不動産不況の波が・・・

不動産デベロッパー 相次ぐ破たん

ミニバブルと言われた不動産投資。サブプライム問題の影響で、不況の波が押し寄せている。

不動産デベロッパーの破綻が相次いでいる。
8月に破たんしたアーバンコーポレイションは、不動産ファンド向けの物件開発で急成長。
3月のスルガコーポレーションは不動産ソリューション事業(権利調整の複雑な物件を割安に購入し、デベロッパーやファンドに転売する)で急拡大した。
7月のゼファーも不動産流動化事業(開発用地を仕込み、収益物件を開発し、不動産ファンドに売却する)に手を出していた。

こうした不動産流動化モデルの崩壊ともいえる事態を受け、事業を推進してきた政府はどう対応する気だろうか。

原油高騰による燃料高の影響を受ける漁業や農業、運輸、中小零細事業者への支援対策とは違うような気がするのだが・・・・。


ケンプラッツ  2008/08/14
【トラブル】アーバンコーポレイションが民事再生へ、負債総額2558億円

 不動産デベロッパーのアーバンコーポレイションは8月13日、東京地方裁判所に民事再生手続きの開始を申請し、受理された。6月末時点の負債総額は2558億3200万円。金融市場の混乱で資金調達が困難になるなか、他社との提携を模索してきたが合意に至らず、借入金返済や手形決済のめどがつかなくなったという。
 アーバンについては日本格付研究所(JCR)が6月4日に格付けの見直しを発表し、BBB−からBB+へと引き下げた。6月26日には、アーバンが仏BNPパリバを割当先とする300億円のCB(転換社債型新株予約権付社債)発行を発表していたが、実際の受取額は予定を大幅に下回ったことが今回明らかになった。
 調達した300億円を7月11日いったんパリバに支払い、パリバが転換後の株式を売却して得た資金の一部を1カ月程度かけてアーバンが受け取る契約だった。しかし、受け取り額は株価に連動する契約となっており、さらにアーバン株が契約における下限(当初予定250円)を割り込んだため、当初想定した金額を受け取ることができなかった。民事再生申し立てによりこの契約が終了した結果、アーバンは58億円の営業外損失を計上している。2007年10月に2000円台を記録した同社の株価は、今回の発表前に62円まで下落していた。
 アーバンは1990年に広島市で創業し、不動産ファンド向けの物件開発で急成長した。2008年3月期の連結売上高は2436億円。13日に発表した2008年第1四半期(2008年4月〜6月)の売上高は499億円、営業収支は314億円の赤字だった。あずさ監査法人はこの四半期決算に関して意見不表明を発表している。3月末時点の正社員数は342人。東京証券取引所1部からは9月14日に上場廃止となる予定で、当面は営業を続けながらスポンサーを探すことになる。

2008/07/08
【トラブル】銀行が担保権行使して社長の保有株を売却、アーバンコーポレイション

 アーバンコーポレイションは7月7日、房園博行(ぼうぞのひろゆき)社長が保有していた同社株について、銀行がその担保権を行使して市場で売却したことを明らかにした。房園氏の保有割合は4.03%に低下し、アーバンにおいて10%を超える主要株主は不在となる。
 房園氏は同社株の16.60%を保有していた筆頭株主だったが、個人として金融商品や不動産に投資するため、保有するアーバン株を担保に複数の銀行から資金を借り入れた。その後アーバンの株価下落が続くと、房園氏は銀行の求めに応じて追加の株式を担保に差し入れてきたという。
 アーバンについては日本格付研究所が6月4日に格付けの見直しを発表し、長期優先債務に関してBBB−からBB+へと引き下げた。こうした状況で銀行融資による資金調達は困難さを増している。6月26日には、仏BNPパリバを割当先とする300億円のCB(新株予約権付社債)を発行する計画を発表した。
 東京証券取引所でのアーバン株の7月7日時点終値は217円で、1年前に比べて10分の1の水準となった。

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日経ビジネスオンライン 2008年8月19日 火曜日

今年最大の倒産、その引き金は
不動産市況の悪化と、ささやかれ続けた“ある関係”

最後の最後まで昔の関係が足を引っ張った。
 8月18日に民事再生手続きの開始決定を東京地方裁判所から受けた東証1部上場のアーバンコーポレイション。

 「本日、自主再建を断念しました」
 13日、民事再生法の適用を申請した際に、東京証券取引所で開かれた会見。房園博行社長は無念さを押し殺すように淡々と言った。負債総額は2558億円と、今年に入って最大規模の倒産劇となった。
 破綻の直接の要因は不動産市況の急速な悪化である。マンション分譲を生業としてきたアーバン。近年は不動産流動化ビジネスを収益の柱にしてきた。2008年3月期の連結売上高は2436億円。そのうち流動化ビジネスは約67%の1629億円を占めていた。
 テナントや借家人のいる物件や権利関係の複雑な不動産を取得、権利関係を調整したうえで収益物件を建ててファンドに売却する――。2000年以降、右肩上がりの成長を続けた多くの新興デベロッパーと同様に、不動産流動化ビジネスで急拡大を果たした。
 ところが、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)の影響でファンドやREIT(不動産投資信託)による物件取得は激減。急成長を支えたビジネスモデルは崩壊した。しかも、今春以降は不動産会社に対する金融機関の融資姿勢は厳格化。アーバンの資金繰りは急速に悪化していった。
 3月末に452億円あった現預金は6月末には211億円に減少。なりふり構わぬ換金化のためだろうか。棚卸資産も1000億円ほど圧縮されている。困難を極めた資金調達。最後は、監査法人が2009年3月期第1四半期で監査意見を表明しない、という結論が出ることが明らかになり、市場からの退出を余儀なくされた。

300億円の調達が92億円
 経営破綻の表向きの理由はビジネスモデルの崩壊と金融機関の融資姿勢の厳格化だ。もっとも、民事再生法の適用申請まで追い込まれたのは、アーバンにつきまとった「レピュテーション(風評)」にもある。
 実は、アーバンは最後まで延命を模索していた。同社は6月末、BNPパリバに対する2010年を満期とした総額300億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を発表した。このCB発行に関しては、民事再生法の適用申請時に明るみに出た隠れたスワップ契約があった。この契約によって、300億円のCBを発行しても、実質的には92億円しか払い込まれていなかった。情報開示の面で市場から非難の声が上がっている。
 このBNPパリバに対するCB発行と前後して、アーバンは業界他社との業務提携や資本提携を進めていた。だが、ゼファーなど中堅デベロッパーの破綻が相次ぐ中、アライアンスによる生き残り策は頓挫。その後、複数の外資系証券に対して秘密裏に資本増強の相談を持ちかけたが、すべての証券会社に断られた。
 業績不振で株価が急落している不動産会社の多くは、資本増強や他社との提携に活路を見いだしている。7月に大和証券グループ本社との資本提携を発表したパシフィックホールディングスのように、信用補完のためのスポンサー確保に成功した企業もある。

「ああいう噂のある会社にはどこも手が出せないよ」
 これらの企業とアーバンを分けた理由は何だったのか。外資系金融機関の幹部はこうささやいた。
 「ああいう噂のある会社にはどこも手が出せないよ」。外資系金融機関にはコンプライアンス(法令遵守)上、取引を禁じている企業のリストがある。この外資系金融機関はアーバンをそのリストに入れていた。それは、ある男とのつながりを疑っていたためだ。橘田幸俊氏である。
 橘田氏は2003年に2370億円の負債を抱えて倒産したゴルフ場開発会社、「愛時資(あいじし)」の代表を務めていた人物だ。国土法違反で暴力団幹部とともに逮捕された過去を持つ。経済界や裏社会にパイプを持つと言われている。この橘田氏、「2人の茂」に重用されて地歩を築いた。
 1人は旧川崎財閥の資産管理会社、川崎定徳の社長だった故・佐藤茂氏である。1986年、旧住友銀行が平和相互銀行を吸収合併した際に重要な役回りを演じたのが佐藤茂氏。企業と裏社会を結ぶフィクサーとささやかれた。そしてもう1人の茂が、東映の岡田茂・名誉会長だ。表の岡田と裏の佐藤――。この2人の支援で政財界や裏社会に人脈を構築していった、とされる。

 一方、大京の敏腕セールスマンだった房園社長は1990年、広島でアーバンを創業した。頭取や会長を務めた広島銀行の実力者、故・橋口収氏(元国土事務次官)に認められた房園氏は、橋口氏と広島銀行の庇護の下、めきめきと頭角を現していく。
 例えば、アーバンが2003年に建てた広島市内のアーバンビューグランドタワー。地上43階建て、オフィスやマンション、商業施設からなる超高層複合ビルである。アーバン躍進のきっかけになったこの大型開発では、広島銀行がアーバンを強力にサポートした。
 広島グランドホテル跡地をアーバンが取得したのは1997年のこと。土地の取得に際して、広島銀行は57億円を融資した。この時のアーバンの売上高は60億円あまり。「あまりに借り入れが過大だから、アーバンは潰れるのではないか、という噂も立った」(当時を知る金融関係者)。地元の金融関係者が驚くほどの肩入れぶりだった。
 橋口会長の後ろ盾で成長したアーバンは1998年以降、広島から東京に軸足を移していく。その時に頼ったのが橘田氏だった。
 「平成10(1998)年に東京進出を果たした際、金融機関から紹介を受けた。東京における不動産売買の助言などをしてもらった。短い期間だが、橘田氏に相談役の肩書きを使うことを容認していた時期もある。ただ、初期のごくわずかな期間のこと。その後、反社会的勢力との決別が求められたため、2006年夏に会社としても、房園個人としても橘田氏との関係は切った」。本誌の質問にアーバンの広報部はこう答えた。

まだある“爆弾”
 もっとも、それまでは不動産開発に様々な勢力を利用してきたようだ。アーバンの2000年3月期の有価証券報告書を見ると、先のアーバンビューグランドタワーの共同事業体として「共同都心住宅販売」という会社の名前が登場する。この共同都心住宅販売、今年3月の「スルガ事件」の当事者の1社である。
 この3月、東証2部上場のスルガコーポレーションが取得したビルの地上げを巡って複数の不動産関係者が逮捕される事件が起きた。暴力団関係者と関係が深いとされるこの不動産関係者に立ち退き交渉を依頼したスルガは、最終的に民事再生法の適用申請に追い込まれている。
 共同都心住宅販売はこの時に逮捕された人物が社長を務める会社。しかも、アーバンはこの会社に出資していた。アーバンは権利関係が複雑な不動産を安価に仕入れ、立ち退きを完了させた後、収益物件を建てることに長けていた。スルガよろしく、アーバンも立ち退き交渉に彼らを活用してきたのだろう。
 「反社会的勢力と思われる取引先はなかった」。先の会見で房園社長は強調した。疑いを晴らすため、今年4月には、5人の弁護士からなる外部委員会を設立、反社会的勢力とのつながりを否定する報告書をまとめた。だが、10年前の過ちがアーバンの息の根を止めた。
 「銀行が引き当てさえ積んでしまえば倒産しようが関係ない。9月末から来年にかけてまだまだ潰れる」とある金融機関の幹部は打ち明ける。反社会的勢力との関係がささやかれる企業はほかにもある。不動産バブルの膿は早めに出し切るべきだろう。
 既に、不動産デベロッパーの成長を支えた流動化モデルは崩壊した。3月のスルガコーポレーションに始まり、ゼファー(7月)、アーバン(8月)と続いた不動産デベロッパーの破綻。不動産会社を襲う暴風雨は当面、やみそうもない。

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日経ビジネスオンライン 2008年7月23日 

サブプライム余波、ついにマンション業者に波及
中堅デベロッパー、ゼファーが撃った淘汰の号砲

「えっ、それ本当」
 東証1部に上場する中堅デベロッパー、ゼファーが民事再生法の適用を申請した7月18日。「ゼファー破綻」の一報を聞いたある不動産会社の社長は、電話口でしばし絶句した後、こう続けた。「やっぱりなあ。なりふり構わずって感じだったもんなあ」。
 この社長は6月上旬、ある仲介不動産会社を通して、ゼファーの所有物件の購入を打診された。160前後の物件情報が記載されていたA3版のリスト。「いくらでもいいから、とりあえず検討してほしい」。仲介の不動産会社が勧めるままに目を通したが、その中身を目にした途端、買う気が失せた。
 北海道・ニセコスキー場のホテル用地、埼玉県鴻巣駅前の再開発――。「もう郊外や地方ばかり。少なくとも、私がマンション適地と思える用地はほとんどなかった」。ちなみに、この社長が唯一、「○」をつけたのは東京都江戸川区の物件。都内一等地の優良物件とは言えない代物だ。

なりふり構わぬ資産の叩き売り
 この数カ月、ゼファーの資金繰りは綱渡りの連続だった。2008年3月期に1091億円の売り上げを計上したゼファー。そのうちの半分は不動産分譲事業だが、残りの4分の1は不動産流動化事業による売り上げである。この不動産流動化事業、かみ砕いて言うと、開発用地を仕込み、収益物件を開発し、不動産ファンドに売却するというビジネスモデルだ。
 多くの場合、「完成予約」という形でできる前から売却先が決まっており、不動産会社にはリスクの少ないビジネスと言えた。ところが、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)に端を発した信用不安問題が起きた昨夏以降は、状況が一変した。特に、金融機関による融資姿勢が厳しさを増した年明け以降、ファンドに対する融資の蛇口がギリギリと絞り込まれている。それが、ゼファーを追いつめた。
 もともと、ゼファーは手元流動性に乏しい。2008年3月期における連結の手元流動性は約144億円。それに対して1年以内に返済する借入金や社債、コマーシャルペーパーなどの短期の有利子負債は約550億円に達する。連結フリーキャッシュフローが260億円の赤字に陥る中、頼みの綱は1000億円を超える在庫の処分が進むこと。
 だが、サブプライムの余波でファンドに対する金融機関の融資が縮小した結果、ファンドに売却予定だった物件が売れず、開発案件の資金回収に時間がかかり始めた。年明け以降は不動産融資に対する審査そのものが厳しくなり、ゼファーにとっては新規の開発プロジェクトも進めにくい環境になってきた。
 そこにきて、5月30日には連結子会社の近藤産業が破産を申し立て、約140億円の関係会社整理損を計上した。8月には128億円の社債の償還を、そして今期中に約180億円に上る長期借入金の返済を控える。急速に悪化する資金繰り。ゼファーはなりふり構わぬ資金調達に出ざるを得なかった。
冒頭の物件売却リスト。実際は、金目の資産を換金するための投げ売りに等しい。5〜6月には筆頭株主のSBIホールディングスから120億円の短期貸し付けを受けている。そして、6月27日にはSBIの全株式を売却。取得価格に対して約40億円のロスまで出して手元の現金確保に走った。だが、刀折れ、矢が尽きた。

ゼファーだけが特別なわけではない
 1994年に設立されたゼファーは、90年代後半からのマンションブームに乗って業容を広げた。わずか6年後の2000年には日本証券業協会に株式を店頭登録。2004年には東証1部に上場している。多くの新興マンションデベロッパーがそうであるように、ゼファーも低価格を武器に販売戸数を伸ばした。
 「B級グルメ」。あるマンション分譲会社の社長が言うように、ゼファーは千葉や埼玉など東京の郊外エリアを中心にマンションを分譲してきた。過去の分譲実績を見ても、松戸や船橋、成増などの郊外が目立つ。
 4月30日にNBオンラインに掲載した「首都圏マンション・本当の資産価値 【第3回】これが、新築マンションの適正価格だ」。ここで触れた「ゼファー武蔵浦和GRANDLIVES」は駅から1キロ以上も離れているが、新築分譲坪単価は147万円と武蔵浦和駅周辺では最も安かった(当時)。この案件が象徴的だが、三井不動産や野村不動産ホールディングスなどの大手があまり手を出さない郊外に、低価格の住まいを供給することで成長してきたわけだ。
 全体のパイが拡大している時はそのモデルが機能した。だが、首都圏マンション市場は既に変調を来している。
 用地取得コストや資材費の高騰などで分譲価格が上昇した結果、消費者の購入意欲は低下している。首都圏では1999年から7年連続で8万戸供給が続いていたが、不動産経済研究所によれば、2008年上半期の供給戸数はわずか2万1500戸にとどまった。急増する売れ残り在庫を前にして、換金のために転売業者に安値で叩き売るデベロッパーも増えている。
 価格は安いが立地はよくない。逆風下のマンション市場で最も影響を受けるのは、こうした郊外を主力にしていたデベロッパーだろう。しかも、ここ数年の分譲マンションの減速を補ってきたファンド向けの流動化ビジネスが事実上、崩壊している。
 「(経営破綻した)ゼファーだけが特別なわけではない」。ファンド向けの流動化ビジネスでデューデリジェンス(資産査定)業務を手がけるある会社の社長は思わせぶりに言う。
 2000年以降、「郊外」「低価格」「流動化」の3つをキーワードに拡大してきたマンション開発業者は少なからずいる。その多くが、資金繰りに窮したゼファーと同じ状態に置かれていても不思議ではない。
 今年6月には、同じ不動産会社のスルガコーポレーションが民事再生法の適用を申請した。東京都千代田区の商業ビルの立ち退き交渉に際して、暴力団に近い地上げ屋との関係が表面化。それが元で資金調達が困難になった。
 スルガコーポ破綻の直接の引き金はコンプライアンス(法令遵守)上の問題である。それに対して、今回のゼファーは不動産市場の悪化に米国発の信用不安が重なった経営破綻であり、その震度は異なる。ゼファーの破綻は、デベロッパー淘汰を予兆させるものかもしれない。

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日経ビジネスオンライン 2008年3月6日 

ファンドバブルの裏に暴力団あり
“スルガ流”ビジネスモデルが崩壊

彼らは、熱狂の時代に咲いたあだ花だったのだろうか。
 東京都千代田区麹町にあった「秀和紀尾井町TBRビル」。築30年を数えるこの古ビルを巡る立ち退き交渉を巡って、警視庁組織犯罪対策4課は3月4日、大阪市東住吉区の不動産会社、「光誉(こうよ)実業」の社長、朝治(あさじ)博容疑者など計12人を逮捕した。弁護士資格がないにもかかわらず、テナントの立ち退き交渉を行った弁護士法違反(非弁行為)の容疑である。
 光誉実業は不動産会社の依頼を受けて入居者の立ち退き交渉をするいわゆる「地上げ屋」。秀和紀尾井町TBRビルでは、東証2部上場の不動産会社、スルガコーポレーションの依頼を受け、立ち退き交渉に当たっていた。報道によれば、スルガコーポから光誉には報酬を含めて約40億円が渡った。この物件以外にも、明らかになっているだけで、スルガコーポは光誉に5件の立ち退き交渉を依頼している。
 以前から、光誉には暴力団の影がちらついていた。

嫌がらせで猛犬を放した過去も
 「朝治さんとA組(指定暴力団山口組系)の関係は、僕らの業界では有名」。大阪で立ち退き交渉を行っていた同業者は小声で囁く。
 20年以上も前から立ち退き交渉を行っていた朝治容疑者。バブル期に大阪の北新地やミナミなどの繁華街で立ち退き交渉を手がけており、「その過程でA組との関係が深まった」(先の地上げ屋)とされる。今回の事件では、光誉と暴力団山口組系幹部との間で現金のやりとりがあったと報道されており、その通りなら、スルガコーポから流れた金が反社会勢力に渡ったことになる。
 大阪時代から朝治容疑者と面識があるこの地上げ屋によれば、朝治容疑者は九州のある“組織”を抜けた後、大阪に上京し、立ち退き交渉を始めた。そのやり方を尋ねると、一言こう答えた。

 「とにかく、荒くたい(荒っぽい)ねん」
 朝治容疑者は1996年に、地上げを巡る嫌がらせで大阪府警に逮捕された。立ち退きに応じない入居者に街宣車を回したり、ドーベルマンを放したり。TBRビルの立ち退き交渉でも、(あえて見えるように)入れ墨を入れた若い衆にタンクトップを着せて歩かせる――などの威圧行為をしていたという。
 バブル経済の崩壊とともに、地上げ屋は表舞台から姿を消した。その地上げ屋が再び息を吹き返したのは1990年代後半のことだ。その要因の1つは不動産ファンドの急増である。
 1990年代後半になると、地価下落で割安になった不動産を購入する海外のファンドが増え始めた。その後、国内系ファンドも登場し、雨後の竹の子のように増えたファンドがオフィスビルやマンションを買いあさった。動き出した東京の不動産市場。大阪を地盤にしてきた地上げ屋が東上を始めたのはビジネスチャンスを嗅ぎ取ったからだろう。
こうしたファンドの旺盛な需要を満たすため、不動産開発業者は競うように物件を建築した。その結果、用地価格は高騰。取得費用を抑えるため、入居者のいる物件を安価に購入し、専門業者を使って立ち退かせるデベロッパーが相次いで出た。光誉はまさに、この専門業者。その意味では、昨今の不動産バブルが生んだあだ花である。
 そして、光誉に立ち退き交渉を依頼したスルガコーポも不動産市場の活況の中で急成長を遂げた。

“わけあり物件”の取得で急成長
 スルガコーポは入居者の立ち退きが進まない“わけあり物件”を積極的に取得するデベロッパーとして業界では広く知られていた。例えば、東京・銀座の中央通りに面したとあるビル。現在はスウォッチの路面店が入居しているが、この物件の再開発にかかわったのもスルガコーポである。
 この物件が建つ前にあったビルを米投資銀行、モルガン・スタンレー証券が購入したのは2000年のこと。ただ、立ち退き交渉が難航し、2003年にスルガコーポに売却した。一部のテナントが退去せず、難しい不動産だったが、取得したスルガコーポは半年あまりで立ち退きを完了させ、スウォッチに転売している。
 権利調整の複雑な物件を割安に購入し、デベロッパーやファンドに転売する――。2003年3月期以降、スルガはこの不動産ソリューション事業で急拡大した。
 2003年3月期に約172億円だった不動産ソリューション事業の売上高は、約209億円(2004年3月期)、約284億円(2005年3月期)、約508億円(2006年3月期)、約609億円(2007年3月期)と右肩上がりに伸びた。2008年3月期には中間期だけで778億円を計上している。2008年3月期中間決算の場で、スルガコーポは通期の売上高予想1180億円を1400億円に20%近く上方修正した。その原動力となったのは不動産ソリューション事業である。
 代表権を返上した岩田一雄会長と共に、取締役を退任した高城竜彦氏がこの不動産事業を手がけていた。住友不動産の社長や会長を務めた高城申一郎氏の親族として知る人ぞ知る存在だ。岩田会長の息子、岩田剛取締役の妻も高城氏とは血縁関係にある。
 「大阪流の熱意のある会社と思っていた」。4日夜の会見で岩田会長は光誉との取引の経緯を苦渋に満ちた表情で語った。金融機関から“フロント企業”と伝えられ、2007年に取引を打ち切ったという話だが、ソリューション事業のトップだった竜彦氏がそれまで知らなかったとは考えにくい。曰くつきの案件をまとめるにはそれなりの背景がなければ難しい。
 東証2部上場会社が絡んだ弁護士法違反事件は、ここ数年の不動産市場の過熱が生んだと言っても過言ではない。だが、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の影響もあり、現状の東京の不動産市場は以前ほどの熱はなく、不動産ファンドの買いは落ち込んでいる。ここ数年の不動産市場を鮮やかに彩った地上げ屋とデベロッパーの蹉跌は、不動産市場が冬景色になったことを誰の目にも明らかにした。
(日経ビジネスオンライン 篠原 匡)

テーマ : 政治・時事問題
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