つになる。現在は一定の範囲で決められているが、仲介者は資産価値の低い不動産については動いてくれない。手数料を多くして諸経費に上乗せできるなど、そういう制度変更があればいいと思う。
 また閲覧制限がある固定資産課税台帳について一定のルールに基づき情報開示できる仕組みを考えてはどうか。当社の地方での再開発案件で所有者が分からない雑草が生い茂った土地があり、自治体に台帳を調べてほしいと頼んだが、個人情報の関係で断られたケースもあった。台帳を見ればかなりの確率で所有者が判明する場合がある。管轄権が異なる農地基本台帳などを含めて縦割りをなくし、連携できればかなり解決する。
 不在者財産管理制度でも実際に使えるケースは限られているうえ、いざ制度を利用しても裁判所が入ると半年も時間がかかる場合がある。そんな時間的な問題を解消する取り組みも必要かもしれない。
 民間企業としては市場性がある不動産については様々な面で貢献できる。問題が顕在化している空き家についてもリフォームをすることで、物件そのものだけでなく、空き家がないことで周辺の資産価値を高められる。資産価値の向上につながる住宅や商業施設、病院や大学などを集積したエリアマネジメント、コンパクトシティ化の取り組みについても民間デベロッパーはノウハウを持つ。様々な機能を集約して街のダウンサイジング化を進め、地価を高めれば、結果的に不明土地が増えないということになる。
 不明土地を増やさない取り組みに加え、土地を所有するのではなく利用するという観点も大事だ。民間企業が市場性がないと判断しても、地元の人が使いたがる土地というのは必ずある。イベントを開催する広場として暫定的に活用するなどの使い方もあるかもしれない。地方自治体がNPO法人などを活用しながら利活用を進められればいい。
 米国では公共団体が使われていない土地の利用権を付与する「ランドバンク」という制度がある。管理放棄された土地を公共団体が希望者に売却したり、リースしたりする仕組みだ。日本では難しい面もあるだろうが、一考する価値はあるかと思う。
(聞き手は加藤宏一)
◇  ◇
■人口減の直視 なお不足 日本大学教授 中川雅之氏
なかがわ・まさゆき 京大経卒。旧建設省、国交省まちづくり推進課都市開発融資推進官などを経て04年から現職。空き家問題や都市政策が専門で国の審議会委員も歴任する。56歳
 日本の都市政策や住宅政策は大きな転換点にある。日本の空き家率は13.5%にのぼるという調査が2014年に発表された。それ以来、まず空き家問題がクローズアップされるようになってきた。
 空き家が増えると、草木が繁茂して景観を損なったり、治安が悪くなったりするという直接的な問題が出てくる。だが、それ以上に「人口減少社会の中で都市がうまく縮小できていないのではないか」という問題意識で注目されるようになっていると思う。
 日本の新築住宅着工数は1980年代には年間170万戸にのぼった。今は年間90万戸とほぼ半分になったが、人口1万人当たりの住宅数でみると日本は欧米よりはるかに多い。人が減っているのに、住宅が過剰に供給され空き家を発生させている。日本の不動産市場が、縮小社会に対応できていないことの表れだ。
 都市の縮小に向かい合うのは日本が初めてではない。旧東ドイツはベルリンの壁が崩壊した後、急激な人口流出に見舞われた。空き家が大量に発生したことを受けて、街の縮小政策を進めた。自治体と開発事業者、市民らが協定を結び、家を計画的に壊したり、空き地を緑地やコミュニティー拠点に活用したりした。
 日本もそんな縮小政策が必要になってきたが、成果を上げられていないのが現状だ。
 危険な空き家を自治体が取り壊せるとか、将来の人口減を見据えて病院や学校などの公共施設を再配置するといった政策はそれなりに出そろいつつある。だが、分権化の流れもあり、すべてのトリガー(引き金)をひくのは市町村だ。彼らがそれを使いかねていることに問題がある。
 例えば、コンパクトシティーを目指すための「立地適正化計画」。「ここは住宅地として位置づけるけれども、その他のところは移転してください」とお願いするような仕組みだ。しかし住民や開発事業者が反発すれば、市町村側はちゅうちょしてしまう。住民との距離が近い市町村には痛みを伴う改革は難しい。
 今ある様々な政策メニューを、いつどうやってどの自治体が使うべきなのか。国や都道府県など市町村より上のレベルで、人口推計などをもとに客観的な基準を定めるほうがいいのではないだろうか。
 もう一つ重要なのは、国も自治体も、これからの人口減少に正面から向き合えていないという事実だ。
 政府が掲げる「地方創生」は「地方の消滅を防げ」という掛け声から始まった。地域を活性化しなければいけないという問題意識はわかるが、地域活性化という一発逆転ホームランを打てれば、人口減少に向かい合わなくていいとの意識が潜んでいると思う。自治体ごとの地方創生戦略をみても、高めの出生率を想定しているところが多い。
 だが今後すべての地域で人口が増えていく状態は考えにくい。それなのに自分の街の人口が減ることに、市町村はいまひとつ向き合えていない。国は地方創生という名の下にバラマキを続けている。こんな意識では都市を縮めることはとうていできない。
(聞き手は福山絵里子)
◇  ◇
〈アンカー〉今こそ現代版「検地」の時
 全国の住宅の8戸に1戸は空き家で、空き地は香川県の面積の8割に相当する。九州の広さに相当する土地は所有者すらわからない。日本の様々な制度や政策がいい加減だったとしか言いようがない。
 地方は中心部すら駐車場だらけなのに郊外開発が止まらない。都市部でも老朽化した家屋を放置し、周辺農地に住宅が建っている。海外では土地取引要件に登記を義務付けている国が少なくないが、日本の登記制度は穴だらけだ。
 日本のように国土の半分程度しか地籍調査が終わっていない国は先進国では少数派。谷沢氏や中川氏が指摘する街の「縮小政策」を進めるためにも、増田氏が言う土地情報を一元化したデジタル台帳が必要だ。できない理由を並べるのはやめ、戦国時代の豊臣秀吉ではないが、現代版の「検地」に今すぐ取り組むべきだ。
(編集委員 谷隆徳)

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日本経済新聞 2017/10/27付
社説:登記の義務化含む土地対策を


 誰のものかがわからない土地が今のままだと2040年に約720万ヘクタールに上るという試算を元総務相の増田寛也氏が座長を務める民間研究会が公表した。北海道本島の面積にほぼ匹敵する広さだ。由々しき事態と言わざるを得ない。
 16年時点の推定面積は約410万ヘクタールだから、25年程度でさらに7割強増えることになる。土地が放置されることに伴う経済的な損失は累計で6兆円という。
 こうした土地が増えたことで、災害復旧や公共工事ではすでに支障が出ている。農地の規模拡大も難しくなるし、固定資産税の徴収もままならない。区画や面積を確定する地籍調査も国土の半分程度でしか終わっていない。
 背景にあるのは土地に対する国民の意識の変化だ。地価下落で土地を保有する魅力が薄れ、管理する手間や税負担を嫌って相続時に登記しない人が増えている。
 現在の不動産登記制度がずさんな点も問題を深刻にしている。明治や大正時代に登記されたままの土地がかなりあることはかねて指摘されていた。登記制度の空洞化を防ぐ有効な手立てを打ってこなかった法務省の責任は重い。
 現状でいいはずがないのだから、登記簿や固定資産税の課税台帳などを照合し、土地情報を一元化する調査を早急にすべきだ。そのうえで所有者が不明な土地の情報を公表すればいい。
 それでも名乗り出なければ、所有者の同意がなくてもその土地を広く活用できる制度をつくる。農地ではすでに、一定の手続きをすれば都道府県知事の裁定で田畑に「利用権」を設定し、第三者に貸与できる仕組みがある。
 税負担や手数料を大幅に軽減したうえで、現在は任意とされる不動産登記を義務化することも必要だ。最終的には土地の所有権のあり方から再考してほしい。
 現在、国土交通省や法務省、農林水産省などが検討を始めている。省庁の縦割りではなく、政府として総合的かつ抜本的な対策をまとめるべきだ。
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山陽新聞(2017年10月29日 07時47分)
社説:持ち主不明土地 放置食い止める抜本策を


 民間有識者でつくる研究会が、2040年に持ち主が分からなくなった土地が全国で約720万ヘクタールに達する可能性があるとの試算を公表した。日本全土の約2割に当たる広さである。
 研究会は6月、所有者不明地が九州に匹敵する約410万ヘクタールに上るとの衝撃的な推計を示していた。今回の試算は、新たな対策を行わない前提とはいえ、20年強で1・8倍に拡大するという警告は深刻に受け止めねばなるまい。
 河川や道路工事、民間の再開発事業を行う際、予定地の中に1カ所でも所有者不明地があると、所有者特定に何年も要したり、その作業に当たる人件費も必要になる。事業を断念する場合もあろう。空き地のまま放置されることによる景観や治安の悪化のほか、急を要する災害復旧に支障を来すことも考えられる。
 経済的な損失も大きい。事業を実施できずに失う利益や所有者捜索の費用などは17~40年の累計で約6兆円に上るという。当初は年間1800億円だが、最終的に3100億円に膨らむ。損失拡大を防ぐためにも、一刻も早い対策が求められよう。
 所有者不明地の問題は、山林や農地では指摘されてきたが、最近は住宅地や市街地でも顕在化している。人口減少で土地の需要が減る地方を中心に、地価の下落傾向に歯止めがかからないためだ。土地は必ずしも有利な資産ではなくなり、税負担や管理の手間が敬遠され、相続時に登記されないケースが増加した。
 国土交通省は今月、所有者不明の空き地に5年程度の利用権を設け、市町村や企業が公益目的に限って活用できる制度を設ける考えを打ち出した。期間延長もできるようにする見通しで、公園や農産物直売所、駐車場といった用途を想定している。来年の通常国会への法案提出を目指して検討を進めている。
 登記制度を所管する法務省は5月、相続の際の手続きを一部簡略化した。今月には大学教授や弁護士による研究会も立ち上げた。相続登記を促す方策などを話し合い、19年までに報告書をまとめる。
 国交省の新制度は、所有者が現れて返還を求めた場合には、原状回復して返す制約を設けることになる。その制約がネックになって実際にどの程度活用されるか見通しにくい。法務省の研究も始まったばかりで議論の先行きは未知数だ。所有者の権利との兼ね合いに配慮しつつ、抜本的な方策を議論してもらいたい。
 米国では市場価値が低く売買困難な不動産の放置を防ぐため、自治体が母体となってランドバンクという非営利組織を設け、成果を上げている。法律を整備して宙に浮いた土地を取得できるようにし、処分に困った土地も引き取る。古くて危険な建物があれば取り壊すといった管理も行いながら、次の利用者探しを手掛けている。日本でも参考になる仕組みだろう。
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朝日新聞 2017年9月21日05時00分
(社説)所有者不明地 縦割り排して対策急げ


 だれのものか、わからない。所有者がわかっても連絡がとれない。そんな土地が各地で増えている。
 専門家グループの推計では全国の2割に達し、総面積は九州より広いという。今後、亡くなる人が増えるにつれてさらに深刻になっていく恐れが強い。
 公共事業で用地取得の妨げになる。宅地や農地、森林が放置されて周りの環境に悪影響を及ぼす。固定資産税を徴収できない。そうした弊害を見過ごせなくなり、政府は有識者会議を設けて対策を検討し始めた。
 これまでも国土交通省や農林水産省が、災害復旧や林道整備などで部分的に対応してきたが、効果は十分にはあがっていない。根本には、土地の相続時に所有権の移転を登記しない人が少なくないという問題がある。相続や登記の制度を所管する法務省も含めて役所の縦割りを排し、新たな発生を防ぐ抜本策にまで踏み込んでほしい。
 登記簿で実際の所有者がわからない時、行政は戸籍や現地調査など他の方法で探す必要がある。関係者の死亡などで手間取ることが珍しくない。
 有識者会議ではまず、自治体などが所有者を探す手間を軽くする仕組みに加え、所有者不明地を公共目的で使いやすくする新たな制度を検討する。
 道路整備などの公共事業に限らず、例えば自治体やNPOが運営する遊び場やイベント用地といった使い道を想定する。財産権の問題がからむだけに、利用を認める期間や、後に所有者が名乗り出た場合の金銭補償などが課題になる。
 発生の予防策では、当面の対応として、市町村が死亡届を受け付ける窓口で相続登記を案内し、手続きを促すことが考えられる。登記にかかる税金の軽減のほか、登記の義務化も選択肢になるだろう。やり方や効果の有無、法的な問題について検討を急ぐべきだ。
 所有者不明地の問題から見えるのは、土地をめぐる諸制度と現実とのずれだ。過疎化と地価下落が続く地方を中心に「土地は資産」「所有者が管理する」という大前提が揺らぎ、相続が重荷だ、土地を持ちたくないという人が増えている。
 土地は個人の財産であると同時に、社会の基盤でもある。所有者の権利をどこまで保護するか、土地所有に伴う管理責任をどう考えるか。仮に放棄を認める場合、受け皿をどうするか。
 難題だが、避けては通れない。多くの国民が納得できる仕組みをめざし、議論を深めていく必要がある。
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中国新聞 2017/9/21
社説:所有者不明の土地 地方再生で登記促進を


 大都市で土地の値段が上がっている。ことしの都道府県地価(基準地価)によると三大都市圏に加え、広島市の商業地でも高い伸びを示した。雇用環境の改善や、宅地購入を促す低金利政策が背景にある。一方で、過疎地域などでは相続時に登記変更されずに放置される「所有者不明の土地」が増えていることにも目を向けねばならない。
 民間研究機関が今夏まとめた推計によると所有者不明地は全国で約410万ヘクタールに及び、九州の広さを上回る。地籍調査の遅れとともに指摘されてきた問題だが、あらためて驚かされた。
 人ごとでは済まされない。道路整備や災害復興、再開発事業の支障となっており、固定資産税の徴収が滞っているケースもある。所有者捜しはまた、行政に膨大な手間を強いている。
 団塊世代からの代替わり時には、さらに深刻化する恐れもある。社会全体の問題として対応すべきで、それには背景や現状を見つめ直す必要があろう。
 戦後の日本社会が招いた構図といえる。都市への人口流出や農林業の衰退、地方の地価下落が重なり、代々引き継いできた土地への愛着が薄れている。「負動産」という造語をよく見掛けるのも、その表れだろう。
 不動産登記が任意制なのも大きく影響している。大都市のように資産価値が高ければおのずと事は運ぼう。逆に言えば地価下落が続く過疎地などでは、費用がかかる登記手続きを敬遠する向きが強まる可能性もある。
 高度成長期からの流れは、1990年代から各地で耕作放棄地や森林の荒廃となって現れ、もはや看過できない状況だ。東日本大震災でも岩手県の高台移設予定地で登記が明治時代のままの土地が見つかり、復興事業が遅れる要因になった。
 対策が求められていた国がようやく腰を上げた。先週、国土交通省が大学教授らによる有識者会議の初会合を開いた。所有者不明地をこれ以上増やさない策や、放置された土地をどう管理するかを話し合う。年内に結論をまとめ、来年の通常国会に関連法案を出す方針でいる。
 なぜ急ぐのか。リニア中央新幹線の建設地で所有者不明地が見つかったのも関係していよう。用地買収が遅れれば、開業時期に響く。有識者会議が、一定の条件下では不明地を公共事業に活用できるようにする新たな制度の検討も始めたことにも、リニアを景気浮揚策と期待する政権の意向が垣間見える。
 慎重な上にも慎重な議論を求めたい。個人の財産権に関わることでもある。「公共の目的にかなう使い方とは何かしっかり説明すべきだ」との意見が、有識者会議で出たのも当然だ。
 今やるべきは登記の促進策である。罰則付きの義務化は国民合意を得にくい。死亡届が市町村に出された際に無理なく促すことから始めるべきだ。土地所有の税負担などを理由に相続を望まない人に対しては、地元自治体や法人格を持つ自治会などに管理を移す制度を作ったらどうか。所有者捜しには、農林水産省や総務省などが縦割りで管理している土地情報の一元化が有効だろう。
 何より大事なのは地方の再生である。古里が元気を取り戻せばおのずから登記も進もう。定住や就農の促進など、地に足の着いた取り組みが欠かせない。
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朝日新聞 2017年6月26日13時31分
持ち主不明の土地、九州より広く 「満州国在住」登記も
「所有者不明土地」なぜ増える?
 相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積が、九州より広い約410万ヘクタールに達するとの推計結果を、有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が26日公表した。こうした土地の増加は、森林の荒廃や土地取引の停滞などにつながるとして、研究会は年内に対策案を政府に提言する。
 研究会は、名義人の死亡後も相続登記されなかったり、住所が変わって名義人と連絡がつかなくなったりしている土地を「所有者不明土地」と定義。国土交通省の地籍調査や人口動態などを加味して推計したところ、所有者不明土地の総面積は、九州の面積(368万ヘクタール)を上回った。
 土地の筆数でみた所有者不明率は20・3%となり、土地の種類別では宅地が14%、農地が18・5%、林地は25・7%だった。全国約10万筆を対象に、最後の登記から50年以上が経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合が22・4%になるとした法務省のサンプル調査と似た傾向となった。
 これだけの土地が所有者不明とみられる背景には、人口減少で土地の資産価値が下がっていることがある。資産価値がなくても管理コストや登録免許税、固定資産税などの負担がかかるため、法定相続人がだれも相続登記せず、長年にわたって放置される構図だ。何十年も放置されると子や孫の代になって相続人がどんどん増えていき、事実上、相続も売却もできない「塩漬け物件」となる。
 国土交通省の調査をもとに、不動産登記後の年数と所有者不明率の関係を調べると、最後の登記から30年未満だと不明率は21%にとどまるが、50~69年になると62%、90年以上では80%に達した。
 研究会は今年1月から、自治体からの聞き取りなどで実態を調べてきた。登記簿上の所有者が満州国在住になっている、固定資産税の納税通知を送っても多くが戻ってくる、といった事例があったという。
 研究会では、所有者不明土地の対策として、政府や自治体がバラバラに管理している不動産に関する台帳のネットワーク化や、土地の放棄や寄付の受け皿づくりなどを挙げる。政府も、不明土地を公的な事業に利用できるようにする制度の検討を始めるなど対策に乗り出している。
 この日の会見で、増田氏は「今後、将来予測や経済的損失の試算もしていく」と話した。(大津智義)


朝日新聞 2017年6月26日13時36分
道路工事したいのに… 地権者107人、進まぬ買収
 名義人が亡くなっても相続登記されないなどして所有者が分からなくなっている可能性のある土地の総面積は、九州よりも広い――。民間有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が26日、こんな推計結果を公表した。こうした土地の一つを、記者が訪ねた。
 南アルプスや中央アルプスに囲まれた長野県南部の飯田市。片側1車線の県道の半分をふさぐように突き出た土地がある。県道を管理する県飯田建設事務所によると、2008年10月にかけてこの一帯の道路を拡幅する工事を行ったが、この土地だけ買収できないまま残っているという。
 県道はこの一角だけ極端に狭くなる。朝夕は小中学生の通学路になるほか、昼間はダンプも通る。近くを通るリニア新幹線のトンネル工事で出る土砂をこの県道で運び出す構想もあるが、牧野光朗市長は「(道路拡幅を)解決しなければ、リニアの掘削土を運び出せない」と頭を抱える。
 土地買収が進まないのは、地主が反対しているからではない。地主が多すぎるのだ。
 広さ119平方メートルの土地の地権者は107人に達する。もともと、山の神をたたえた石仏などをまつった共有地で、地権者らによると、明治時代の土地台帳では26人の地権者がいたという。当初の地権者が亡くなっても相続登記がされないまま年月が過ぎ、子から孫、ひ孫の代へと法定相続人が増えていった結果だ。
 土地を買収するには、107人全員から同意を得なければならない。だが、中には米国在住の地権者もいて、手続きは進まなかった。一部の地権者が司法書士や弁護士に頼んで権利関係を整理してもらい、土地を売却しようと動いたこともあった。しかし、全員の印鑑証明が必要になるなど手間やコストがかかりすぎるとして、断られたという。
 107人の地権者の一人で、この土地をめぐる経緯に詳しい松下光敏さん(79)は「時間の経過とともにどんどん相続人が増える。誰が誰かも分からない」と嘆く。
 地元住民からは、交通安全のために早期解決を求める声が強まる。自治会である羽場まちづくり委員会の原修司会長は、リニア工事を見据え、「いまよりダンプの通行量が格段に増える。道幅が狭くなっている現状ではとても安全性は確保できない」と訴える。
 県道の拡幅工事に費やした2億4500万円に対し、買収できず残った土地を近隣相場でみると500万円ほど。2年前から県が地権者の同意を得る作業を進めようとしているが、107人のうち誰かが亡くなれば、また新たな相続人が出てくる可能性がある。「いたちごっこ」(牧野市長)が終わる見通しは立っていない。

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