車水没死 市も消防も警察も なぜ命を守れないのか

ゲリラ豪雨 想定外だという認識こそ問題だ

ゲリラ豪雨でまた悲惨な犠牲者がでた。
県警と消防の対応のまずさは、「危機管理の甘さ」以前の問題で、市民の命を守るべき任務を果たせていないという組織の存在そのものにかかわる問題だ。

市民が助けを求めているのに、「勘違い」したでは役割は果たせないではないか。
警察や消防にとっては、危機管理は日常業務のはずだ。
なぜ、そうなるのか。日常の任務を遂行できない原因はどこにあったのか。

JR尼崎の事故では、企業のトップの責任が問題になっている。
組織のトップまで含め、徹底して調査し、再発防止に取り組むべきだ。

もうひとつ、明確にしなければならないのは、日常管理を負う鹿沼市の責任だ。
通行禁止の看板を委託業者に指示した、という報道があった。

確かに、国も地方自治体も公務員リストラをすすめ、外部委託化を進めている。
だからといって、ひとたび今回のような事故が起これば、管理責任は自治体が負う。

「車水没現場は冠水危険地域…市の情報を消防認識せず」という報道もある。
市が日常的に危険地域の周知徹底を怠っていた結果だと考えられる。

埼玉県富士見市のプール事故のように市職員が刑事責任を問われることになりかねない。
本来ならば、リストラ・外部委託した市幹部こそ、責任が問われるべきだろう。
こういう管理のあり方そのものがどうだったのか徹底調査・検討すべきだ。



朝日新聞 2008年08月26日
都市型水害の危険認識を 再発防止へ着手

 鹿沼市の市道で16日夕、軽乗用車が水没し女性が水死した事故は、県警と市消防本部の危機管理の甘さを露呈した。都市型水害の増加が懸念される中、行政機関や市民に求められる対応や心構えは――。(矢吹孝文、金子智彦)
 「助けて!水が!水が!」
 16日午後6時18分、高橋良子さん(75)=宇都宮市=の携帯電話が鳴った。発信者は娘の派遣社員高橋博子さん(45)=鹿沼市=だった。
 「どこにいるの?」と尋ねても、返ってくるのは悲鳴だけ。最後にこう言い残して電話は切れたという。「お母さん、さようなら……」
 この事故で、県警と市消防は通報を度々受けながら現場に出動しなかった。県警は約1キロ南東の高架橋下で起きた車2台の水没事故と勘違い。市消防は高橋さんより先に水没して自力脱出した埼玉県の夫婦と混同した。
 当時、鹿沼市では午後6時までの1時間に60ミリという激しい降雨量だった。県警通信指令課には午後5時半からの2時間に108件、市消防には同5時半からの1時間で46件の通報が集中。どちらも「相次ぐ通報で混乱し、的確な判断が出来なかった」と釈明している。
 市によると、現場は午後5時半ごろに水深が20センチを超えた。市は道路手前の路面冠水情報装置に「通行止め」の表示を出したが、出入り口を封鎖するバリケードの設置が冠水の速さに追いつかなかったことも事故につながった。
 良子さんは「あのガード下は以前から有名な危険個所だった。それを放置していた市、通報にずさんな対応をした県警、市消防に怒りを覚える」と声を震わせる。
 県警や各地の消防本部は再発防止に取り組み始めた。
 県警通信指令課は「事故の事実を認識できなかった点に落ち度がある。通報内容を正確に把握し、迅速に対応するには人数が足りなかった」と話す。今後、消防との通報内容の交換や通報受理時の人員配置について見直すという。
 また、足利市消防本部は、管轄内に5カ所ある高速道や線路下をくぐる「道路アンダー部」の情報共有と見回りを強化することを決めた。
 日光市消防本部も市建設課と協議し、把握していなかった水没危険個所の情報を共有した。通報集中時の人員配置や混乱回避策は今後検討していきたいとしている。
 県は県内118カ所の道路アンダー部の緊急点検を実施。パトロール強化や注意喚起看板、監視カメラの設置などを検討していくという。
 しかし、もしも水没する車内に閉じこめられたら――。日本自動車連盟によると、専用のハンマーなど先のとがった物で窓をたたき割る。もしくは車内が浸水して水圧が和らいでから息を止めてドアを開ける方法があるという。
 京都大学防災研究所の戸田圭一教授(都市耐水学)は「相次ぐゲリラ豪雨の被害は予測が難しく、行政の完全な対応は望めない。都市部では道路アンダー部や地下街、地下駐車場に水が集中するので危険だ」と指摘した上で、「ふだんから危険個所や防災情報をチェックし、『無理はしない』という意識を高めることが必要」と話している。

下野新聞 (8月27日 05:00)
「基本動作できていない」 鹿沼・車水没事故で町村長官
 鹿沼市茂呂の市道で軽乗用車が水没、同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が水死した事故で、町村信孝官房長官は二十六日午前の記者会見で、通報を受けながら市消防本部などが出動しなかったことに対し「基本動作ができておらず大変遺憾だ」などと述べた。このほか増田寛也総務相が「現場が混乱していたようだが、そういう時に力を発揮するのが消防であり、警察だ」と市消防本部と県警の対応を批判。林幹雄国家公安委員長も県警の判断ミスがあったことを認めるなど、閣僚が相次いで水没死亡事故に言及。消防、警察の出動判断ミスが重なったことなどに全国的な注目が集まっている。
 町村官房長官は遺憾の意を示した後「ご遺族に申し訳なく、関係当局は反省し、しっかり対応してほしい」と述べた。
 事故があった十六日は集中豪雨のため、市消防本部に一一九番通報が殺到。同本部は自力で脱出した別の水没事故と混同し、現場に出動しなかった。
 増田総務相は「一一九番通報がいかに集中しても迅速で的確な行動を取れるように今回の状況をもう一度分析、検証して消防本部として対応策を取ってほしい」と述べた。
 総務省消防庁は同日までに、市消防本部に事件原因の調査と再発防止に努めるよう指導した。
 林国家公安委員長は二十六日の閣議後の記者会見で、「(栃木県警は)別の事故と誤認して現場に出動しなかった」と県警の判断ミスを認めた上で「栃木県警は今回の事故を踏まえ、一一〇番通報に対して迅速・的確に対応するとともに、関係機関との連携について見直しているとの報告を受けた」と話した。
 警察庁は同日、全国の警察本部に一一〇番を受理した際には発生場所を確実に特定するなど迅速、的確に対応するよう指示する通達を出した。
 通達では、鹿沼署が消防からの通報を県警本部に報告せず、一一〇番受理した県警は、ほぼ同時刻に発生した別の車両水没事故と誤認したため、警察官が現場に出動することがなかったと指摘。
 各警察本部には、通報者から聴取した概要を確実に指令することとし、関係機関との情報共有化や、集中豪雨など一一〇番が集中することが予測される時の要員増強を求めている。

(2008年8月26日23時46分 読売新聞)
「通行止め必要」市認識、バリケード封鎖できず…車水没死
 豪雨で冠水した栃木県鹿沼市の市道で同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が軽乗用車に閉じこめられて水死した事故で、市が通行止めが必要な冠水を認識していながらバリケードによる封鎖をできず、市消防本部にも冠水を連絡していなかったことが26日、わかった。
 高橋さんの長男雅人さん(19)は、佐藤信市長の謝罪について「ミスをもっと早く認めてほしかった」と話した。
 市によると、現場には冠水を感知する装置がある。水位10センチで「通行注意」、20センチで「通行止め」を現場に表示、市役所でブザーが鳴る仕組み。通行止めとなると、市が委託業者に道路を封鎖するよう指示することになっていた。
 事故のあった16日は、午後5時33分に水位20センチを知らせるブザーが鳴った。しかし、業者が現場に到着した午後6時15分ごろには市道脇の機材が水没しており、バリケードを設置できなかった。市によると、最終的な水位は2メートル近かった。
 近くのガソリン店員の話などから、市は高橋さんの車が午後6時10分ごろに現場へ入ったとみている。
 また、冠水を消防本部に通報する取り決めなどはなかった。市は、水位10センチで消防本部へ通報して警戒に当たらせ、市職員も現場へ向かうとする改善策を示した。
 一方、雅人さんは「現場は10年以上前から問題になっていた。母は泥水にのみ込まれて苦しみ、それでも必死に生きようとしたが、助からなかった」と声を詰まらせた。

下野新聞 (8月24日 05:00)
水没現場封鎖措置は業者任せ 鹿沼の死亡事故で
 集中豪雨で冠水した鹿沼市茂呂の市道で軽乗用車が水没し、同市千渡、派遣社員高橋博子さん(45)が水死した事故で、道路を管理する市は事故前、現場近くの建設会社社員にバリケードの設置を電話依頼しただけで、実際の設置結果を確認していなかったことが二十三日、下野新聞社の調べで分かった。「通行止め」規制用バリケード設置に関しては市と建設会社間に委託契約はなく「口約束」だけだったという。一方、消防が複数の通報を受けながら事故現場に出動しなかったことについて同市消防本部幹部は同日、「申し訳ない」と陳謝した。
 市の危機管理マニュアルでは、道路が危険な状況となった場合は、バリケードなどで安全確保することになっている。事故現場が路面冠水情報装置により「通行止め」となった場合、出入り口を封鎖するためのバリケードは普段、現場近くに保管されている。「通行止め」になると、市が建設会社に電話で設置を依頼していた。
 市と建設会社によると、事故当日の十六日午後五時四十六分、市が建設会社社員に電話で設置を依頼。しかし社員が現場に着いた午後六時ごろにはすでに水かさが増し、バリケードの保管場所まで到達できず設置できなかった。
 高橋さんの車は午後六時二十分ごろ、水没したとみられる。市は設置依頼の電話以降、建設会社と連絡を取っておらず、午後八時ごろまでバリケードが設置されていなかったことを把握していなかった。
 市都市計画部によると、この日、水害対応のため十五人の職員が登庁したが「市内の別の場所でも道路の冠水や住宅浸水があり、巡回していた」という。 一方、市消防本部の岩出勝美消防長は取材に応じ「亡くなられた方に対しては、出動が遅れたことが一因」と、消防の対応と死亡事故の因果関係を認め、「申し訳ないという思いは個人的にある」と述べた。
 市消防本部は、高橋さんの車について複数の通報を受けたが、通信指令課が別の車の情報と混同し、出動命令を出さなかった。

テレビ朝日[27日15時11分更新]
車水没現場は冠水危険地域…市の情報を消防認識せず
 栃木県鹿沼市で車が水没して女性が死亡した事故で、この場所が冠水する恐れがあることを市が把握していながら、救助にあたる消防隊員に十分に危険性が伝わっていなかったことが分かりました。
 車が水没して高橋博子さん(45)が死亡した事故をめぐっては、警察や消防が通報を受けながら出動しなかったことが問題となっています。鹿沼市は今回の事故現場を含めて、冠水する恐れがある道路4カ所を記した地図を作成していましたが、消防が救助活動に活用していなかったことが新たに分かりました。消防関係者は「冠水情報は市と共有できておらず、今回の現場も危険地域という認識がなかった」と話しています。鹿沼市は「情報を共有できなかったことを反省し、消防と協議して体制を検討したい」としています。

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